小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk
プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

<   2008年 09月 ( 12 )   > この月の画像一覧


c0016826_22431063.jpg ・・・とタイトルに書いたが、私自身、実はこの先が分らない(分っていたら、今頃、大金持ちになっている)。このトピックについて、「英国ニュースダイジェスト」(ウェブでは30日発行)に書いたのだが、丁度1週間前に原稿を出してから、英住宅金融ブラッドフォード&ビングリーが国有化されてしまったし、米国では政府の7000億ドルの金融安定化法案を下院が否決してしまった。(後者は税金でなく、民間資金を使うべきというある米議員の映像が日本のテレビで出ていた。) 何だか世界中の金融機関の動きが恐ろしいまでにつながっていて(互いが互いのビジネスを保証していたり、債権を持っていたり、リスキーだがリターンも大きい金融商品を大量に保有していたり)、どの国もそれぞれに大きな影響が出てきそうだ。あまりおどかしたくはないが、良いニュースがない。右上の写真はエコノミストの表紙で、これも脅しっぽい雰囲気が出ている。

 東京・有楽町(日比谷)にある外国特派員協会の仮メンバーとなって仕事場を使っていたら、米系メディアに書いているA氏と再会した。「もうアメリカはこれで完全にだめになった。いつかはそうなると思っていたけれど、予想があたって悲しい」とA氏は話す。「アメリカにくっついていた国も影響が大きい。欧州、英国なんかもかなりひどい影響があるだろう・・」。次の日ぐらいにブラッドフォード&ビングレーの国有化の話が報道された。

 以下、自分へのメモ的意味もあって、「ダイジェスト」にまとめたものに若干付け足した。


米大手証券が破たん
―英経済にもその影響が


 アラン・グリーンスパン元米連邦準備金制度(FRB)議長が「100年に一度の出来事」と評する事態が、9月15日、発生した。創立から158年の歴史を持つ米投資銀行・証券大手リーマン・ブラザーズが破産申請をして破たんし、米証券第3位のメリル・リンチが第2位のバンク・オブ・アメリカに救済買収された。大手金融機関2つが、1日で消えてしまったのである。米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)も財政危機に直面し、米政府は巨額の公的資金注入を余儀なくされるに至った。

 金融不安の影は英国にも存在する。昨年来の米住宅市場危機を受けて住宅価格には下落傾向が続いており、サブ・プライムローンの焦げ付きが増えている。資金繰りが困難となった住宅金融大手ノーザン・ロックに取り付け騒ぎが起きたのはほぼ1年前だったが、今年2月には国有化されてしまった。同様に資金繰り困難とと噂された住宅金融大手ハリファクスを傘下に持つのが銀行大手HBOS。銀行大手ロイズTSBは、18日、金融懸念を払拭するための政府からの後押しもあって、HBOSの救済合併を発表した。

―リーマンとは

 リーマンは「投資銀行・証券会社」だった。改めて振り返ると、米国で第4位の投資銀行及び証券会社で、ドイツからのユダヤ系移民リーマン兄弟によって1850年に創立された。2008年9月15日、事実上の破たんとなった時の負債総額は6130億ドル(約64兆5000億円)で、米国史上最大の倒産となった。政府、法人、他金融機関などが顧客で、世界中で2万5000人を雇用し、英国では5000人が働いていた。日露戦争(1904年)の戦費調達に協力したこともある。

 1984年、クレジットカード大手アメリカン・エキスプレスに買収されたが、1994年に再度独立し、現社名に戻って再上場。近年では、ライブドアがニッポン放送に挑んだ敵対買収のための800億円の資金調達に関わったことで日本でも著名に。サブプライム・ローン問題での損失処理を要因として、今年9月、6―8月期の純損失が39億ドル(約4150億円)に上り、赤字決算となる見通しを公表。米財務省や連邦準備金制度(FRB)の仲介の下で複数の金融機関と売却の交渉を行ったが不調に終わった。

―英国への影響

 リーマンの破綻が世界的な金融不安として受け止められたのは、この投資銀行が世界中でビジネスを展開し、有価証券の発行などによる資金調達、M&Aの仲介、金利や為替等の金融派生商品を用いた財務リスクの回避などのサービスを提供していたからだ。その破綻は各国の金融機関や企業の経営不振につながってしまう。

 英国の銀行、年金ファンド、ヘッジファンド、一般企業もリーマンと様々な取引を行っていた。全取引の詳細を解き明かすには数か月以上はかかると言われている。リーマンが手がけた金融派生商品の規模は「誰も分らない」ほど巨額と見られ、取引相手は巨大損失を抱えることになる。損失がどれほどになるのか分らない現状では、銀行側が貸し渋りに走る懸念も大きい。

 英国民側からすれば、自分が加入している年金の投資パフォーマンスに影響が出たり、勤務する会社がビジネス不振に陥ったり、個人的にも銀行ローンが借りにくくなったりする可能性がある。過去9年間で最高となっている英国の失業率(5・5%)も上昇する、という予測が出ている。

 ブラウン首相は「世界は非常に速いスピードで変化しているが、グローバルな金融システムの統治がこれに追いついていない」と指摘し、何らかの形で「統治」の仕方を変えるべき、と述べた。言うには易しだが具体策と言うと米英の金融当局、政府首脳部も決め手がないようだ。19日までに米政府やFRBが提案した金融安定化策に市場は好意的な反応を示したが、「根本的な解決策ではない」とする批判も出た。先のグリーンスパン氏は「これからもっともっと悪影響が拡大する」と予測しており、金融不安はしばらく続きそうだ。

ー「米国=世界の金融センター」ではなくなる?

 特定の金融機関の破綻という観点にとらわれず、事態を大きく見れば、果たして世界の金融センターとしての米国の地位はもう消滅した、あるいは消滅して行くのだろうか?それと、実体がない言葉かもしれないが、マーケット至上主義=米国式というビジネスモデル(「モデル」?と言えるかどうかは?だが)はもう古くなったのだろうか?

 先のことは、現状ではまだまだ分らない感じがするが、FTのジョン・プレンダー氏が(シティーに関する著作多数)、大手金融機関は今後、一種のユーティリティーになるのではないか、という仮説を立てている(リーマン危機勃発直後のビデオ映像の中で)。つまりは、電気会社やガス会社の様に(こうした企業も民間企業となってはいるが)、公的サービスとして機能するようになるのでは、と。民間企業が利益至上主義でお金の貸し借りあるいは調達をする、というのではなく。あくまでも「仮説」であろうが、「市場に任せる・任せきる」のが果たしてベストかに関して大きな疑問符がついたわけだから、面白い仮説でもある。

 ・・・しかし、いずれにせよ、今のところは、とにかく「強欲」(グリーディー)という言葉が頭から離れないのである。

―世界の信用不安とリーマン破たん

2004年―2006年:米サブプライム・ローンの焦げ付きが増える
2007年4月―8月:サブプライム・ローンの危機が世界中に広がる
8月9日:仏投資銀行パリバの資金繰り難が表面化
9月:英住宅金融大手ノーザンロックの資金繰り難が表面化し、取り付け騒ぎに。
10月:スイスの大手銀行UBSがサブプライム・ローン焦げ付きで巨額損失を出す。米シティーグループ、米メリルリンチも同様の事態に
2008年2月:2007年の英国の差し押さえ住宅件数が過去9年で最高と判明。ノーザンロックが国有化へ
3月:米証券第5位ベア・スターンズが米銀JPモルガン・チェースに救済買収される。
4月:英中央銀行が信用収縮に悩む銀行に対し、500億ポンド(約9兆8000億円 )を支援する政策の詳細を発表
5月:今年1月―3月期で、英小売業、建設業界の倒産件数急増
7月:英商工会議所が英国が数ヶ月で景気後退に入ると予測。英住宅価格が1991年以来最大の下落
8月:英大手銀行HSBCの上半期の利益が前年比28%の下落
9月7日:米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)に米政府が公的資金注入を決定。
12日;米証券大手リーマン・ブラザーズの株価が年初来最高値から9割超安の3・65ドル(約389円)で終了。
14日:英銀大手バークレイズによる、リーマンの救済買収交渉が決裂
15日:リーマンが連邦破産法11条の適用を申請。メリル・リンチがバンク・オブ・アメリカに買収されることに合意。米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に対し、連邦準備制度理事会(FRB)による最大850億ドルの融資が認められる。
17日:バークレイズがリーマンの北米の投資銀行業務と資本市場関連業務を買収することで合意したと発表。
18日:英銀ロイズTSBが、同業HBOSの救済買収に合意
21日:リーマンの欧州事業部門の破産管財人プライスウォーターハウス・クーパースがリーマンの米国持ち株会社に対し、米国に送金した80億ドル以上の移転資金を返却するよう要求
(資料:BBC他)

―世界全体での有価証券の評価損や、融資による損失

計上損失額:5000億ドル
推定損失額:1兆ドル
(資料:IMF、昨年の信用危機開始後からの数字)

―関連キーワード

INVESTMENT BANK:投資銀行。政府、企業あるいは超リッチな資産家に対し、有価証券の発行などによる資金調達、M&Aの仲介、金利や為替等の金融派生商品を用いた財務リスクの回避などのサービスを提供する。個人などから預かった預金を元手に企業に融資を行う商業銀行とは区別される。商業銀行はその収益の大部分を主に企業に融資して発生する利息に依拠し、投資銀行の収益は株式や債券の資本市場における発行時に発行額に応じて徴収する手数料による。(この部分、ウィキペディアによる。)
by polimediauk | 2008-09-30 22:47 | 英国事情
 麻生内閣が成立したが、これにちなんでBBC記者が「日本の政治は回転ドアのように」くるくるとトップが変わる、と述べている。「フロム・アワ・コレスポンデント」というBBCのラジオ番組の中で、27日放送された。世界にいる特派員が個人的な視点から駐在国について語る人気番組だ。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/from_our_own_correspondent/7637286.stm

 日本の政治のトップが変わるという話は新しい指摘ではないが、まるで「カラオケ」のように曲目が矢継ぎ早に変わり、それに応じて歌い手もどんどん変わっていく・・・という比ゆがおもしろくも聞こえた。

 しかし、注目なのは、日本の政治家が外国のメディアとどうつきあっているのかが分る、非常に貴重なエピソードを披露している点だ。

 福田前首相の話になるのだが、2006年からBBC特派員として日本にいる記者に、ある時、いよいよ首相と一対一のインタビューの機会が巡ってきた。これまで、「日本を本当に動かしているのは政治家ではなく役人だと言われてきた」という記者が、これをしみじみと実感したのがこの取材だった。

 首相の周りのブレーンは、福田氏が何か失言をしてしまうのではないかとかなり心配したようだ。取材日の何日も前から、インタビューではどんなことを聞くべきか、聞くべきでないかに関しての交渉が続いた。

 取材当日、記者が取材用の部屋に入ると、スーツ姿の男性たちがたくさんいたと言う。この日、役人たちが福田元首相が話すべき内容として考えたのは環境問題だった。福田氏に話して欲しい内容を「テレプロンプター」(せりふを教える装置)に書き、これを取材者である記者の左耳の後ろの位置においた。これでは自然な受け答えには見えないとBBC側が指摘したが、意に介されなかった。また、インタビューの冒頭で福田氏が声明を読み上げることになった。BBC側はこの部分は放送されないと言ったが、それでもかまわないといわれたようだ。

 福田氏が姿を表すと、すぐにインタビューが始まり(通常はインタビュー開始前にちょっとした会話をするのが普通)、氏はテレプロンプターに書かれた声明文を読み始めた。福田氏がまじめにやっているので、記者も一生懸命これを聞いたようだ。この部分は放送されないと分っていても、読むように言われたので読んでいるのだった。

 記者は、ちょっとした遊び心から、質問の順番を変更して福田氏に質問をしてみたという。周りにいたアドバイザーたちのあわてた様子を記者は描写しているが、福田氏は動じることなく答え続けたと言う。

 記者は、福田氏が「非常にインテリジェントな人物であることは確か」にも関わらず、まるで操り人形のようであったことで、「落ち込んだ」と書いている。

 これはもしかして、文化の違い、ということもあるのだろうか?「正しくやろう」、「良いイメージを伝えたい」と思うあまりの行為、一生懸命さが逆にマイナスになってしまったということなのか?

 しかし、結局のところ、慣れなのかな、とも思う。外国の報道陣に取材慣れしているかどうか。あるいは外国人とのつきあいがあるかどうか。(あまりびびらず、力まず、自然体でがんばって欲しいものだがー。)

―インディペンデント補足
 
 インディペンデント紙には「あまり読むところがない(読みたい記事が載っていない)」という、メディア評論家ロイ・グリーンスレード氏のコメントや知人の感想について前回書いたが、(実は)こう感じるのは(もちろん)人による。

 特に前の編集長サイモン・ケルナー氏の時に明確にされた・強調されたのが、インディペンデントの「オルタナティブな新聞」としての位置だ。発行部数が3倍以上あるテレグラフ紙に追いつき、追い越すことは最初から狙っていないだろうし(少なくとも今は)、「誰もやっていなかったので『ラジカル・レフト』という方向性を選んだ」(ケルナー氏談)インディペンデントは、それなりに健闘していたと思う。人権やマイノリティーに関しての記事は充実していると思う。頁数が多いというよりも、他紙がフォローしていない記事が載る。個人的に読み応えがあると思うのは、日曜版だ。寄せ集め、故意に脅そうとする記事(健康への脅威、薬が危ないなど)もあるが、他にはない視点の記事がある。取り上げる人物も興味深い人が多いように思う。

 もともと、テレグラフにいた3人の記者が作った新聞だが、その中心となったアンドレアス・ウイッタムスミス氏によれば、きっかけは「テレグラフがあまりにもつまらなく、新しいことを何もやろうとせず、写真も冒険がなかった」ので、思い切った、斬新な、冒険心に富む、ジャーナリズムの質の高い新聞を作ろうと思ったのだと聞いた。その目的は大体満たされたと思うが、やはり長いこと、ずーっと冒険心を持ち続け、かつセールスも常に上々・・・というのは随分大変のようだ。

 とある新聞販売店(ニューズエージェントと呼ばれ、雑貨屋のような感じだ)に日曜の朝、新聞を買いに行ったら、客の一人が店長と話していた。インディペンデントが大好きで、「これ一部を読んだら、もう他の新聞は読まなくてもいいくらい」と言っていた。「私も日曜のインディペンデント、大好きです。おもしろいですよね」と話がはずんだ。店長も私も、この客も有色人種だった。移民の視点から見たさまざまな問題、人種問題、人権問題などをよく掲載するインディペンデントのファンが集まった感じだった。ちなみに、先の「インディペンデントには読みたい記事がない」としたグリーンスレード氏も、同様のことを言った私の知人も「白人」・ミドルクラスの英国人だった。
by polimediauk | 2008-09-27 22:12 | 政治とメディア
 東洋経済のグーグル特集は50数頁の大規模なもので、欧州部分に関与した私自身、まだ全貌をつかめないでいる(!)。

 グーグルはこれからどうなっていくのだろう?

 たまたまなのか、週刊ダイヤモンドも別の意味からの「グーグル特集」をしていた。こちらの方は中小企業がいかにネット広告を利用してビジネスを急成長させるかに焦点が置かれ、実際の米企業グーグルを分析したものではなかったが。

 グーグルに関しては山のように本が出ており、定番は佐々木俊尚氏の「グーグルGoogle」(文春新書)だろうか。

 私のひっかかりは「一企業が世界中の情報を一堂に集めよう・管理しようとしているところ」や「自分のネット上のコミュニケーションに即した広告が出る時の違和感」だ(誰か人間が見ているわけでなく、ロボットがそうしているのだと説明されても、不快感が残ってしまう)。さらにひっかかるのは、このような私の違和感が、単なる古い考えなのかどうか分からない点だ。そのうち、「そんなことにこだわるほうがおかしい」となるのかどうか。グーグルの技術力に関して十分に説明を受け、これを十分に納得したら、つまりは「教育」されたら、こだわりや違和感はなくなるのだろうか?

 特集紙面を見ると、欧州各国でのグーグルの人気はダントツだ。しかし、プライバシーに対する懸念、違和感が、欧州で大きなグーグル離れを起こす可能性を、私は真っ向から否定できない。特に第2のグーグルがもし出てきた時には。これはあくまで大胆な予測である。エンジニア関係の方は一笑に付すかもしれない。「グーグルを追い抜ける企業はいない」と。しかし、欧州にある、漠然とした反米(あるいはねたみ、見下ろした態度、実体はないかもしれないのに感じる優越感)感情にも似た、反グーグル感情が大きなうねりとなって、シェアを低下させる、ということは起きないのだろうか?長く生きて見届けるしかないが。

 さて、英高級紙の1つインディペンデントが全面カラー化した。ガーディアン、タイムズ、テレグラフはすでにこれを実行している。これで4大高級紙すべてが全面カラー化された。カラー紙面は、慣れてしまうと珍しくなくなるが、それでも最初の頃はインパクトがある。どの新聞も台所事情は苦しく、慢性的な発行部数の下落に悩むが、一つの新聞がある(高い)スタンダードを作ると、他の新聞もこれを追わざるを得なくなる。今日本にいるので、インディペンデントの新紙面を実際に手に取ることができない。紙の質のせいなのか印刷のせいなのか、紙面には少し暗い感じがあったが、今は「あかるーく」なったのかどうか、見ものだ。業界の先陣を切って、小型タブロイド判を導入したインディペンデントにすれば、遅い動きでもあった。

 現在の発行部数は約23万部でこれは前年比で4%の減。他紙と部数を比較すれば、テレグラフは80-90万部、タイムズのは60万部、ガーディアンは30数万部となり、インディペンデンは最小だ。全面カラー化直前にはそれまで80ペンス(約160円)だった一部当たりの価格を一挙に25%上げて、1ポンド(200円)とした。読者からは不満が相次いだと言う。いくらなんでも上昇率が急すぎる感じだが、インディペンデント側は「将来に備えている」(編集長のロバート・オルトマン氏、ガーディアンの取材で)。

 インディペンデントの全面カラー化は、元オブザーバー紙(日曜紙)の敏腕編集長だったオルトマン氏の、新編集長としての「お手並み拝見」という側面もあった。英新聞業界の暴露本「フラット・アース・ニュース」を読んでいたら、氏のエピソードが出ていた。その昔、オブザーバーの編集長となったばかりのオルトマン氏は、デービッド・ミリバンド(現外相)に、「今度はどんな新聞にするつもりか」?と聞かれたという。ミリバンド氏は「どんな政治スタンスになるか」を知りたかったのだが、オルトマン氏はセックスとスキャンダルと答えたようだ。すでに「ポスター紙面」と言われた、鋭いメッセージ性を持ったポスターのような1面構成をやめているが、今回の紙面刷新でも、娯楽性を強めたという批評がガーディアン紙に載っていた。特に手厳しい批判をしてきた評論家ロイ・グリンスレード氏は今回も厳しい。

http://www.guardian.co.uk/media/greenslade/2008/sep/24/2 

 上記アドレスから飛ぶイブニングスタンダードの氏のコラムでは、インディペンデントのジャーナリズムの質を問題にしている。「あまり読みたいと思う記事がない」という部分があり、これは私も知人などからよく聞く。売りの「ポスター紙面」を失ったインディペンデントの新しい売りは何になるのだろう?
by polimediauk | 2008-09-24 23:43 | 新聞業界
 22日発売の「東洋経済」がグーグル特集をしている。その中のロンドン部分(グーグルの将来)に参加した。


http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/index.html

 まだ誌面を手にしていないので全体ではどんな風になっているのかは分からないが、担当分ではロンドン・オフィスを訪ねて、数人に取材した。外から見るグーグルと中から見るグーグルは印象が違った。中で働いている人は本当に「楽しく、一生懸命に、良かれと思って」仕事をしているようなのだった(次回以降、気づいたことなどを書きたい)。
by polimediauk | 2008-09-21 21:45 | ネット業界
 「サイバージャーナリズム論」(ソフトバンク新書、2007年)と、映画にもなった小説「クライマーズ・ハイ」(文春文庫)を読んだ。

 前者は「新聞はなくなる日」を書いた歌川冷三氏(元毎日記者)と、ネットではおなじみの湯川鶴章氏、佐々木俊尚氏、森健氏、スポンタ中村氏の共著である。細かい周辺事情はもう変わっている可能性があるが、「ジャーナリスト」という日本語の言葉のニュアンス(あるいは偏見)は今でも変わっていないのではないか?ブログを低く見る態度でまだ変わっていない部分があるのではないか、という思いがした。

 「クライマーズハイ」は映画をすでにご覧になった方もいらっしゃるかもしれない。新聞社の知人に「自社の様子が非常によく表れていて、大変興味深い。是非読むように」と言われつつ、時間が過ぎていた。「ジャーナリスト」のことを考えるのに、また別の面で興味深い考察ができる。

 日本語でジャーナリストというのと、例えば英国でジャーナリストというのと、どうも受け止められ方が違う感じがする。

 英国でも日本でも、一般的には新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどのメディア機関に所属する、あるいはフリーであってもこうしたメディアに書く・報道する人、というイメージが漠然とあるのは同じだろう。しかし、英国では、私の見たところでは、ジャーナリストは「日々のことをつづる人」というもともとの意味がまずあって、それに少し加えて「日々起きていることに関して、何らかの分析・論評を行う人」、「それを一定の表現にして公に出すこと」ぐらいの広がりがあるようだ。

 ・・・と言うのは、辞書を見たり、学者に聞いたわけではない。帰納法というか、例えば新聞にコラムを書く人(それが例えば料理のコラムであっても)はしばしば「ジャーナリスト」として紹介される。ある意味、何でもいい感じである。表現活動をしている人でアート系ではない人すべて、と言ってもいいかもしれない。「どうやったらジャーナリストになれるのか?」とある人が疑問に思ったとしよう。その答えとして、これを誰が言ったか失念してしまったのだけれど、「自分はジャーナリストだ、と宣言する。その瞬間からジャーナリスト」という考え方もある。心のありよう、あるいは物事の見方の1つがジャーナリズムという考えもあるだろう。(また別の答えとして、少々話がそれるようだが、ゴールドスミス・カレッジでジャーナリズムを教えてきた教授―現在のタイトルはジャーナリストーアイバー・ゲイバー氏が言うには、ジャーナリストというのは「所詮、ミドル・クラスの職業だ。一種の遊びというか、「収入が得られなくてもよいぐらいの人がやる職業」、「その代わりその言論で違いを出す」。また、元エコノミスト編集長ビル・エモット氏は、今はジャーナリストと言う肩書きを使っている。日々の事に関する論評を書き、生計を立てるという意味の具体例だろう。」

 私の今までの経験では、英国で「仕事は?」と聞かれて、「ジャーナリストです」というと相手が誰であっても、すっと話が通じる。「君にジャーナリスト足る資格があるのか?」みたいな見方はない(日本だと、こういう見方はないだろうか?)。可もなく不可もなく、1つの仕事である。日本だと、何故これが「高い山」みたいな扱いをうけてしまうのだろう?(英国で高い山的扱いを受けるのが、「調査報道ジャーナリスト」である。)

 そこで「サイバージャーナリズム論」の本になるのだが、ジャーナリズムやネットに興味のある方にはたくさんのヒントがあって、非常におもしろい。しかし、最後の方になると「あれ?」と思う部分が出てきてしまった。

 スポンタ中村氏と森健氏の対談が入った「第7章誰でもジャーナリストになれる?」の中で、森氏が「ジャーナリスト=ビジネスとして継続的に報道の仕事をしている人」と定義している。氏は「私の定義するジャーナリストの条件とは、まず取材すること、そして多くの人が理解できるだろうと思われる内容と表現で情報を形成し、これをあなたが(注:中村氏が)マス・ディストリビューターと命名するマスメディアで発信することです」という発言をされている。この定義ではそれ以外の人、つまりはブログ(のみ)を通じて言論活動をする人は、はみ出てしまう。(実際、司会の歌川氏が「マスメディアで仕事をしない人は、ジャーナリストではない、ということですか?」という問いに、「そう思います」という答えがある。)

 マスメディアとは一体どこからどこをさすのだろう?数千人か万単位か?また、職業としてではなく、ジャーナリズムをやる人もいるのではないか?英国に感化されているのかもしれないが、どうも「物事の見方、生き方」としてのジャーナリズム、ジャーナリスト、ということもあるような気がする。

 ・・・と思っていたら、本の最後に、ネット時代の市民を「ネチズン」と定義した、公文俊平氏のインタビューがあり、ほっとする。氏は、「情報のスマートなコネクターの役割を果たす『知民』の一角を占めるのがジャーナリストではないですか」と述べる。氏によれば、職業として、つまりはお金をとるジャーナリストという考え方は近代産業社会のものだそうだ(他にも目からウロコのコメントが。その詳細は本を読んでいただきたい。)

 一方の「クライマーズ・ハイ」だが、1985年の航空機墜落事故をめぐる、地方新聞の編集部の葛藤を描く。あっという間に読めてしまう。何を紙面のトップにするかの逡巡、社内の権力争い、恨みつらみ、嫉妬、編集部と広告部の戦いなど、細部がリアルでおもしろい。おそらく戯画化している場面も多々あるだろうと思う。読後、時間が経つうちに、何故かコメディー(悲喜劇?)のように思えてくる・・・。
by polimediauk | 2008-09-20 20:01 | ネット業界
 リーマンブラザースが破綻し、英バークレズ銀行が一部の買収に名乗りをあげているという。米「フォーブス」誌によると、「まるではげたかのように」、というわけである。リーマンブラザースはソロモン・ブラザースやゴールドマンサックスなど、投資銀行としてかなり日本市場で利を得ていたのではないだろうか?今まで扱っていた顧客やファンド・資金はどこに、つまりのどのライバル社に流れるのだろうか?他者にとってはチャンス!ということになるのかどうか。サブプライムローンのネガティブな影響はこれからさらに大きくなるようで、NHKでも、元FRB議長グリーンスパン氏の「これからも悪化説」を紹介していた。次の米大統領にとっても、この問題をどう処理するかが大きな課題となるだろう。

 英国の話に戻れば、最近、「英国ニュースダイジェスト」に書いたトピックで、どうも世論の風向きが変わってしまったな、と思ったことがあった。一つはGM食品問題だ。

 GM(遺伝子組み換え)食品といえば、その是非に関し、大きく意見が対立するトピックだ。

英皇太子の発言で論争
 GM食品は「環境災害」か?

 
 「遺伝子組み換え(GM)食品の大量生産は、世界最悪の環境災害をもたらす危険がある」、GM食品を作る「多国籍企業による自然の実験は大きな間違いだ」―チャールズ英皇太子は、デーリー・テレグラフのインタビュー(8月13日付)の中で、GM食品を強く批判した。科学者の研究で自然の大地は大損害を受けており、食糧不足が起きる怖さも指摘した。「巨大食品企業」が食物生産を独占すれば、「犠牲になるのは世界中の何百万もの小規模農家だ」、「私たちは、食の安全保障に関して議論するべきだ」と。

 テレグラフ紙のウェブサイトには、読者からのコメントが殺到した。コメントの殆どは「良くぞ言ってくれた」、「皇太子の言う通り」という賛同の声だったが、多くの科学者や知識人からの非難も相次いだ。食糧生産への科学の関与そのものを否定するかのような発言に対し、「科学の効用を否定するとは、あまりにも無知だ」、「皇太子は金持ちなので、食糧不足に悩む世界の貧困層の気持ちが分からない」とする声が出た。

 このところ食費が上昇しており、将来の食糧不足も話題に上る。多くの科学者が、GM作物は、地球温暖化や人口の増加で予想される世界的食料不足を解決する唯一の道と考えている。皇太子発言はこの見方を真っ向から否定した。

 私はこの皇太子バッシングとも呼ぶべき世論の流れに(といっても国民の多くが本当に皇太子バッシングだったかというと、そうでもない感じがしたが)、驚いた。つまり、「英国は反GM食品」の国だったのに、と。政府や食品会社、科学者たちはともかくも、少なくとも国民のレベルでは、GM食品アレルギーが強かったはずなのに、と。何故皇太子発言への賛同の声が小さかったのだろうか?

―賛否両論のGM食品

 GM食品は遺伝子組み換え(生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などに組み込む)を利用してできた作物のうち、食用のものを指す。

 GM食品推進を巡っては、賛成派と反対派が大きく対立している。環境団体を始めとする反対派は長期的な人体や環境への影響に懸念を示す。賛成派は健康被害を及ぼす調査結果はまだ出ていないとし、GM食品は非GM食品と殆ど変わらず、人体や環境への影響も同じかあるいはより安全となる可能性もあると主張する。

 皇太子は環境保護、自然食品、有機栽培などに関心が高い。有機食品ブランド「ダッチー・オリジナルズ」を立ち上げ、別荘ハイブローグでも有機農業を実施。反GM食品の姿勢は一貫しており、デーリーテレグラフ紙に1998年書いた記事の中で、遺伝子組み換えは「神だけに所属する領域」に人々を連れてゆく、と評していた。

 私見を表明した皇太子の発言に非難の嵐が巻き起こったものの、GM食品や超巨大な多国籍企業ビジネスへの漠とした不安感は国民の大部分が感じていることでもあった。しかし、皇太子発言への国民の賛同発言は、どう見てもあまり表に出てこなかった。

 8月17日付けのサンデー・テレグラフ紙で、ウーラス環境担当閣外相は皇太子が「環境災害が起きるとするなら、証拠を示して欲しい」と迫った。科学者及び政府閣僚は「ずいぶん強気だなあ」と私は思ったものだった。以前は、GM食品に対するアレルギーが強い国民感情に配慮して、表立ってのGM食品推進はあまりなかったように記憶しているのだが。

 英国ではGM作物の商業栽培は認められていないが、2000年以降、政府はケースバイケースで試験的な栽培を認めている。皇太子発言は、食料危機を念頭に国民のGM作物への抵抗感を払拭させようとしている政府の努力に水を差す動きだった。

 GM食品・作物の良さを訴えようとする政府の作戦がどこまで国民に受けいれられたのか疑問だが、とりあえず、皇太子発言バッシングは盛り上がったのだった。

 皇太子発言バッシングの背景には、もう1つの理由があったのだと思う。それは、私の察するところ、「王室の人間が政治的な発言をすることに対する嫌気感」である。皇太子の母親となるエリザベス女王は、政治に一切口を出さず、自分の政治信条も決して外に出すことはない。努めてそうしているのである。

 皇太子はこれまでにも環境問題に関する積極的発言などでひんしゅくをかった(香港返還時に、中国の政治家などを蝋人形のようだと書いたという失態も)。「何も知らない王室の人間が、またおせっかいなことを言っている」という文脈でよくコメディー番組などでからかわれる。立憲君主制にいたるまでの歴史もあって、「王室は政治に介入せず」の原則を貫くのが良い、とされる。

 国際アグリバイオ事業団によると、商業栽培開始の1996年以降、GM作物の栽培地は年々増加し、2007年で1億1430万ヘクタールになった。23ヶ国で約5500万人の農業生産者が従事している。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7557644.stm

 (私自身のGM食品に対するスタンスを聞かれそうなので書いておくと、数年前までは反GM食品で、そういう視線で記事を書いていた。しかし、今となっては、非常にテクニカルな話になってきたような気がする。結局のところ、「誰にも分らない」し、「分らないからこそ慎重に」と前は書いていたのだが・・・。そのうちなし崩しになってしまうのではないか。今はチャールズ皇太子のように恐れがあって当然だと思う。どうしても政治問題化してしまう。)
by polimediauk | 2008-09-16 21:34 | 英国事情
 「クーリエ・ジャポン」10月号には、「米国メディア戦争」と題して、マードックのウオール・ストリート・ジャーナル紙買収の分析記事(翻訳)が載っている。米「アトランティック・マンスリー」の記事がオリジナルだ。米国側から見るとこうなのかなあと参考になる。「FT記者が分析する英・米のジャーナリズムはこう違う」という記事も。米国のジャーナリストたちは自らを弁護士や銀行員と同じく世間的に「立派な職業」に従事していると考えている・・・そうである。英国では、「ジャーナリストは自らをアウトサイダーだと規定している場合が多い」。

 例のロシア・グルジア・オセチアの話もたくさん載っており、その一つはFTの記事で、グルジア・サーカシビリ大統領の評価をクエティン・ピール記者が書いている。元記事の日付が出ていないが、「遅すぎた革命家、サーカシビリの野望」という題がつく。大統領の行動が性急過ぎたのでは?という視点。ロシア、グルジアの紙面、ウクライナとのリンクなど、読み応えのある構成になっている。(「コーカサス国際関係の十字路」集英社新書、書店ですぐ見つかりました。)

 「クーリエ・ジャポン」の本物誌面を手に取ったのは初めてだったが、これは非常におもしろいなと思った。(元記事のアドレスや日付が一切ないのは、翻訳として加工しているせいなのか?)世界のメディアといっても、主に英・米・欧+アジアで、アラブ系の定期メディアは特には入っていないようだったけれど、英米とは言え、日本で紹介されていない記事でおもしろいものがたくさんあるようだから、これはこれでいいのだろう。

 日本特集で「A・キャンベル」という人が書いた村上春樹の記事を思わず最初に読んだが、英国にいる人なら誰でも知っている「あの」キャンベル氏が村上春樹のファンだったとは(それにレズビアンに恋した男の物語「スプートニクの恋人」が好きだったとは)、(大)驚愕だった。で、細かい話だが、英国に住む皆様、キャンベルとは「アリステア・キャンベル」(=スピン・ドクター、元国防省顧問ケリーさんを間接的に殺したかもしれない人、イラクの大量破壊兵器の脅威を誇張させた張本人)なのですよ。で、キャンベル氏は「英国の著名政治家」となっていた・・・・。目次と記事の見出しで。いつ彼は政治家になったのだろう?これはもしかしたら、もしかしたら、間違いではなかろうか?

 それでも、次も読みたいと思わせる雑誌だった。

 
by polimediauk | 2008-09-11 20:21 | 日本関連
 総理の候補者の会見をテレビで見た。もうすでに「内定」があるのかどうか。候補者の中で「(国際)テロ」と「日本の貢献」に言及があり、ドキッとしてしまう。この「テロ」がアルカイダや他イスラム系テロのことを指しているのだとしたら、英国ではこうした「国際テロ」は非常に空虚に響く言葉になっているような気がする。

 ブレア前首相の時代、イラク戦争開戦までの経緯で、政府が、イラク(=外国)の大量破壊兵器の脅威を誇張していたことが暴露されている。「嘘をつかれた」と感じる国民はまだ多い。また、王立国際問題研究所も含め、複数のシンクタンクなどが、アルカイダ+イスラム系テロの脅威は、米英のプロパガンダ的部分があったことを明らかにしている。

 それにしても、「国際」というのはずいぶんと効力がある言葉だ。「国際社会の要求」がある、というと、なんだかすごいことに聞こえる。あたかも「国際社会」がどこかにありありと存在し、日本に要求している・・・ような。米国の要求だけであったりするかもしれないのだが。「国際」(社会の要求)という言葉がマジックワードのような効き目を果たすのは、それだけ日本がいわゆる「国際社会」つまりは外国から(心理的に?)遠いということなのだろうか?あるいは国際的にもっと「顔」を見せたいと言う意識のあらわれか?いずれにしろ、「国際社会の要求」と政治家が言うとき、いつも「?」と思ってしまう。

 さて英国の政治家の話だが、チャーチル元英首相なら葉巻、サッチャー元首相ならハンドバックと、トレードマークになっている品物がある。政治家のお気に入りとして最近注目を浴びているのが、キャメロン保守党党首が愛用する衣料品のカタログショッピングのブランド「ボーデン」と、クレッグ自由民主党党首が好きなショッピング・サイト「オカド」だ。それぞれが中流階級向けで、低所得層とは一線を画す政治家の生活が垣間見える。「英国ニュースダイジェスト」最新号で、両ブランドに着目した。

―「ボーデン・マン」とは?

 ボーデンとは:衣料品のカタログ・ショッピングの会社。http://www.boden.co.uk/ 1991年設立。中流階級向けの品揃えで人気に。典型的顧客のイメージは「ケイト(妻、39歳)、ジェームズ(41歳)。高級紙を読み、平均年収は5万5000ポンド(約1000万円)以上。ケイトは素敵な中流階級の妻で、家族が何を着るかを決める」。

 「ボーデン・マン」とは:ボーデンの衣料を愛用する男性たち。「かつては労働党に投票したが、今後は決してしないと心に誓う男性。環境保全に関心が高く、子供が育つ世界の行く末に懸念を持つ」(評論家ニック・フォークス氏による)
 お気に入りの政治家:デービット・キャメロン保守党党首
 意外なファン:トニー・ブレア元党首も休暇中、ボーデンの花柄のショートパンツ姿を披露。

―「オカド」とは?

 オカドの名称:造語。新鮮さの維持が最も難しいフルーツ、アボカドを連想させる。多忙でショッピングの暇がない人々に、スーパーに行かずとも食料品を購入できる「もう一つの機会」を提供するために、元投資銀行勤務者3人が2000年設立。
オカド・サイトの提供品:高級スーパー「ウエイトローズ」で販売されている品目。
お気に入りの政治家:ニック・クレッグ自由民主党党首。信用収縮で家庭の財政が悪化し、オカドを泣く泣くあきらめたと言う。

―浜辺を歩くデーブとサム

 今夏、デービッド・キャメロン野党保守党党首は妻のサマンサ(サム)さんと手をつなぎながら、イングランド南西部コーンウォール地方の浜辺をリラックスした様子で歩いた。砂の上に腰を下ろした2人は、互いを愛情を込めた視線で見つめあったー。どこから見ても完璧な、幸せそうな夫妻の様子を、報道陣のカメラが追った。夫妻の写真は翌日の新聞各紙に掲載され、「休暇を心から楽しめるほど余裕のある政治家、安心して政治を任せられる男性=キャメロン」のイメージ作りに大いに貢献した。

 休暇中、浜辺でフリスビーをしたキャメロン党首は花柄のショートパンツをはいていた。後にラジオの番組でこの格好に関して聞かれ、「ボーデンだよ。もう何年も着ている」と告白した。サムさんが選んで買ってくれたことも。

 ボーデンは、中流階級向けの衣料品カタログショッピングの会社だ。商品の特徴は「スマート・カジュアル、クリエイティブだが伝統的、やや少女趣味、英南部に住み、インターネットに親しむ人が好むスタイル」(タイムズ8月3日付け)。ボーデン式生き方とは「保守党を支持し、ニュー・レーバーを嫌い、良い仕事は重要だが家族や友人、休暇や冗談を言い合うことの方がもっと重要と考え、自由と正直さを大切にする」(ジャーナリスト、チャールズ・ムーア氏の定義)。ボーデンはキャメロン党首自身、あるいはキャメロン氏が「こうありたい」とする保守党のイメージに重なる。(ちなみに、この原稿を書くため、ボーデンのウェブサイト見ていたら、女性用カーディガン79ポンド、約1万6000円などやや高いのだが、自分も家族のために購入したくなった。新聞のチラシとして時々入ってくるのだが、その時は「高い」と思い捨ててしまうが、サイトで見ているとをなんとなく購買欲を刺激される。)

―財布の紐を締めるクレッグ氏

 一方、ニック・クレッグ野党自由民主党党首も、自分のお気に入りのブランドを挙げている。高級スーパー「ウェイト・ローズ」の食品をウェブサイト上で注文し、自宅まで届ける「オカド」である。

 クレッグ氏はオーガニック食品や「フェアトレード」ブランドも好み、牛乳パックは紙を無駄にするからと、瓶詰め牛乳を配達させるほど、環境問題に関心が高い。弁護士の妻との共働き家庭で忙しい毎日を送り、食料品をネットで注文できるオカドをよく利用してきたと言う。わざわざ店舗を訪れる必要がなく、地球環境保全にも貢献できるというのがオカドの売りだ。

 昨今は住宅価格が下がり、銀行の貸し渋り状態が続く。全国的に住宅ローンの返済に苦しむ人が増え、クレッグ氏は「国民の皆さんの気持ちはよく分かる、と報道陣に向かって語った。「うちもローンの返済に苦しんでいる」と告白し、「妻がオカドでのショッピングから、価格の安いセインズべリーズに変えざるを得なくなった」と「窮状」を訴えた。「国民の苦しみを共有する政治家」というメッセージが込められていた。

 しかし、クレッグ氏の議員給与は6万ポンド(約1200万円)を超え、ロンドンにある5つの寝室付き自宅は時価1・3億ポンドを下らないと言われている。「国民の苦しみを共有」が、何とはなしに白々しく聞こえないでもない。また、セインズベリーズよりも安いスーパーは複数ある。「乗り換えるなら(さらに安い)アスダにするべきだったのでは」という声が一部で出た。

 さて、ゴードン・ブラウン首相のお気に入りのブランドとは?首相就任1年余だが未だイメージが湧かないのが少々寂しいこの頃である。

―「ジョニー・ボーデン」とは

JOHNNIE BODEN: カタログ・ショッピングの会社「ボーデン」の創始者。47歳。自称「スノッブ」。キャメロン保守党党首同様、名門イートン校からオックスフォード大学に進む。投資銀行勤務後、労働者階級の利用度が高いカタログ・ショッピング界を変えようと、中・上級階級向けに高品質の衣料品を販売するボーデンを立ち上げる。「ポップアイドル」など「低俗な番組を見ない人に向けて販売する」と宣言した。シーズンごとの新ラインアップの宣伝文句を自分で毎回書く。ボーデンの年間売上高は1億5000万ポンド(約291億円)に上る。
by polimediauk | 2008-09-10 22:05 | 政治とメディア

「論座」が休刊

 東京は連日30度。すでに去ったと思った夏の真っ只中にまた来てしまった感じだ。

 日本に来て、しゃれた表紙(9月号は赤、10月号はグレー)の「論座」(定期購読中)を手にした。10月号?と思っていたら、休刊になったそうだ。実に残念である。(定期購読した分は払い戻しがあるのかどうか?)

 非常に自由な感じがあって、作り手自身が何かしら楽しんでいる雰囲気が出ていた(泉谷しげるのインタビューが印象に残っている)。「フォーリンアフェアーズ」の翻訳も日本と英米圏と間の論考の溝を埋める役割を果たしていたと思う。書評も長くて面白かった。これほど楽しさ、自由さが満ち溢れていた雑誌が休刊になるとは。他の月刊総合誌「中央公論」が赤字に苦しみ、抜本的見直しが検討されている、と「選択」9月号に出ていた。雑誌の冬の時代か。

 10月号でコラムニストの小田嶋隆さんが、「雑誌の場合、文字の組み方や飾り罫の使い方から立ちのぼってくる何かが、誌面の雰囲気のみならず、雑誌自体の文化的な立ち位置を決定しているみたいなところがある。これは、紙の媒体にしかない特徴だ」。

 紙媒体にしかないのかどうかは別としても、「論座」の場合、本当に独特な何かがあり、これが消えたことを繰り返しになるが残念に思う。

 で、話は日本の総合誌の話になるのだが、論座9月号に林香さん(東京大学大学院情報学准教授)がコラムの中で、「業界用語で言う総合月刊誌」が「女性をまったく取り込めないでいる商品のよう」であることを指摘している。林さんによれば、中央公論の読者の93%が男性で、論座は主要記事27本のうち、女性が書いたのは3本のみだった。逆に、論座自身が9月号で女性誌を分析している。日本の女性誌を見ていると、「女性は大変だなあ」といつも思ってしまう。女性誌の言うことをまともに受けとるほうがおかしいと言わざるを得ないのだろうが、完璧に化粧をし、周囲から浮かないように細心の注意を払い、「かわいい+セクシーな女」であり、かつ料理も上手・・・を要求されている感じがする。

 論座の編集後記(10月号)を読んでいると、「まだどこかでお会いしましょう」という表現をしていた人が複数いた。これからも編集職につくだろうから、そういうことなのか、それとももうすでに朝日新聞関連で次の職が約束されているのだろうか?読者はいったいどこへ行けばいいのかと思ってしまう。(・・・などと考える自分は本当に少数派だったのだろうか?休刊になってしまったのだから。)
by polimediauk | 2008-09-09 22:22 | 日本関連
 グーグルクロームで、米テクノロジー関係の雑誌の翻訳が複数出ているが、エコノミストをのぞいて見た。以下の記事によれば、グーグルが恐れている(かもしれない)のは、マイクロソフトがPCの動作環境(デフォルト設定)を変えてしまい、グーグルの検索機能が十分に動かないようにしまうのでは?という点だそうだ。1990年代、マイクロソフトが、ネットスケープに対してそうしたように、と。

http://www.economist.com/opinion/displayStory.cfm?story_id=12039759&source=features_box1

 こうした懸念もあって、グーグルは、インターネットエキスプローラー(IE)のライバルとなるFirefox(現在市場の20%)に投資してきた。

 しかし、狙いはIEを市場からなくするというよりも、マイクロソフト自体が今後クロームを取りれたIE,クロームを下敷きにしたIEを作ることをむしろ望んでいる、という創業者の一人の言葉が最後に出ている。「どこの社のどの製品を使っている」という意識をソフト開発者もネット利用者も意識せずにウェブを使う世界を描いているようだ。

 上記記事にはかなりのコメントもつく。(エコノミスト・コムの購読者でなくても、名前を登録するだけで、コメントが書ける。最大5000字!)最初の方のコメントで、「やはり、ハードと抱き合わせでないと、クロームはなかなかIEをしのげないのではないか」という意見があった。

****

 ロシア、グルジア、EU関係で、地政学・奥山さんのブログは本当におもしろく、深いですね。紹介されていたエコノミスト記事もEUがまとまっているようでまとまっていない点を指摘していました。(elmoiyさんはベリタも見てくださり、ありがとうございます。)私も早速ブックマークに入れました。

http://geopoli.exblog.jp/9402264/

 私がこの件で気になっているのは*あまりにも一面的に英国の政治家の一部がロシアを批判しすぎているような面と*グルジア大統領の采配ぶりです。「ロシアはけしからん!軍事力を使うなんて」という部分が大きく報道されていますが、一部では「挑発に乗ってしまったグルジア大統領、「考えが浅かったのではないか」とする見出しの記事も当初はありました。ウクライナの動向もやや加味に入れるとすると、果たして、NATO加盟への動きを急ぎすぎたのではないか、英国を含むEU諸国がグルジア大統領に100%肩入れをして、ロシア側を斬ってすてる態度で接すれば(もしそうなら、という意味ですが)、かえって地元の緊張度を高めるのではないか。「時期尚早」ということはないのかどうかー?そういう意味で、今回の衝突には、EUがけしかけた面もあるのではないか、責任があるのではないか?そんなことが気になっています。もちろん、あくまでアームチェアに座りながら、机上の論理を言っている・・・という程度に過ぎないのでしょうけれども。
by polimediauk | 2008-09-04 15:22 | ネット業界