小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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c0016826_4132452.jpg イラクで、欧州、カナダの人たちが人質になっている。

 カタールのアルジャジーラや、ドイツのテレビ局にビデオテープが届き、人質の様子を映し出してる。

 ビデオの右横にマークがあり、アラビア語で「正当な集団の剣」と書いてあるそうである。アルジャジーラは、このグループの詳細などに関して、分からない、としている。グループは、人質らが、キリスト教の平和活動に従事するといってはいても、実はスパイだ、としているそうだ。

 この写真の白髪の人が英国人のノーマン・ケンバー氏。ボランティアで、バグダッドにある、人権運動をやる団体を訪ねていた。

 同じグループによる誘拐かどうかはわからないが、以下の記事が時事に出ていた。

2005/11/29-12:54 イラクで独女性ら2人誘拐か=TV局に殺害警告ビデオ届く
 【ベルリン29日ロイターES=時事】ドイツ公共第1テレビ(ARD)は29日、イラクでドイツ人女性とその運転手が何者かに誘拐されたと報じた。2人の殺害を警告するビデオテープがARDのバグダッド支局に届いたという。
 ARDのウェブサイトに掲載されたビデオの映像では、2人は目隠しされた状態で座っている。武器を持った覆面の3人に囲まれ、うち1人が紙に書かれた声明を読み上げているように見える。
 ドイツのシュタインマイヤー外相の訪米に同行中の外務省スポークスマンも、この女性がイラク国内で25日から行方不明になっていることを確認した。女性の安全確保のための対策チームを設けたという。

by polimediauk | 2005-11-30 04:12 | イラク

映画「SAYURI」の裏事情?


 先日、映画を観にいったときに、予告編の1つが「Memoirs of Geisha」という小説を映画化したものだった。日本語でも「さゆり」(主人公の芸者名)という題名で翻訳・出版されている。米国人アーサーゴールデン氏書いたベストセラー小説だ。私自身は原作を読んでいなかったものの、題名だけは知っていた。

c0016826_20262271.jpg 予告編を見ていてあることに気がついた。この映画のポスターはロンドンの地下鉄によく貼られているので、知識としては知っていたのだが、映像で見るとまた迫力が違う。つまり、小説の中の日本人芸者は日本人の女優さんが演じていないのだ。

 主演の中国人女優チャン・ツィイーは、前に他の中国(香港)映画で見たことがあって、きれいな人だなあという印象があった。顔だけ見ると、何人、というところまでは通常は分からない。

 そこで、英国の映画館で、「日本の芸者の話」を中国人の俳優たちが演じているのを見ると、これでいいのだろうか?という思いがあった。着物の着方も全然違うし、髪形も、典型的な芸者の髪型ではなく、全く違う。数人の日本人の俳優も出ている。英国では、「これが日本だ」と思われるのだろうなあと思うと、一種滑稽なような気もした。

 それはさておき、日本では、中国人俳優らが演じる「さゆり」をどう受け止めるのだろうか?と思っていたら、記者会見があったようで、短いニュースが出ていた。映画は「SAYURI」になっている。この短い記事だけでは、受け止め方の反応は分からない。英ガーディアン紙に出ていたので、それを出してみたいが、ガーディアンではブロガー二人の書き込みを入れた記事になっている。このブロガーたちが日本と中国の人々の深層心理を表しているものとして、おもしろい、と思って入れたのかどうかは、分からない。また、最後の中国人女優のコメントも、どのような質問の後にこのコメントが出たのか、書かれていないので、この記事が真実をついた記事だったとしても、結果的にややセンセーショナルな印象になってしまったように思う。

 いずれにせよ、中国人女優が主人公の日本人を演じる映画が、ハリウッド製とはいえ、「日本映画」として世界中に(おおげさかもしれないが)配給されることに関して、日本人の多くは、あるいは日本の映画評論家はどう考えているのだろう?(英人俳優が米国人を、あるいはドイツ人などなどを演じる例は、英テレビではしょっちゅうやってはいるのだが。)

 まず、ヤフーに出ていた、夕刊フジの記事。

渡辺謙「SAYURI」アピール、ワールドプレミア
 
芸者の純愛を描いたスティーブン・スピルバーグ製作のハリウッド映画「SAYURI」(ロブ・マーシャル監督、12月10日公開)のワールドプレミア会見が28日、都内で行われた。主演の中国人女優、チャン・ツィイー(26)のほか、俳優の渡辺謙(46)、役所広司(49)、桃井かおり(53)、マレーシア出身女優のミシェル・ヨー(43)らアジアのスターが勢ぞろい。会見には、約700人の報道陣が詰めかけた。

 ツィイーが「私たちアジアの俳優の才能を全世界に見せつける機会です」と気勢を上げると、“世界のケン・ワタナベ”も満足げな表情で「誇りにできる作品に仕上がった」と同調。英語に苦労したという役所も「素晴らしい経験ができた」と興奮気味に語っていた。
(夕刊フジ) - 11月29日17時1分更


 ガーディアンの東京特派員が書いた記事からは別の側面が見える。

 
映画公開前から、ハリウッド映画「SAYURI」は中国と日本で厳しい批判が出た。

 日本の批判の矛先は、監督のロブ・マーシャルが主演の芸者役に中国人の女優をあてた点だ。あるブロガーは、「この映画をボイコットして、メッセージをハリウッドに送るべきだ。何故日本人を馬鹿にするような映画を作ったのか?日本人がいなければ何もできないくせに」。

 中国の批判は、慎み深い芸者役の主演女優が、1930年代の京都で、舞台上で踊っているシーンが、「まるでロサンゼルスのストリップ・ショーで踊っているように見える」ということだ。

 この映画では、映画の中心となる主人公が中国人のツィイーに、もう一人重要な役割となる登場人物の役がマレーシア系中国人のミシェル・ヤオーにいった。

 しかし、日本の批判は中国の批判に比べれば、たいしたことはないのかもしれない。ある中国人のブロガーは、かつての中国の一部を植民地化した日本に関わる映画に出たツィイーは「魂を売り、祖国を裏切った。殺すだけでは十分ではない」としているという。

 東京での記者会見に姿を見せたツィイーは、「サユリ」はアジア人の俳優達にとって、一歩前進だ、と述べている。「人が考えるよりはるかに多くの事ができると思う」(注:一歩前進というのがハリウッド映画に出られたのでよかったという意味と、アジアの俳優同士が協力できて良かった、ともとれる)。

by polimediauk | 2005-11-29 20:25 | 日本関連

韓国のオーマイニュースのことが、湯川さんの「ネットは新聞を殺すかブログ」で紹介されている。

http://kusanone.exblog.jp/

オーマイニュースの件は、本にもなっており、今年、私が最も感動した本の1つだ。本当に目からウロコが落ちる思いだった。市民とジャーナリストの垣根をなくしたのが1つの特徴だが、その意味するところ、暗示するところ、発展していく方向、影響力は、はかりしれない。これがどういう意味合いを持つのか、私自身、想像がつかない。

詳細をここで書かずに恐縮だが、オーマイニュースの本を書店で立ち読みなどされることをお勧めしたい。

湯川さんは参加型ジャーナリズムに関して本を書いているところだ。一部を紹介。

また英ガーディアンのインタビューに対し「70%の市民記者は身の回りのことを書いている。西洋のジャーナリストから市民記者にプロ並みの報道ができるのか、という質問を受けることがある。誤解しているようだが、プロ並みの報道をしている市民記者はほとんどいない」と語っている。
 オー社長は「(市民記者には、一般的な)ニュースの形式を気にしなくていい、と言っている。プロの真似はしなくていい、自分自身の言葉で語っていいんだ、と強調している」という。
 ただ市民記者の中でもプロとして通用する人もいる。そういう人を積極的に社員記者として雇用するそうだ。オーマイニュースの社員記者の8割は、市民記者出身だという。
 オーマイニュースでは、サイト上に一日に数十本の記事を載せるが、その3分の1が社員記者の手によるものらしい。


また、以下の箇所もある。

オーマイニュースのオー社長は、同社が成功した理由を韓国独特のものとしている。
 理由の1つは、韓国の既存メディアが保守寄りで、国民は別の議論を求めていたから。2つ目は、国民の75%がブロードバンド接続というネット先進国だから。3つ目は、韓国の国土が狭く、市民記者の記事の裏を取るために現場に向かう場合でも、2時間以内に現場に到着できること。4つ目の理由として、社会の関心が少数の問題に集中するという国民性を挙げている。そして最大の理由として、20代、30代の若者は革新的な考えを持っていて、実際に活動に参加する若者が多いからだとしている。
 オー社長は「技術だけでは社会は変わらない。(変化を受け入れる)準備ができた人が社会を変えるのだ」と言う。
 今年5月31日にイスタンブールで開催された世界新聞協会の年次会合で講演したオー社長は次のように語っている。
 「オーマイニュースをスタートさせたのは2000年の2月22日午後2時20分です。2の数字が並んだ日時を選んだのは、20世紀型のジャーナリズムとは決別し、21世紀の新しいジャーナリズムを確立したいと思ったからです」「(市民記者は)だれが記者であり、どういう記事の書き方がよくて、どういうものにニュース価値があるか、という既存メディアのこれまでの常識を打ち破ろうとしています」「参加型ジャーナリズムは世界中に広がり、21世紀のジャーナリズムの中核になると信じています」。

by polimediauk | 2005-11-29 06:34 | ネット業界

 イラクで4人が人質になり、そのうちの二人はカナダ人だったが、残りの二人が英国人だったのではないか?というので、現在、英国では人質のニュースがトップストーリーになっている。

 その少し前、一日中繰り返して報道されていたのが、英海軍内のいじめだ。裸での殴りあいを強制されているビデオ画像が、テレビで頻繁に流れた。全裸なのでかなりモザイクをかけた画像になっている。

http://www.newsoftheworld.co.uk/story_pages/news/news1.shtml

 とてもこのウエブで出す気にはなれないが、映像はショックではあるが、これをどう解釈したらいいものか、と思う。

 軍隊は最終的には人を殺し、殺されるところまでいくのだろうから、相当、想像を絶するような訓練(あるいはいじめ)がある可能性もある。いじめを正当化するわけではないが。

 人間は誘惑に負けていろいろひどいことをする、という部分があると思う。英海兵隊のビデオの一部を見て、そういう面がでたように思った。

 元海軍で議員になった人などが、メディアにインタビューされ、「こんなことはあってはならないことだ」とコメントをしている。

 英海軍にとって、大困惑の日だった。

 以下は、時事の報道。



2005/11/27-10:58 海兵隊でいじめ?=国防省が調査開始-英
 【ロンドン27日ロイターES=時事】英国防省は27日、海兵隊内でのいじめについて調査を開始した。海兵隊が歓迎儀式と称して新兵に全裸での殴り合いを強要しているとして、証拠写真を掲載した同日付日曜紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドの報道を受けた措置。
 報道によると、写真は今年5月に南西部プリマスの軍施設で隠し撮りされたビデオからのもので、十数人の裸の男が野外に立ち、殴り合いをする男性2人を囲んでいる。また上官らしい男が新兵の頭部をけり、意識を失った裸の男性が倒れている場面もある。
 隠し撮りをした海兵隊員は、局部への電気ショックなど他のいじめについても証言。イバラの中を全裸でほふく前進するよう強制したり、寝室の窓から飛び降りるよう命令して新兵に脚を骨折させたりした例もあるという。
 同省スポークスマンは「告発の内容は深刻」と表明、特別調査委員会(SIB)が調査を始めたことを明らかにした。

by polimediauk | 2005-11-28 08:41 | イラク
アルジャジーラの社長ワダー・カンファール氏が、今ロンドンに来ている。週末までいる。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/4469044.stm

今回の目的の1つは、英政府に、いわゆる機密文書(ブッシュ米大統領が、ブレア首相と昨年4月に会ったときに、「アルジャジーラ本部の爆破計画」を口にしたのかどうか)の真偽を確かめるためだ。英国の政治家の中には機密文書の公開を求める人もいる。

今回の訪英は、パフォーマンス的な要素もあるだろう。「演技だ」といっているわけではなく、この機会を最大限に利用しよう、という要素がかなり大きいと思う。

爆破計画が本当で、冗談だけではなかった場合、過去にアルジャジーラとブッシュ政権は対立してきており、米軍のミスによる爆破で命を落としたアルジャジーラのジャーナリストもいて、実際、事故だったのか、故意に爆破したのか?という重要な問題が再浮上する。

しかし、イラク戦争も含めて、メディアの戦争が起きているという現状があるわけだから、この点から、どっちが世論を説き伏せるか、もっともらしいことを言っているか、という観点からすると、アルジャジーラが今のところ優勢だ。表現の自由の侵害、と言われると、どんな政権でも、特に民主国家の政権は耳に痛い。

昨晩、「クエスチョンタイム」という討論番組を見ていたら、パネリストの政治家やコラムニストらは、ほとんどが、「本気だったのだと思う」としていた。

「今までを見ると、ブッシュ政権は邪魔なものをことごとく排除してきた」と、一人の労働党員が番組の中で、言っていた。「だから、過去を振り返れば、本気でブッシュはそういったのだと思う」。

戦争の時に、情報というのはものすごい力を持つ。武力と同じかそれ以上に。

真実が(ブッシュが何を言ったか、でなくて、過去の事故が実は事故ではなかったのかどうか)明るみに出るだろうか?

もし出たら(事故でなく故意の武力攻撃だということが証明されたら)、これは相当なスクープになるだろうと思う。イラクのアブグレーブ刑務所のスキャンダルをしのぐほどではないかと思う。
by polimediauk | 2005-11-26 01:39 | 放送業界
日刊ベリタの無料記事で、米新聞の発行部数の話がでていた。

新聞が消える日迫る? 米主要紙発行部数最大の落ち込み

 米国で新聞離れが進む一方、新聞社が提供するオンライン・ニュース・サイトへのアクセスが増加している。活字メディアの代表である新聞が、いつの日にか地上から消え去る日が来るのだろうか。新聞は生き残ると主張する識者の中からは、依然読者の新聞への期待感は根強いとして、新聞の将来性について過度に悲観するのは誤りと指摘する声もある。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 最近、ABC協会は米主要日刊新聞20社の6カ月間(2005年4月~9月)の平均発行部数を発表したが、全体としては、発行部数(日曜版を除く)は前年同期比で2・6%の減少となった。この数字は、1991年以来最大の落ち込みという。新聞離れは今に始ったことではないが、米マスコミは、今回の発行部数の減少を、自分たちを含むジャーナリズムの将来の問題として、大きく報道している。 
 
 20社中、発行部数が伸びたのは、東部の有力紙ニューヨーク・タイムズとスター・レッジャー(ニュージャージー州)の2紙だけ。しかし、NYタイムズの伸び率は0・46%、スター・レッジャーは0・01%とわずかで、残る18社は軒並み発行部数を減らした。特に落ち込みが目立ったのは、米西海岸のサンフランシスコ・クロニクルで16・4%の大幅減となった。 
 
 日曜版も全体で3・1%減少し、早くも新聞経営をめぐり人員の削減や、経営の合理化が行なわれるとささやかれている。全米一の発行部数を誇る新聞チェーン、ナイトリッダー社(本社カリフォルニア州サンホゼ、1974年創業)は、新聞経営の不振による株価落ち込みで、身売りを検討中と報道されている。 
 
 新聞経営者にとっては、発行部数の減少は、広告スポンサーの新聞離れを引き起こし、広告収入の減少につながる。このため米国新聞連合では、ある新聞を毎日読むのは一人ではない。一つの新聞を3人が読むこともあり、この場合、発行部数は3倍になると弁明している。例えば、ロサンゼルス・タイムズ紙の平均発行部数は84万3000部だが、一つの新聞を3人が回し読みすれば、読者数は合計253万部になるとの主張だ。 
 
▽新聞社系サイトのアクセスは急増 
 
 一方、ABC協会の発表後の15日に、米調査機関ニールセン社が新聞社系ニュース・サイトのアクセス者数を公表。10月中のアクセス総数は、1年前に比べ11%増の3930万人に達した。これはネット利用者の4人に1人がアクセスしている計算になるという。また同社では、新聞読者の22%がニュース・サイトにシフトしたと推定している。 
 
 新聞社系ニュース・サイトで人気があるのは、NYタイムズ、USAトゥデー、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズなど。ネット紙は、速報性や、ビデオなど双方向メディアで若者層をひきつけている。また学卒者や高額所得者層にニュース・サイトの利用が目立っている。 
 
 こうしたニュース・サイトの人気を前に、新聞離れが加速していると指摘する声も目立っている。しかし、ニールセン社では、依然10人中7人が新聞を愛読していると述べている。 
 
 カリフォルニア州南部のサンディエゴユニオン・トリビューン紙は、「新聞の衰退を論じるのは早計だ。すべての人がインターネットにアクセスすることはあり得ない。新聞のない世界を想像するのは難しい」と指摘。新聞ジャーナリズムの強みは、その正確性であり、これが現在盛んになっているブログ(電子公開日記)とは異なる点だと強調している。 
 
 今後、新聞社がネット紙に重点を移すのか、現状でははっきりしない。問題はネット紙で採算が取れるかだ。現在は大半が無料。9月からNYタイムズが著名コラムニストの記事などを有料で提供することを始めたが、一部のメディア関係者から、「コラムニストの記事は、これまで幅広く読まれ、世論に影響を与えてきた。有料により読者層を狭めたのは間違い」との声が上がっている。 

by polimediauk | 2005-11-24 22:14 | 新聞業界


 22日付の英デイリー・ミラー紙が報道した、ブッシュ米大統領が、2004年4月、ホワイトハウスでブレア英首相と会談をした際に、カタールの衛星テレビアルジャジーラの爆破計画を口にした、という「スクープ」は、昨日一日中英メディア内をかけめぐった。中東諸国のメディアでも即報道された、ということをBBCの報道で知った。

 当時は、イラク・ファルージャで、米軍が武装集団の攻撃を抑えるのにてこずっていた頃だった。「冗談で、ふとアルジャジーラ爆破を口にした」という説と、「本気だった」という説があることを、デイリーミラーが伝えていた。

 この会談内容は書き取られ、5頁に渡る文書になったという。英内閣府職員が、イラク戦争に反対していた労働党のトニー・クラーク氏に渡した。クラーク氏は、読後、「極秘の書類であり、もし内容が外に出ればイラク駐留の英兵の命に関わる」(BBC報道、おそらくファルージャの攻撃内容が書かれていたためと思われる)と思い、内閣府に書類を返したという。

 アルジャジーラは声明を出し(英語版ネットで読める)、これは後で日本語でも翻訳されるだろうと思う。

 英国内では、この件に関し、昨日二つのことが起きた。

 1つは、法務長官(政府に法律問題のアドバイスをする役目)が、各新聞社の編集長に対し、もしこの極秘書類を印刷すれば、政府機密保持法に違反したと見なす、とし、出版しないように、と警告した。この法律は通常国家公務員に適用され、政府機密を外に出した場合、訴追されることになる。ガーディアン、タイムズなどによると、新聞そのものに対して英政府が出版差止め令をだそうとしたことは過去にあるそうだが、編集長自身が政府機密に関連する書類の出版に関して訴追されたことはない。

 前代未聞のことといっていいのかもしれない。しかし、アルジャジーラの部分が外に出ないように、というよりも、むしろ、ファルージャでの軍隊の動き、攻撃計画など、軍事的にセンシティブな会話があったせいである可能性もある。新聞などが、アルジャジーラの問題に目を奪われているうちに、他の問題が隠されている可能性もある。一つの根拠は、機密文書を手にしたクラーク氏が、すぐに内閣府に書類を返したのは、「中身が外に出たら、イラクにいる英軍に使者が出ると思ったからだ」(先述)といっている点だ。

 もう1つは、メディア戦争で、「かわいそうな」アルジャジーラはこの機会に存分に自分たちの存在をアピールしているようだ。昨晩、ニュース解説番組「ニューズナイト」で、アルジャジーラアラビア語版のロンドン支局長と米政権に近い人物のやりとりが放映された。「メディア機関を爆破しようとするとは、表現の自由はどうなるのか。倫理の問題だ」とする支局長。米側の分が悪いように見えてしまったのは、人選のせいなのか、どうか?

 以下はその時のやりとりの抜粋

―この報道に関して、どう思うか?

フランク・ギャフニー氏(米レーガン元大統領の下で働いていた。現在はCenter For Social Policyのトップ。):この報道が本当かどうかは分からないが、もし真実味があるとしたら、驚くにはあたらない。我々は、自由を愛する人々のためにテロの戦争を行っているし、アルジャジーラは敵のプロパガンダを流し続けてきたからだ。害を中和させるにはどうするか?を考えるのは当然だからだ。

ヨスリ・フーダ氏(アルジャジーラのアラビア語版支局長):問題は、世界で最もパワフルな二つの国のトップが、こういう会話をしていたということだ。罪もないジャーナリスト達を殺そうと考えるなんて、どんな理由を持ってしても正当化できない。殺してしまったら議論は終わる。

ギャフニー氏:問題はそんなことではない。自称「ニュース機関」のアルジャジーラは、カメラやレポーターを使って人々を傷つけるために、敵のために働いている。自称ニュース機関は、アルカイダやビンラーディン、ザルカウイ、人の首を切ること、自爆テロ反の宣伝をしてきたのだ。だからターゲットにもなる。フェアゲームだ。

フーダ氏:プロパガンダをしているのは、そっちのほうだと思う。ブッシュ大統領は世界を二つに分けた。どちらかの側に入らなければいけない、と。でも私達はジャーナリストだ。中立の立場にいたい。それを許さず、こちらの側に入れ、というのはプロパガンダだ。

これは、倫理の問題でもある。

ギャフニー氏:アルジャジーラが報道する内容のおかげで、危険な状況が作り出されている。

―アルジャジーラの報道が嫌いだからといって爆撃するのは、表現の自由を含むイラクの自由化を進めようとしている部分と合致しないのではないか?

ギャフニー氏:爆破計画という報道が本当かどうかは分からない。しかし、自由なイラクを実現する上で、アルジャジーラが邪魔をしてきたのだ。「敵性戦闘員」のような役割をしてきたのだ。イラクの人々も、アルジャジーラが状況を悪化させているといっている。

―アルジャジーラはビンラーディンのテープを流したのだから、自分のやっていることを正当化できないのではないか?

フーダ氏;最初にビンラーディンのインタビューをしたのは米ネットワークだ。他のネットワークもどんどんこれに続いた。タリバンにも十分な放映時間をかつては米メディアは与えていたのだ。アルジャジーラは「もう1つの見方」を伝えることで、世界の目や耳になろうとしているだけだ。

by polimediauk | 2005-11-23 19:16 | 放送業界

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            (アルジャジーラ、ある日のスタジオの様子)

 ブッシュ米大統領が、アルジャジーラを爆破する計画をたてていた、と22日付の英大衆紙「デイリー・ミラー」が伝えたが、その続報として、アルジャジーラの英語版に反論のようなものがでていた。「ようなもの」というのは、オフィシャルにアルジャジーラが反論しているわけでなはいからだ。(何分デイリーミラーがベースにしたのは機密文書の内容を知っているとされる、「英政府筋」の話なのだ。英首相官邸は内容に関してノーコメントだから、正式な反論のしようがない。)

 後でライブドアニュースにちゃんと出るかもしれないが(出ないかもしれないが)、ちょっとだけ続報分を入れておきたい。

 まず英政治家のコメント(通信社PAに寄せたもの)がはいっているが、これに加え、ロンドンに本拠を置く「アル・カズ・アル・アラビ」紙の編集長アブド・アルバリ・アトワン氏のコメントが入っている。

 彼のコメントが、実際にはアルジャジーラなりの反論、言いたいこと、なのだろう。

 「メディアに武力を使おうとする米国の計画の報道に、英米の記者たちは怒りを覚えている」

 「アラブや国際的なメディアは、真実が外に出ないことを望む米国が開始したテロのキャンペーンに参加している」

 「米政権は、非道徳的で非合法なやり方で国を占領し、ばらばらにし、10万人以上を殺し、40万人に傷を負わせたことで、面目を失った」

 「イラク戦争がこのような結果になったので、記者たちは、何故自分たちがだまされたのかと自問している」

 「ニューヨークタイムズは、米政権の目的を正確に調査することができずに、世論を間違った方向に導いたとして、謝罪した」

 「メディア機関に対して軍事力を使うことを考えるとは、自由世界、民主的価値、報道の自由を主導するふりをする国が実行したメディアに対する最悪のテロだと思う」。

 かなり怒っていることが分かる。

 たまたま、人権問題の件で、ロンドンに来ていたアルジャジーラのスタッフに、今夕聞いたところによると、スタッフの間では、「やっぱりな」という気持ちがあるという。実際にブッシュ氏がどう言ったのかは別としても、現政権がアルジャジーラに対して相当の反感を持っていることを、ひしひしと感じるという。
by polimediauk | 2005-11-23 05:27 | 放送業界

 英首相官邸の「極秘資料」によると、ブッシュ米大統領が、昨年、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラの爆破を計画していたが、ブレア英首相に世界中から反感を招くという理由で止められたために思いとどまったという。22日付の英大衆紙「デイリー・ミラー」が特ダネとして報道し、通信社などでも流れた。

 この「極秘資料」は、昨年5月の総選挙の直前、英内閣府で働いていた役人デビッド・キーフ氏が当時労働党議員だったトニー・クラーク氏の下でかつて働いていたレオ・オコナー氏に渡したもの。クラーク氏(総選挙で落選)は書類を官邸に返却。公務員に課される、国家の機密情報保持の法律に違反した、ということで、キーフ氏の裁判が来週ロンドンで開始される。

 デイリーミラーの記事では、極秘資料の内容そのものの情報は、少ない。あくまでも、「情報筋」から聞いたところによると、こうだった、という形をとっている。

 この資料はブッシュ大統領とブレア首相の会話を書き取ったものらしく、5頁に渡るという。会話は、昨年、ブレア首相がワシントンを訪れ、ブッシュ氏と会ったときのものだ。ブッシュ氏がアルジャジーラへの攻撃計画をブレア氏に話したところ、ブレア氏は、カタールの首都ドーハにベースを置くアルジャジーラへの爆破で血みどろの復讐戦が始まる、として、止めさせたという。

 デイリーミラーの情報筋の一人は、「ブッシュはジョークでアルジャジーラ攻撃計画を口にした」と話、もう一人は「本気だった」と述べている。

 首相官邸は、デイリーミラーに対し、「漏洩書類の中身に関してコメントすることはできない」としている。

 デイリーミラーの分析によると、2003年3月のイラク戦争以降、米政府の批判の対象になってきたのがアルジャジーラ。抵抗軍や亡くなった兵士、イラク民間人犠牲者、民間警備会社の話を放映したのが原因だという。テロ組織(「組織」といっていいかどうかは疑問だが)アルカイダやオサマ・ビンラーディンらが、西欧にメッセージを伝えるために使ったのもアルジャジーラだった。

 もしブッシュ氏の計画が「本気」だった場合、以前に、アルジャジーラのスタッフへの攻撃を、米政権は「事故」と言ってきたが、実はそうではなかった可能性もある、とデイリーミラーは続けている。

 例えば、2001年、アルジャジーラのカブール・アフガニスタン支局に米国の2発の「スマート爆弾」が飛んできた。2003年4月、バグダットの中心部にあったアルジャジーラの支局を米国のミサイルが攻撃し、アルジャジーラの記者タレク・アイヨブ氏が亡くなっている。その一月前には、ニューヨーク証券取引所が、アルジャジーラの記者の出入りを、「保安上の懸念から」禁止している。

 最近では、アルジャジーラ特派員のタイシル・アルニー記者がテロに関係していた容疑で、スペインで投獄されたという。

 米政権の反アルジャジーラ観にも関わらず、アルジャジーラは多くの米ネットワークをしのぐようなスクープも多くものにしており、映像を世界の他局に売ることでも利益を得ている、という。例えば、ビンラーディンのテープだと、1分間2万ドルで売れるそうである。

 以上、デイリーミラーの記事から。

 デイリーミラーの書くことがどこまで本当なのかは、?である。話としては、おもしろいし、今日は随分部数が伸びるだろうなあ、と思う。

 しかし、ブッシュ大統領が、「できればアルジャジーラがないと、いい」と思っているだろう事は、ある程度本当らしいようにも思う。つまり、この記事は「本当らしく聞こえる」。
by polimediauk | 2005-11-22 18:28 | 放送業界

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(在英・米国大使館前での、グアンタナモ基地の拘束者釈放を呼びかけるデモの写真。2003年ごろ。オレンジのつなぎのような服は、基地に入ったとき最初にこれを着るようになっていたことから。)

 今、ロンドンで、非人道的な拷問による尋問をやめよう、と呼びかける会議が、21日まで開かれている。人権団体の「アムネスティー・インターナショナル」と「リプリーズ」というところが主催だ。

 目玉は、キューバ・グアンタナモ米軍基地を中心に、拷問を受けながら尋問を受けた人が世界中から集まって、証言をしている点だ。

 グアンタナモ基地というと、データーベースで探すと結構ニュース記事が出てくるので、日本でも頻繁に報道はされているようだ。

 2001年9月11日の米国大規模テロ後、米国は「テロの戦争」を始めたわけだが、アフガニスタンや世界の各地で様々な人々を「テロに関係するかもしれない人」、として捕まえ、2002年1月からは、グアンタナモ基地に送ってきた。現在は500人以上が拘束されている。

 英国ではかなり報道されてきたニュースなのだが、それは、英国籍の男性たちも拘束されてきたからだ。家族や人権団体がアピールを行い、何年もかかって、ようやく英国籍の9人が帰国している。長い人では3年半も拘束されてきた。現在、全員が無実となった。(一度も有罪になってはいないのだが。)

 グアンタナモ基地は国際的にかなり悪名が高い。拘束された人は、容疑が確定せず、弁護士の接見も長い間許されなかった。また、戦争捕虜ではなく、「敵性戦闘員」とされたため、捕虜の人権を守るジュネーブ条約も適用されなかった。そこで虐待や拷問疑惑が出た。

 実際のところ、虐待や拷問といっていい状態があったことが、少しずつ釈放された人の話から、分かってきた。

 結局、テロとは関係ない人が、突然捕まり、数年の苦しい拘束生活の後、国に戻された、という展開になった。(検索すると、かなりいろいろネット上で出てくると思う。)

 今回の会議では、英国籍の元拘束者9人全員が、初めてそろって報道陣の前に姿を見せた。(といっても、二人は会場の隣の小部屋から、マイク出演のみ。一人はビデオ出演。)互いに、初めて会った人同士も、いた。

 初日は英国籍の元拘束者が語り、二日目の今日は、ロシアの人、カナダの人の証言があった。「拷問は、経験した人でないと、絶対分からない」と、最初の頃の拷問の様子だけを話したカナダ人の証言に、会場は静まり返ったようになった。
 
 夕方、今日の日程が一通り終わると、元拘束者たちが一堂に集まり、主催者側が記念撮影をしていた。楽しそうに中央に集まって言葉を交わす元拘束者もいれば、輪には入らずに、じっと見守っている元拘束者もいた。

 英国籍の拘束者の一人、マーティン・ムガンバさんが、全員に囲まれて、中央に立った。つらい拘束を乗り切るために、よく詩を作ったという。詩といっても、ラップミュージックの歌詞だ。特に、看守の反感を買って独房に入れられたときには、「よく良い詩ができた」という。カメラのフラッシュがたくさんたかれる中、ムバンガさんはラップを歌い、歓声を浴びた。

 楽しそうな様子に心温まるのを感じながらも、他の気になる点もあった。

 それは、今目の前にいる、無実の、若いイスラム教徒の男性たちは、何年もグアンタナモ基地で拘束を受け、中には立つことができなくなった人も、一切外に出ることができなくなった人もいる。しかし、一方では、外見を見ただけでは、非常によく似たようにおそらく見えただろう、若いイスラム教徒の男性4人が、ロンドン・テロを企て、7月7日、実行に移してしまった。

 何という、皮肉なことだろう、と思う。無実の人は捕まり、テロを起こす人は何の網にもひっかからずに計画を実行して、50数人が命を落としたとは。

 会議が終わり、帰るため、地下鉄のリバプール・ストリート駅まで戻ると、改札口には、かなりの数の警察官が立っている。おそらく、注意を払ってみているのは、若いイスラム教徒風の、肌の色の黒い男性たちだ。テロ行為をしようなんて全く思っていないイスラム教徒の男性たちにとっては、ターゲットにされたようで、いやだろう。しかし、かといって、一体どうしたらいいのだろう。7月のロンドンテロの犠牲者の家族は、どう考えるだろう?

 最終日は中東諸国からの元拘束者の証言がある。
by polimediauk | 2005-11-21 07:28 | 英国事情