小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 少し日にちが過ぎてしまったが、4月中旬、BBCのインターネット部門の人に数人で話を聞いたときのことを紹介したい。

 外国プレス協会から取材を申し込んでいたが、なかなかOKが取れず、実現までに数ヶ月かかったという。BBCは取材される側となると、なかなかOKがでない・・・私自身もこれが実感だ。情報をたくさん出しているようでも、いざとなると中々・・なのである。

 BBCニュース・インタラクティブ部門の副編集長ポール・ブラナン氏との一問一答。

―どれ位の人がニュースサイトにアクセスするのか?

 毎月のページ・ビューは数億から10億ほど。一日500万のユニークユーザーがある。英国のニュースサイトとしては最大。

―スタッフ数は?

インターネット部門はBBC内の様々な分野にコンテンツを提供する役目を持つ。ジャーナリストは200人。

―どのようなことを心がけているか?

 人々は様々な番組を様々な形で、様々な時に視聴したがっている。古い形の決まった時間に何かを出すというのは窓から投げ捨てだ。スーパーのようなものだ。何時にトマトやベーコン、パンを買ってもいい。そろっていなければ他のスーパーに行くのと同じだ。

 ニュースは様々な形で入手できる。だから、BBCとしては、オリジナルのジャーナリズムで勝負する。

 ニュースの制作は今どんどん変わっている。ユーザーがコンテンツを送る時代だ。そこで変化するのか、変化を無視するか。今が一番エキサイティングな時なのだと思う。すべてが変わっている。変化はとまらない。変化は早くなるだけだ。

 BBCも変わり時。受信料は希望額よりもかなり少なかった。政府から、英国をアナログからデジタルにする使命も受けている。BBCの制作をロンドンから移動する計画もあって、コストを切り詰める仕事を迫られている。

―受信料の将来は?

 今回の受信料制度はこれが最後。6年後にはもう受信料制度はなくなっていると個人的に思っている。

 もう人は受信料を払いたくないのだと思う。税金のようなものだと。払わないと牢獄にいくこともあるし、その人が払える能力があるかどうかは別にしても一定額を払わないといけない。最初の頃はそれでも良かったかもしれないが、今は選択の幅が大きい。他のチャンネルもたくさんある。何故BBCが必要なのか、と人は思うだろう。好きなサービスだけに払いたいと望むのが自然だ。

―他のサイトにBBCのニュースが出ることをどう思うか?

 ニュースは様々な形で提供している。デスクトップアラート、電子メール、RSS。ヤフーやグーグルでニュースを見たい人もいるだろうから、それもOKとする。こっち(BBCのサイト)に来てもらうようにするのと同時に、BBCは多くの人に見て欲しいから、こっちから視聴者のほうに行く。こっちにだけきてもらう、という考えはしない。

―ユーザーからのコンテンツをずい分と歓迎しているようだが。

 確かにそうだ。ユーザーからのコンテンツを使うとき、重要なのは、透明性だ。どのようにトピックを扱い、どのように編集するか、何を出すかをどう決定するかを説明する。思考過程を説明する必要がある。そこで、BBCの編集ガイドラインをウエブサイトに載せている。

―意見募集「ハブ・ユア・セイ」はどのように管理しているか?

 ハブ・ユア・セイは画面上に出るよりももっとたくさん来ている。今はどれぐらいの数の意見が送られてきたかを出すようになった。どれぐらいあって、どれぐらい出して出さなかったか。怒っているメールもある。最大では6人が送られてきたメールをチェックしている。

―意見は編集してから出すのかどうか?

 編集してから出す、つまり、プリ・モデレートは中東がらみのトピックとか、あらかじめ意見が大きく分かれるようなトピックのみ。ユーザーから訴えられたケースは今のところない。視聴者は今のところそういうことを考えてないようだ。

 プリ・モデレートではない時は、自由にコメントできる。侮辱的や違法でない限り。ユーザーはうまく自己規制していると思う。

―これまでの放送分、つまりアーカイブにアクセスできるサービスを拡充しているようだが?

 受信者は既にお金(受信料)を払っているのだから、過去の放送分にもアクセスできるべきだと考えた。しかし、昔はネットのことを考えていなかったので、権利の問題をクリアする必要がある。これは「クリエイティブ・アーカイブ」のプロジェクトだ。アーカイブを使いたいというリクエストは多い。

―7・7テロなど、ユーザーからのスクープになるようなトピックが送られたとき、支払いはどうしたのか。今後は?

 現在は支払わないことにしている。お金のためにいろんな行動をするかもしれない。警察を無視したのかどうかなど。責任が出てくる。ニュースの商品化は私たちの望む方向ではないと思った。

―ある情報がニセモノではないことをどうやって確認するのか?

 ある時、森林の火災という写真が送られてきた。実は本に使われた写真だった。スカイテレビに送られて、スカイテレビもガーディアンも使った。本物であることを確認する最善の方法は、撮った人に話しかけて、チェックすること。1枚しか撮っていないと言うならまず変だし、何をしていたのか、どうやって撮ったのかというと、本人に聞く。これで大体分かる。
by polimediauk | 2007-05-30 23:58 | 放送業界

elmoiy さんに教えていただいた、ロシアのプーチン大統領に関するタイムズ記事を読んでみた。Putin the Terrible, we love you という27日付の記事で、日本語にされている方もいる。(以下の画面の下にスクロールして見つかる記事のようだ。)

  ttp://blog.goo.ne.jp/kitaryunosuke/d/20070527
  Putin the Terrible, we love you
  (恐怖のプーチン、愛してるぜ)
   Mark Franchetti
   Times:May 27, 2007


 読んでみて、おもしろくて感嘆!だった。

 西欧のプーチン観とロシア国民のプーチン観がいかに違うかを書いてある。去年、元ロシア人スパイがロンドンで殺された件にからめて。

 常々、英語だけでプーチン+ロシアのことを読むと、いつも否定的で、プーチン=おどろおどろしいく怖いやつ、というイメージがある。表現の自由の侵害、チェチェン戦争などなど、「黒」的な印象を私は持っているけれども、それでも「全部が悪い」ことはないのだろうなあとうすうす感じていたのが、この記事を読んですっきり、という感じである。

 実際に誰が元スパイを毒殺したのか、私もさっぱり分からないが、それでも、「100%の悪」と英語圏のメディアが描くものには眉唾が必要である。

 プーチンに限らず、いくつか、というかちょくちょく、西側のあるイメージが実際とはずい分かけ離れているのではないか、と思うことに遭遇する。やはり、「これはこういうもの」と凝り固まって考えてしまうと、なかなかそれから抜けられないのだろう。しかし、西欧の考え=全世界共通の考えとして、英語媒体だけに注目するとなりがちな部分があり、気をつけたいと思っている。私にとっては、今熱を入れているトルコがそうで、トルコも英字紙だけを見ると、どことなく「変な国」というニュアンスがあって、これも眉唾だなあと思っている。

 ロシアに戻ると、ゲイの運動家と言っていいのだろうか、ピーター・タッチェルという英国人がいて、先日、モスクワのゲイ運動のデモの途中で、ネオナチの男性たちやキリスト教の牧師などに滅多打ちにされた。(本人の弁は以下のアドレスで。)

 http://www.guardian.co.uk/g2/story/0,,2089964,00.html 

 これもまたロシアの現実なんだろうなあと思う。

 「言論の自由」、「民主主義」という概念は、結構現実の世界では実現が難しかったりする。・・とこの頃思う。言論の自由が弾圧されると、メディアは私も含め怒り、「けしからん!」という記事を書く(私も書く)。しかし、実際、言うのは簡単だが実行は難しい。

 英国や日本ほどの言論の自由があるだけでもラッキーなのかもしれない。言論の自由度が少ない国は、ゴマンとあるのだから。
by polimediauk | 2007-05-30 02:53 | 政治とメディア

 BBCのネットに関して、今日29日付「新聞協会報」に書いたものを下に貼り付けたい。この中で、「アイプレイヤー」iPlayerというサービスが出てくる。過去7日以内に放送された番組を再視聴できる仕組み。PCの画面から、BBCのサイトを通じて番組をダウンロードする。同様のサービスが他のテレビ局でも少しずつできるようになっているが、特別な料金を払わなくてもよい、英国全体で視聴率の高い番組をダウンロードできるようになるなど、規模が大きい点とリーチ(視聴者に届く)が広い点で注目だ。

 しかし、数回の試験サービスを開始しながらも、なかなか実用化に踏み切れておらず、2週間ほど前のメディア・ガーディアンのページに、「BBCのニューメディア部門はお金ばかりかかって、生み出すものが少ない」と批判されていた。そして、うろうろする間に、民間のライバル局ITVにも先を越されそうだ。秋の実用化時期までに、他のテレビ局のダウンロードサービスがどれだけの視聴者に利用されているのか?闘い続行中というところだろうか。


BBC、番組ダウンロード開始へ
ニュースも常時ネット配信

 いつでも、どこでも番組の視聴を可能にーー。BBCのオンデマンド・サービスの柱がそろいつつある。過去7日以内に放送された番組をダウンロードできる「アイプレイヤー」の開始が4月末認められ、サイトを通じた過去の番組提供でも、番組アーカイブの公開を近く試験的に始める。今月8日には、デジタル放送のニュース専門テレビ「BBCニュース24」をニュースサイトでも常時視聴可能にした。民放も巻き返しを見せ、2012年のアナログ停波を前に、競争が激化している。

 BBCのサイトは、英国のニュースサイトの中で最も人気が高い。3月には約7億6000万のページビューを記録した。新聞では最も大きいガーディアン紙も1億5000万(同月、英ABC調べ)にとどまる。

 アイ・プレイヤーは4月30日、BBCトラストが許可した。無料でダウンロードした番組を最長で30日間、保存できる。一度視聴すると7日間、いつでも見ることができる。対象になるのはBBCの番組全体の約15%になる見込み。先週から試験サービスが開始となった。11月頃をめどに実用化する。

 アイプレイヤーの導入は、インターネットを好む若者層を取り込み、視聴者の相対的な減少に歯止めをかけるのが狙い。国策のデジタル化に率先して取り組み、受信料を正当化する目的もある。一定の時間に、テレビやラジオの前に座って番組を視聴というこれまでの習慣を変えるサービスとなる。

 過去に放送した番組や映像・音声クリップを無料で視聴者に提供するアーカイブ・プロジェクトの試験サービス「アーカイブ・トライアル」も近く始まる予定だ。1000時間に相当するコンテンツを、英国内の受信料支払い者のうち、2万人に提供する。最終的には100万時間分の提供を目指す。構想から4年たつものの、本格化には著作権の処理が課題となっている。

 海外の視聴者には「BBCワールド」を通じて有料で提供することも想定されている。1月、政府は今後6年間の受信料の値上げ幅をBBCの希望額を下回る額で決定。BBCが予定した受信料収入から約20億ポンド(約4500億円)の減額となり、国内向けにも広告を入れる可能性も検討している。しかし広告を入れた場合、受信料支払い者や民間テレビ局側から批判が出る可能性もある。

 8日からは、BBCニュース24をテレビ放送時と同様にサイトや携帯電話でも視聴できるようになった。全放送を常時、視聴可能とするのは英テレビ界では初の試みとなる。

 これに対しITVは8日、近くサイトを刷新し無料で、アイ・プレイヤーと似たサービスを始めると発表した。過去30日以内に放送された番組を再視聴できる。2万時間分のコンテンツのアーカイブも公開される。市民記者の投稿サイトも設けられる計画となっている。

by polimediauk | 2007-05-29 20:28 | 放送業界

監視社会としての英国


 監視社会として英国の話は、結構深く、どこまでやるかなのだが、日本で「ゲイトキーパー法」というのが審議されていると聞いた。これはもともと英国の法律を基にしたもの、とコメントをされた方にご指摘いただき、自分でも少し調べたのだが、うまい具合に英語と合致する情報をあまり見つけられないままだ。

 身近なものだと、銀行の口座に関わる身元情報を、英国の銀行側は政府に出すことを義務付けられているようだ。マネーロンダリングなどを防ぐ目的で、一定以上の金額が口座にあったり、「オフショア口座」の持ち主だったりすると、マネロンを疑われる可能性あるようだ。

 英国は監視カメラ(CCTV)の数やDNAデータベースの件数(日本の警察がお手本にしているそうだ)で世界一を誇る。これからも増えるようだ。これをもって「怖い監視社会」とも解釈できるが、私が、そして英国に住んでいる方なら誰でも思うのは、当局が情報を持っていること自体が怖いというよりも、当局側の情報管理がずさんというか、ややめちゃくちゃなので、出すべきでない情報を出してしまったり、間違った情報がそのままだったり、ということで大きな事件が起きる可能性が非常に高い。それで心配になる。

 英国の監視社会の状況をひとまずまとめてみた。

誰かがあなたを見張っている!?
 監視社会となった英国に懸念の声

 携帯電話、クレジット・カード、オンライン・ショッピングなど生活の電子化が進むにつれて、人は行動の足跡を必ずどこかに残すようになっている。誰かがその足跡を情報として集めている。街角では、あちこちに設置された監視カメラがあなたの行動を記録、監視する。DNAデータベースの登録件数や監視カメラの台数が世界一の英国は、まさに監視社会となってしまったようだ。

 「英国が知らないうちに監視社会になってしまうのではないかと心配している」。3年前にこう発言したのは、情報のアクセスと保護とを促進する任務を持つ、リチャード・トーマス情報長官だった。

 しかし、昨年末発表された調査報告書によると、世界最高の420万台の監視カメラが設置されている英国は既に「監視社会」だ。携帯電話、クレジットカードの支払い、スーパーのロイヤリティー・カード、「オイスター」プリペイドカード、電子カルテ、雇用主による職場での従業員のメールチェックなど、私たちの生活は誰かに何らかの形で監視されるのを避けられない状況となった。(注:報告書のダウンロードはhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/6108496.stm から、中央にあるレポートPDFをクリック)


―しゃべる監視カメラ

 監視社会の度合いは今後も強まりそうだ。2008年から、英国に住む外国人は指紋と瞳あるいは顔面のスキャン情報を政府に提出するのが義務化される。同じく08年から、イングランドとウエールズ地方の16歳以下の児童は学校での成績や他の情報を子供データベースに登録する。09年には英国在住者に生体認証情報が入ったIDカードが発行される。10年には、国民保険サービス加入者のデータベースが立ちあげられる予定で、全患者の記録が電子化され、一元管理される。

 国内20箇所には、試験的試みとして「しゃべる監視カメラ」も設置されている。犯罪につながるような行為をカメラが捕らえた場合、監視カメラをチェックしている人物が、カメラを通して通行人に注意を呼びかけることで犯罪を防ぐのが目的。通行人側からすると、突如カメラが声を発するので、度肝を抜かれる展開となる。

 5月1日、国会議員の前で監視社会の将来に関して意見を述べたトーマス情報長官は、しゃべる監視カメラは「行き過ぎ」と批判した。公的機関が新たな監視カメラの設置やデータベースの構築を行なう前に、「プライバシー侵害に対する影響を査定することが必要」と長官は提案した。また、監視カメラがどこにあるのかを示すウエブサイトを立ち上がることも提唱し、「知らないうちに監視されている」状態をなくすべきだ、と訴えた。

―監視社会の善と悪

 「監視社会」というと、権力者側が悪意を持って市民の自由を脅かすというイメージが一部にあるが、情報の管理、サービスの効率化、犯罪防止など、何らかの恩恵をもたらすことがもともとの目的だ。しかし、第2次世界大戦中、米政府が国勢調査を利用して日系米国人を隔離した例がある。また、英国では近年ID情報を盗んで他人になりすまし、クレジットカードを使う犯罪が急速に増えている。いかに悪用を防ぐかが問題となっている。

 また、悪用する意志がない場合でも、政府側の情報管理のずさんさが目立つ例として、最近、国民保険サービスが医師の募集用に使っていたウエブサイトで、部外者には公開されないはずだった応募者の個人情報がサイト上で公開される事件があった。プライバシー侵害に加え、入手した情報の管理の面でも問題が多い現状となっている。

数字で見る監視社会

137,000件:ID情報の窃盗件数(2005年)
420万:英国内監視テレビの台数(14人に1台)
300回: ロンドン市民が一日に監視テレビに捕らえられる平均回数
360万:警察の犯罪人DNAデータベースに登録されている件数

監視のキーワード


 監視テレビ(CCTV):英国の監視テレビの台数は世界最高だ。犯罪防止やショッピング街の治安維持のため、1990年代半ばから急増したが、内務省のある調査によると、実は犯罪予防にはあまり効果がなく、街灯を増やすなどの手段の方が効果的という結果が出た。スピード違反防止用の道路沿いの監視カメラの台数は1996年の30万台から2004年には200万台に。罰金の支払いも飛躍的に増えた。自動ナンバープレート読み取り機能のついたカメラは、2008年までに一日に5000万台の車を識別できるようになるという。

 データベース:監視カメラで捕らえた映像を含めて様々なデジタル・データを組み合わせると、ある人物や事柄に関する、加工しやすいデータベースが構築できる。マーケティング、薬品、警察業務、国境取締りなどに役立つ。政府は、2008年から生体認証を組み合わせて、全国民のID情報データベースの作成を予定。子供専用データベースや電子医療情報を組み合わせる国民健康サービスのデータベースなども予定。

 生体認証(バイオメトリックス):政府が発行する国民のID情報識別には何らかの形での生体認証、例えば指紋、顔や瞳のスキャン情報などが使われている。2001年9月11日の米大規模テロ以降、「テロ戦争」を戦う上で生体認証の入った情報の有効性が高まった。将来的には、歩き方で人を認証するシステムも政府は考慮中。

 追跡装置:監視カメラが捕らえた情報に、携帯電話やPC,ラジオ、電子切符「オイスター」などの利用で得られた情報を組み合わせると、ある人物の所在を高精度に追跡することができる。政府が実現を予定する個人のIDカードには、所有者がカードを使わなくても、ある一定の場所を通過するだけでシグナルを送るチップが組み込まれているという噂がある。

 DNA:警察は、犯罪人データベースに360万人分のDNAサンプルを所持している。世界最大の件数を誇り、フランスの同様のデータベースの50倍。10年前は70万人分だけだったが、2008年には420万人分に増加する見込み。警察は逮捕した人物からDNAサンプルを取るが、逮捕者が後で無実で釈放されても、その人のサンプルはデーターベースから消去されない。360万人のうち、14万人は逮捕されたが無実で釈放された人の分だ。25000人は子供の逮捕者。DNAの照合により犯人を捕まえる方法を発見したアレック・ジェフリー教授も、英国のDNAデータベースは「全市民を容疑者として扱っている」と批判する。(Source: Daily Telegraph)

 監視社会は、よく「BIG BROTHER 」社会とも言われる。ビッグ・ブラザー(偉大なる兄弟)。英作家ジョージ・オーウェルが書いた、全体主義国家を痛烈に批判した小説「1984年」(1949年出版)に出てくる、唯一の政党の指導者のことだ。国民が敬愛する対象であり、町中には「偉大なる兄弟があなたを見守っている(Big brother is watching you)」という言葉とともに彼の写真が貼られている。市民は「テレスクリーン」と呼ばれる双方向テレビによってその行動を常時当局によって監視され、思想、言語、結婚などあらゆる市民生活に統制が加えられる。英国を含めた世界各地のテレビは、男女のグループが一室で一定期間生活をし、その様子をカメラが放映する番組を「ビッグ・ブラザー」と名づけて放映している。(以上、「ニュースダイジェスト」紙5月24日号掲載分に情報を加えた。)

by polimediauk | 2007-05-25 06:42 | 英国事情

 ずい分間があいて恐縮だが、このところ、ブレア、ブラウンに関する記事(私もそれに貢献してしまっているのだが)が本当にたくさん出ている。全部読める(大体でも)人はいるのだろうか?

 それでも、私自身も含め人々がニュースを追ったり、新聞を読んだりするのは、何かしら将来へのヒントを得たいからだろう。

  今私が気になるのは(1)メディアの役割と(2)今後英国政治がどうなってゆくか、だ。労働党でも保守党でも、誰が首相になっても、とにかく生活がより良くなればいいのだろうと思うけれど、英国の政治が全く新しい次期に来ているのかどうか、全く新しいアイデアが生まれつつあるのかどうか?「ニューレイバー」に変わる、デカイテーマは何になるのか?キーワードは?

 ・・・ということが頭の中でグルグル回っている。

 別件になるが、3日に選挙があったスコットランド。英国からの独立を主張したスコットランド民族党が第一党になった。野党最大の労働党(前は与党)とほんの1議席の差だ。きわどい。

 独立したら、一体どうなるのだろう?ウエールズ(自治議会)でも与党労働党が議席を減らし、連立政権になるようだ。

 16日にはスコットランド民族党が緑の党とともに少数内閣の新政権を樹立している。

 選挙の前に「ニュースダイジェスト」用にスコットランドの独立の機運に関してまとめた分を以下に貼り付けてみたい。

ただの夢ではなくなった?
独立への機運が続くスコットランド

 ブレア政権が発足して間もなく実行された地方分権策の一環として、スコットランド議会が約300年の停止後に再開されたのは1999年だった。12世紀頃から隣国イングランド王国の武力侵攻に悩まされてきたスコットランドは、18世紀初頭、圧倒的経済力と数倍の人口を持つイングランドに合併される形で、連合王国の一部になった(1707年連合法)。既に独自の議会を持っていたスコットランドは、泣く泣く議会解散を決議したと言われている。イングランドによる不公平な併合だったと考えるスコットランド人は少なくないようだ。

 分権以前から、英国の一部でありながら、スコットランドは独自の教会、教育制度などを維持することが認められてきた。1979年、スコットランド議会成立に向けて住民投票が行なわれたが、十分な数を得られず、頓挫。8年前に実現された議会再開で、完全な主権国家としてスコットランドを英国から独立させようという声が現実味を帯びてきた。

 独立化への動きを押しとどめてきたのは経済面で一人立ちができるかどうかだった。現在でも90%の政府予算を英国からの包括補助金に頼る状態のスコットランド。果たして自力で全てを賄えるのか?独立支持派は、スコットランドの沿岸部にある北海の海洋油田からの収入に希望を託す。かつては決して裕福とは言えなかった隣国アイルランド共和国が、欧州連合(EU)からの支援金や投資優遇策で経済を飛躍的に成長させる姿も刺激となった。

 地方分権は、英国全体の人口の80%近くを占めながら独自の議会を持たないイングランド地方の住民に一定の不満ももたらした。スコットランドの議員はウエストミンスター議会でイングランドだけに関わる問題、例えば教育関連の法案にも投票できる。ところが、イングランド地方を代表する国会議員は、スコットランド議会で投票する権利はない。こうした状況に不公平感を抱く国民が増えている。BBCが今年1月行なった世論調査では、イングランド地方に住む国民の60%がイングランド地方も独自の議会を持つべき、としている。

―民族党に追い風

 独立を望む声を吸い上げるスコットランド民族党だが、世論調査会社YouGovが行なった複数の調査では、完全な独立を望む人は25%から30%ほど。しかし、スコットランド議会の権限拡大を支持する人は60%にも上った。

 ブレア首相やスコットランド出身で時期首相と言われるブラウン財務相はスコットランドの分離には反対だ。「分離すれば英国の統一性がくずれ、競争力も失う方向に向う」(ブラウン氏)と主張する。

 フィナンシャル・タイムズ紙(4月25日付け)も、経済的自立の可能性に関し、「頼みにする北海油田は10年後には枯渇する」、「提案された20%の法人税は英国全体の法人税率よりは低いがアイルランドの12.5%よりは高く、それほど魅力的ではない」と否定的な見方を示した。

 それでも、独立志向の火は簡単には納まりそうにはない、というのが大方の見方となっている。

合同法・あるいは連合法(ACTS OF UNION)は、スコットランド王国とイングランド王国がロンドン・ウエストミンスター議会の下で政治的に結合することを定めた法律だ。1707年5月1日発効。17世紀までに、既にイングランド王はスコットランド王を兼ねるようになっていたが、イングランド側はもしスコットランドが将来的に独自の王を持った場合、イングランドに侵攻することを危惧した。一方のスコットランドは飢饉の影響やスコットランドの交易を制限する「航海条例」をイングランド側が出したことなどから経済の低迷状態が深刻化し、合同法を受け入れることを余儀なくされた。全25条のうち15条は経済に関わるもの。合同法により、18世紀の欧州で最大の自由経済圏が作られたという。

by polimediauk | 2007-05-22 04:05 | 政治とメディア

 久しぶりにガーディアンのネットを開けたら、デザインががらりと変わっているのに気づいた。http://www.guardian.co.uk/

 何となく、タイムズやテレグラフに似ているような。最後のアップデートは1分前、とあり、刻一刻と変わるニュースも入る。この点ではBBCのニュースサイトみたいだ。

 テレグラフが先週新しいブログサービスを始めた。このエキサイトのように、読者が自分のウエブ頁を作るのだ。マイ・テレグラフというブログを作れるようになっており、60代のある知人も、これで早速始めた。今までは主にメールとたまにウエブで天気をチェックするぐらいだったが、「簡単だ」「いろいろできる」と書かれてあるので、やってみたいと思うようになったと聞いた。約90万の読者がいて、どれぐらいの人がブログを作ったのか分からないが、相当サーバーが大きくないと無理だろうから、ずい分お金があるのだろう。既存読者の取り込みなのかどうか。

 BBCは視聴者を取り込んで、画像やニュースなども随時募集している。英国のデジタル革命はBBCがやる(デジタルUK)、ということで、その理由で受信料も上げてもらっていた部分があった。テレグラフや他のメディアもデジタル革命に参加する、ということだと、「もっとお金が欲しい」と言いにくくなる。

 新聞のウエブサイトがBBCをライバル視している様子が見て取れるような気がする、ガーディアンやテレグラフの動きだ。
by polimediauk | 2007-05-14 00:41 | 新聞業界

―ブレア旋風

 10日、ブレア首相が6月27日に退任すると発表した日、英メディアはこの話題で持ちきりとなった。

 スカイニュースには元内務大臣のデビッド・ブランケット氏や元教育担当大臣などが出ている様子が見えた。イブニング・スタンダード紙によると、それぞれの出演料が日本円だと約400万、100万ほど。驚いた。スタンダード紙の特別号(ブレア特集)を開くと、今はEU委員になっているがもともとはブレア氏のコミュニケーションの参謀役だったピーター・マンデルソン氏の記事があった。改革の火を消すなというようなタイトルだ。次期首相候補のブラウン財務相へのメッセージともとれる。(マンデルソン氏はブレア派。)

 夕方から夜のニュースもブレア氏退任のトピックがメインで、それぞれ特集を組んでいる。首相在任10年なのだから、振り返って何が達成されたのか、されなかったのか、人々は知りたいと思うだろうし、当然なのだろうが、それにしても、と思っていると、チャンネル4の7時のニュースで、保守党議員のボリス・ジョンソン氏が出ていた。氏は、「退任会見でお祭りのようになっているけれど、実はクーデターの結果、こうなった」と指摘。「騙されてはいけない」と。
 
 確かに、ブレア首相はあと2,3年は首相の座に当初いるつもりだったので、それが急には早まったのは、直接的なきっかけとしては、昨年秋、労働党の議員の一部が「辞めるなら時期をすぐ発表するべきだ」と一種の反乱を起こした事件があった。これはブラウン財務相が黒幕だったと言われている。

 そこでジョンソン議員によると、「ブレア氏は背中を押されて去ってゆく。出されたのだ」と指摘。「しかし、昼の会見はいかにもそれを隠し、自分の選択で去ってゆくかのイメージになっている」。

 同じ番組にはブレア氏の片腕で、官邸のメディア戦略を担当していたアリステア・キャンベル氏も登場。いつもの通り、ブレア氏をほめる。

 なんだか恐ろしくなってきた。本当にプロパガンダだ。「すばらしい首相」、「愛された首相」・・・そんなイメージを伝えようとブレア・シンパが続々とテレビに登場する。

 冷静に考えると、今日は「退任の日を発表した」だけで、別に最後の日でもなんでもない。ここまで大々的にテレビ放映させるような、大仕掛けにする必要があったのか?

 もちろんないと言っていいだろう。声明文を出すだけでいいではないか。ドラマチックにする必要はない。つまりは、ミーハーというか、ミー、ミー、ミー(自分、自分、自分)とうこと以外には理由はあるだろうか?

  BBCの「ニューズナイト」を見ていたら、ここにもキャンベル氏が出ており、マンデルソン氏はナレーター役。元保守党党首のマイケル・ハワード氏も出ていて、キャンベル氏に向かって、「人々がブレア氏や政治に対する信頼感をなくしたのは、あなた(キャンベル)のメディア戦略のせいだ」と指摘。私は、「よくぞ言ってくれました」という気持ちで一杯になった。

 マーサ・カーニーというキャスターのレポートの中でも(ニューズナイト内)、「労働党に3期続けて政権をとらせてくれた首相だったが、本当に何かを達成したのかというと、何もなかったのかもしれない」と終わっていた。

―11日もブレア、ブレア、次第にブラウン

 11日の紙面もブレア退任会見一色。「サン」には、「Missing you already 」というタイトルが。まだ去っていないのに、「もうあなたを惜しんでいますよ」とでも訳せるだろうか?この文句は、元々米国(?)のマクドナルドで客に言う言葉と聞いた。
 
 どこもかしこも紙面はブレア、ブレアで、いくらなんでも読者もこれでは疲れるだろう。

 しかし、「実は退任予定日を述べただけ」、「まだ一ヶ月以上首相の座にいる」などなどが見事に隠されて、いかにも大きなことが起きた、いかにも英国民全体がブレア氏のことを考えている、慕っている・・というイメージができたように思った。とにかく、ブレア政権のメディア戦略の中心人物だったキャンベル氏とマンデルソン氏が出ずっぱりなのだから、相当の力が入っている。

 昼頃、今度はブラウン財務相が正式出馬宣言し、演説。読売の報道(11日付、ヤフーニュスから)を見ると、
 
 ブラウン氏はロンドンで行った演説で、ブレア政権のイラク政策について、「誤りがあった」として、近く中東地域を歴訪する考えを示した。内政の優先課題としては、議会の役割強化などを掲げ、側近政治と指摘されたブレア政権との違いを強調した。

 ブラウン氏は演説で、ブレア政権が発足した1997年当時とは、「異なる課題に対応する」と強調。イラク政策では、政治的和解や経済的な発展に貢献する考えを示した。イランの核問題については、「今後30日以内に状況を再検討する」と述べ、米国と連携して対応する考えを明らかにした。内政面では、教育・医療の改革に加え、「より良い憲法が必要で、憲法上の改革について国民的な合意を得たい」と訴えた。

 なかなかいい感じでスタートしたようだ。ヘアスタイルもちょっと変えたというか、カットに行った様で、BBCラジオ(昼)では、市民が「なかなかいい」、「新鮮」と好評。それでも、午後遅くになって、野党議員が「全然新鮮味がない」「ヘアスタイルを変えてもダメ」・・・などなどコテンパンにけなしていた。

 シンドイことである。野党議員だから、ブラウン財務相をけなすことを期待されているから、こういう論調になるのだろう。24時間ニュースがあると、政治家としてはゆっくり考える暇もなく、どんどん発言していかないといけない。

 こうした傾向はここ20年ぐらい、ずっと英国では批判されてきた。政治家やメディア評論家たちによって。政治をダメにする、まともな議論が出来なくなる、というのである。

 ところで、今朝、欧州系シンクタンクで政治家でもあった人に話を聞いていたが、サッチャーやブラウン財務大臣と比較して、ブレア氏は「軽い」のではないか?といったところ、ブレア・ブラウンはあくまでも二人三脚であって、考える部分はブラウンでも、党を代表したり、党の考えや政策を表現するのがうまいのがブレア、という見方を指摘された。そういう意味でもブレア氏は「非常に優れた政治家」。「もしブラウンが党や国を代表することになったら、国民はいやというところまではいかないとしても、ブレアが代表してくれたほうが、よりハッピーと感じてきたのではないか。最終的に良い首相だったかと聞かれると、多くの人がイエスと答えている」。

 明日の紙面はブラウン氏のスピーチがトップ記事であることは必須だ。
by polimediauk | 2007-05-12 01:00 | 政治とメディア

 「自分が正しいと思ったことを実行した」

 ブレア首相が、英中部セジフィールドの選挙区で会見をし、6月27日で労働党首を辞任し、首相を退任する、と発表した。

 テレビで様子を見ると、会場には労働党支持者・ブレア支持者で一杯だった。ブレア氏が出てくるまでに、音楽が流れ、出席者の数人が手で拍子をとるなど、一種のコンサート状態。「ありがとう」と大きく掲げたプラカードを掲げた人もいた。

 自分の最高の支持者たちの前で、拍手を受けながら、10年間(党首としては13年)を振り返る・・・何とパーフェクトな設定だろうか、自分を最高のイメージで出したい場合は。ドラマというか、一種の演劇の1場面のようだった。

 ブレア氏が出てくると、大きな拍手。ちょっと打ち解けて仲間内のジョークなどを言いながら、首相としての在位を振り返った。最後の方の決めせりふは、「自分が正しいと思ったことをやった」。言葉をかみ締めるように話し、大見得を切ったような感じで、歌舞伎チックでもあった。

 見ているうちに、これは大きなプロパガンダだなあと思った。一種のショーと言ってもいい。この会見の様子は世界中で流れるはずだ。自分が好意的に見える最高の舞台を用意し、スピーチを行ったブレア氏。どこでいつこの会見をするかは昨日メディアに一斉に流れたので、英メディアは十分な準備をすることができた。BBCウエブサイトも「ブレアの10年」真っ盛りの報道だ。ずっと準備してきたのだろう。http://news.bbc.co.uk/

 スピーチの途中で、「9・11テロで3000人が亡くなった。ブッシュ大統領とともに戦うことになった」というようなくだりがあった。「3000人」という言葉が響いた。何しろ、イラク戦争では2003年以降数十万人(65万という説もある)もが亡くなったと聞く。罪深いことに思えて仕方なかった。

 また、その前に、「英国は介入する国」になった、というくだりも。これは誇ることなのだろうか?

 内政にもいろいろ触れたが、ヤフージャパンのニュースを見ると、日本の新聞各紙が詳しく報道しているようだ。1つ、子供の養育ケア(マザー・ケア、母親が外に働きに出かけられるように、政府が出すお金)も欧州1になった、といっていたが、英国は働く母親への支援が少ないことで有名というか、この点はかなり大きな不満の1つになっているはずで、???とも思ったけれど、数字だけ比較したら欧州で最も大きいのかもしれない。

 さて、在任中の特徴は?コメントを下さった方も少し触れていたが、右・左の境界線がぼやけた点をまず考えてもいいのかもしれない。

 ブラウン財務相(次期首相候補)のアドバイザーだったデレク・スコット氏によると、ブレア政権というと有名な「第3の道」だけれど、これは実は「あまり実体のないものだった」という。

 「第3の道」とは? 毎日新聞(10日付け)によると、市場経済を重視する改良型社会民主主義のこと。

 デレク・スコット氏によると、「現労働党政権の経済政策はその前の保守党政権の継続と言っていい。第3の道を提唱したアントニー・ギデンズ教授の言うことも、たいしたことない。ブレア政権が第3の道といったのは、便宜上。中身はあってないようなものだった」。

 また、ブレア・ブラウン政権下で経済が好調だったのは、「サッチャー経済の効果が出てきたから、英中央銀行を独立化させたから、国際的投資環境の変化、欧州為替相場制度をから抜けたこと」が要因だと分析。ブレア政権は形を変えた保守党政権だった、ブレア氏はサッチャーの後継者などという見方を裏書した発言となった。

 今日は一日ブレア氏の話題で持ちきりだろう。明日の紙面も。ブレア氏にとって、これほど痛快なことはないかもしれない。

 

 
by polimediauk | 2007-05-10 22:11 | 政治とメディア

 ブレア英首相の退任予定発表が、明日に迫った。現在のところ、明日の朝10時(日本時間の午後6時)官邸で発表するか、昼(日本の夜8時から9時頃)選挙区のセジフィールドかで、会見がある。

 ブレア氏に関する雑感を少し書きたい。日本でのブレア氏の評価は今でも高いと想像するが、英国では、まず人々の頭に浮かぶのはイラク戦争であろうと思う。「嘘をつかれた」という思いはなかなか消えない。北アイルランドの和平合意達成が自他共に認める最大の功績だろうか。今日の紙面では、インディペンデント紙で「奇跡」と書かれていた。

 10年の首相在位を振り返ると、一体何を達成したのか?経済が好調だったので、そういう意味でいろいろ成し遂げたと挙げることもできるのだろうが、「サッチャリズム」に該当するような大きな社会変革を成し遂げたのか、高い信念があったのかどうかというと、どうなのだろうか。「第3の道」というのが有名になったが、これも心から信じていなかったという説もある。

 週末からブレア氏の10年を振り返る記事が新聞に結構載るようになり、まとめて少し読んでみると、「信念のある首相ではなかった」、「内閣や官僚を信頼せず、自分たちの仲間内だけで物事を決めていた」、「どう見せるかに力を入れた」、「学生時代は全く政治に興味がなかった」などなど。タイムズ紙のコラムニスト、マシュー・ペリー氏がBBCのラジオ4で言っていたのだが、「ブレア氏がやってきたことは、前の政権の政策を継続しただけだ。たいしたことをしていない」。他の出演者は驚いていたけれど、「退任後、本当に自分の興味を持つことに、本気で取り組んでみたら?とブレア氏に言いたい」と述べていた。かなりひねた見方のようにも聞こえるとは思うが、何せ、これまで出版されたブレア氏の自伝を読んだコラムニスト(オブザーバー紙)も同様のことを言っているので、一理あるのかもしれない。

 ガーディアン紙のカメラマンでダン・チャンという人がいる。何度か写真家賞をとっているカメラマンでブログも書く。前に会う機会があって、ブレア氏を撮った時の印象を聞いてみた。「どんなに写真を撮っても、どんな人物か読めない人だった。目を覗き込んだら、空っぽだった」。これも驚きの発言だが、今いろいろ考えると、分かるような気がしないでもない。イラク戦争も含め、何がブレア氏の思想面での原動力だったのか?この答えはなかなかでない。

 アンケートを見ると、国民の大部分はブレア氏に信頼を置いていないが、それでも、「良い首相だった」と思う人が多いようだ。

ー議会でのパフォーマンスは?

  月曜日のBBCのラジオ番組Today in Parliament (ウエブサイトから番組を聴けるようになっている。来週の月曜日には更新されてしまうが)が、ブレア氏の議会でのパフォーマンスを振り返っていた。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/bbc_parliament/3081534.stm

 最初にブレア議員が議会で発言したのは1983年。英国北部のアクセント+エスチュアリー英語(ロンドンの今風英語の一つ)が突如混じる話し方、と分析されている。

 議会での討論をあまり好まないタイプだったという。議会での討論よりも、テレビやラジオ、スピーチなどで自分の言いたいことを伝えるのを好んだという。これはおそらく、ニュー・レイバーの議員たちがそうだった可能性もある。

 また、首相になってからは、法案への採決に加わった回数が、他の首相と比べても非常に少ないという。それまで週に2回あった、首相の「クエスチョン・タイム」という時間(首相に与野党の議員が質問する形をとる)も、週1回になってしまった。

  しかし、2003年3月、イラク開戦直前、議員が採決をする前のスピーチは、「最高」のレベル(労働党トニー・ライト議員)だった。私自身もこのときのスピーチの記憶がある。「今こそ行動を起こすべきだ、英国がリードするべきだ」という、非常に感動的なスピーチは誰が聞いても心が熱くなるほどだ。今から考えると、舞台劇の名場面の1つのような感じもあった。(この時の様子もこの番組でちらっと放送される。BBCのウエブサイトを開けば、どこかでこの時のスピーチのみが聞けそうである。)戦争の前に議会で参戦すべきかどうかを採決にかける、というのもこれがはじめてだったらしい。

 労働党の党首だが、中身は保守党(ミドルクラス、オックスフォード大学出身)といわれてきたブレア氏。

 英紙の報道によると、ブラウン財務相が首相になったら、毎月開かれていた首相会見はなくなるか、ぐっと回数が減るようだ。毎月、1時間、ジャーナリストたちと過ごしてきたブレア氏。なかなか、これを維持できる人はいない。(ブラウン氏がどんな首相になるのか、どんな政策を打ち出すのか、現時点でははっきりとしていない。英紙の政治記者たちがそう書いている。しかし、何かしらあっと驚くことをするのでは、とも言われている。英中央銀行を政府から独立させたように。)

 明日の会見だが、あくまで退任予定日の発表であって、明日退任するわけではない。6月末頃退任し、末から7月頭にかけて新しい首相が活動を開始する見込みだ。

 退任後は何をするのか?に関しては、「英国ニュースダイジェスト」のサイトが詳しい。(5月10日号 ウイークリーアイ)

http://www.news-digest.co.uk/news/component/option,com_wrapper/Itemid,25/
by polimediauk | 2007-05-10 02:54 | 政治とメディア

 北アイルランドで自治政府が復活した。4年半ぶりに、北アイルランド議会が始まり、自治政府の第1、第2首相の座やそれぞれの閣僚の人事を決めていく様子が、「BBCパーラメント」というチャンネルで延々と実況中継された。

 最終的には南のアイルランド共和国との統一を目指すシン・フェイン党のメンバーは、最初にゲール語(アイルランド語)で話し、それから英語で話している様子が映った。ゲール語を話すとき、紙を読んだり、やや自信なげにも見えた。それでも、英国の一部であることを強く望む、ライバル政党のDUP(民主統一党)のメンバーからしたら、いやだろう。

 その前の段階では、副議長を誰にするかなどの議論の過程があったが、時々笑いが起きたりして、緊張感とうれしさとがミックスしたような雰囲気だった。長年のライバル・血みどろの内紛状態だった2つの勢力を代表する政党、つまりDUP(プロテスタント系)とシン・フェイン党(カトリック系)の代表が、第1首相と第2首相になった。

 第2首相となったマーチン・マッギネス氏は、カトリック系の民兵組織IRA(アイルランド共和国)の「テロリスト」だったといわれる。武力闘争をしていた人物の一人だと。そういうシンフェイン党とは「絶対に手を握りたくない」というのがプロテスタント系勢力のスタンスだったけれども、昨年、北アイルランド担当大臣から、「自治政府再開のめどがたたないようなら、給料をストップ。自治政府そのものが永久停止になる」と言われ、紆余曲折があって、今日の再開となった。

 マッギネス氏と第一首相のイアン・ペイズリー氏(DUP党首)は、既に今月初旬スコットランドを共に訪れ、北アイルランドへの投資計画などを協議するために、スコットランドにいたブラウン財務大臣と会談している。一方のシン・フェイン党の党首ジェリー・アダムズ氏は、北アイルランド警察との話し合いを開始。プロテスタント系が圧倒的に多い北アイルランド警察を、長い間(今年1月まで)、シン・フェイン党は認めてこなかった。

 これからどんどん進んでいくのだろうけれど、気になるのが、暗い過去の様々な清算だ。例えば、北アイルランドの警察が、実際にプロテスタント系政治勢力や英政府(情報機関)と「つるんでいた」件。これは北アイルランドにある警察オンブズマンが去年明るみに出した事件だが、過去の清算をするには、過去に何があったかをはっきりさせ、違法行為をした人は相当の懲罰などを受ける、というステップが必要と思われるが、英情報機関がプロテスタント系勢力のチンピラたちから情報を取るために、違法行為があってもつかまえないという動きをとっていた可能性があるらしい。今までは、もっぱらIRAの「テロ行為」が悪い、あるいはプロテスタント系民兵組織の暴力行為が悪い、何とかしよう、ということに焦点が置かれていたが、英政府自身も様々な違法行為に関与していた可能性が高いと言われ、どこまで「清算」があるのかな、と思ったりする。きれいごとではないな、と。

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 テレグラフの「ウエブ・ファースト」戦略に関し、5月1日付の新聞協会報に書いたものに付け足したものが以下に入れたい。この号は、米国の新聞業界の話も特集として載っている。もし入手できたら、新聞業界に関心のある方には参考になるだろう。米国の新聞のオンライン責任者がよく口にするのが「オンライン・ファースト」、「ビデオ」、「ネットワーキング」だそうだ。紙よりもウエブで最初にニュースを流し、ビデオをウエブに載せ、USA TODAYでは、オンラインコミュニティーに力を入れているそうだ。

 また、オンラインに力を入れるのは、収入の8割が広告に頼っているためであるらしい。つまり、紙の新聞を買って得る収入は2割だけなのだ。英国ではどうかというと、私自身正確な数字がないのだが、広告:販売が半々、という記事を見たことがある。英国は定期購読の比率が低く、ある新聞の報道では、13%と書かれていた。殆どの人が、駅やニュース雑誌の販売店で、その日の紙面を見て買うようだ。私自身、定期購読よりも、その日の朝、買いに行く新聞の数の方が多い。


テレグラフ
スクープもウエブ優先

 デーリー・テレグラフなどを発行するテレグラフ・メディア・グループが、ウエブ戦略実現のため、4580万ポンド(約109億円)をかけてロンドン・ビクトリアの新社屋に移転してから4月で半年経った。

 テレグラフは、近年、所有者の交代、新経営陣による大幅な人員削減に加え、編集長やデスク陣にも重なる辞任や交代が続き、不安定な時期を経験した。心機一転のメディア戦略は、いち早くネットに力を入れてきたガーディアンなどの後追いでは?という懸念も一時出たが、巨額費用の投資は「いつでも、どこでも、あらゆる形式」で、読者にニュースを届ける体制作りを目指したもの。スクープをウエブ優先で伝えることにも、ためらいはない。その背景には読者の広告主の「ネットへの移住」がある。

 青いじゅうたんが敷き詰められた編集局の中心部にはハブと呼ばれる編集会議の場所が設けられ、ここから車輪のスポーク状に記者用の机が並ぶ。壁面の画面にはBBC、スカイニュースなどテレビやニュースサイトが大きく映し出されている。20万ポンドを投じたとされるテレビやラジオのスタジオも同じフロアに配置された。

 この目的は、紙媒体、ウエブ、音声・映像といった媒体の区別なく、常時ニュースを提供することにある。記者は記事を書くだけでなく、マイクやビデオカメラの前に立ってリポートもする。編集長やデスク陣が集まるハブが、様々な媒体に情報を発信する情報を統括する場所となる。

―ITNが映像を編集

 動画への取り組みの1例が経済番組「ビジネス・ショー」。記者が社内のスタジオで専門家などにインタビューした映像をITN編集する。記者が確認して昼休み時にはウエブで発信する。ITNがテレグラフ用に独自に作ったニュース映像も流される。現時点で、テレビ局並みの編集作業を自社で扱う予定はないという。

 PDF版の「テレグラフPM」も平日夕、ウエブ上で2回発行される。午後4時頃には翌日の紙媒体で使うニュースの大部分がネットに載る。ルイス編集長は、「どんな形式でつたえるかに、こだわりはない」として「ウエブファースト」にも積極的な姿勢を示す。ガーディアンのように、ネットと紙媒体を2つの対立する存在としては考えていない」という。

グレード・BBC経営委員長がライバルとなるITVに移籍することを伝えた昨年11月のスクープは、まず携帯電話向け(英国で大人気の「ブルーベリー」)、オンラインサイトが続いた後、翌日付の活字版に掲載された。

 携帯電話やオンラインに流したのは、他紙が遅版で追いつける時刻だった。しかし、「テレグラフのスクープだと分かるように報じてもらえばよい」(ルイス編集長)と判断した。

 テレグラフ・グループが編集室の移転と新ウエブ体制実施にかけた費用は4580万ポンド(約109億円)ほど言われる。デーリー・テレグラフの発行部数はほぼ90万部を維持しており、高級紙の中でも未だにトップの座にある。

 マクレナン最高経営責任者は、インディペンデント紙の取材の答え、ウエブ対応への積極的な投資の背景に、読者とともに広告主もネットに「移住」していることを挙げた。2006年の英国のオンライン広告費は20億ポンドを超えた。テレグラフの案内広告を見ても、活字版が年間4%減の一方、ネットは9%の伸びを示す。

 テレグラフの競合相手はもはや他の英高級紙だけでなく「BBCやグーグル・ニュース」になっており、若者層がニュースをネットで見る比率が高くなっている傾向を考えると、「今動くしかないと思った」。

 ―マルチメディアの競合相手

 新聞社のネットあるいはマルチメディア戦略に対し、否定的な声は英メディア業界内部にも存在する。インディペンデント紙のケルナー編集長は「ポッドキャスティングなんて、誰も聞いていない」、(ガーディアン紙3月19日付け)と一蹴している(!)。(実際そんなことはないが・・・。)しかし、デジタル革命に無関心というわけではなく、ネットの「パイオニア」とはならずに、他社の試みの後でじっくり歩を進めてゆきたいと語る。

 テレグラフの紙と他媒体の区別をつけない方針は新聞社としては斬新な試みだ。一方、記者への負担が増えたことも手伝い、分析・解説記事に時間を割かない風潮が出てきたと指摘する声(テレグラフ筋)も一部に出ている。また、英国で最大のニュースサイトBBCと競う上で今後、内容の差別化が課題に1つになりそうだ。


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 一読者として思うのだが、新聞業界がネットにお金をかけるようになって・・ということだけれども、情報の受け手からすると、紙でもネットでもビデオでも何でも構わない感じがする。ただ、やはりどうしてもネットで情報を取る比率はどんどん高まっているし、部屋に新聞や雑誌を貯めるスペースも無限にはないわけだから、何でもネットに入っているといいな、と思う。

 個人的に気になっていることは、時間である。音声・動画クリップは聞く・見るのに一定の時間がかかる。見出しだけ読んで、というわけにもいかない。音声・動画クリップがダメというのではなく、一つのことに関して情報を集めるのでも、とにかく何でも時間がかかる。どれだけの情報に生きている間に接することができるのか?あっという間に情報(+知的刺激)が入手できないものかと夢想する。
by polimediauk | 2007-05-08 20:36 | 新聞業界