小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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イラク人質 救出の努力


テロ容疑者が呼びかけに協力?

c0016826_1975752.jpg イラクで人権活動団体の米、英、カナダ人メンバー4人を「正義の剣旅団」を名乗る組織が人質として拘束している。8日までにイラクの刑務所にいる囚人を釈放しなければ、人質を殺害する、としていたが、この期限は48時間のびることになった。

 しかし、英政府や関係者の中で、衝撃が走ったのは、犯行組織が、英国人の人質ノーマン・ケンバーさんらにオレンジ色のつなぎを着せ、「英国軍をイラクから撤退させてほしい」と言わせているビデオを、アルジャジーラに送り、これが放映された点だ。

 オレンジ色のつなぎは、米軍グアンタナモ基地に拘束されている「テロ容疑者たち」がかつて着せられたものをほうふつとさせる。そして、このようなつなぎを着せられた英国人ケン・ビグリー氏は、昨年9月誘拐され、翌月、犯行グループに首を切られて殺されている。

c0016826_1983139.jpg ケンバーさんのオレンジ色のつなぎ姿はショックだったが、もう1つ、英国民が驚いたのは、「非常に危険なテロ扇動者」「アルカイダの欧州の伝道師」とされ、現在英国の厳重警備の刑務所に拘束されている、ヨルダン生まれだが英国に長年住んできたアブ・カタダ氏が、犯行グループにアラビア語で、人質解放を呼びかけた点だ。既にヨルダンではテロ容疑で有罪となっており、ヨルダン送還の可能性もある、という状態だ。

 BBCの7日の解説番組{ニューズナイト」によると、カタダ氏自身が、政府側にコンタクトをとり、呼びかけをしたい、と言ったそうである。

 しかし、果たして刑務所に入っている人物のメッセージをこのような形で利用していいのかどうか、前代未聞だ、と驚く声が、同番組内であげられた。

 英政府はテロ組織とは人質解放に関して交渉をしないことを明言しているが、コンタクトの糸口が全くないので、何らかの形で英外務省にコンタクトをとってくれることを望んでいるという。

  kanakottonさん という方から、「CPT メンバーの解放を求める緊急署名のお願い」のサイトがあることを教えていただいた。ご参考までに。

  http://www.petitionspot.com/petitions/freethecpt
by polimediauk | 2005-12-08 19:08 | イラク

 米CIAが、テロ容疑者を海外にある秘密収容所に送り、拷問をしているのではないか?という疑惑が、一月ほど前から、表にでるようになった。

 こうした収容所の一つは東欧諸国、例えばポーランドに送られた、という報道もあった。ポーランドの大統領はこれを否定。

 問題は、CIAは英国を初めとして、西欧諸国の飛行場を通って、東欧や他の国に容疑者を送っている可能性があり、西欧諸国の政府が「事態を知りながら、米国に協力していた」可能性が高い点だ。

 そうすると、責任を問われるのは、米国だけでなく、英国、ドイツなどの政府でもある。

 ライス米国務長官が訪欧するにあたり、この問題が話し合われる可能性があったが、BBCオンラインの報道によると、ライス氏は、ドイツに向かう直前、米政府がテロ容疑者を移動させていることは認めたものの、CIAが拷問用の秘密収容所を運営しているかに関しては否定。(今現在。)http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/americas/4499648.stm

 先に、英ITVなどのレポーターが予測していたのは、ライス氏は、「おそらく否定するだろう」。しかし、「細かいところまでは立ち入らないようにするだろう」と。

 容疑者の送致の詳細に関しては、ライス氏は語らずだった。理由は、インテリジェンス上、軍事上などの機密を守るためらしく、「他の国もそのように解釈していると思う」と語っている。

(時事の参考記事を以下に)

2005/12/05-07:38 時の言葉「秘密収容所疑惑」
 米紙ワシントン・ポストは11月初旬、中央情報局(CIA)が国際テロ組織アルカイダのテロ容疑者を拘束・尋問する秘密収容所が東欧諸国に存在すると報道。東欧諸国は疑惑を否定しているが、米側は収容所の有無について、公式には肯定も否定もしていない。
 その後、CIAがテロ容疑者を第三国へ移送するため、目的を説明せずに欧州各地の空港を使った疑惑も発覚。欧州連合(EU)が米側に説明を求め、収容所を設けた加盟国に対する人権違反での制裁論も噴き出すなど、米欧間の外交問題に発展している。(了)

by polimediauk | 2005-12-05 22:17 | 政治とメディア

 Desert Island DiscsというBBCのラジオ番組がある。著名人の一人を招き、もし砂漠に取り残さるとしたら、どのレコードを持って行きたいか?を聞く。選択した音楽を聴きながら、その人の人生を振り返る。

 2日のゲストは、長らくBBCのニュースキャスターだったデビッド・フロスト氏(11月27日放送分のリピートだった)。フロスト氏は、様々な政治家のインタビュアーとしても知られており、特に、ニクソン元米大統領を、ウオーターゲート事件後に初めて長時間インタビューした人としても知られている。氏は、新しくできるアルジャジーラインターナショナル(英語版放送)のキャスターとして働くことになっている。

 アナウンサーが、何故、フロスト氏がアルジャジーラで働こうと思ったのか、聞く。「人質の首を切るシーンを放映したり、テロリストと関係があると言われている放送局に、何故?」。「・・・といわれている」と書いたが、このときのアナウンサーの口調は、「テロリストに関係がある・・」というニュアンスのもので、最初から、アルジャジーラをうさんくさいものとして扱っている。

 これに対し、フロスト氏は、「首切りシーンは放映していないことが分かった」とし、「テロリストにも一切関係ないことが、いろいろな人に聞いて、分かった」と説明。

 ここまではいいのだが、「オサマ・ビンラーディンのインタビューの機会があったら、インタビューするのですか?」と聞かれると、しばし躊躇があって、「自分はジャーナリストだが、市民でもある。市民としての自分を大切にしたい」ということを言った。つまり、自分はインタビューしない、という意思表示だった。

 私は、ここから、おかしいなあ、と思いだした。BBCのキャスターだったらこういうことを言ってもいいのかもしれないが、アルジャジーラのキャスターとしては、違和感があるように聞こえたからだ。英国のリスナー向けに、そういったほうがいいから、言っただけ、なのか?

 中東諸国(全部とはいえないかもしれないが)では、オサマ・ビンラーディンには一定の支持があることを読んだり、聞いたりしてきた。英エコノミスト誌11月26日号でも、米ピュー・グローバル・アティテュード・プロジェクトという調査の結果として、ヨルダンでは60%がビンラーディンに信頼を置いている、としていた。

 多分、フロスト氏としては、個人のレベルでいろいろな思いがあるのだろう。

 しかし、アルジャジーラ(アラビア語)はこれまで、一方の意見ではなく、もう一つの意見も出す、という方針をとってきており、これからもアルカイダ関連のインタビューがとれれば、基本的にはこれを除外しない可能性は高い。

 アルジャジーラ英語版は、ロンドンにも支局を置くが、編集方針はアラビア語版と変わらないと世間は期待していると思うのだが。アルジャジーラとしての独自のスタイルは、これからどう変わっていくのだろう?

 フロスト氏はキャスターの一人であるだけだが、アルジャジーラ英語版がCNNやBBC(つまり西欧人の価値判断でニュースを決めていく)にならないことを願っている。(実際には、アルジャジーラ・アラビア語版がアルカイダ関連のテープなどを入手・放映すると、CNNやBBCはアルジャジーラからこのテープを買って、放映しているわけだが・・。)
by polimediauk | 2005-12-02 19:42 | 放送業界

メディアがドラマチックに報道すると・・・

 2020-23年ごろには、英国の原子力発電所の稼動が全て終わることになる。現在のところ、英国は25%ほどを原子力発電にたよっている。発電所を建設する場合、計画から建設までに10-15年ほどかかるため、もし原子力発電を完全にあきらめるのでなければ、早々に計画を立てないといけない状況にあった。

 そこで、今週、ブレア英首相が原子力発電所新設への第一歩を予感させるような発言をしたため、英新聞各紙、テレビ局はこれを「Uターン」、「政策転換」として紹介。かなり批判的に扱われた。

 しかし、かつて労働党が原子力発電に反対の立場をとっていたとはいえ、ビジネス界との関係を深める方針をとってきたブレア政権の流れ、そして、「エネルギー白書」(2002年ごろ発表)を見ても、常に発電所新設の含みを残した文章表現をしており、ある意味では、少しずつ、本音を出していた。否定も肯定もしないが、その心は、というと、「新設したい」という気持ちがにじみ出ている表現だった。

 原子力発電所の新設は、政治的に正しくない・ポリティカルコレクトではない、と見られているので、ブレア氏が新設をほのめかす方向を口に出しただけで、大騒ぎ、となる。コストや廃棄物のことばかり言っても、フランスではエネルギー源の80%を原子力にたよっている。やっているところは、それぞれの方針でやっている。

 将来の年金制度に関する答申が昨日でたのだが、これも大蔵大臣のブラウン氏が、答申が出る前に批判したことを、メディアはかなり繰り返して報道。答申を作った人の面子がつぶれる、という部分を、ドラマチックに書き立てる。

 わざと事態をドラマチックに報道し、本当の問題から焦点をずらす・・・こういうことは、特定の国だけに起きているわけではないのだろうが、少なくとも英国はそんな国の1つのように思う。

 24時間ニュース報道をしないといけないので、仕方がないことなのだろうか。

以下は、時事の関連記事。
2005/11/29-21:51
「原発も選択肢」=グリーンピース、天井から抗議-英首相
 【ロンドン29日時事】原子力発電所の段階的廃止を打ち出していた英政府が近く政策転換を行うとの見通しが高まる中、ロンドン北部の会議場で29日、ブレア首相と国際環境保護団体グリーンピースの一触即発のニアミスが発生した。演説会場の高さ16.5メートルの天井によじ登って抗議の垂れ幕を掲げたグリーンピースに対し、ブレア首相は会場を変更、「原発もエネルギー政策見直しの選択肢だ」と訴えた。
 英政府は最近、将来のエネルギー不足に備え原発を新設する政策転換を示唆し始めている。これに対し、天井に上ったグリーンピースのメンバー2人は「核は間違った答えだ」と抗議。首相の演説は結局50分遅れで隣の部屋で行われた。(了)

by polimediauk | 2005-12-02 01:44 | 政治とメディア