小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 ロシアのプーチン大統領と言論の自由などの関係なのだが、一度、たまたま見たNHKの夜のニュース番組で、やや物足りないものを感じたことがあった。(ベスランでのテロのニュースをトピックにしたものだった。)プーチン大統領への批判で、やや物足りないような、何か情報が欠けているような思いがしたのだった。NHKのほかの番組あるいはNHK以外の別のテレビ局では、このときたまたま目にしたニュース報道よりも、深いものが報道されている可能性はおおいにあり、たまたま私が日本にいなくて見れなかった可能性もある。

 ・・・というようなことを以前このブログで書いたとき、稲垣さんというジャーナリストの方からのコメントがあり、はっとする思いがした。

 つまり、英国では(米国でもそうかもしれない)、プーチン大統領に関しては、「人権を無視する人」「報道の自由を許さない、暴君」というイメージ、あるいは批判があり、これはしょっちゅうテレビやラジオ、新聞で報道されている。

 英国のこうした見方があたっているのかどうか、ロシア語が読めないので、本当には、自分自身は分からない。しかし、こうした批判を裏付ける報道が大量にあり、ロシアのある新聞社の編集長がいかに当局によって弾圧されたかをつづったドキュメンタリードラマなどを見ていると、控えめにいっても、「いくばくかの真実」がある、と一応判断するしかない。

 NHKのニュースを見たときに、プーチン大統領のこうした実情あるいは定説となっている批判がまったく欠けている様に感じ、もしかしたら、日本では「批判」が十分に報道されていないのではないか?と心配になった。「故意に」批判的部分を出していない、ようにもやや見えた。現地からのレポートが入ったものだったので、現地の特派員だったら、分かる(はず)、と思ったからだ。

 このNHKの報道そのものがどう、ということではないのだが、「報道されるべきことが十分に報道されていない」ようなことがあるとしたら、さびしいなあと思ったのだった。

 稲垣氏のコメントによると、、「人権を無視する人」「報道の自由を許さない、暴君」というイメージは:

 
これは、正しいイメージだと思います。実際ロシアのテレビ局は完全にプーチンに操られていて、学校占拠事件でも5分ほど事件のニュースを流しただけで、あとはバラエティとかドラマとか通常の番組を流してました。それを「ロシアのジャーナリズムの死だ」と批判したイズベスチヤ紙のシャキーロフ編集長は、その翌日、プーチンの意向でクビにされました。


また、「人権を無視する人」というのも本当です。学校占拠事件より先に、モスクワで劇場占拠事件というのがあった際も、特殊部隊が「神経ガス」をまきながら突入して犯人たちを射殺したんですが、ガスで人質の多くが人事不正に陥り、120人以上が病院で亡くなりました。しかも病院側が治療のため部隊にガスの種類を教えてくれと頼むと、「機密だから教えられない」との返事で、人質たちは見殺しにされたのです。ノーバヤ・ガゼータ紙のアンナ・ポリトコフスカヤ記者によると、この毒ガスの選定はプーチン大統領自らが行なったとのこと。(彼女の著書「プーチニズム」より)

僕も実はフリーライターをしてまして、ノーヴァヤ・ガゼータの編集長にもインタビューしたのですが、ロシアは今、ますます人権がなくなり独裁が強まっているとのことです。「テロとの戦い」を口実に州知事まで大統領が自ら指名できるようにしてしまったし…例を挙げたら枚挙に暇がありませんが…


 ーーーコメント引用終わりーーー

 私がはっとしたのは、稲垣さんのご指摘部分は、私が英メディアで見た、知った(従って、英国民の一般的知識ともなっている)プーチン大統領やロシアの状況にぴったりと符号するからだった。

 
by polimediauk | 2005-09-18 14:49 | 欧州のメディア

 今日、民主党の新代表に前原氏が選出された。ほとんど事前の知識がない私は、昨晩の夜のニュース番組で初めて前原氏が声を発するのを聞いた。菅直人氏とともに、古館氏が司会のテレビ番組「報道ステーション」に出ていたのだった。

 前原氏がどんな点に関しても自分の見解を具体的に話し、「民主党の改革は日本の改革だ」、「1つの党の話だけではなく、国民の皆さん全員に関わることなんですよ」というメッセージを出したのに対し、久しぶりに見た菅さんは、なぜか(年齢のせいなのか?58歳というとそれほど高齢とも思えないが)言っていることがややしどろもどろで、具体的な提案を出すことがほとんどないようだった。一つ一つの言葉の前に、やや空白があった。何らかの意味で緊張していたのかもしれない。

 印象では圧倒的に前原氏が勝っていた。

 後で、今日、ほんの2票の差で前原氏が選出された、と聞いた。たったの2票の差だったことに、非常に驚いた。今日の夜のニュース番組は見逃してしまったが、何故これほどの僅差だったのか?これが不思議で、この点は解明されたのだろうか?(つまり、菅氏をトップにおいて、民主党を立て直そうとした人がこれほど多くいたとは!)
by polimediauk | 2005-09-18 00:40 | 政治とメディア
 前回のイラクでの惨事に関し、少なくともガーディアン紙は、悲惨さが分かるカラー写真を使っていた。ただし、1面では記事のみで、この写真は17面に掲載だった。
イラクの惨事 ガーディアンの場合_c0016826_028496.jpg

by polimediauk | 2005-09-18 00:29 | 新聞業界

紙の新聞は、トイレでも読める
20年後の新聞は? BBCオンラインより (+デイリーテレグラフの現況)_c0016826_1626070.jpg
  (写真は、BBCオンラインより。大衆紙サンを電車の中で読む通勤客?こんなに一度に同じ新聞を読んでいるわけがないので、ポーズをとったのかもしれない。)

 ガーディアン紙が縦に細長いベルリナー判の新聞を12日から発行しているが、未来の新聞はどうなるのか?を、BBCオンラインの「マガジン」というコーナーが予測している。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/magazine/4244908.stm (以下は、大体の訳)

 ガーディアンがベルリナー・サイズになったのは減少する販売部数をなんとか巻き返すためだったが、20年後の新聞はどのような形になっているだろうか?
 
 新聞は、将来どんな形で存在するのか?誰もこれを予測できない。しかし、考えられるいくつかの方向性はあるだろう。

 まず初めに、新聞そのものが存在するか、どうか?新聞が無くなる、ということは長い間、言われてきた。ほんの10年ほど前、ウエブサイトやテレビのニュースが、煩雑で、時代遅れの、読むと手が汚れる紙の新聞に取って代わるだろう、といわれたものだ。
 
 この予言以降、ブログやサーチ・エンジン、携帯電話、PDA,電子の紙などが、今度は紙の新聞を駆逐する、ともいわれた。
 
 これまでのところ、新聞業界はこうした暗い予測を吹き飛ばしてきており、国内の販売競争に打ち勝つため、改革を断行してきた。ガーディアンは(2003年のインディペンデント紙やタイムズ紙に続き)紙面を小型化した第3番目の新聞(高級紙)となった。他紙もこれに追随する可能性もある。

 しかし、サイズの縮小はあったものの、1621年、ロンドンで発行された最初の英語での新聞「コンランテ Conrante 紙」から、形式はそれほど変わっていない。

 現在、世界中の新聞の売上は、2004年で前年比2・1%上昇したが、英国での数字は4・4%下がった。

 英新聞業界の厳しさからすると、売上げ下落も無理はない。ウエブサイトやサーチ・エンジン、携帯電話などを通じてニュースを読む人が増えており、ブログにアクセスすれば、よりパーソナルでオフ・ビートな分析が読める。
 
 電子の紙・エレクトロニック・ペーパーを実現する技術も、既にある。映画「マイノリティー・レポート」の中で、男性が新聞のようなものを読んでいる場面があった。読み進むにつれて、新聞がページをめくっていくのだった。

 メディア評論家のビンス・グラフ氏は、英国の新聞は持ちやすく(小型判が多くなってきたので)、使い勝手がよく、価格が安いので、将来もなくならないだろう、と予測する。「24時間の途切れることがないニュース報道が現実化したために、新聞は娯楽記事、ライフスタイル、分析記事などを増やしており、中身は変わったものの、紙媒体と言う部分は変わらないだろう」

 「現在は、塩化ビニールのレコードはもはや隙間の商品になっているが、50年後の新聞はそうなっているかもしれない。それでも、紙の新聞は存在する」

 「紙媒体は非常に便利だ。トイレで新聞を読む人は多い。しかし、ブロードシート判(現在の日本の朝刊新聞と同ようの大きさ)の新聞はなくなっているだろう。現在でも、既に古めかしく見える」

 サセックス大学のメディア・映画学部のキャロライン・バセット氏は、将来は電子の紙で作られた新聞が一般的になる、とする。この時、「新聞の中身が電子データとして存在することになるので、多種類の電子画面に送付することができるようになる。読者は、携帯やラップトップ・コンピューターで新聞を受け取る。編集作業を終了した新聞データが、駅に設置された大きな画像スクリーンに送付される(それを読者が読む)、といった形もできるだろう」。

 しかし、バセット氏も、現在のような紙版の新聞は残ると見ている。それは、多くの読者が、全体のみやすさ、持ちやすさの面で好むからだという。


(引用終わり)


―まだ大判のデイリーテレグラフの現況

 英国には4大高級紙(ブロードシートとかつては呼ばれていた)があるが、インディペンデント、タイムズは既に小型タブロイド判化し、この2紙が小型化してから特に発行部数が激減していたガーディアン紙が今月また別の形で小型化した。

 残る大判はデイリーテレグラフだが、発行部数が約90万部で、高級紙のなかでは最大。ここで働く古参スタッフの一人から、直接聞いたところでは、「レイアウトがまずいというのは社内でも言われている。現在の新聞の所有者はバークレー兄弟だが、前任者のコンラッド・ブラック卿が、『会社からお金を盗んでいたので』、 紙面改革などの必要な投資が十分になされてこなかった期間が長く続いた。このツケが今来ている」。(いかにブラック卿が「悪人」だったかは、英国で散々報道されてきた。)

 デイリーテレグラフは、センターライト・保守派新聞。必要な情報がきちんと入っており、良質な記事がたくさんある、という印象がある。ただし、ファッションページや1面などに、女性の水着姿のクローズアップ、有名女優の半裸写真などが、出ることも多々あり、「広範囲の読者の獲得」を狙って、苦心しているのかな?と思ったりする。 http://www.telegraph.co.uk/ ウエブはやや地味だが、過去記事を調べようとすると、場合によっては料金の支払いを要求するインディペンデントやタイムズに比べ、無料なので、安心できる。
by polimediauk | 2005-09-15 16:27 | 新聞業界
 今、BBCオンラインの画面 (http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/4245924.stm から、右横のビデオを選ぶ)で、国連首脳会合での各国首脳のスピーチが流れている最中だ。先ほどまで、アイルランドのオハーン大統領がスピーチをしていた。

 アナン国連総長のスピーチも見れるようになっている。小泉首相は15日夜(日本時間16日朝)の予定、と時事通信が伝えている。

 読売新聞によれば、ブッシュ米大統領は国連を「強く、効率的で、腐敗のない」方向に改革するため、米国は主導的役割を果たすと強調したそうである。

 後でスピーチの内容を文字で読むと、国連は遠く感じるが、それぞれの国の首脳がそれぞれの言葉で話すのを同時で聞くと、感動的なほどにリアルだ。

 
by polimediauk | 2005-09-15 09:01 | 政治とメディア

たまたまそこにいた・・・

 去る7月7日、ロンドンで爆破テロが起きたが、同月21日にも、死傷者は出なかったものの、同様の手口のテロがあった。後者のテロの実行犯とされる人物のうちの二人は、住んでいたアパートのバルコニーで警察に逮捕されたが、この時の様子を、マチュアのカメラマンが偶然にも捕らえ、後、ITVニュースで独占放映された。

 ロンドン・テロは、ちょうどアメリカの2001・9・11のように、英国で市民ジャーナリズムが本格化する1つの機会となったが、事件・事故が起きた時には、携帯で写メールをするよりも、傷ついている人を助ける、自分自身の身の安全の為に現場からの退去に専念するなど、他に集中するべきことがあるのではないか?という疑問の声が後にあがった。また、市民がとりこんだ映像やレポートを、そのまま既存メディアが「ただで使う」ことにも、これでいいのか?という問いも表明された。

 大部分の市民が無料で情報・映像をメディアに提供したものの、大金を手にした人もいる。それが、ITVニュースで放映された、テロの容疑者二人の逮捕の映像を提供した人物だった。この話を、8月8日付のガーディアン紙とインディペンデント紙が書いている。ガーディアンの方は写真を撮った人物に話を聞いた。

 
レンズの後ろにいたのは、バラの写真を撮って郵便葉書にし、これを近くのマーケットで売っていた、アマチュアの写真家ニック・ソフォクレウス(Nick Sophocleous)さんだった。

 ソフォクレウスさんは、その日、ロンドンの北ケンジントン地区にあるピーボディー・エステートと呼ばれる住宅地の一角にあるアパートに滞在していた。ガールフレンドがここに住んでいたからだ。このエステートの他のアパートに、まさか手配中の容疑者たちが住んでいたとは全く知らなかったという。

 「その日の朝もいつものように何をするでもなくすごしていたら、外出していたガールフレンドのハンナから電話があって、警察がエステートの周囲を取り囲んでいて、立ち入り禁止になっているのでアパートに戻れない、というんだ。そこで窓のところに行って外を覗いてみると、確かに警官がたくさんいた」

 警察が実行犯を捕らえようとしているという報道が継続的にあったので、ソフォクレウスさんは、本能的に何かが起きる、と感じたと言う。しかし、ビデオカメラを手にしてみると、バッテリーがなくなっていたことに気付き、いらいらしてしまう。充電器を見つけるために、あらゆる引出しをあけ、椅子やテーブルが転がるのも構わず、部屋中を探し回った。

 「急に外が静かになったんだよ。それで20分間だけ充電することにした。すごくいらいらしたね。世界中でも最高に劇的なことが外で起きそうになのに、充電器を見ていることしか出来ないんだから」

 「充電を終えて、カメラのスイッチを入れたとたん、二人の男(容疑者たち)が部屋の外に出てくるのが見えた。全くの偶然だった。必死に男たちの姿をカメラにおさめようとしたけど、頭部がどうしても画面からはみだしてしまう。自分を落ち着かせるのに懸命だった」

 逮捕のドラマが終わると、アパートから出ることができなかったので、BBCと(ITVニュースを作っている)ITN,そしてスカイ・ニュースにメールを送ったという。メールには、「段々すごいことになるテープがある」と書いたという。

 一番高い金額をオファーしたのはスカイ・ニュースだったが、ソフォクレウスさんはITNを選んだ。スカイ・ニュースはメディア王ルパート・マードック氏が所有しているが、マードック氏が大嫌いだからだ。ITNからは6万ポンド(約1200万円)もらうことになった。ITNは大衆紙のデイリーメールとこの資金を負担した。

 ITNは立ち入り禁止になっている場所ぎりぎりのところに小型トラックを止めた。アパートのドアを開け、監視をしている警察官がちょうど反対側に目をむけた瞬間に、外に出て、バルコニーに腹ばいになり、トラックがある方に体を進めたと言う。

 テープを持ったソフォクレウスさんはトラックに乗ってITNのスタジオに到着する。

「スタジオに入ると、本当の興奮状態が起きているような雰囲気があった。夕方のニュースの時間になって、スタジオ内は急に静かになった。放映が終わると、全員が拍手をしてくれた。あんまりみんなが誉めてくれるので、これ以上誉められたら、自分のエゴが巨大になりすぎて、外に出られなくなるんじゃないか、と心配になるぐらいだった」。


 
 

 

by polimediauk | 2005-09-14 17:13 | 英国事情
 英ガーディアン紙が、12日付けから、ベルリナー型という、小型タブロイド判(夕刊フジなどのサイズ)をややタテに細長くした形で発行を開始した。

 近年、インディペンデント紙、タイムズ紙が大型ブロードシート判からタブロイド判にして、一躍人気を集め、発行部数を集めていたが、ガーディアン紙のアラン・ラスブリジャー編集長は、「タブロイド版にはしたくない」と抵抗していた。とはいうものの、新たな小型判のスタイルに関心があるとして、いよいよこの形での発行に踏み切ったもの。1年半前から準備を始めたという。

 現在、ウエブサイトからデジタル・バージョンでその姿を見ることが(9月26日までは無料で見れる)できるので、アクセスしてみると、(http://digital.guardian.co.uk/ 及び特集面がhttp://www.guardian.co.uk/theguardian/0,16390,1552451,00.html) 全面カラーで、色使いがものすごくきれいだ。全部カラーと言うのは、インディペンデントでさえ、やっていないが、随分お金がかかっている。

 とにかくは、その様子を見ていただきたい。微妙な色調整、ベージュ使いなど、なんと素敵なことだろうか。(順序がばらばらだが、上から4つめが、12日付の一面である。)


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by polimediauk | 2005-09-13 08:20 | 新聞業界

 新党「日本」代表の田中康夫氏の会見が、今日(7日)、東京・日比谷の外国特派員協会(FCCJ)であった。昼の12時からだったが、急いで駆けつけてきた、通信社の女性の話だと、この前に1つ都内で会見があり、長野知事としての話に終始していた、とのこと。

 これは外交問題をどうしても聞かなければならないと、周囲にいたほかのジャーナリストたちと話をしていたところ、田中氏が入ってきた。

 田中氏は今回立候補しないが、衆院選には新党から数名が立候補。氏は、長野県知事としては成功した人、ということだが、国政では何をしたいのか?「信じられる日本へ・新党日本」www.love-nippon.comという新たな政党を立ち上げている。日本の野党は、おおむね政策に現実感がないように(自民党支配が圧倒的であったため)認識してきたが、小さな規模の新しい政党であることから、どこまで「現実感」を与えながら政策提言をするのか?に興味が湧いた。

 昨日のライブドア堀江社長の場合もそうだったが、私自身、特に両者に思い入れがあるわけではない。ただ、両者ともにある程度年齢が若く、固定支持者も多い。日本が変るとすれば、こうした人たちが何を考え、これから何をしようとしているのか?が判断材料となるだろう。

 田中氏の会見内容は、80パーセントが長野県知事としての業績、改革方法を国政に適用したい、という彼自身の説明に加え、ジャーナリスト側が外交問題に関して聞いてゆく、という形となった。私個人の観察では、作家としてスタートした田中氏にとって、知事としての4年の経験が、一個人としても大きな収穫だったようであること〔従って、財政再建に関する発言内容にリアリティー、迫力がある〕、官僚主義打破以外の領域ではやや現状維持のような(つまり保守的な)考えをもっているようであること、外交〔他国とどうつきあうか〕や安全保障の分野では、昨日の堀江氏にもみられた、やや夢物語的な、理想論的な部分があるようであること、などが感じられた。

 しかし、さすが作家だと思ったのは、日本の論調の流れの変化を感じ取り、これを日本語の構造とからませて説明してくれた時だった。時代の雰囲気を真っ先に読み取る、感じ取る、分かるような人なのだろう。(この箇所は最後に出てくる。)

 さて、田中康夫氏は何を考えているのか?以下は今日の会見のスピーチからの抜粋である。

―新党日本を作ったのは、「信じられる日本」を取り戻すための政党を作ろうと思ったからだ。どこの既存政党の支持も受けない。
―勤勉な日本の人々が働いてきたおかげで、日本は物質的には豊かな国になった。しかしながら、小泉政権になった4年間で、170兆円も借金が増えた。これは、1時間で39億円の借金が増えたことになる。世界一の借金国になった.日本には目先の問題だけを解決しようとするポリティシャンばかりで、〔国家のことを考える〕ステーツマンが少ない。私は、集金のために生きることとは無縁の人々のための政治を、意識ある人のための政治を、知事としてやってきた。
-知事としては、大きな3つの目標があった。1つは財政の健全化で、2つ目は年金の再構築で、3つ目は、官僚主導の政治の打破だ。小泉首相が、郵政の民営化が通らなかったから、改革ができない、というのは不思議に思う。第一、郵政の民営化がないから借金が増えたのだろうか?小泉氏は、「郵政民営化で外交にもいい」とさえ言っている。
―自民党の、120のマニフェストの中で、年金に関する項目はない。小泉氏は、年金問題を時間をかけてやりたい、といった。そして、消費税は私の在任中はあげない、とも言った。じゃあ、次の首相の時にはあげるんですか、と聞いたら、次のことは次の首相が考える、といった。これでは、彼をステーツマンとは呼べない。
―現在の年金手帳には、入った日だけが書かれてある。若い人たちは、将来年金をもらえるのかどうか、不安だ。そこで、私は3つの年金を1つにする。国民年金は掛け金が大きいが、もらう額はほかの年金と同じなのだ。そして、スエーデンでやっている年金手帳を導入したい。これには、毎月の支払額が表記される。すると、最終的に、政府が資金援助する分をあわせて、どれくらいもらえるかが分かる。〔注:なかなかいいアイデアだとは思ったが、税金が高くて有名な北欧の国の話を例としてあげる度に、ドキッとしながら聞いた。税金はあげない、ということを、同時に言うので、計算上、一体どうなっているのか、心配になるのだ。〕
―増税はあるのか?ない。減税で経済は良くなり、増税では停滞する。アメリカの例もある。
―官僚は、増税すると、無駄なことにお金を遣う。民間企業は、サービスを提供し、その後でお金をもらうが、官僚は逆だ。サービスを提供する前に、予算の形でお金をもらう。
―長野知事になった時、財政破綻寸前だった。4年間で、累積赤字を547億円減少させた。4年連続、しかも、そもそも減らしたのは長野県のみ。〔この後、詳しく無駄の省き方を紹介。詳しくはホームページや他の新聞記事を参照していただきたいが、実は本人はここに一番力を入れていた。アイデアとしては素晴らしいのだが、小さな政党で実際に政策を実行に移すところまで行くのかどうか、一抹の不安も残るのだった・・・。〕


一問一答に移り、
「官僚で国会議員に立候補している人をどう思うか」
―官僚でも、個人/市民としての気持ちを持ちつづけているかどうかが重要。経験、男女、年齢、などの条件は関係ない。社会に対する態度が重要。

「小さな政党で、どうやって政策を実行していくのか?」
―永田町には数の論理がある。これに対して、長野県は質を高めるほうに力を入れた。自民党や民主党は百貨店のようなものだが、新党は路面にあるブティックのようなもの。パッション、ミッション〔使命〕、アクションだ。〔注―あまり答えになっていなかった。〕

「沖縄の米軍をどう思うか?イラクから自衛隊は撤退するべきか?」
―今まで、日本は米国の傘の下で、モラトリアム状態を続けてき。
―自分は、最初の湾岸戦争のときに、今は亡くなった作家の中上建二らとともに、戦争反対声明を出した。
―また、自分は「嫌米」という言葉を広めた人物でもある。親米でなく、反米でもなく、嫌米だ。例えば、だんなさんがぺちゃくちゃと音をたててご飯を食べているのを見た妻が、そんな食べ方はしないでといったら、夫が、「誰のお陰で食べられると思っているんだ」といわれ、嫌だなと思っても、離婚したりはしない、という感じだ。米国を認めているが、どこか違う、とも感じている。イコールパートナーとして、受容する。
-沖縄の基地は、偏りだ。自分は、専守防衛という考えを崩さない。台湾や中国との緊張関係があるから、沖縄にあれほどの基地があるのだと思う。日本はアジアのコーディネーターになるべきだ。

「自衛隊をどう考えるか?憲法9条は?日本は米国とイコールパートナーだとおっしゃったが、海外で日本をそんな風に見ているところは、ない。本当の意味でイコールパートナーにするべきだと思うか?」
―自衛隊に関しては、日本の戦争責任の言及に関して話したい。読売新聞の渡辺恒夫氏や石原都知事など、右といわれてきた人々が、保守論者たちが、危機感を持ちだしている。産経新聞でも、石原知事が、これまでとは違うトーンのことを言い出している。戦争の責任は誰にあるのか?というようなことを考え出している。
―日本には、「なんとなく」いう空気が存在してきた。しかし、今、イデオロギーや立場を超えて、危機感を持ちだしているということが、こうした人々の論調にあらわれている。日本の戦争責任は誰が負うべきか?ということに関しての危機感。新しい動き。
―日本の恒常平和を保つには、9条だが、今までのようなやり方ではなく、ソフトパワーでやっていく。「守る」というより、世界的に普遍的なものを伝えてゆく。9条の精神は遵守していくべきだ。〔注:残念ながら、もう少し詳しく聞きたいような部分だったが、時間切れとなった。やや分かりにくい抜粋になっているが・・。)
―移民は日本が開かれた社会になろうとする時に、必要。資源が無い国が、世界の商人としてやってきた。これで恩恵を受けてきたのだから、逆に移民を受け入れない理由が無い。
―日本語は、I think など必ず主語をつける英語とは違い、主語が無くても自分の考えが言える。責任の所在があいまいだ。「過ちは2度と繰り返さない」という時、誰がこの言葉に責任を持つのか?
―長野県では、内部及び外部資料に責任者のフルネームがある。日本の新聞では、名前がみよ字だけだ。例えば小泉首相など。ファイナンシャルタイムズなどをみると、フルネームだ。フルネームで仕事をすることが大事だ。

「勝つ見込みは?」
―25年間、作家としてやってきて、人々が自分をどんな風に見るのか、どういう顔の表情をして、どういう言葉を使って話しかけるか、などを観察してきた。これまで、何処に行けば私のいう事が潜在的に受け入れられるのか、分かる場所に書いてきた。今回の選挙は、これまでの選挙と比べても、高い反応があり、嬉しい戸惑いを感じている。民主主義を理想的なものと捕える人が、ネットをやっているだけでなく、実際に行動に移せば、支持が出ると思う。

―政治は、言葉で、人々を冷静に鼓舞するもの、社会を変えていくものだ。


ーーー

 後で、もらっていた、これまでのスピーチ集を読ませてもらうと、本当に、長野での4年間が、彼を変えたようであることが、分かる。非常に多くのことを体験し、見、人とのふれあいがあったようだ。やはり、何かしら、人に与えるものを持つ人であるように思える。(しかし、それでも、実際に何議席かとれたとして、その後、どうやって、小さな政党の政策を国政の場に反映させるのか・・・。長野県の知事というリーダーであればこそ、思い切った改革ができたが、小政党ではどうなるだろう?)
by polimediauk | 2005-09-07 16:06 | 政治とメディア

「政治を変えたい」

 英国で毎日午後5時から放送されるラジオのニュース番組「PM」を、今、PCで聞いていたら(放送は8月30日分。今日の分を聞いているつもりだったが、時差の関係で、日本の午後11時現在は、まだ英国の午後3時だったので、1週間前のを間違って聞いていた!)、日本の総選挙の話になった。

 今回の選挙はいつもと違う・・ということで、BBCのレポーターが尾道に飛ぶ。そして最初に紹介したのが、ライブドア社長の堀江氏のケースだった。この後、亀井氏の選挙活動の紹介になる。

 堀江氏の部分で、インタビューされるのだが、「日本の政治を変えたい。若い人が政治に興味を持つようになるべきだ」というようなことを、英語で言う。文章は3つぐらいだったが、きれいで、はっきりした英語だった。(亀井氏は日本語に通訳つき。)

 英語で答えようというのが誰のアイデアかわからないが、どんなにシンプルな英語でも、やはり自分で言う、というのは好感が持てた。(とすると、6日の外国特派員協会でのスピーチも、やろうと思えば、英語でもできた、ということだろうか?しかし、通訳が非常に見事だったので、これはこれでよかったのだが。)
by polimediauk | 2005-09-06 23:24 | 政治とメディア

すべてを敵に回したテレビ局の果てしなき闘い


 上のタイトルは私が書いたものではなく、「アルジャジーラ 報道の戦争」と書かれた新刊の副題である。光文社より。ヒュー・マイルズというフリーのジャーナリストが書いたもので、今年の頭ぐらいに英国で出版されたように記憶している。

 書評は悪くなく、私も買ってちびちび読んでいたが、読みきらないうちに、邦訳が出ていることを先日知った。

 かなり情報が詰まっている本で、カタールとはどんな国なのか、アルジャジーラとは何なのかといった説明も加え、なかなかおもしろい。

 今、第4章「9・11はメディア戦争だ」を読んでいるが、一瞬、外の暑さを忘れる。米英メディア、特に米政府・米メディアの偽善的側面が出ており、「もう1つの視点」が分かる。

 ややアルジャジーラを誉めすぎというか、アルジャジーラ寄りのような印象を今のところ受けるが・・・。

 最後の方は、来年から始まる、アルジャジーラの英語放送(これまではアラビア語放送)に関しての見通しが書かれている。この部分だけは、先に英語版で読んでいたが、結構否定的な見方だったように記憶している。つまり、英語放送になったとたん、アルジャジーラはBBCやCNNなど、米英のでかいメディアとの競合に入る。勝てるのか?勝てないだろう・・・というもの(だったと思う)。

 この点を、カタール・ドーハで英語放送の準備をしているアルジャジーラ関係者に直接聞いてみると、「本は読んだが、最後の結論は、あくまでも1つの見方だと理解している。気にしていない」と言っていた。

 アルジャジーラ英語放送のためのスタジオはまだ建設中。「24時間の突貫工事中」だという。ドーハは今日中44度ぐらいあり、昼間は熱風の中を歩くようだ。

 作者のマイルズ氏は2000年、タイムズのヤング・ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤーを受賞した人だという。サウジアラビア生まれ。しかし母語は英語のようだ。名門イートン校からオックスフォード大学へ。

 「すべてを敵に回したテレビ局」という副題がぴったりの本だ。 
by polimediauk | 2005-09-04 00:57 | 放送業界