小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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(捕鯨の件で、皆さんから、貴重な意見をいただき、ありがとうございました。
せめてエコノミストの記事ーー商業捕鯨を支持しているーーを後で載せたいと思いながら、日が過ぎていることをお許しください。この記事を見逃した方のために、下にコピーしておきます。また、この件に関しては、少なくとも英国ではグリーンピースがかなり力を入れていたようです。)

 オランダの政治家アヤーン・ヒルシ・アリ氏は、イスラム教徒(元?)でありながら、イスラム教が後進的だとして批判している。もともとソマリアからの難民で、オランダに来て、オランダ国籍を取得し、国会議員になった。

 ところが、難民申請の時に、年齢や難民となった理由など、虚偽の申告をしていた、として、先日、国籍そのものがはく奪されるのでは、という事態が起きていた。

 イスラム教批判者として知られるヒルシ・アリ氏。前にここで何度も書いているが、「服従」という映画の脚本を書いて、イスラム教過激派から殺人予告がでていたため、厳重警護下で生活してきた。

 国籍はく奪の可能性が報道され、かつ、ヒルシ・アリ氏の居住地の近所の人たちが、立ち退きを求める裁判を起こして勝っていたので(ヒルシ・アリ氏が住んでいると、イスラム教過激派に襲われる可能性が高いので、いやがられて)、ヒルシ・アリ氏は会見を開き、オランダから出る、と言っていた。米国のシンクタンクに勤める、と。

 欧米系メディアはいっせいにこれを報道した。オランダの寛容精神が失われた、イスラム教を批判する国会議員がオランダを出ざるを得ないとは、困ったことだ・・・という文脈である。

 そして、つい最近になって、国籍はく奪とはならないことに決まったようだ。

ーラマダン氏の見方

 ヒルシ・アリ氏は米国を中心としたメディアでは、好意的に書かれることが多いのだが、オランダ国内だとまた随分見方が違う。特に、イスラム教徒の国民の間で、評判が悪い。

 実際、イスラム教徒の女性たちからは、「ムスリムだからといって、男性に服従的なわけではない」、「イスラム教徒であること自体が間違っているかのように言われるのは、たまらない」など、かなり反発の声を聞いた(アムステルダムでのメディア会議がその例。既に書いたが。)

 こういう点が、英国のメディアではほとんどカバーされておらず、居心地の悪い思いを感じながら、各報道を読んでいた。

 今日、欧州に住むムスリムの問題をこの20年間考え続けている、タリク・ラマダンという人が、ロンドンに来た(写真左上)。そこでテロの話、ムスリムと西欧社会の共存などの話があった。

 ラマダン氏は、言っていることが非常に分かりやすく(ムスリムたちも欧州社会側も、歩み寄ることが大切など)、注目していた人だった。もともとエジプト人で、長いこと、スイスに住んでいた。今はオックスフォードにいる。

http://www.tariqramadan.com/rubrique.php3?id_rubrique=13


 彼がヒルシ・アリ氏に関してどう思うのか、興味があった。

 氏にこれを聞くと、

 「2週間前に会った。彼女が主張していることは、あたっていることもあるだろうが、言っていることには同意しない。、また、やり方がよくない。イスラム教が全部ダメ、イスラム教だからダメ、というのはおかしい。つじつまがあわない。また、聞いていると、超ネオコンのような話し方をする。会ったときに、彼女が言うには、『イスラム教が全部悪いと思っているわけではない』。だったら、そう言いなさい、と言ったのだが。」

 やはり、故意に、相手を挑発するために言っている部分がある人物のようだ。

 欧米では好意的に受け取られるのは何故だろう?

 「右派が彼女を利用しているからだと思う」。

 ラマダン氏に一問一答をのぞむジャーナリストの列は、長く続いていた。

ーーーー

エコノミスト記事

Too much blubber

Jun 15th 2006
From The Economist print edition

It is time to look rationally at the idea of resuming whaling

“NUKE the whales” was the message on a badge once popular with those tired of the self-righteous posturing of the extreme wing of the environmental movement. It has not come to that. But a subtler threat to the great beasts is afoot. Japan wants to resume commercial whaling—and it may eventually get permission to do so.

Japan is accused of buying votes on the International Whaling Commission, the body that regulates the whaling industry, which is starting its annual meeting on June 16th in St Kitts. Founded in 1948 by seven countries with large whaling fleets, namely America, Australia, Britain, France, Norway, South Africa and the Soviet Union, the commission has attracted some odd members recently. Many of them are small places with no history of whaling: Kiribati, the Marshall Islands and St Kitts itself, for example. Several, such as Hungary, Mali, Mongolia and Switzerland, are landlocked. What many of these new members have in common is that they are recipients of Japanese aid money. Some are even said to have had their subscriptions to the commission paid by Japan.


Environmentalists are up in arms. In 1986 the commission agreed to a moratorium on commercial whaling (though Norway opted out). Overturning this moratorium is Japanese government policy. At the moment, it does not have enough support to do so (three-quarters of the commission's 70 members would have to be in favour) but Japanese officials believe their country has enough allies at this year's meeting to make some progress. In particular, Japan is suggesting that future ballots should be secret. Winning that change would require only a simple majority, and with secret voting waverers might be more ready to vote Japan's way in future.

Yet all this criticism of underhand tactics rests on an untested assumption—that the moratorium should not be lifted. Is that assumption correct? The moratorium has certainly been a success. Whale numbers are rising. Even the blue whale, the largest mammal, is recovering slowly. Some humpback-whale populations are growing at 7% a year. And no one, not even the Japanese, is talking about resuming hunting still-rare blue whales or humpbacks just yet.

Yet the commission's convention is clear: its purpose is to conserve whales in the context of a commercial fishery, not because they are “charismatic megafauna” that should be preserved for their own sake. In this context, it is perfectly reasonable for Japan to want to re-examine the moratorium.



Conscious decisions
The idea of charismatic megafauna hardly existed in 1948. There needs to be an honest debate about how humanity should treat whales. Both sides muddy the waters. Conservationists protest about the methods used to kill whales, saying they are cruel. They might be, but that is not the point, unless there really is a lobby that would accept the humane killing of whales. On the other side, the Japanese and their Icelandic allies hunt minke whales, which are still reasonably abundant, under the guise of scientific research. In practice, this is commercial fishing with a side order of science.

Should whales be treated like any other type of animal which some humans want to hunt, namely protected when rare, but hunted when common? Or is there something special about them that means that they should never be hunted? Biologists have come to recognise that great apes (chimpanzees, gorillas and so on) have mental faculties of self-awareness and consciousness that they share with humans but that neither shares with, say, monkeys. A few other big-brained social mammals, such as elephants, are thought by some to have evolved similar capacities. Whales may be among these species. Some places—Spain, for example—are discussing changing the law to recognise this distinction in apes. But on whales, there are no data.

In the absence of data, the commission should stick to its brief. But here is a suggestion: put the whole thing on a proper economic basis. The Japanese fleet is heavily subsidised. Without government cash, there would be less enthusiasm to hunt a creature ever fewer Japanese want to eat. Sadly the commission has no remit over that; but, if it does vote to resume commercial whaling (as it has the right to do), it should not create a system of quotas allocated by country. Instead, it should put whale-hunting rights up for auction, allowing both killers and conservationists to bid. The chances are that those who prefer whales to swim free would be able to outbid the few remaining humans who like eating them.
by polimediauk | 2006-06-29 06:42 | 欧州表現の自由

 元内務大臣チャールズ・クラーク氏(外国人犯罪者のデータ管理不備などを巡り、ブレア首相の内閣改造で辞職を迫られた。代わりに外相の職をオファーされたが、断ったといわれる)が、ブレア氏批判のインタビューを、英タイムズ紙、BBCのラジオ番組、夜のニュース解説番組ニューズナイトなどで、立て続けに行っている。http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/5119074.stm

 クラーク氏は辞職までブレア氏を支える有力政治家の一人と見られていた。

 1997年の政権取得以降(あるいはその前から)、現在の労働党がメディア戦略を駆使してきたことは知られているが、クラーク氏がメディアを通じて大々的にブレア氏批判を行っている様子を見ると、辞職したくなかったのに内相の職を手放さねばならなかったことのへの怒りがあるのだろうが、何となく、げんなりする。

 これまでにも多くの政治家によって批判されてきた傾向として、政治の議論が、議会を通してではなく、メディアを通して行われすぎるのではないか、という点があった。政策発表を記者会見や議会の場で行うのでなく、ラジオや新聞などで明らかにしないように、と政治家にはしばりがかかっているはずだが、もちろん、義憤、訴えたいことがあれば、メディアを使う自由はある。

 皮肉だなあと思うのは、労働党政治家たちはメディアをひんぱんに批判し、特に、「政府が・ブレア首相がイラクの大量破壊兵器に関して、事実を誇張した」とする報道をした、BBCのラジオ番組(2003年)がきっかけとなって、BBC対現政権の対立構造が一時如実になった。この番組に関わっていたキャスターの一人で、よく労働党政権が目の敵にするのが、ジョン・ハンフリーズ氏である。今回、クラーク氏がインタビューの相手に選んだのがハンフリーズ氏だ。

 つまり、メディアを批判しながらも、自分たちに都合の良いときは、すりよる、と。

 タイムズやBBCのライバル紙、ライバルチャンネルとの間のバトルもいろいろあった可能性もある。ただの想像だが。クラーク氏のインタビューをとりたい、という英メディアはおそらく、かなりいろいろ交渉を続けていた可能性は高い。

 結果的に、タイムズ、BBCなどを使うことで、クラーク氏は一種の、「クラーク氏の反乱」「ブレア氏のリーダーシップに疑問符」といった、ドラマを作ったことになる。BBCといっても様々な番組があるが、ハンフリーズ氏による一対一のインタビュー、著名ニュース解説番組「ニューズナイト」、英国の保守新聞タイムズを使うとなると、かなりおおがかり。大きな反ブレアキャンペーンだ。

 といって、これでブレア氏の政治生命に大きな打撃がある、というわけではない。この点がある意味では、げんなりする部分で、結局、政治ドラマの大きな一場面を作った、というだけに見える。

 政治劇が好きな人には、おもしろいのかもしれないが、果たしてここまでおおがかりにやる必要があるのか、どうか。英国民としては、首を切られたクラーク氏の思いを知ることは、ある意味では重要なのかもしれない。しかし、英メディアが声高に叫ぶことが意外とそれほど大きなニュース・動きではなかったことも多々起きている現状では、このクラーク氏のインタビューを追う報道が今後しばらく続くだろうが、紙面、放送時間の無駄のような気がしてならない。

 読むだけでも、見るだけでも疲れる、と、国民の多くはあきあきしているのではないか。

 ブレア氏が首相の座を去った後(2007年説、08年説、09年説がある)、少しはメディアの政治ドラマ作りがおさまるだろうか?
by polimediauk | 2006-06-27 16:46 | 政治とメディア

 前にもこのテーマで書いて、読んだ方からいろいろコメントを頂き、「それで小林はどっちなんだ?」といわれ、どっちつかずの態度になったトピックが、児童性愛主義者の個人情報公開の話だ。

 米国では、メーガン法(犠牲になった少女の名前からとったもの)があって、州によっては、性犯罪者が自宅近くに住むかどうかを、住民自身がウエブサイトで調べることができる。写真も出ていると言う。

 英国も同様の方法を導入することを、政府は考慮しているようだ。

 英国では、児童に対する性犯罪を行った大人は、刑務所に入れられたりなどの処罰を受け、性犯罪者リストに名前や住所などが登録される。出所後は、警察に新たな住所を登録することが義務付けられる。この義務を怠ると禁固刑となる場合もある。また、子供と接する職業につくことを禁じられる。場合によっては、学校の近くに住めないなど、条件がつくこともある。

 個人情報は、社会福祉団体などにも渡る。学校で先生を新規に雇う場合、該当人物が性犯罪者リストに名前が載っている人物かどうかを照会できる。

 しかし、一般の住民が、あるいは親が、近隣に性犯罪者が住んでいるかどうかを、米国のように確かめることはできない。そこまでは情報が公開されていない。

 ところが、最近、ある性犯罪者に対する刑があまりにも軽いことで、これを非難あるいは懸念する世論が出てきた。そこで、内務省が、一般住民のレベルまで、性犯罪者の情報を公開するべきかどうかの可能性を、メーガン法のある米国に人を派遣して、状況を調査することになった、というもの。

 英国では性犯罪者、特に児童性愛者に対する懸念が非常に強い。児童性愛者と小児科医の英語名は似ており、ある小児科医の家が襲撃にあい、引っ越さざるを得なくなった、というケースもあった。

 BBCなどによると、近所に住む性犯罪者の住所が分かったとしても、これが犯罪の低下を招いてはいないそうだ。必ずしも。

 さらに、英国の性犯罪の80%が家庭内で起きる、つまり、見知らぬ人が子供に悪いことをしてるのでなく、父なり、兄なりが、娘や妹(あるいは息子や弟)に、性犯罪を犯しているケースだそうだ。(と言う話をテレビで聞いた。)

 深い話だ。一体どうなることか、と思う。

 もう1つ、記憶を頼りの話だが、性犯罪の常習犯と言うのは、直らない、と聞いた。刑務所に入れて、「反省させて」、直るようなものではない、と。本当だとしたら、つらい話だ。一生涯、監禁しておくわけにもいかないのだから。足などに電子タグをつけて、居場所が分かるようにしておき、学校などに近づいたら、すぐ警察に情報が通じるようにしている、重度の性犯罪者もいる、という。

 英国で性犯罪者の住所などの個人情報に誰でもがアクセスできるようになった場合、過去の例からすると、暴動、襲撃などが起きる可能性は高い。

 

 


 

 

 
by polimediauk | 2006-06-20 08:24 | 英国事情

商業捕鯨


 今、英国では、捕鯨に関しての報道・会話で、日本を支持する人はほとんどいない。

 「英国では」と書くと言い方がでかすぎるように聞こえるかもしれないが、実際、メディア報道がそうだし、友人、知人、誰にしろ、この件に関して、日本に好意的な発言が出ることは、まずないといっていい。しかも、この件を話すと、みんな(英国の人やインタビューされている人)は、怒っている。相当感情的になっている。日本は戦犯扱い、という感じだ。

 イランの核開発に関しても、英国はかなりドラマチックにイランを批判していたが、それがそのまま日本に適用されているような思いもする。

 以下は共同の記事。

商業捕鯨再開へ警戒感 英BBC

 【ロンドン19日共同】英BBCテレビは19日、国際捕鯨委員会(IWC)が商業捕鯨一時禁止決定に批判的な内容の宣言を採択したことについて「日本が捕鯨推進の採決で勝利」と繰り返し報じ、警戒感を示した。
 BBCは、もりを撃ち込まれた鯨が、苦しみ、血しぶきを上げる捕鯨の映像を併用。「捕鯨」を「(鯨を)殺害」と言い換え、宣言採択は「商業捕鯨再開への一歩となる可能性がある」と強調した。
 その上でBBCは、商業捕鯨禁止の内容を見直し「より効果的な規制」を行うことで、日本が調査捕鯨名目で「殺害」している鯨の数を減らすことができる可能性もあると指摘した。
(共同通信) - 6月19日11時59分更新

 本当はどうなのか?悪いことを始めようとしているのか?

 私は捕鯨に関して詳しいわけではない。ただ、IWCが政治的集団化している、決して中立的な団体ではない、という認識を持つようになったのは、梅崎 義人さんというジャーナリストが書かれた記事を読んでからだ。(例えば新聞通信調査会報の平成16年版のいくつかの記事など。) http://www.chosakai.gr.jp/index2.html 梅崎さんは、長年の交渉の様子を細かくウオッチングしているようだ。

 日本が、IWCで自分の地位を確かにするために(=商業捕鯨を再開するために)、小さな国のIWCの会員権を代わりに払い、それで票を増やそうとした、という報道も頻繁にあった。(日本側は票を買おうとした、という報道を否定。)昨日ラジオで小耳にはさんだのが、こうした小さな国のいくつかが、「私たちはどのような票を投じるかを自分たち自身の意志で決定できる。日本に影響を受けて票を決定するなどというのは、欧米の植民地主義的考えだ」、と反発している、という。

 あるBBCのテレビ番組で、鯨肉をおいしそうに食べている人々がいる日本の食堂の様子が放映されていた。いかに鯨肉が人気があるか、を描いていたが、実際、日本全体では鯨肉は(私も小さいときに食べていたのを記憶しているが)ひんぱんに食卓に出るものではないと記憶しているが、どうなのだろうか。

 また、日本は、「IWCがうまく機能しなければ、日本+有志で新たな捕鯨の団体を作る」、と言ったと報道された。「2,3年後に」、そういう団体を作るかもしれない、と。これ自体は事実かもしれなかったが、報道のトーンとして、「自分のやりたいことが通らなければ、新たな団体を作る日本」、つまりは、「何が何でもやりたいことを通そうとする、理不尽な日本」という感じがあった。

 いずれにしろ、誰しもが感情的に鯨の将来を語る英国の雰囲気は、「本当にそうかなあ」と、思ってしまう。
 


 
by polimediauk | 2006-06-19 16:10 | 日本関連

「失敗はある」

 英週刊誌のエコノミスト。どことなく、えらそうにしているなあと思うこともあるが、「こんな細かいところまでウオッチングしてたのか!」と驚く記事もあって、ここ数年目を通すようになった。

 「どことなくえらそうに」というのは、私が感じていただけではなく、英ガーディアン紙のコラムニストが書いていた(探せばあるのだが今手元にない)のを読み、なるほどなあと思ったものだ。エコノミストの記者の一人に、ガーディアンの記事の件を話すと、「分かりますよ、言っている意味は」と、苦笑いされた。「さて、今週は世界をどうやって(読者に)提示しようか」、という感じで編集会議が進むのだそうだ。つまり、世界情勢を料理するのはエコノミストで、どうやって解釈するかを読者に教える、と。

 英ジャーナリストのアンドリュー・マー氏。2003年11月のあるメディアの会議で、「エコノミストにいたときに、言われたのは、ものごとを『短く要約して、それを誇張しろ』ということだった」。

 「さて、今週は世界をどうやって(読者に)提示しようか」ーーこれも一つのジャーナリズムの手法であろう。もしエコノミストの分析が「違う」と思えば無視すればいいだけだ。

 一方、遊び心に富んだ感じもある。特に、表紙及び中の記事の見出しが、タブロイド紙顔負けの駄洒落、皮肉、言葉遊びがいっぱいだ。

 2002年ごろのある表紙で、能の面から涙が出ている図があって、「The sadness in Japan」(正確な題名ではないかもしれない)と書かれていた。私は日本から来たばかりで、日本のことを「他人に言われたくはない!」という思いも強く、いやだなあと思ったものだった。

c0016826_671129.jpg 時は過ぎ、ブレア英首相のアップに、「Bliar」(ブレアとうそつき=ライアーをかけている)言葉がついた表紙(2003年6月5日号)に、笑いながらも本当に秀逸だなあと感心した。この言い方は、反戦デモのプラカードやいたるところで使われるようになった。

 今年3月で退任したが、長い間エコノミストの編集長だったのが、ビル・エモット氏。「ブライア」は自分でも最も気に入っている表紙の1つだという。今は作家になっている。

 エモット氏は、日本に詳しく、数冊の本も出版している。かつて、エコノミストの東京特派員、支局長だったのだ。

 1980年代後半、東京のポストがあいて、「誰か行く人は?」と編集部で募ったところ、「全く知らないところに行って見たい」と思い、手を挙げたという。日本に関する知識が特にあったわけではなく、全く異なる文化の国で生きてみたいと思ったのがきっかけだという。そして、「いっぺんに魅了された」。

 「何故魅了されたのか?」私はエモット氏に直接何度か聞いてみたが、答えは赴任した後に魅了された・・という話以上に分からなかった。編集長だったときに部屋に取材で訪れたところ、表紙がたくさん飾ってあって、表紙の文句を考えることを楽しみとしていることが分かった。

 現在は、日本と中国に関する本を書いているそうだ。「今はまだ調査中。だから詳しいことはまだいえない」。

 月刊誌「潮」に寄稿しているということなので、日本にいる方のほうが、エモット氏の論説に詳しいかと思う。

 先月になるが、在英海外記者が所属するクラブの一つ、「フロントライン・クラブ」で、エモット氏は一問一答形式のイベントに出た。

 集まった人たちの質問は、「何故イラク戦争開戦を支持したのか?」に集中した。エコノミストは開戦を支持し、エモット氏自身、かねてから、「かなりの読者を失った」と述べていた。戦争支持や住宅価格のバブルの予想など、「間違えることもある」としていたのが、印象的だった。

 エモット氏の若干の情報だが(詳細は www.billemmott.comに経歴などがある)、氏はエコノミストの第15代編集長。今年3月末で、49歳になる直前に辞職。編集長だった13年間で、発行部数を50万部から100万部に増やした。歴代の中で、第2番目に長い編集長。6冊の本を書き、そのうちで4冊は日本に関するものだった。(読売新聞の記事によると、氏はロンドン西郊外生まれ。父は会計士。当時の保守党政権が設けていた政府の学費補助制度の難関試験にパスし、学費の高い私立校からオックスフォード大学に進んだ。36歳で編集長に。)

―編集長だったときの大きな失敗は?

 エモット氏: 石油価格の暴落と住宅価格バブルの崩壊だ。間違うこともある。もし石油価格が暴落としたらどうなるか、という「もし」という記事だったが、エコノミストの読者は、予言をした、と思っただろうと思う。結局、違う方向に物事は進んだ。住宅価格の暴落も、いつかは起きる、いつまでも上昇し続けるとは思うな、という分析だったが、当たらなかった。オーストラリアでは下がったのだが(苦笑)。

―エコノミストは、何故「新聞・ニューズペーパー」と定義しているのか?

エモット氏; 一言で言うと、これまでの編集長が全員怠惰だからだ。どの編集長も惰性で変えなかった。また、会社がエコノミスト・ニューズペーパー・リミテッドとなっている。それと、昔、アメリカのニュース雑誌に対抗するため、エコノミストは「ニュースペーパーだ」、と言った人がいて、そのままになっていた。自分がインタビューを受ける時は、エコノミストは雑誌だと言うこともある。(私が過去にインタビューしたときは、「ニューズペーパー」というのは、どんな形、例えば雑誌の形、でもいいではないか、決まった形はない、と言っていたが。)

―英国のコラムニストたちは悲観的なトーンで自分の意見を述べることが多い。エコノミストからは楽観的な論調を感じるが、これはあたっているだろうか?

エモット氏; 楽観的というのはあたっている。私がいなくなった今、エコノミストはもっと楽観的になっていると思う。

 理由は、一つには、基本的なアプローチとして、物事に対して合理的なアプローチを取っている点があげられる。物事のすべての側面を見ようとする。合理的な解決に対する信頼感がある。長い目で見れば、人は合理的な行動をするだろう、という考えだ。

 また、論評記事と事実のレポート記事、という2つの流れがあるとすると、エコノミストは常にレポートを重要視してきた。こうした記事では、事実は何なのか、結論は、そしてあなたはこれとこれをするべきだ、というのが論旨の展開になる。エコノミストの記事は、解決策を提供しようとする。あなたには、現状を変えるために、5つのことが出来る、と。したがって、結局、楽観的な見方になるといえる。

―エコノミストの政党支持は正しいものだったと思うか?

エモット氏;エコノミストは長年保守党を支持してきたが、私の間違いは、(1990年代後半)、(後に首相となる)ジョン・メージャーを候補者として支持したことだ。保守党の中では、可能な選択の中でのベストだった。1997年の総選挙でメージャーを支持したのは、論理的な要素を見る限り、完全だった。(労働党党首の)ブレアはメージャーのポリシーを引き継ぐと言ったきりで、詳細は明らかにしていなかった。何故当時あまり知らない政治家だったブレアを信じるべきなのか?メージャーならどんな政治家か知っていたので、支持した。

―政権取得当時から比べると、ブレアは「ニュー・レーバー」よりさらに左になったと思うか?

エモット氏; あまり変わっていないと思う。ジャーナリストは政治家を好まないのが常だが、ブレアが言ったサードウエーとか、ニュー・レイバーとかを、疑念を持ってみていた。つまり、ニューレーバーの人の言うことはいつも一貫していなかった。国民健康保険を改革するなどと言っていたが、論旨が納得できなかった。

 それでも、選択をするとしたら、労働党政権になってからは、ブレアがベストだと思った。選ばなければならないとしたら、その中では一番いい、と。

―デビッド・キャメロンが保守党の党首になってからは、支持を労働党より伸ばしているが、保守党はイメージを変えたと思うか?

 エモット氏; スピン(注;政党のメディア戦略を実質的に意味する)が作り出したものだ。キャメロンは分別があって、自分が知っている領域、例えば環境などで闘う。ただ、保守党全体がキャメロンのやり方に同意するかどうかは分からない。世論調査の結果もまだ納得できる段階ではない。ブレアはキャメロンが自分と瓜二つである様子に驚いていると思う。

―次期首相と言われる、現在蔵相のゴードン・ブラウンに関してはどう思うか?

エモット氏; その力量に賞賛するが、一方では嘆いてもいる。現状に関して明確な把握をしている政治家だ。経済政策もいい。中央銀行を独立させるなど。しかし、税金のコードとか、いろいろ複雑にしている。小さな変更をしている。特定のグループの選挙民を満足させるためだ。これは必ずしもいいとはいえない。

―ブレア時代をどう定義するか?

エモット氏: ブレアの時代は、保守党の遺産の整理統合の時期だったと思う。ブレアは革新的な政治家ではなく、整理をした人。欧州問題とイラクでは、失敗した理想家だ。イラクでは大志を抱く理想家で、欧州では大志を抱かない理想家。辞任後は、メディアでの扱いも良くなると思う。クリントン元米大統領のようになるのではないか。ただ、ゴードン・ブラウンが次の総選挙で、労働党党首として保守党と闘うことになるのは確かだ。

―ブラウンの、首相としての力量はどうか?
エモット氏: 判断が難しい。トップとNO2とでは、仕事が違う。恐らく、すべてをコントロールしようとするだろう。選挙に強い人ではない。反スピンだし、キャンペーンがいいことであると分かってはいても、選挙戦のイメージ作りに力を入れるのをよし、としないだろう。若いキャメロンは逆だ。ブラウンはポピュラリズムを嫌う。経済はもうそれほど良くない。ドイツやフランスよりいいとはいえない。成長率が低くなっている。出来ることは少ない。

―EU及びユーロに関してはどう思うか?

エモット氏; ユーロを支持するが、英国が導入することには反対だ。ユーロ参加は義務であるべきではない。導入で経済効果があるかどうかと、導入への政治的意思が必要。英国には政治的意思がない。

 EUは今度どんどん大きくなるだろう。10-15年後にはトルコが入り、20年後にはウクライナが入る可能性もある。大きくなり、深化する。

―エコノミストは、イラク開戦を支持し、大分批判されたようだが?

エモット氏; 確かにそうだ。開戦をするという決定を今でも支持するが、その結果を非難する。エコノミストは、開戦後3年経ってもこの程度だということを、知っているべきだった。開戦前には、大量破壊兵器が実質上なかったことやフセインの意志がどうなのかが、分からなかった。

―破壊兵器がなかったこと、フセインがはったりをきかせていたことなどを予期するべきだったのではないか?

エモット氏: 予期するべきだったかどうか?うーん・・・。考慮にたる質問だが、事前には知りえなかったと思う。

―ブレア氏は、フセインが大量破壊兵器を使う可能性がある、大量破壊兵器があるなど、嘘をついていたと思うか?

エモット氏; 自分が真実だと思うことを伝えるためにフィクションが描いて見せたのだと思う。ブレアは、嘘によって真実を表現したと信じた。諜報情報から判断して、嘘(大量破壊兵器の差し迫る脅威があること)が真実を反映すると思ったのだと思う。

 私がもしフセインが大量破壊兵器を持っていなかったことを事前に知っていたら、開戦に反対shしていたか?(例えなくても)、それでも彼がほうっておけない独裁者だったことは確かだ。

―9・11・2001のエッセーで、米国が民主主義を世界中に広めるべき、と書いていたが、現在でも米国は善だと思うか?

エモット氏; そう思う。米国はこれからも世界中で干渉し続けるだろう。そうすべきだと書いたのは、世界は米国による一極主義ではないと思うからだ。今後15年間は、世界中の紛争地域で、米国が民主主義を広める、という流れが続くと思う。

 米国に限らず、どこの国でもその力を乱用したことはある。アメリカは世界の唯一のヘゲモニーではない。1950年代はそうだったかもしれないが。西欧や日本が米国との差を減少させた。米国は今はリードしているけれど、ギャップはこれからも縮まる。インドや中国も力をつけている。

―前イタリア首相ベルルスコーニ氏をかなり批判していたが?

 エモット氏;まず、何故彼がそもそも政権をとれたのかを反省するべきだ。権力の乱用者、資本主義の乱用者で、ビジネスと政治の乱用者だった。メディアの支配もしていたのだから、批判する価値があった。

―日本と中国に関する本を書いているそうだが?

エモット氏; 歴史をみると、東アジアに1つのパワーが長いことあった例はない。中国がいて、日本がいて、第2次世界大戦があった。戦後、日本は立ち上がった。初めて2つのスーパーパワーができた。日本と中国の覇権争いが起きている。

―イラクの先行きは?

エモット氏;トラブルが続くだろう。セキュリティーが悪い。

―何故イラク戦争を支持したのか?ちゃんと調査したのか?米国の読者を喜ばせるためか?

 エモット氏; 米国の読者を考えたわけではない。さまざまな専門家から話を聞き、結論付けた。

―様々な人が記事を書いているが、文章に統一感がある理由は?

エモット氏; ジャーナリストが無記名で書くからだと思う。

―どうやって部数を増やしたのか?

エモット氏; グローバリゼーションで、マーケットニーズが高まったことが理由だ。多くの人が世界の情勢分析を知りたがる。国内メディアがもっとローカルな話題を扱うようになったのも幸いだった。英語の媒体であったことも利点だ。

 教育が進み、知的な読者の数が世界的に増えている。英国での読者は15万ほどだが、世界中ではもっと多い。

―表紙の見出しをつけていたそうだが、最も気に入っている見出しは?

 エモット氏;「ブライアBliar」だ。現政権から紙面に関して苦情を受けたことはないが、前に、メージャー政権下で、教育問題の記事を出したときに、政府の担当者から苦情の電話があった。

―どんな人が読者か?

 エモット氏; 教育を受けた、国際的分野に興味のある人。おおむね高収入だが、まあ、いろいろだ。年齢は他の同系統の雑誌より若いかもしれない。アメリカでは平均年齢は38歳。エコノミストの社会的リベラリズムが若者に訴えるのではないか。
by polimediauk | 2006-06-18 05:49 | 新聞業界
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 6月2日、自宅にテロ捜査が入り、「容疑者」かもしれないとして逮捕されていた兄弟2人が、先ほど、会見をした。1時間ほどの会見だったが、涙が出てくるような場面も多々あった。

 逮捕され、数日前に釈放されたのは、アブール・コヤル氏(20歳、写真左)と兄のモハマド・アブダル・カハル氏(23歳、右)。兄のほうは、捜査中に右胸を撃たれている。

 東ロンドンのフォレスト・ゲイトという場所にある、ある家を、2日の午前4時ごろ、警視庁の捜査員が直撃。警察だ、という説明など、一切なしに入ってきたと言う。

 家族は、てっきり強盗だと思ったと言う。

 窓が割れたような音が聞こえ、ベッドから抜け出し、階段を下りてきた兄は、右胸を捜査員に撃たれた。

 倒れた兄は、殴られるなどして、路上に引きずり出される。その後も、暴行にあいながら、警察の車に乗せられた。

 弟もこのとき、手錠をかけられ、同時に連れて行かれた。

 母や父も怪我をおったようだった。

 兄は、殺されるかもしれない、と思ったと言う。

 これまでの報道では、警察側は250人の捜査員を導入して、化学兵器を探していた。家の中はめちゃくちゃになった。現在のところ、何も見つからず、結局兄弟は釈放された。

 ブレア首相はこの捜査を101%支持する、と述べていた。

 捜査は、「信頼性の非常に高い」情報によるもの、とこれまで説明されているが、兄弟・家族は、何故拘束されたのか、撃たれたのか、全く説明を受けていない。

 「自分はこの国で生まれ、ここで育った。何の悪いこともしていない。このコミュニティーを愛している。なのに、何故・・・?」兄が悔しそうに言った。「首相の息子と僕は同じ23歳だった」というところで、ジーンとしてしまった。違いは、一方が白人で一方がアジア人・ムスリムであることだ。

 見た限りでは、この捜査は大失敗だった。7・7ロンドンテロ以降、たくさんの捜査があって、ほとんどが成功しているのかもしれないが、失敗もあろう。今回は失敗ということでいいのだろうか?

 どんな「非常に信頼性の高い情報」があったというのだろうか?

 警察側は通常、情報の筋に関しては一切コメントしない(正式には)ことになっているだろうが、今回に限り、かなりの透明性が要求されている。

 ロンドンテロの後で、7月21日、無実のブラジル人男性が、自爆テロ犯と間違われて、電車内で射殺されている。一体何が起きたのか、独立調査委員会の報告書は、そろそろ事件後から1年になるのに、まだ出ていない。誰を守ろうとしているのか?

 「いつでも、誰でも、自分でも、捕まるかも・・・。そんな思いが強い」と、私が会ったムスリムの人は言っていた。「こんなひげをはやしているから、信心深くなったから・・そんな理由で警察に通報されてはたまらない」。

 兄弟は、今回の捜査・襲撃に関わった人たちが、法の裁きを受けること、正義が行われるのを望んでいる、といった。

 「賠償を求めるつもりか?」と何度も聞かれ、「お金は問題じゃない」「お金のことは、ほとんど考えていない」と兄、弟がそれぞれに答えた。報道陣は、納得がいかないらしく、この質問を繰り返していた。

 「警視庁トップのイアン・ブレア氏が辞任するべきだと思うか?」この質問も、よく出た。

 「今回の発砲や捜査に関わった人は責任をとるべきだ」「説明や謝罪が欲しい」と兄弟は繰り返した。

 当局からの、何らかの謝罪なしでは済まされない状況になってきた。そうすると、ブレア英首相とか、今後のテロ捜査とかに、どのような影響があるのだろう?

 今回、無実の人たちにひどいことがなされたが、去年のテロの実行犯たちのことを考えると、捜査はどうすればいいのか、とも思う。兄弟達も、テロ捜査そのもの、あるいは警察全体を批判しているわけではなく、むしろ支持しており、弟の方は、かつては警察官になりたいと思っていた、という場面もあった。

 無実の人たちが怒り、悲しみ、傷つく中で、一方では、去年のように、ひっそりと自爆テロを計画し、実行しつつあった人もいる・いた。なんという皮肉だろう。



 
by polimediauk | 2006-06-13 21:40 | 英国事情

 いろいろなことが起きていて、書こうと思う間にどんどん時間が過ぎてゆく。
ここ2-3日、ロンドンは異様に暑く、公的場所・交通機関でもエアコンが入っている場所は少ないので(昨日のブレア英首相会見+イスラエルの首相でも、ブレア氏は汗いっぱいだった)、今朝、夜雨が降ったのか少し涼しくなり、ややほっとしている。

 グアンタナモ収容所での3人の自殺と、イラクでのザルカウイ容疑者の殺害だが、両方とも、「米国のPR戦略・スピン」という要素が英メディアでは語られている。

 グアンタナモで3人の拘束者が最近自殺したが、ブッシュ米大統領自身も、懸念を表明したというにも関わらず、自殺を発表した側の米軍グアンタナモ関係者らは、非常にクールな感じで、(自殺は)「私たち(米国か?)に対する戦争行為だ」、「人の命をなんとも思っていない」などと説明。テレビで、何度も自殺の事実を発表する場面が流れたが、紙を読んでいる様子で、どことなく、けろっとしている。何故これほどけろっとしているかなあ、と不思議だった。やはり、「テロの戦争」なのだろう。他の米軍関係者らしい人も、BBCのラジオ番組TODAYに昨日出ていたが、「戦争中だ」と語っていた。

つまり、自殺した3人は、「自分の命も、他人の命もなんとも思っておらず」、「自分たちのジハードの目的を達するため」、「一つの戦争行為として、自殺した」、というのが、米側(少なくともグアンタナモ関係者の)、「ライン」(文脈、とでも訳せるのだろうか)のようだ。

 この解釈・説明を、英側は否定的に見ている。

 今朝13日の情報によると、赤十字がグアンタナモ収容所の訪問を申し込んでいるそうだ。赤十字はこれまでにも訪問し、拘束者とも接触しているが、接触内容を、基本的には一切外に出せないことになっている。

 もう一つ、ザルカウイだが、米側が言うほどには重要な人物ではなかったのでは、という可能性が指摘されている。もちろん、私に何か裏情報があるわけではないが、米軍側の説明を聞いていると、勧善懲悪的な説明で、どことなくそのまま信じるには無理があるように聞こえる。

 インディペンデント紙の6月11日付で、パトリック・コックバーンという中東記者が、もともと、ザルカウイは米国が描くような重要人物ではなかったし、殺害状況がこれを裏付けている、という記事を書いている。読んでいて、なるほどな、と思わせる。ザルカウイが全くの「シロ」だった、ということではなく、米国の戦略上(テロの戦争+イラク戦争)、ザルカウイが必要だったという要素はあるだろう。

http://news.independent.co.uk/world/middle_east/article756016.ece

 テロ戦争での米軍・米政権の「ライン」はこうだ・・という英報道が多く、翻って、ザルカウイのことを米ラインをそのまま信じて書いているような記事を見ると、どうだろう、と思ったりする。
by polimediauk | 2006-06-13 16:16 | 政治とメディア

 キューバにある米グアンタナモ基地の収容所には、米国がテロ容疑者と見なす460人が拘束されているが、BBCによると、3人の拘束者たち(サウジアラビア人2人、イエーメン人一人)が自殺したそうである。首吊り自殺だった。

 米軍によると、自然発生的な自殺でなく、計画された自殺だった。収容所での自殺が発表されたのは初めて。

 衣類とベッドのシーツを使っての自殺だった。4年前にテロ容疑者を拘束するようになってから、25人の拘束者たちによる41回の自殺未遂があった。

 基地の米軍司令官は、自殺は絶望からではなかった、としている。自殺者達は「スマートで、創造力があり、committed(信念を持つ、と言う意味合いか?)。私たちの、及び自分たち自身の命になんの思いもない。絶望からの行為ではなく、私たちに対する戦争行為だ」。

 ブレア首相の広報官は、自殺を「悲しい出来事」として、調査の結果を待つべきだ、と答えているようだ。首相は、かつて、グアンタナモを尋常ではない状態、と述べたことがある。

 今月上旬、ブッシュ大統領は、グアンタナモを閉鎖したい、と述べている。「もし外に出せば、米国や世界中の市民に重大な危害を加えるかもしれない人たちも中にいる。米国で裁判をするべきだ」と語ったと言う。

 BBCのウエブサイトにはメッセージを残せるようになっているが、これを悲しい出来事としている人もいたが、米国からのメッセージで、刑務所で自殺をする人は必ずいるし、これが初めての自殺のケースなら、むしろ少ないぐらいだ、グアンタナモを支持する、と言う人もいた。

 これが一気に、グアンタナモ収容所閉鎖への道を開くのだろうか?



http://news.bbc.co.uk/go/pr/fr/-/1/hi/world/americas/5068228.stm
by polimediauk | 2006-06-11 07:36 | 政治とメディア
 

 BBCを見ていたら、イラクのマリキ首相が、アルカイダのリーダーの一人と言われるザルカウイが殺害された、と発表したと言う。バグダット近くの空からの攻撃で命を落としたようだ。

 ザルカウイは、イラクのスンニ派の暴動・攻撃の中心人物といわれている。ヨルダン生まれのザルカイだが、これまでの人生に関しては諸説があり(少なくとも西欧メディア側からすればだが)、なぞが多い人物として描かれることが多い。今年初めには、ビデオテープが公開され、その中で、米国が「傲慢」と述べていたという。

 BBC記者によると、殺害が本当であった場合、イラクで続く反乱攻撃を抑える、という意味で及び、まだ首相になってから日が浅いマリキ氏にとっても、重要な展開となる。

(追記)

 この件に関して、何故殺したのか?という疑問が湧いていたら、ザルカウイの一味といわれるグループに人質となって殺された、ケン・ビグリーさんという英国人の弟(か兄)が、ザルカウイの家族のことを思うと、悲しい・・・というようなことをテレビで述べていて、やっぱりなあ、と思った。

 殺さずに、裁判にかける手はなかったのか、と思う。
 
 しかし、もちろん、懲罰的というか、見せしめと言う戦略的意味が十分にあって、米側はそうしたのだろうが。私が思うのはあまっちょろい考えに過ぎないのだろうが。
by polimediauk | 2006-06-08 16:48 | イラク

世界の新聞発行部数


 世界新聞協会(WAN)の発表(5日)によると、世界中の新聞発行部数(有料+無料)は2005年でやや増え、新聞広告による収入は4年間で最高額を示したという。

http://www.moscow2006.com/eng/news/congress/1375/

 発行部数は前年比1・21%増。過去5年では7・8%増。無料の日刊紙は全発行部数の中で6%を占め、欧州では17%を占める。有料新聞だけを見ると、前年比0・56%増だ。有料新聞の発行部数は4億3900万部。無料新聞を入れると4億6400万部。

販売収入では0.56%の増加、過去5年では 6%増。

 WANによる調査結果は、モスクワで開催されている第59回世界新聞大会で発表された。

 新聞をオンラインで読む人は増え続けており、2005年で前年比8・71%増。

 発行部数の大きな新聞をリストアップすると、10紙の中で7紙がアジアの新聞だった。中国、日本、インドの新聞の発行部数の合計は、全体の62%になる。部数の大きさを国別にすると、トップが中国で、9660万部、インドが7870万部、日本が6970万部、米国が5330万部、ドイツが2150万部など。
 
 日本では、新聞販売額はー0・97%で、過去5年間でー2・81%。中国では逆に年間で8・9%増。

 欧州に目を向けると、有料新聞の発行部数はEU諸国の中でー0.61%だったが、無料新聞では1・34%の増加。有料新聞の部数の減少は長らく続いている。

 全世界で発行されている有料日刊紙は7,700で、無料を入れると7,862紙。無料日刊紙162は毎日2790万部発行されており、この中で欧州発行分は1860万部。

 2005年に小型タブロイド判にサイズを変えたのは28紙。2001年から数えると85紙になる。スペインでは、無料紙が新聞市場の51%を占める。ポルトガルでは33%、デンマークでは32%、イタリアでは29%。

 もっと詳しい数字が先のアドレスで分かるが、この報告書そのものは700ページあり、購入することもできるようだ。(ウエブ記事参照。)

 無料紙が特に欧州で伸びている様子が如実になったように思った。


 
by polimediauk | 2006-06-06 18:31 | 新聞業界