小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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フランスの暴動の背景を書いたブログを、翻訳家の中野真紀子さんという方が、ホームページ上で翻訳している。

http://www.k2.dion.ne.jp/~rur55/J/Others/WhyIsFranceBurning.htm

http://www.k2.dion.ne.jp/~rur55/home.html

興味のある方は、是非ご覧になっていただきたいが、やはり、ルポものは、その場の雰囲気がよく分かって、参考になるようだ。
by polimediauk | 2005-11-20 10:50 | 欧州表現の自由

 英高級紙の中で最大の発行部数を誇る「デイリーテレグラフ」紙のマーティン・ニューランド編集長が、18日、11月末で辞職をすることを明らかにした。

 代わりが見つかるまで、今月初旬、タブロイド紙のデイリーメールから来たジョン・ブライアント氏が仕事を引きつぐ。

 辞職の動機は特に明らかにされていない。ニューランド氏は、テレグラフの前の所有者だったブラック卿(収賄罪に問われている)のお気に入りの一人。しかし、新所有者のバークレー兄弟に嫌われていたわけではない。ガーディアン紙がまとめた情報によると、テレグラフの経営陣がニューランド氏を素通りして編集チームの人事を行っていたことが一因のようだ。特に、デイリーメールからのブライアント氏をeditor-in-chiefとして雇ったので、新任のブライアント氏の下になることに耐えられなかった、とも言われる。ところで、通常、editor-in-chiefは編集長と考えていいと思うが、例えばニューランド氏はeditorという役職名になっている。両者は同じ意味だとは思うのだが・・。そこで以下につながっていくのだが、エディターとエディター・イン・チーフがいることになったため、編集部内でも、この二人の役割の違い、一体どっちが自分の上司になるのか、混乱があったという。

 ニューランド氏がテレグラフのエディターになったのは、2003年の10月。この間の2年で、発行部数は91万部から90万部に落ち、1・37%の下落となった。しかし、この数字は決して悪いほうではないようだ。この間、インディペンデント紙やタイムズ紙がタブロイド判になり、大幅に発行部数を伸ばしている。ガーディアン紙も細長いベルリナー判になって、人気を集めたからだ。不正会計疑惑からブラック卿が去り、バークレー兄弟という新しい所有者を迎えた中、スタッフの中でもかなりの不安感が高まったと報道されてきた。大判サイズのままで発行を続けるテレグラフ。ブラック卿が多額の資金を私的に流用していたため、テレグラフにはお金がなく、レイアウト刷新への十分な資金がない、とも言われてきた。波乱万丈の2年の舵取りをしていたのが、ニューランド氏だった。

 多くのテレグラフ紙のスタッフにとっては、驚きだったようだ。

 ガーディアンは、新しいエディターの候補者として数名をあげているが、その中に、現在インディペンデント紙の編集長サイモン・ケルナー氏の名前もあった。部数下落に苦しんでいたインディペンデントを小型タブロイド判にして、部数を大きく伸ばした人物だ。まさかとは思うが・・・。

 フランスの暴動の一連の報道で、テレグラフの記事が光っていた(知りたいことが全部書いている、かゆいところに手が届くような)ように思っていたが。
by polimediauk | 2005-11-19 02:52 | 新聞業界

 テロの資金の流れを書いた「Terror Inc.」という本をかつて出し、小説も書くというイタリア人の作家、ジャーナリストのロレッタ・ナポリオーニLoretta Napoleoniという人が新刊を出した。ヨルダンでの同時爆弾テロで急激に注目を浴びている、イラクをベースに活動をしていると言われるヨルダン人テロリストのアブムサブ・ザルカウイ容疑者について書いた本だ。タイトルは「Insurgent Iraq—Al Zarqawi and the New Generation(仮訳 反乱分子 イラクーアルザルカウイと新世代)だ。

 16日、著者の会見がロンドンであった。

 本はもらったが、最初の数ページを読んだだけなので、内容を正確に書くことはできないが、会見で出た話を、少し拾ってみる。

 「私は特にイスラム過激派の専門というわけではない。どちらかというと、テロのお金の動きとか経済関係をよく知っていた。あるテレビのドキュメンタリー番組を作ったことがきっかけで、この本を書くようになった」

 「ザルカウイ容疑者1966年生まれ。貧しい環境で育ち、16歳で学校からドロップアウト。性的暴行の罪で、刑務所に入る。その後、結婚。ジハードに関してロマンチックな思いを抱き、ひかれてゆく。1980年代後半、アフガニスタンに。政治をよく理解できず、戦闘にも参加できず(一説には、彼が戦闘に加わったという話もあったが、著者はこれを否定。アフガニスタンでは、ある団体で事務職員をしていた、という。)1991年から92年ごろは、ヨルダン政府の転覆を狙う。また投獄され、このとき、変化を遂げる。イスラム教過激思想への心酔か?」

 「2000年に、オサマビンラーディンに初めて会う。当初、ザルカウイ容疑者は、ビンラーディンに特に強い印象を持たなかったらしい。」

 「2004年、ファルージャで、米軍とイラクの抵抗勢力とが激しい戦いをしたとき、戦いの前後にファルージャにザルカウイ容疑者はいたけれども、戦闘があった時期には、ファルージャにはいなかった。戦ったというのは、伝説だ」

 「アンマンのテロはヨルダン政府転覆を狙う。自爆テロを告白した女性は、おそらく、直接はザルカウイ容疑者を知らないと思う。いかにもこのテロのやり方が彼らしい。いつも外国人をテロ犯に使う。ビンラーディンはヨルダンには興味がない」

 「イラク人をテロ犯に使うのは、安い。爆弾が国中にたくさんあるからだ」。

 「ザルカウイ容疑者は、新世代のテロリスト。ビンラーディンとは目指すものが違う。社会的なあるいは政治的な目的があるというわけではない。ヨルダン政府を倒した後は、自分たちの意にそう宗教的国家を作りたいと考えているだけだ」。

 この本の最初にある解説文から、若干とると、

 「ザルカウイ容疑者は、ビンラーディンなどの年長のリーダーたちに挑戦する、若く、教育程度が前の世代よりも低く、政治的意思の希薄な世代を率いている」。

 イラクで人質を捕まえ、仲間や自分の手で人質の首を切り、これをビデオ映像にして流す、ということをザルカウイ容疑者はやった、といわれているが、この残酷さにはわけがあって、世界中のイスラム教徒に向けて、「ここまで自分は覚悟している、ということを示すため、という理由があった。もう1つは、テログループの中でも仲間内の覇権争いがあって、例えばビンラーディンの向こうをはって、ここまでできる、という部分があった」としている。
by polimediauk | 2005-11-17 09:57 | イラク


「一体いくつもの履歴書が、ゴミ箱に捨てられたろう?応募者の名前や住所だけで?」

c0016826_5583315.jpg 先ほど、フランスのシラク大統領が、2週間以上続く国内の暴動を止めるため、テレビで国民に語りかけた。放映時は見逃してしまったが、BBCオンラインで読んでいると、鳥肌が立ってくるような思いだ。フランスの人からすれば、たいしたことがない、可能性もあるが、それぞれ、それなりの思いをもってテレビにかじりついたのではないだろうか。

 何故これほどまでに暴動が広がったのか?ずっとそれを考え続けてきた。パリ郊外や他の低所得者用住居が建ち並ぶ地域では、移民たちやその子孫が住み、人種差別や教育の不足でなかなか仕事が見つからない、これではいくらフランス国籍をもらっても、実質的に、社会の本当に一員として認められていないことになるのではないか?今回の一連の事件を通して、そんなメッセージが何度となく伝わってきた。

 1968年の、学生を中心とした反体制運動の時のような、政治的な目標がある暴動ではない、宗教的な目的があるわけでもない・・・ということも、何度となく、様々な報道を通して聞いた。移民の(といってもフランス国籍)若者たちが、差別、失業などの不満を、車両に放火して気を晴らしている、「社会のくず」と言われて、頭にきている・・そんなことが理由だと聞いていたが、しかしそれでも、いくらなんでも、どうして毎日のように、何百台もの車両に火がつけられているのか?フランスにいないと、どうしてもピンとは来ない部分があった。

 今回のスピーチで、シラク大統領は、移民たちが差別を受けてきたことを認めるようなことを言っている。そして、失業者たちを助けるようなトーンのことも、言っているようだ。これが実際にどこまで本気なのか、私にはすぐには分からないが、何となく、これまでのトーンとは違うのではないか?(フランスにいる人から聞くしかないが。)

 もし、言葉どおりに受け取るならば、「何の政治的目標もなく、放火している」と解説されてきたけれど、最終的には、何らかの(若干の)政治的目的を果たしたことになるのだろうか?放火、暴動、という行為を通して、自分たちが差別されていること、職が必要であること、が政治家側に伝わった、ということなのだろうか?最初は、警察官の数を増やすとか、時には催眠ガスを使うなどといった、タフなやり方に力を入れてきたのが、既にドビルパン仏首相が支援策を出していたものの、こういう形でシラク大統領から移民に対する策を発表する、ということは、戦略を変えた、ということなのか?

 この結果の意味が分かるには若干時間がかかるかもしれないが、欧州の移民問題で、何かが変わりつつあるのだろうか?

 以下はBBCオンラインから。

シラク大統領、暴動を終結させるために新たな誓い

シラク仏大統領は、都市部での暴動が再発するのを防ぐため、若者たちに就業の機会を与えることを約束した。10月末に暴動が始まってから最初の主要なスピーチとなった。シラク氏は、「アイデンティティーの危機」について言及した、という。

人種差別の「毒」を非難し、2007年に、5万人の若者に就業のための研修を行うと、した。また、法と秩序を守り、暴徒を裁き、非合法に滞在している移民をなくする、と述べた。

 フランスとEUの旗の前で、フランス国民に向かってテレビを通じて話しかけたシラク氏は、一連の暴動は、フランス社会の中の「深い病気」にスポットライトをあてた、とした。「差別があることに、私たち全員が気づいている」とし、若者に働く同等の機会を与える必要性を呼びかけながらも、米国で採用されているようなクオーター制の導入は否定した。

「一体いくつもの履歴書が、ゴミ箱に捨てられたろう?応募者の名前や住所だけで?」

「多くのフランス人が困難な状況にいる。しかし、暴力は何も解決しない。フランスに所属するならば、フランスのルールを守らなければならない」。
by polimediauk | 2005-11-15 05:59 | 欧州表現の自由

「永遠に外国の軍隊がいることを望んでいるイラク人は誰一人いない」

 BBCオンラインが13日の早朝伝えたところによると、イラクのタラバニ大統領が、在イラク英軍が来年末頃には撤退し、イラク軍に仕事を引き継ぐことができるだろうと述べたという。しかし、今すぐの撤退は、「破滅」の道になり、内戦になると、英ITVの政治番組の中で述べた。このインタビューは、英時間昼の12時40分ごろ(日本時間夜9時40分頃)から放映される。英軍の撤退時期に関しては、これまでにも様々な説が出されているが、状況が刻一刻と変わっているので、どれが最終的に正しいことになるのか、予断を許さない。しかし、イラクの大統領が現状をこのように把握している、ということが分かったという点で、重みがあるコメントだ。
 
 「イラクに永遠に外国の軍隊がいることを望んでいるイラク人は誰一人いない」としながらも、現時点で撤退時期の詳細に関して英政府と合意しているわけではなく、「現状を見ての推察だ」と述べた。「英国民が、軍隊を撤退させることを希望していることは、了解している。自分たちの息子が帰ってくることを要求する十分な権利を英国民は持っている。特に、主要な任務、つまり独裁政権を倒す、ということをやり終えているのだから」。

 タラバニ氏は、段階的撤退を望むと述べた。

 また、12月の選挙に向けて、暴力行為が増加することを認め、イラク戦争とロンドンの7月の同時テロの関連性はない、とした。後者のコメントが気になる。というのも、英政府は、イラク戦争とロンドンテロが関係していない、としているからだ。しかし、果たしてイラク戦争がロンドンテロの直接の引き金になったかどうか?に関しては、「直接」とまでは言わなくても、心情的なファクターだったのではないかという見方は英国では定説になっているといってもいいと思う。「直接的引き金となった」とする説も有力である。しかし、英国で生まれ育ったテロ犯たちが、イラク戦争に関して、ある意味では、勝手にシンパシーを感じ、テロを起こした、という部分があるであろうし、英国側からすると「何らかの関係・影響はあっただろう」という見方が大方になってはいても、イラク側からすると「関連はなかった」とするのが、真実に近いということになるのだろう。

 ・・ややこしい説明になったが、いやだなあと思ったのが、イラクの大統領が「関連性がなかった」というと、ブレア首相やストロー外相が、「ほら、関係なかった」という文脈でこれから発言をしていく可能性が高く、結局、大統領のコメントが英国の文脈の中で「使われるだけ」になってしまうのが見えるようだったからだ。

 また、もちろん、英国民にとっては、英兵がイラクから帰ってくる時期が分かるのは、大きなニュースだ。今日・明日はこのニュースがかなり繰り返して報道されるだろう。今日13日は、リメンバランス・サンデーのセレモニーがある。戦争で命を落とした兵士を追悼する日だ。英国のあちこちで、市民たちが集まり、平和の行進をし、2分間の黙祷をする。http://www.bbc.co.uk/religion/remembrance/history/ タラバニ大統領のコメントの一部が繰り返されている背景には、リメンバランス・サンデーの儀式がある、という要素も影響しているのだろうか?戦争で犠牲になった人に対し、英国民の多くが思いをはせる日である。



 
by polimediauk | 2005-11-13 18:33 | イラク

News Xchange 会議の閉幕


想像力をどれだけもてるか?

 アムステルダムで開かれていた、世界の報道ジャーナリスト、編集者、製作者たちの会議(世界のといっても、欧米、中東それに少しのアジア)が、二日間の予定を11日終えた。

 印刷メディアで参加していたのは、英国大手メディアではガーディアン紙だったが(出席者リストを見る限り)、ガーディアンにでている記事を読むと、心底驚かざるを得ない。果たして同じ会議に出ていたのかどうか、頬をつねりたくなるぐらいだ。書いた記者に同情して言うと、おそらく、「こういうのが欲しい」というのが会社側からあるのだろう。それにあわせているのだろう。どんなことが話し合われたか、議論がどんな風に進んだか、全体としての特色がどんなだったか、・・・といったことは、基本的には書かれていないし、最初から書こうともしていないのだろうか。

 では、何が書かれているか、というと、まず英メディアで話題になりそうなテーマに沿った言い回し、コメントを見つける。これにあわせて書かれたように、見える。自分の会社のデスク向けに、あるいは英メディアのほかの新聞向けに書かれたようで、一般読者のことはあまり眼中にないようだ(・・に、見える)。

 「目立つ見出しになるような記事ばかり書いている」(あるいはテレビがそういうストーリーばかり報道している)「分析が少ない」「真実が何であるか?に関しては注意が払われていない」という批判が、英メディアに関してなされてきていた。これをはじめて身をもって体験したような思いだ。結果的に、書いた記者が、まるで片目、あるいは片耳をふさいでいたかのような原稿内容になった。24時間ニュースを提供しなければならない状況にあると、こうならざるを得ないのだろうか?

 今回の会議で目立ったのが、英米メディア(英米、CNN,BBCなど)の想像力の限界だったように思う。

 例えば、中国の報道であり、イスラム教の扱いである。「中国は、人権じゅうりんのひどい国だ」、という前提が、欧米メディアは頭からどうしても消えないようなのだ。アラブ・イスラム教国の大手・著名テレビ局に、「女性のレポーターはいますか?」と聞いた英米系のメディアもあった。(国にもよるかもしれないが、この時代に、女性が全くいない世界のテレビ局はほとんどないのではないか?何とアナクロだろう。アラブ・イスラムの国のテレビ界だから、遅れている、とでもいいたいのだろうか?)

 どこのメディアも完璧ではないとは思うが、常に、「自分の報道が・考え方が、ひょっとしたら間違っているのではないか?ひょっとしたら、違う見方もあるのではないか?全く分かっていないこともあるのではないか?」という、自分を疑う姿勢が重要に思えてならない。英語メディアの世界に対する影響力は強いので、英語メディアはイコール、自分たちが世界だと思ってしまうのかもしれない。

 自分自身にも、ステレオタイプはあるし、こういうステレオタイプが何が起きているのか?を判別できなくすることもあると思う。

 それぞれのメディア・報道機関が、思い込みやステレオタイプからどれだけ自由でいられるか?が試された気がする会議だった。自分が思いこみをしているかもしれない・・・という想像力さえもないようには、ならないようにしたいものだ。国が違えば、ひょっとしたら、同じ物事でも全く違う文脈があるのかも・・・という部分は持ち続けたいし、自分を疑う気持ちを忘れないようにしたい、としみじみ感じた。(会議の内容は、このサイト上か日刊ベリタかに出す予定です。)

 
by polimediauk | 2005-11-12 07:24 | 放送業界

NewsXchange 会議開催へ

 世界のテレビ業界から人が集まり、友好をかねながらも、放送業界の将来に関して意見交換する会議、News Xchange、が、10日と11日、オランダのアムステルダムで開催される。

 今回の出席者のリストを見ていると、場所柄か、欧州メディアとアラブ・中東地域のメディア(アルジャジーラも含め)が多いようだ。日本からも、NHKの方がどなたか、いらしているようだ。

 11日には、イスラムをどう報道するか?というタイトルの議論があり、これを最も楽しみにしている。

 先ほど起きた、ヨルダンでのテロの話で、明日はもちきりになりそうだ。

 http://www.newsxchange.org/agenda.html  
by polimediauk | 2005-11-10 07:11 | 欧州のメディア
c0016826_1743281.jpg今朝、BBCの朝のニュース番組「TODAY]を聞いていたら、フランスの極右派と呼ばれる、ル・ペン氏のインタビューがあった。英国人のキャスターが質問をして、彼がフランス語で答え、ボイス・オーバーで英訳が入る、という形。

ル・ペン氏は、今回の一連のフランスの暴動が、大量な移民の流入を許したからだ、としている。個々の移民が悪いというよりも、フランスの過去の政治家が悪い、と。

そして、こういう若者達からは、フランス国籍を剥奪するべきだ、とも述べた。

英国側のジャーナリストは、「親の世代が北アフリカから来たかもしれないが、若者は既にフランスで生まれ、フランス国籍。どうやって、国籍剥奪のようなことが可能になるのか?」と聞くと、「法をおかしたら、何らかのペナルティーがあるのは当然だ」という。

「こういう暴動が起きるのも、移民の若者の間で失業率が高いなど、社会的経済的要因があるからではないのか?こうした要因を取り除くのが先決だとは思わないか?」とジャーナリストが聞く。また、「英国でも同様の暴動が起こる可能性はあると思うか?」と聞き、ル・ペン氏は、「ありうると思う」と答えている。

もう一度後で聞こうと思うが(ウエブ上から、再度聞くことができるので)、ル・ペン氏の発言内容の解釈は別として(こちらのほうが重要なことではあろうが、他の点が気になったので)、英国の論理、英国の考え方、英国ジャーナリストの決まりきった質問の仕方で、フランスの現状が分かるかなあと、思っている。

フランスと英国(そしてオランダなど)の移民の状況が違うのか?どんな背景要因が違うのか?これを今もう少しはっきりさせたい、と思っているが、英国ジャーナリストのフランスの状況に関する質問の仕方、質問の前提などを、これまで聞いていると、この特定のジャーナリストに限らず、紋切り型多く、疑問を感じている。

「フランスで移民が中心の暴動があった」、「背景は社会的・経済的要因」「だから、社会的・経済的要因を直せば良い、直すべきだ」「どうして、今まで何もしなかったのか?」・・・という論理の流れだ。(「簡単なことじゃないか、どうしてしないのか?」という声が聞こえてきそうだ。)

フランスの外にいれば、こういことを指摘するのは、たやすいのではないか?しかし、中に入ると、なかなかうまくできない、という部分があるのではないだろうか。どうも、いろいろな物事を簡単に考えすぎているような気がしてならない。

英メディアを通して、フランスの暴動の様子を追っているわけだが、これだけで、ちゃんと状況が分かるだろうかなあ?と、今、一抹の不安がある。イスラム教の話にしても、英メディアだけを見ていると、意外とたよりにならないなあ、と思ったことが何度か、ある。

以上、雑感めいた話になったが・・・。
by polimediauk | 2005-11-09 17:40 | 欧州表現の自由

FTが新たな編集長を


電光石火の交代劇

 11月3日の朝、急遽、ファイナンシャル・タイムズの編集長が交代したニュースが伝わった。2001年から4年間編集長だったアンドリュー・ガウアーズ氏(48歳)が「戦略上の意見の相違」から辞職し、代わりにFTの米国版の編集責任者ライオネル・バーバー氏(50歳)が新編集長に。経営陣との「戦略上の意見の相違」というのが何だったかを、FT側は公表していない。ガウアーズ氏が、何らかの形でFT紙を買い取る、という噂もあった。

 ガウアーズ氏はFTに22年勤め、FTドイツを立ち上げた人物。有料オンラインサイトにかなり力を入れ、成功させていた。この4年間、発行部数の伸びは残念ながらよくなく、FTを所有するピアソン社がFTを売却するのではないか、という噂は絶えなかった。2001年の9月で平均発行部数は約47万8000部だったが、今年の9月には42万4000部に落ちていた。FTは英国以外での販売部数が大多数を占めるので、何とか国内の部数を増やそうと、国内の地方企業やトレンドを書いた記事を増やしたり、その時々のトピックの分析を1面全体を使ってやるなど、様々な試みを続けてきた。損失が続いていたものの、今年に入ってからは、やや上向きになってきていた矢先の編集長交代だった。ピアソン社の株価は5月以降、マスコミ業界の平均株価と比較して7%ほど下だった(ガーディアン紙)。

 2001年、ガウアーズ氏と編集長職を争ったのがロバート・トムソン記者で、彼は後、タイムズの編集長となっている。2002-2003年ごろ、FTの記者から聞いた話によると、編集スタッフの間では、ジャーナリストして有能なトムソン氏を支持する声が高かったそうだが、最終的には、「収益を上げられる人」ということで、ガウアーズ氏を経営陣が選んだ、という。噂レベルの情報だが、トムソン氏のジャーナリストとしての力量は、他のところでも時々聞いた。ロンドンの外国プレス協会でのスピーチで、ガウアーズ氏が有料サイトで収益をあげたいと力説していたのを思い出す。実際にこれは成果をあげたようなのだがーー。競争が激しいとされる英新聞業界での電光石火の人事の流れを垣間見たように思った。

 新編集長のバーバー氏はオックスフォード大学出身。ドイツ語と現代史を専攻。1978年からジャーナリズムの世界に入り、「スコッツマン」紙で働き始め、1981年にはサンデータイムズ紙、1986年からFTで働いてきた。ジャーナリスト肌の人物が編集長になった、ということのようだ。父親も兄弟もジャーナリストだった。

 ガーディアンの3日付の記事の中で、10年前にバーバー氏と働き、現在はオックスフォード大学ビジネススクールで教鞭をとるチャールズ・レッドビーター氏は、バーバー氏は生粋の新聞記者、という。同時に、社会的スキルにややかけるところもあり、例えば「いつもシャツの裾がズボンからでていた」と述べている。
 
 バーバー氏はFT紙上で、正確で信頼でき、思慮深い新聞、紙とネットで金融情報を提供する世界の新聞を作り続ける、としている。
by polimediauk | 2005-11-07 08:23 | 新聞業界

近況


本音を言わない、という縛り

c0016826_11115993.jpg

(11月2日の朝、アムステルダムで開かれた、テオ・ファン・ゴッホ監督の死後1年の追悼式に飾ってあった新聞と花)


(随分更新がなくて、すみません。オランダ・アムステルダムに行っていたのですが、ワイヤレスを使えるところがすぐに見つからず、日本語ソフトが入っている自分のPCが使えず、更新を断念しました。)
(アルジャジーラや他の点でコメントを残してくださった方、ありがとうございました。きちんと返事を書きますので、少々お待ちください。)


 オランダ・アムステルダムに月曜から行って、先ほど戻ってきたところだ。「英国メディアウオッチ」としながらも、しつこくオランダに関して書いているので、タイトルを変えた方がいいのではと思われる方もいらっしゃるかもしれない・・・・。英メディアに関しても追って書いていきたいが、今回アムステルダムに行ったのは、映画監督ファン・ゴッホ氏のイスラム教徒による殺害から1年経ったので、表現の自由や付随した要素がいかに変わったか、あるいは変わっていないかを、間近に見ることが目的だった。

 殺害場所で行われたセレモニー、アムステルダム市長が開催した市民の集まり、監督殺害のきっかけとなった短編「服従」の脚本家で政治家のヒルシ・アリ氏が出席したイベントなど、できる限りのところに足を運んでみた。(しかし、さらに行きたい場所が増えていくのだが。)

 レポートはオンラインの日刊ベリタというところに書く予定だが、今日の時点で、1つ気になったことを書きたい。

 それは、オランダ人(イスラム教徒、あるいは移民ではなく、先住の白人のオランダ人)が、まだまだ本音を言っていないな、ということだ。

 自分自身がオランダ人でなく、事件の渦中にいずにして、無責任なことを書くようだが、この点から、どうしても目をそらすことができない。

 つまり、(先住の)オランダ人たちは、イスラム教徒の住民に対して、漠とした不安があって、どことなく、いやだなあ・・・という感情があるようだ。個々の隣人であるイスラム教徒の人たちに関してどうのこうの、というわけでなくても、「イスラム教徒」に対する、漠とした嫌悪感。嫌悪感、というのが強い表現だとすると、どことなく、いやだな、という感情。民主的でない、とか、男性が女性を不当に扱っているとか、女性に黒い装束を着させている、とか、いろいろ理由をつけて、この「獏とした不安感、嫌悪感」を正当化しているが、本音のところは、「何となく、いや」「嫌い」「不安」「分からない人たち」などの思いがあるようだ。

 そして、こうした感情を、表に出すのは、「正しくない」と考えていること。だから、新聞のコラムニストなどを除くと、通常の市民は公の場では、「正しくないこと」「言ってはいけないこと」は、いわないようなのだ。つまり、本音を言わない。

 問題は、この、本音を言わないことへのプレッシャーがものすごく強いことだ。他の事は別にしても、イスラム教徒に関することになると、強い自主規制が働いているようだった。

 この自主規制の様子は、はたで見ていて可愛そうになるぐらいだった。

 何故イスラム教徒の批判やいやだなあという感情を公の場で言ってはいけないと、人々が思うのか?

 いろいろ理由はあるだろう。1つには、イスラム教徒からの報復(があると、想像しているだけなのかもしれなくても)が怖い、と。また1つには、ある人種や宗教に対する否定的感情は基本的には胸にしまっておくもの、と考える部分もあるかもしれない。つまり、PC=ポリティカル・コレクトネス、あるいは、とにかく「そういうもの」。さらに、ここからが私の推測になるが、リベラル、様々な価値観を認める、ということでやってきたオランダで、そういう点に関して自負してきたオランダで、自分とは異なる習慣や宗教を持つ人々に対する、漠とした不安感、漠とした嫌悪感がある自分は、リベラルではない、不寛容、ということにもなってしまう。自己否定になってしまう。それよりなら、胸にしまっておいたほうがいい、と思うのか?

 ・・・と書くと、なにやら論理が飛んでいるようで、え?と思われるかもしれないが(書き方が、消化不良のような感じで申し訳ないが)どうもそのようなことを感じて、帰ってきた。

 誰しも、いやな自分を認めたくはない。人に嫉妬を抱いたり、ある特定の人種や宗教に対して偏見を持っている、獏とした嫌悪感を持っているということを、公の場で認めたくはない、と思うのも、一定の理解はできる。

 しかし、きれいごとで、「統合をもっと進めましょう」「みんなで仲良く」「隣人ともっと話をしよう」といった文句ばかり聞かされると、本当に、「言うべきでないことは、言わないようにしよう」という決意のようなものまで感じられ、かなり息苦しいことになってきたなあ、と思った。

 フランスで移民の暴動が続き、英国でもバーミンガムで移民が関わる騒ぎが起きている。

 今に始まったことではなく、今回のフランスと英国の出来事が特別何かを表しているわけでもないのかもしれないが、常に何らかの対立、衝突がおきそうな、そんな要素が今、欧州全体で、イスラム教徒の移民とその他の市民との間で、起きていると思う。

 オランダで、極右派とされる政治家ウイルダースという人が、イスラム教徒の批判をしてきたので、厳重警護下にあり、もしかしたら、今でも刑務所に住んでいる。最高にセキュリティーの高い場所を考えたら、刑務所しかなかったのかもしれない。

 それにしても、いくらなんでも、刑務所とは。

 これはやっぱり、異常な状況、と言わざるを得ないだろう。

 今日の夕方会ったムスリムの人に、「でも、いつかは、きっと、丸く収まっていくでしょう。・・そうなって欲しい、と願っています」といわれたのが、心に残った。

 
by polimediauk | 2005-11-05 11:31 | 欧州表現の自由