小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 以前、痴漢をしていないのに痴漢犯と間違われるという「それでもボクはやっていない」という邦画のことが英エコノミスト誌で紹介されたことがあった。間違われる人は意外と多いのかもしれないが、レイプとレイプ報道の問題点を指摘した英報告書が、先日、出た。

 これはもともとインディペンデント紙で報道されたトピックだった。
http://www.independent.co.uk/news/media/report-calls-for-changes-to-rape-coverage-786543.html
 
 ポイントは、レイプ事件では「レイプされた女性(圧倒的に犠牲者は女性)が悪い」とする見方や、レイプに関して一定のイメージがつきまとうため、これにそぐわないレイプはレイプと見なされず、裁判でも陪審員が有罪判決を出そうとしない傾向がある、という点だ。もし有罪率が「事実にそぐわない報道」のために極端に低かったとしたら、問題だ。一体事実はどうなのか?

 紹介されていた報告書を取り寄せ(www.eves4women.co.uk) 関連記事を英新聞のネットで探してみると、確かに有罪率が極端に低いようであることが分かる。

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/rape-victims-failed-by-lack-of-funds-say-campaigners-809604.html
http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/woman-who-blamed-herself-for-rape-jumped-from-bridge-774375.html

 BBCサイトやタイムズサイトでもキーワードを入れるとかなり関連記事があった。

 レイプ事件は本当にレイプだったのかどうかの判断が難しいと言われる。なかなか、公平な判断がしにくい、と。また、「有罪率が極端に低い」という前提そのものが正しくない、という見方もある。「やはり女性に責任があるのだ」という見方も。

http://commentisfree.guardian.co.uk/david_cox/2007/09/feminisms_rape_fallacy.html

 いずれにしても、この報告書の内容とその意味合いを、先月、「新聞協会報」に書いた。以下はそれに加筆した。

英レイプ報道、「特殊例伝え有罪率低下」 慈善団体が報告書

 メディアが特殊な事例を多く報道することが、レイプ事件の有罪判決率の低さに影響しているーー。英国の女性支援のための慈善団体がまとめた報告書によると、メディアが伝えるパターンに当てはまらない性犯罪事件では、陪審員が被害者の訴えを信用せず、無罪を評決する傾向があると指摘した。英報道苦情処理委員会(PCC)は、特殊な事態を取り上げるのが報道だと反論している。

 報告書は、2月下旬、慈善団体「イーブス」が、女性に対する暴力の撲滅を目的とする「リリス・プロジェクト」運動の一環で作成した。2006年に英主要紙とBBCのニュースサイトで報道された、136本のレイプ・性的暴力事件を対象に調査。内務省が発表する「英国犯罪調査」などが記載する動向とのかいりを指摘した。

 まず加害者は知人、友人、家族らが80%以上を占める。しかしメディアが伝えるのは、被害者の見知らぬ人物が半数に上る。発生場所も戸外など公共空間は全体の13%にとどまるにもかかわらず、報道では54%を占める。発生件数比では5.7%しかない有罪判決は、報道で取り上げられた事件では48.5%にもなる。身体に大きな傷痕が残るほどの暴力も、実際以上を占めた。

 これらの点を挙げ、報告書は「性的暴行は見知らぬ人物が戸外で、過度の暴力を用いて行なう」という「神話」が作られたと述べる。

 この神話にそぐわない体験をした被害者は警察への通報への意思をくじかれ、メディアや警察は女性の訴えを「作り話」と見なし、裁判で陪審員は被告を無罪にする傾向があると言う。

 内務省が一部資金を提供した「リリス・プロジェクト」の調査の背景には、有罪判決比率の大きな低下がある。レイプ事件で有罪判決に至るのは現在5・7%だが、30年前は30%強だった。裁判まで持ち込んでも、被告が有罪となるのは25%だ。

無 罪件数の増加を背景に、複数の世論調査で、レイプ事件の被害者(殆どが女性)が「嘘をついている」、「服装、過度の飲酒など被害者側に落ち度があった」と、被害者に対して厳しい見方をする人が増えている。

 加害者の実名報道は可能でも、被害者の実名報道は生涯禁止だが、この点を不当とする声も上がるようになり、政府は、昨年、加害者が控訴後に無罪となった場合など、一定の条件の下で被害者の生涯の匿名維持を変更する道を検討した。現在までに変更は起きていないが、報告書は、「被害者が安心して被害届けを出せる点からも非常に重要だ」として、実名発表への切り替えの動きに警告を発した。

 メディアが特殊な性犯罪事件を数多く報道し、結果的に被害者の利益を損ねているとの批判に対し、PCCは「メディアの仕事は、特殊な事態を報道することだ」(2月24日付インディペンデント紙電子版)などと反論している。

**エコノミストとこの邦画のエントリーは以下に
http://ukmedia.exblog.jp/5544362/
by polimediauk | 2008-05-11 23:30 | 新聞業界

ITVに罰金

 民放ITVに、通信規制団体オフコムが約568万ポンドの罰金を課した。電話を使った視聴者参加番組での不正を罰するものだった。以前何度か書いたけれど、クイズ番組で回答する、あるいは番組出演権を得るために、視聴者がテレビのリモコンや携帯電話などを使って、番組に「電話する」仕組みの視聴者参加型番組が英国で人気だ。ところが、既に正解者が決まっていたのに、電話での回答受付を続けていたり、出演者をあらかじめ制作チームが決めていたのに、あたかも視聴者全員に参加する見込みがあると思わせて、電話受付を続けていた。これでITVは巨額の利益を得ていた。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7373131.stm

 ・・・と思っていたら、同じITVがらみでもう一つのスキャンダルというか不正行為があった。それは、2005年の「英国コメディー大賞」で、視聴者が選んだ賞の受賞が、本当は「キャサリン・テート・ショー」というコメディー番組であったにも関わらず、この授賞式で賞を手渡す人物だった歌手のロビー・ウイリアムズが「受賞者がアント&デック(二人組みのコメディー俳優・あるいは司会者)でないと出演したくない」と言ったそうで、これを反映してか、アント&デックが受賞者になっていた、というものだ。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7390193.stm

 誰が最終的に本当の受賞者でなく、アント&デックに大賞をあげることにしたのかは、分かっていない。ロビン・ウイリアムス側は関与していないとし、アント&デック側も、自分たちが番組の「エグゼキュティブ・プロデユーサー」であったにも関わらず、「知らない」といっているようだ。

 今日、元テレビプロデューサーでメディア業界に長い友人とランチをしていたら、「こういう場合、誰も手をあげようとはしない。情けない」という話になった。迷宮入りになるか、一旦潮時が来た後で、知らないうちに下っ端のプロデューサーが首を切られるかー。

 このプロデューサー氏は、かつてロンドン・ウイークエンド・テレビに勤めており、この会社はもうなくなってしまったが、ルパート・マードックのもとで働いていたと言う。マードックがこのテレビ局を所有していたことがあったのだ。(ジェローム・タッチリ氏の本によれば、マードックがこのテレビ局を買収したのは、名物キャスターだったデービッド・フロストにかつてインタビューで恥をかかされたことがあるのがきかっけだ。マードックは、買収後まもなく、フロストの首を切ったそうだ。)所有者と言うポジションにいながら、現場にやってきて、番組をああしろ、こうしろ、と細かく注文をつけたという。マードックは、「自分で現場で作りたい」タイプの人間なのだ、と。「今はたくさん新聞やテレビ局を持っているから自分の手を直接下せないのが残念なぐらいではないか」と話していた。

 米ニューズデイがマードックの傘下に入るのも時間の問題のようだが。(10日時点で、あきらめたという報道あり。)
by polimediauk | 2008-05-10 06:38 | 放送業界

移民 雑感

 (移民に関してはみなさんからたくさんコメントをいただきました。漠然とですが、自分の身に引き寄せて考えていることは以下です。)

―どこまで融合するか?

 英国で、「移民問題」を考える時、よく「融合」と言われる。「インタグレション」と。いったいどこまで「融合したら」、ちゃんと融合したことになるのだろう、と疑問になる。友達になったら?一緒に遊んだら?働いたら?ボーイフレンド・ガールフレンド、つまりはベッドをともにしたら?それとも夫婦になったら?あるいは政治参加したら?住居でも、自分の人種同士で固まって住まないで、他の人種と混ざって住めば「よし」なのかどうか?

 答えはないのだけれど、実は、英政府側が移民の融合という時、実際にはパキスタンなり、インドからの移民相手に言っているときがあるようだ。例えば結婚相手を自国から呼んで、英国に住まわせる、と。パキスタンあるいはインド出身者のコミュニティーができて、近所同士に住んで、お店ができて、中には英国に何十年住んでも、英語を全く知らずに生活する移民が一部で存在する。この「英語が全く話せない人」はやはり、「融合していない」とみなされるようだ。

 といって、「現地の言葉を話せない」ことだけが、「融合していない」証拠には必ずしもならない。人種同士、出身国同士で固まって住むのも十分に融合していない証拠ともされるが、それでも、例えば韓国人同士で住む地域もロンドンにはあるが、これはそれほど問題視されない。中国人コミュニティーもそれほど問題にされないようだ。同じ出身国同士で固まって住むのは、英国人がフランスやスペインに行ったときにそうしているのだから、移民たちだけを責めるわけにもいかないだろう。

 すると、「融合」の問題が出るとき、どうも批判の対象はインド亜大陸の出身者(パキスタン、インド、バングラデシュ)、特に中でもムスリムのパキスタン系であるような気がするのだ。

―英国に住む日本人の「勘違い」

 コメントを下さった方から、「日本人がアングロサクソンの英国人になったかのようなつもりでいる」ことに「違和感を感じた」という指摘があった。実際には英国人と結婚して子供を産んだとしても「決してアングロサクソンの英国人にはなれない」のに、である。つまり、多くの日本人は欧米社会で「勘違い」して生きている、と。

 これは深いなあと思ったが、大雑把に考えて英国(特にイングランド)の大多数がアングロサクソン系白人であると仮に考えた場合、この英国のマジョリティーの人の言語、話し方、マナー、いろいろな物事のやり方をまねるというか、これに乗っかって生活するのは避けられない。アメリカナイズという言葉があるが、さまざまな意味でアングロナイズ(和風英語??)化した生活にならざるを得ない。

 そして、英国に住みだすとすぐ、「英国人」または「白人アングロサクソン系の英国人」と狭くくくってみても、さまざまな人がいることが分かってくる。誰とつきあうかによってその人の英国観・英国人観が変わって来る。

 「(英国に住む)日本人の白人化」という表現を他の人からも聞いたことがあり、この言葉を最初に聞いたとき、ドッキリしたものだ。

 ・・・というわけで結論がない雑感になるのだけれど、個人のことを書いておくと、私の近所には日本人コミュニティーがなく、なんとなくポツネンと生きている。日本人の多いところに住むという手もあったが、引っ越した当時はそういう可能性を考える余裕がなく、さらに引っ越すにも巨額の資金が必要になるのでそのままになっている。食事や周囲の人の顔ぶれなどを見ると、アングロサクソン現象に囲まれて生きていると言えるだろう。(といって、日本人同士の近隣に住むことは決して悪いことだとは思っていない。むしろ、助かるだろう、お互いに。)

 しかし、これは年齢のせいもあるだろうが、日本人としてというか、日本で培われたいろいろな文化、生活習慣で絶対にゆずれない部分があって、これは一生そのままか、変わるには時間がかかりそうだ。自分がアングロサクソンの一員になったと思うことは少なく、異国にいると、ますます日本を意識しているー知識は日々少なくなっていても。私は国籍を変えていないが、国籍を変えれば英国の歴史を背負うことになる。未だその勇気はない。
by polimediauk | 2008-05-09 07:40 | 英国事情
 先月、3週に渡り、チャンネル4「ディスパッチ」が移民の話を特集した。元BBC記者でソマリア出身ラゲー・オマールがプレゼンターになった。全国各地を回り、移民が増えた場所で衝突が起きたり、「もう自分の国じゃないみたい」という人(その人自身が移民であったりもする)の声を拾った。

 その中で、まず、英国では移民というとネガティブな見方をする人もいるのだが(仕事が奪われる、あるいは習慣が違うなど)、それはインド亜大陸(インド、パキスタン、バングラデシュなど)から50年ほど前に来て移民になり、家族を自国から呼んでどんどん増えてゆく、という過去があったためではないか?という指摘があった。こうした認識をもとにして、「外から来た人はそのままい続ける」という見方が圧倒的になったけれども、実は、最近はそうではなく、「働きに来て、2,3年いて、去ってゆく人」つまり、「グローバルな働き手」が多いのではないか、と。自分のことを振り返っても、あるいは日本の多くの人がそうかもしれないけれど、一生英国に住むつもりかというと、そうではない。「たまたま、今いる」だけである。

 この番組と前後して、いろいろ移民に関する報道があったのだけれど、それには理由があった。移民の増加が英社会に与える影響を問題視した、イーノック・パウエル故保守党議員の「人種差別的」演説が行なわれてから、丁度40年が経っていたからだった。社会に融合しない移民たちと非移民との間で暴力事件が起きる、と議員は警告した。多文化社会となった英国だが、それぞれの移民コミュニティーのゲットー化が指摘され、東欧からの移民が一部労働者の職を奪う存在として見なされている。パウエル氏の演説は果たして将来を予見していたのだろうか?(以下、「英国ニュースダイジェスト」最新版に加筆。)

「血の川」演説から40年
 移民と英国社会の関係は?


―カレー屋の願い

 4月20日、カレー屋で働く従業員数千人がロンドン・トラファルガー広場に集まった。35億ポンド(約7270億円)相当の規模を持つ英カレー業界は労働時間が長い業種で、人手不足に悩む。バングラデシュを中心にインド亜大陸出身の移民の労働力に頼る。それだけに、不法移民摘発に力を入れる移民当局の格好の標的になっている面があった。今年から段階的に始まった「ポイント制」新移民受け入れ制度で、カレーを作るシェフに一定の英語力や教育資格を求めるようになったことも打撃となった。「移民の就労規定を緩めて欲しい」、「このままでは業界が成立しなくなる」―広場に集まった従業員らはこう訴えていた。

―「ゲットー」化?

 カレー屋の従業員のデモが起きた先月20日は、イーノック・パウエル故保守党議員が、移民の急増を恐怖視した「血の川演説」と呼ばれるスピーチを行なってから丁度40年目となった。

 議員は演説の中で、移民拡大により街中で暴力事件が起きることを「血の川」に例えた。古代ローマの詩人ブブリウス・ヴェルギリウス・マロが書いた、トロイア滅亡後の英雄エイネウスの遍歴を書いた叙事詩「アエネイス」の中で、預言者シビルが「(ローマの)ティベル川が大量の血でいっぱいになる」と述べた部分を引用した。パウエル議員は「人種差別的」行動を取ったということで、影の内閣の職を下ろされている。

 演説を少し詳しく見ると、例えばこういう箇所があった。「選挙区のある男性がこう言った。『お金があったらもうここには住みたくない・・15年か20年後には黒人が白人を動かしている』・・・これは何千人、何万人の国民が考えていることだ。」。「年間5万人もの移民扶養者の入国を許しているなんて、我々は気が狂っている、文字通り気が狂っている。・・・自分で自分の火葬の準備をしているようなものだ」。「大部分の移民は社会に融合しておらず、一部は人種や宗教上の違いを強めることに関心を持っている。最初は同じ移民同士をそして全国民を支配するために、だ」。「不吉な前兆が見える。ローマ人が言ったように、『ティベル川が血で一杯になる』情景が見える」――。

 英国の移民人口比率は現在、約12%に上る。「移民=恐れるべき存在」としたパウエル氏の言説を、今一蹴するのは簡単だが、「大部分の移民は社会に融合していない」という指摘は一面の真理をついていると言えなくもない。人種あるいは出身地を基盤にしたコミュニティーが各地でできあがっており、「何十年も英国に住みながら英語を話せない」という移民たちもいる。また、有色人種の移民たちが次第に大多数となり、少数派になった白人英国人たちが「自分の生まれた国に居るとは思えない」と漏らす地域もある。

 2004年、欧州連合(EU)が東欧諸国を含む27カ国に拡大し、新規加盟国ポーランド、スロバキア、ハンガリーなどから、若く教育程度も高い移民が英国に渡ってくると、新たな問題も生じた。EU内は人の移動が自由であるため、移動数には政府のコントロールが効かず、地域によっては前触れなく増加した移民の生徒たちに学校側が悲鳴を上げる事態が生じた。多くは単純作業に従事する東欧諸国からの移民たちは、低所得・単純作業に従事する英国の労働者を脅かす存在だ。

 BBCのニュース番組「ニューズナイト」が1012人の白人英国人を対象に調査したところによると、階級によって移民感情は微妙に異なる。例えば、白人労働者階級の52%が「移民は悪いことだ」、42%が「良いことだ」と答えたが、白人中流階級で「悪いこと」としたのは 33%、「良いこと」は62%に上っている。階級分けは番組が行ったもので、労働者階級とは熟練肉体労働者、単純作業者、社会保険受給者などで、中流階級とは専門職従事者、事務職、課長職などだった。

 一方、4月上旬、上院経済小委員会は「移民の経済的影響」と題する報告書を発表した。これまで、政府は移民による経済効果の大きさや利点を強調してきたが、報告書は、「移民の急増は英国人の経済生活に全くあるいは殆ど影響をもたらさない」と結論づけた。雇用市場の競争により、低所得で技術取得度が低い若者層が割りを食い、高い住宅価格をさらに押し上げているとも指摘した。

 小委員会は移民受入数に一定の制限をつけるよう提唱したが、ブラウン首相は「制限はつけない」とし、あくまでも「移民がもたらす経済効果は大」という方針を貫く。EU加盟国として域内の人の移動を停止できない以上、制限は限定的なものになるが、IPO-MORI社の調査では、移民や人種問題が最も重要と答える人の割合が90年代後半の10%弱から現在の40%に急上昇している。移民の子供の増加に対応を迫られる教育現場、東欧からの新移民に圧力をかけられる低スキル・所得の白人層への配慮など、個別分野への具体的な政府の施策が強く求められている。

*参考資料:英国の移民の現状を理解するには、上記の上院経済小委員会の報告書がよいようだ。House of Lords: Select Committee on Economic Affairs, The Economic Impact of Immigration Volume 1: Report

ー英国への移民の歴史と主な規制

1814-1910:大英帝国時代、最高時で世界の人口の3分の1が支配下に。当時の植民地諸国、特にカリブ諸島、インド亜大陸からの移民が続く。多くが単純作業を行う労働力として使われる。
1900-30頃:少数の黒人系移民と白人住民との間で衝突事件が、複数回起きる。
1947:インドが独立し、英国への移民が増える。旧植民地国は独立しても英連邦の一員であれば、英国で移民として働き、生活することが可能だった。
1948:主にジャマイカからの移民を乗せた「ウインドラッシュ」号がロンドン・ティルバリー港に到着。大量の有色人種の移民の開始年とされる。
1950:ロンドン・ノッティングヒルで有色人種移民と白人住民の間で衝突事件。
1962:英連邦移民法成立。旧植民地国出身者に移民規制が開始される。
1965:人種差別を禁止する人種関係法が成立。(後、何度か改正される。)
1968: 政治家イーノック・パウエルによる、移民の増加を危険視した「血の川」のスピーチが物議をかもす
1972:英連邦諸国出身者でも労働許可証を取得するか、あるいは英国生まれの親か祖父・祖母を持つ人にみ、移民としての入国が許可されるようになる。
1973:欧州共同体(現在の欧州連合EU)に加盟。加盟国内では人の往復が自由になる。
1980年代:ロンドン・ブリックストンなど数ヶ所で、人種差別に端を発した暴動が発生。
1983:新・英国国籍法が発効。親が英国に住んでいる場合でも、その子供に自動的に英国籍は与えられないことになる。
2001:イングランド北部ブラッドフォード、北西部オールダムなどで人種差別を巡る暴動発生。米国で大規模がテロ発生し、イスラム教徒移民への偏見強まる。
2004:EUが15カ国から旧東欧諸国を含む27カ国に加盟国を増やす。ポーランド、ハンガリー、スロバキアなどから移民が増える。
2005:イングランド中部バーミンガムでアジア系移民同士の暴動発生。7・7ロンドンテロ起きる。イスラム教徒の移民青年たちが実行犯であったことで、社会全体に衝撃走る。
2008:1月、英国教会の司教が、イスラム教過激主義のために国内に無法地帯ができていると発言。2月、ポイント制を柱とする移民受け入れ制度が部分的に開始。4月、上院委員会が「移民が経済的恩恵をもたらす」説を否定する報告書を発表。同月、国境警備庁が発足。

ー関連キーワード 
POINTS-BASED SYSTEM: 新たな移民受け入れ制度の柱となる「ポイント制」。英国内で就労を望む、欧州経済領域(EEA)以外の国・地域出身の全ての労働者が新制度の対象者になり、5種類の区分(英国経済に貢献する高技能者、国内で不足する技能を持つ者、特定の低技能労働者、学生、一時就労・文化交流など)のいずれかで必要とされるポイント=点数を満たさないと入国不可となる。点数化の対象は、個人の学歴、資格、収入、英語力など。今年2月から部分的に適用され、09年までに完全実行の予定だ。英国籍保持者の家族あるいは難民はポイント制の適用外となる。

 それと・・・・

 最後の最後になって何だが(ここまで目を走らせてくれて、ありがとう!)、生まれた国で、気づいたら、自分が少数民族だった、というのはどんな感じなのだろうか、と時々考える。英国で生まれたが、親がパキスタンからの移民だった人とか。ロンドンでテロを起こした数人の男性たちのように。自分が社会のメインストリームから大きくはずれたところに生きていると、知った時、メインストリームの価値観になじめないとき、共感をもてないとき、どうなのだろうか、と。「いやだから他の国に行く」ということができない時は?「心から自分の国だとしっくり思える国がない」時は??

 少なくとも私には日本がある。どこかにシンパシーを感じる国が。

 欧州の移民問題について考える・書く時、こんなことにいろいろ思いをめぐらせる。

by polimediauk | 2008-05-06 06:08 | 英国事情
 ついこの間までロンドン市長だったケン・リビングストンに愛着を持ってきた私は、未だに負けたことが信じられない思いでいる。
 
 ケン(と名前を呼び捨てにするのは、ロンドンではケン、ボリス=現市長ボリス・ジョンソン=と呼ぶのが普通なので)が負けたのにはいろいろな理由があるが、広い意味ではやはり労働党・ブラウン首相の不人気、政策の失敗などが足を大きくひっぱったというのがあるが、週末にかけて出た英新聞の分析を読むと、一言で言うと、「市長として3回目の勝利を得るほどのプラスアルファがなかった」ということだろうか。私が見たところでは、3日付ガーディアンのヒュー・ミューアー氏の記事 Ignoring beacons, Brand Ken sailed into perfect stormの分析が非常に秀逸であるように思った。

 この記事でも指摘されているが、つまるところ、英国民の中に「一人の人が長く任期を務めるのは良くない」という気持ちがあって、「変化を求める心・強い圧力」が働いた上に、8年市長だったケンに謙虚さがなくなっていた、いつの間にか、市民の側にではなく権力の側にいるように見えてきた、つまりは「一つのブランドとしてのケン」の意味が薄れてきてしまった。

 実際のところ、この数ヶ月のケンは疲れているように見えたのも確かだ。

 そこでメディアの話になるが、保守党ボリス側の選挙戦略の分析もおもしろいだろうとは思うのだが、それよりも、今回の市長選では非常に大きな役割を特定のメディアが果たした。英国で伝統的となった(いい伝統とはあまり思えないけれども)「政治キャンペーンとしてのメディア」の動きが目立った。

 具体的には、ケンに敵対的なロンドンの夕刊紙「ロンドン・イブニング・スタンダード」、そのコラムニストのアンドリュー・ギリガン、チャンネル4のドキュメンタリーだ。

 この3つが固まった時の力はものすごかった。といっても、うそを報道したわけでなく、若干の真理が入っている記事、あるいは、疑惑をものすごく大きく扱うのである。スタンダード紙は専用スタンドで売られている。そのスタンドには、その日のトップニュースを大きな文字で書いたポスターが貼られている。そこでロンドンの地下鉄を使ったりすると(数百万単位の人にとって)このポスターが目に入る。こうしたスタンドは市内で500ほどあるという。アンチ・ケンのスタンドが500あった。

 そして、スタンダードは、ロンドンの看板紙。市内で唯一の有料の夕刊紙である。無料新聞がたくさんあるが、いわゆる本当の新聞といえばスタンダードで、やはりそれなりに人はその報道に注視するわけである。そこでガンガンとケンの批判(まともな「批判」といえるかどうか?)記事を連日出し続けていた。

 実際のところ、ボリスの立候補は長らくジョークの1つと見られていたが、流れが変わった瞬間があって、それは、チャンネル4が「ディスパッチ」というドキュメンタリー番組のシリーズで、ケンのスキャンダル(「疑念」というほうが正確だったけれども)をクローズアップした番組を放映した。ロンドン議会でウイスキーのグラスを手にしている場面や、実在しないチャリティー団体にロンドン市庁が財源を支援したなど。辞めた側近のインタビューを基にしていかに「不公平か」を描いた場面もあった。「権力の監視」のためには仕方ないとも言えるのだが、かなり迫力のある番組だった。それと前後し、スタンダードがネガティブな報道を繰り返した。

 チャンネル4+スタンダードの報道がかなりダメージになったと私自身思っていたところ、ガーディアン(3日付)、インディペンデント(4日)でもこれを問題視しており、「やっぱり」と思ってしまった。

 ガーディアンのほうはスタンダードのやり方に批判的である。アンチ・ケンの編集方針に、スタンダード内部でも「やりすぎではないか」という声が上がったと書かれている。ボリスが正式に候補になる前からボリスを支持する報道を行っており、シティー大学でジャーナリズムを教えるエイドリアン・モンク教授も「唯一の有料のロンドン紙が特定の候補者のみを支援するのは問題ではないか」と疑問を投げかける。

 スタンダードでケンの批判記事を書いてきた一人が、アンドリュー・ギリガン。彼は例のイラク大量破壊兵器を巡る報道がきっかけで、BBCを辞職した。この後、ボリスが当時編集長だった、右派週刊誌「スペクテーター」に雇用された経緯がある。ギリガンの記事の1つが、ケンの人種問題に関するアドバイザーが不正を働いていた、という報道だった。これが「分かれ目になった」と見る人は多い。「なんとなく、人がうすうす思っていたことを証明した記事だった」(シンクタンク、ポリスのチャーリー・ベケット氏、ガーディアンにて)からだ。

 反ケンであり続けたスタンダードだが、以前、ケン自身が、スタンダードの記者に「ナチの収容所の守衛みたいだ」と話し、大ひんしゅくを買った。裁判沙汰にまでなった。

 一方のインディペンデントでは、ケント大学のティム・ロックハースト教授が、スタンダードは(反ケンというよりも)、どっちの方向に風が吹いているかを察知しただけで、市内のミドルクラスの人が聞きたいことを書いただけだ、と結論付けている。ミドルクラスが聞きたいことを・・というのはあたっているかもしれない。ミドルクラス=保守党支持大多数とすれば、反ケンの人が多いだろうし、ケンを批判する記事は結構喜ばれるのだ。ロンドンライフのすべての不満をケンに対する不満と同一視するだろうし。

 新聞が何らかの政治キャンペーンを行うのは英国の新聞の特色の1つでもある。かつて保守党メージャー氏が政権を取ったとき、大衆紙サンが「勝ったのはサン」という見出しをつけたのが著名だ。今回も、「勝ったのは(勝たせたのは)スタンダード」という面があることは否定できないだろう。後味が悪いがー。

 今回の地方選全体を見ると、何かが大きく変わったと思う(ただ、保守党は政権を取れるところまで力をつけたと見る人は多くない。それでも、保守党に関する「いやな感じ」を持つ人がぐっと減ったのは確かだ。キャメロンの功績だ)。私はブラウン首相だけが悪いとは思っていない。むしろ、ブレア時代にニューレイバーを離れた人がいて、それが止まっていないのだと思っている。

 ブレアのニューレイバーは、労働党ながら、ミドルクラスから支持を得た。取り込んだ。今、そのミドルクラスはほぼ完璧に離れた・離れつつあると言っていいのかもしれない。何しろ、ロンドン郊外に住むミドルクラス(本当のミドルクラス?)が労働党を見放した結果となったというのだから、これは大きい。ジョークといわれたボリスが次の政権発足の鍵を握るかもしれないのが、皮肉である。

 ブレアが消えて、大きな政治の流れが変わった。今回、この点が非常に明快になった。英国が大きく変わる・変わりつつあると思う。

Guardian: It’s the Standard wot won it: newspaper backed Boris throughout campaign
Independent: So was it the ‘Standard’ wot won it? Or just a sign of the times?
by polimediauk | 2008-05-05 08:32 | 政治とメディア
 オンラインの「ベリタ」に「オーストリア監禁事件-3」のつもりで、これまでの経緯や「何故察知できなかったのか」をまとめてみた(無料記事)。ご関心のある方は見ていただきたい(但し、最後の結論のみ、ブログで既報済み)。また、オーストリアに住む方、詳しい方で、「こんな見方がある」というのがあれば、ご一報ください。

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200805050152361

 リビンストン氏の負けとイブニングスタンダードの関係に関して、後で出します。


 
by polimediauk | 2008-05-05 02:11 | 欧州のメディア
 オーストリア監禁事件に注目している。同国のナスターシャ事件(2006年明るみに)と今回と、「少女を数年間監禁」ということで共通点があり、オーストリア独自の事態なのかどうか?

 監禁、性犯罪、少女、というキーワードで探せば、世界中に同様のことが起きているのだろうけれども、男性(あるいは大人の側)が「自分のものだけにしておきたい」と、少女・女性(あるいは大人側からすると弱い立場の人間)を監禁する、という発想はどこから出てくるだろう?男性優位・中心主義の考えが強いのかどうか。男性側に相手を支配したいという意識が強いのかどうか。(注:すべての男性=悪人、という見方ではもちろんないことを改めて書いておきたい。この2つの事件で相手を監禁したのが男性だった、という点に注目したのみ。)

 独「シュピーゲル・オンライン」(英語版)2日付に、オーストリア監禁事件の父ヨーゼフの弁護士の話が出ている。「私の仕事はヨーゼフを一人の人間として見せること」と語っている。以下、抜粋。

http://www.spiegel.de/international/europe/0,1518,551049,00.html

 ルドルフ・メイヤー氏はオーストリアでも著名弁護士の一人で、顧客のいいところを見つけ、相手を理解するようにする、と述べる。メイヤー氏の事務所はオーストリア・ウイーンの裕福な層が住む場所にある。例のフロイトも近辺で働いていたことがある。メイヤー氏は自分を「セラピストであり、かつ弁護士」と呼ぶ。

 「ヨーゼフはひどい怪物、性の暴君として紹介されている。私の仕事は彼を一人の人間として見せること」。10分間話をして、「どんな人物かの感触をつかもうとした。論理で考えることをやめ、直感を働かせた。相手の目に注目した」。目を見れば、相手の90%が理解できるという。

 「最初の30秒が肝心だ。私はヨーゼフとつながることができたと思う」。

 「家父長的な、良い面も悪い面もある人物だという印象を持った。感情的に壊れた人物だ」。

 当初の会話ではほとんど反応がなかったヨーゼフは、2回目には、自分のこれまでの人生や何が起きたかを2時間に渡って話したという。「話をさせておいて、私は黙って聞いた」。

 何故自分の人生をめちゃくちゃにするようなことをしたのだろうか?これを探し当てるのが「まさに私の仕事だ」。メイヤー氏のこれまでの経験から、「どんな行為、どんな犯罪行為にも必ず理由がある」のだ。しかし、ヨーゼフの側によりそって、何故こうした行為に走ったのかを探し当てるようなメイヤー氏の態度を不満と思う人もいる。すでに脅しのメールが届いたそうだ。しかし、こうした憎悪のメールは職業上必ず起きるという。

 メイヤー氏はヨーゼフの犯罪に「衝撃を受けなかった」とシュピーゲル誌に答えており、ヨーゼフから弁護士になるように依頼されてまんざらでもなかったようだと、シュピーゲル誌は書いている。

 ヨーゼフが拘留中の刑務所の担当者は、「ヨーゼフは自分のしたことの重大さに次第に気づき始めて」おり、後悔の念も見せだしているという。


 ドイツメディアはこの事件を非常に熱心に追っているようだ。シュピーゲル英語(電子版)は3日付でもさらに新しい情報を入れた話を載せている。

 当初、地下室の部屋は一つしかなかった・・など、詳しい状況は読むだけでも不快である。

http://www.spiegel.de/international/europe/0,1518,551246,00.html

 特筆すべきはヨーゼフ氏が娘をレイプしていたことを「知っていた」という人が出てきているらしい。オーストリアのテレビでそう話したそうだ。でも、ヨーゼフ氏が「怖かったので」通報などをしなかったそうだ。そして今でも「悪夢を見る」とこの人は言っている。(この「通報しなかった」理由が後で分かる。一つの説だけれども。)

 一方、オーストリア政府は「ヨーゼフ事件=オーストリアだからこそ起きた事件」と思って欲しくないと、イメージを改善するのに躍起だ。もちろん、ある1つの事件が起きたからといって、それがそのままその国のイメージになってはたまらない。それでもなんといっても2年前にも同様の事件があかるみに(ナターシャ事件)があるのだから、オーストリア外の人は何らかの関係性を見たがる。

 ネットを見ると、「オーストリア独自のことではない」、「他国がオーストリア独自の事件として見るのはあたっていないし、不快だ」という声もある。

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 ナターシャさん自身は、BBCの取材に応じ、オーストリアだから起きた部分もあったことを示唆している。ナチの国家社会主義があったころ「女性は抑圧されており、全体主義的教育があった」要素をあげている。(ビデオは以下に。)

http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7376667.stm

 そして、ナターシャさんを診た心理学者マックス・フリードマンさんは、BBC「ニューズナイト」の取材の中で、こうした監禁事件が発覚しなかった理由として、オーストリアが未だにナチ時代の後遺症に苦しんでいるから、と述べている。フリードマンさんによれば、「何かを見たり聞いたりしても、それを通報しない傾向がオーストリア人にはある」と言う。「1933年から45年にかけて、たくさんナチのスパイがいた。こういう人たちは、戦後、嫌われた。そのために、今では情報屋とみなされないよう、何かを見ても通報しない。オーストリアは未だにナチの過去に苦しんでいる。過去からヒーリングする途中にある」と述べている。

 今回の事件をナチの過去と結びつけるなんて「ばかげている」、「いいかげんにしてくれ」という人もいるが。

(過去記事)
http://ukmedia.exblog.jp/8766563/
by polimediauk | 2008-05-04 07:52 | 欧州のメディア
 ロンドン市長選の結果が未明確定し、大接戦でボリス・ジョンソン保守党議員(ボリス)が勝利した。ジョンソン氏は116万8,738票でケン・リビングストン現職が102万8,966票だった。なんという接線だろう。

 夜中、生中継されたそれぞれの候補者の勝利スピーチ、敗退スピーチでは、ジョンソン氏はリビングストン氏をねぎらい、リビングストン氏は「労働党の(不振)のために負けたのではない。8年間やってきて、人のせいで負けたとは言えない」とした。批判をされるであろうブラウン首相をかばった。

 8年間やってきた市長職を振り返り、声がやや涙っぽくなりながら、無念さとロンドンへの愛情を語ったリビングストン氏。私は氏が「ロンドンナー Londoner」という度にじーんとしてしまう。

 両者のスピーチのビデオはBBCのサイトで見れる。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7380947.stm

 ところで、私が驚いたのは、昨日付け「ロンドンペーパー」に載っていた、市長の仕事の引継ぎの話である。

 これによると、2日朝、リビングストン氏は市長として市庁舎の建物に出勤したが、真夜中、対抗馬だったボリスが勝利したので、市庁舎を出る時は、警備員とともに出ることになると言う。氏や氏のスタッフが破棄するべきではない書類などを破棄しないようにするため。

 そして、机の整理などをリビングストン氏側は今日3日の真夜中までに終えなければならない。当選(落選)から28時間以内に、市庁舎の鍵を新しい市長に渡し、市庁舎を去らなければならないのだ。大ロンドン市庁法(グレーたー・ロンドン・オーソリティー・アクト)がそう決めている、という。

 日本はどうなのだろう?ロンドンはずいぶん「引継ぎ」が早いものだ!

 ロンドン市庁のウエブサイトを開けると、既にボリスが市長に。当選した時点で、市長になる、というのは分かりやすいが、なんと早いのだろうと驚いてしまう。

http://www.london.gov.uk/

 (ちなみに、07年4月8日の都知事選で当選した石原都知事の初登庁は4月23日。都知事になったのが何日付になるのかは不明だが、ロンドンよりは若干、初仕事までに余裕があるように見えたが。)
by polimediauk | 2008-05-03 15:48 | 政治とメディア
 ロンドン市長選は(個人的には残念ながら)保守党議員ボリス・ジョンソン氏が勝つ可能性が非常に高くなってきた。結果は真夜中でないと確定しないかもしれない。

 待つ間に、アイプレイヤーの記事の続報を出したい。

 おととい書いたのはすでに過去の話になりつつある、どんどんいろんなことが起きているからだ。

 まず、英テレビ数局が協力して作るオンデマンドのサービス「カンガルー」だが、交渉を詰めているうちに、スイス・米国に拠点を置くザツーZatooというところが、無線を使って地上波テレビ番組を見れるようにしてしまった。http://www.zattoo.com/

 高速ブロードバンドが入っていれば、見れる。番組のダウンロードはできないが。英著作権法の73条によると、無線の信号を使って公共放送の番組(民放チャンネル4やITVも、英国のカテゴリーの中では「公共放送」枠に入り、様々な規定の下にある。どうやって収入を得ているかとは別)を流すのは違法にはならないそうだ。(4月29日付FT記事によると。)この条文は現在のようにネットで番組が配信できる場合を想定していなかったのだ。今のところ、小規模なので違法の疑いがあっても許される、と言う部分がある、という見方をFTがしている。テクノロジーがどんどん進んでいるので、「灰色」の部分がたくさんある、という。

 Zattoo は既に、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ノルウエー、スペイン、スイスでサービスを開始している。これに英国も加わった、というわけだ。サイトから番組を見るためのソフトをダウンロードして見る。(日本ではどうなのだろう?ユーチューブがあるからいらないのだろうか?)

Start-up bypasses broadcasters to offer live TV online
http://www.ft.com/cms/s/0/23aa30b6-1584-11dd-996c-0000779fd2ac.html

 それと、4月30日付のBBC発表によれば、人気のBBCアイプレイヤーが、有料接続サービス業者バージンメディアと結託し、バージンと契約していれば、テレビ受信機でもアイプレイヤーが使えるようになる。夏からが本格的稼動だ。(今でも赤いリモコンのボタンを押せば一部見れる。)

 これはバージンのブランソン会長対マードック(スカイ)の闘い、と言う面ももちろんあるだろう。ルパートマードックの息子ジェームズが、つい最近、アイプレイヤーは市場競争を破壊すると言ったばかり。バージンメディアは以前、テレウエストという有料接続サービスだったが、これを買収した時、それまであったスカイニュースのチャンネルが消えた。使用料金の折り合いがつかなかった、ということだけれど、ITVという民放の株取得を巡る闘いもあったし、常にマードックとの競争は続いている。

 アイプレイヤーとバージンメディアの提携に戻ると、アイプレイヤーの悩みがもしあるとすれば、その1つは「PCでなくテレビで見たい」という視聴者の思いをどうするかだった。バージンメディアに契約した人がアイプレイヤーをテレビ受信機で使えるなら、それがかなうことになる。ますます競争だ。視聴者にとって見やすい、使い易い方向にどんどんなってゆけばいい。

http://www.bbc.co.uk/print/pressoffice/pressreleases/stories
/2008/04_april/30/iplayer.shtml
by polimediauk | 2008-05-03 05:36 | 放送業界
 カタールの衛星テレビアルジャジーラからのリリースやロイター+米ABCが2日伝えたところによると、キューバの米軍基地グアンタナモ収容所に6年間拘束されてきた同放送局のカメラマン、サミ・アルハジ氏(通称「サミ」)が釈放され、出身国スーダンに帰国した。

 グアンタナモ収容所には2002年以降、アフガニスタンなどから米国が称するところの「テロ容疑者」が移送され、殆どが正式に容疑が確定しないまま拘束されてきた。サミは無罪を主張しており、抗議のハンガーストライキも何度か行なった。2日早朝、スーダンの首都ハルツームに米軍軍用飛行機で戻ってきたサミはかなり衰弱しているようだ。

 米ペンタゴンはロイター+ABCにコメントを出していないが、米国防省高官が漏らしたところによると、「サミは釈放されたのではなく、スーダン政府に引き渡されただけ」と解釈していると言う。

 サミはアルジャジーラの仕事でアフガニスタン取材に出かけ、2001年12月、パキスタンとの国境に同僚といたところをパキスタン当局に拘束された。その後米軍に引き渡され、グアンタナモ収容所に送られた。アルカイダのオサマ・ビンラディンのビデオを作ったなどとされたが、正式には容疑確定には至らなかった。

 サミは「不当拘束」を抗議するために、昨年1月からハンガーストライキを決行しており、食事は一日に2回、身体を椅子などに縛り付けられた状態で鼻から強制摂取させられていた。

 スーダンのアブデル・バシット・サブデラト法務大臣は、スーダン政府はサミを拘束する予定はないと言う。「法務大臣として、私にはサミに対する疑念は全くないと思う」とアルジャジーラに語っている。

 サミは電話取材に応じ、「(拘束がとかれ)幸せと思うべきだろうが、未だ拘束されているほかの人のことを思うと悲しい」と述べた。

 現在も数百人が拘束中だ。

http://www.ejc.net:80/media_news/al_jazeera_cameraman_released_from_guantanamo_3/

 ちなみに5月3日は「世界報道の自由の日」だが、ジャーナリスト自身が危険な目にあう状況は依然として世界中で続く。サミはグアンタナモに拘束されていた唯一のジャーナリストと言われていた。
by polimediauk | 2008-05-02 17:42 | 放送業界