小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 「ネットをどうするか?」が先進国の紙・新聞業界の課題の1つになっている。「ネットか紙か」?の議論は英新聞業界では、ひとまず終わった感じがする。その次第を「新聞協会報」(10月14日号)に書き、以下は入りきらなかった部分などを含めて補足・編集したものである。

 「ネットでも新聞」という感覚が一般化した業界で、「ネット用と紙用」にダブって人を雇うのはおかしい、カットできるところはカットしようという考えが出ている。2つの媒体用に2つの全く同じ規模の編集チームがいたわけでは、もちろんない。紙媒体の通常の編集室があって、これをウェブ用に編集する人員が若干いた・・・と解釈した方が良いだろう。しかし、これからは最初から紙とネットを区別なしに作ろう、本腰を入れる、ということである。いわゆる統合化、インテグレーション、あるいはコンバージェンスなどと呼ばれている。これに伴い、平日版と日曜版・日曜紙の編集室も一緒にする動きがある。人の代わりにテクノロジーを使って、省力化を進める流れもどんどん進む。つまり、人減らし・入れ替えの時期である。

二者択一の終わり:「ネットも紙も」の英新聞業界

 英紙では、「インターネットか紙か」という二者択一の時代は終った。各紙は様々なプラットフォームで文字、音声、写真、映像などを提供するコンテンツ・クリエーターに変貌している。これを支える編集体制はウェブサイトと本紙との統合が急ピッチで進む。フィナンシャルタイムズ、テレグラフ両紙に加え、11月からガーディアン紙も新社屋への移転に伴い、統合編集局が登場する。本紙の編集を主としてきた英紙にとり、この2年は組織と意識を変革する時期となった。

 傍流だったウェブと、本紙の編集体制を一元化させる動きが英新聞界で本格化したのは2006年ごろ。背景には情報環境の激変がある。ネットでニュースを読む人が増え、紙媒体の広告費収入と発行部数の下落が続いた。24時間いつでも、どこでも、好きな形で情報を取得する習慣を持つ知的な利用者を満足させるには、編集部の人材や知識を一体化し、サイトの充実に力を注がなければならなくなった。

 経済紙「フィナンシャル・タイムズ」(FT)は全国紙の中で最も統合度が高いとされる。本紙とウェブのシステム統合も果たした。キーボード操作一つで、記事を出す媒体を選べる。報道デスク席にはウェブサイト担当のデスクと紙媒体デスクとが隣り合わせで座り、どの記事をどの媒体にいつ出すかを決める。紙媒体の販売部数を増やすためにネットでのスクープ掲載を見送る、といった判断はしないという。

 記者は紙とサイトの両方に書き、文字に加え音声、動画への出力などマルチ・スキルが求められる。しかし、動画編集などは専門スタッフが担当し、記者が「何でも屋」にならない措置が取られている。サイトに利用者をつなぎ留めるため、付加価値の高い情報を提供するだけでなく、サイト上で読者との意見交換を奨励するなど、読み手との双方向性を重視する。FTは近年、紙よりもデジタルでの情報提供に軸足を移動させており、統合化はこの線に沿った動きだ。

 統合化構想は8年前で、06年に実現するまで「じっくり時間をかけて作業を進めてきた」(バーバー編集長、ガーディアン紙1月)。

 テレグラフ・メディア・グループ(TMG)社は2006年、マルチメディアを生かした巨大編集室「ハブレイアウト」を新社屋に作り上げた。新体制移行に伴い、全記者が約1週間の研修を受け、ネットと紙での表現の違い、音声・動画の制作方法、何故マルチスキルが求められるのかを学んだ。紙媒体の編集ソフトとサイトの編集ソフトは別になるが、「ニュースグリッド」と呼ばれるツールが両方の制作工程をパソコンの画面上に映し出し、どの原稿がどのような状態にあるかを一目で分るようにした。

 原稿の文章を整えたり見出しをつける「サブエディター」職を廃止する、あるいは削減する新聞社が増えているが、テレグラフではこの職に就く人員を「制作ジャーナリスト」と呼び改めている。旧来の職務に加え、頁のレイアウト、校正、最終的に印刷指令が出る直前まで目を配る。「自分が担当する記事だ」という所有者意識を持たせるのが狙いだと言う(ダグラス・デジタル制作部長)。

 記者は、デスクや旧サブエディターたちがやっていた原稿の書き換えや事実確認、校正などを自分たちでも行う。報道デスクと制作ジャーナリストの仕事の境界線は「ぼやけている」(ダグラス氏)。
 
 テクノロジーの発展で編集作業の省力化、効率化も一層進展した。例えばサイトの編集作業で、記者が書いた原稿は報道デスクが確認後、最短ではサイトに即掲載される。豊富なレイアウト知識がなくても、特定のカテゴリー(例えば国内ニュース)のスペースに送った記事が自動的にサイト上のしかるべき場所に出る仕組みだ。

 見出し・記事では、大手検索エンジン、グーグルで検索しやすい表現が好まれる。労働党のブラウン党首(首相)を交代させる動きを伝える報道では、見出しに同首相の名前を必ず入れるよう指示があったという。記事も、文学的ではなく、平明な表現を意識するよう求められる。記事表現の変化は本紙にも影響する。

 これらは、英紙サイトのトラフィックの三分の一がグーグル経由であることも大きい。出稿時間も、例えば米国関連のニュースは米国の朝に向け報じるなど、検索やアクセスの需要が考慮される。

 24時間報道体制に対応するため、テレグラフは事件発生から15分以内に1報をサイトに載せることを目標にしている。事実確認は重要としながらも「1行でも出す」ことが優先される。サイトの記事で間違いがあっても「後で直せるのがネットの利点」(同社サイト関係者)だ。いわば「編集途中」の記事が出ていることにもなり、新聞記事の意味合いが大きく変わろうとしている。(*「編集途中の記事が出る」に関しては、後日また書きたい。また、話はそれるが、BBCニュースでも状況は似ているようだ。つまり、「早く出す」ことへの大きなプレッシャーがある。今はコラムニストになったが元BBCにいたロッド・リデル氏が、BBCウェブサイトのスタッフに対し、「早く出すように」とハッパをかけたメールがどこかで紹介されていた。その内容がコミカルなのは、BBCらしいというか、「事実の確認は最優先事項」と言いながら、「同時に早く出すことを最優先する」ために、1人では到底出来ない複数の業務をいっぺんにこなすことを要求しているあたりだ。喜劇としか言いようがないほど、無理なことを書いていたのを記憶している。)

 ガーディアン・ニューズ&メディア社は11月、新社屋に統合編集局がお目見えする(・・という予定だったが、10月末日確認したところによると、「年内」にずれこんだようだ)。複数の建物に散在していたガーディアン紙、同紙サイト、日曜紙オブザーバーの編集体制を一元化する。

 3媒体の記者は、ニュース、経済、運動などカテゴリーごとにチームとしてまとまる(これは他紙も同様のようだ)。担当部長が3媒体への出稿に責任を持つ。媒体を限定しない「プラットフォーム・ニュートラル」なスタッフやデスクも設けられた。

 ただし、平日紙ガーディアンと編集方針が異なる日曜紙オブザーバーの独自性を維持するため、同紙だけに出稿する記者も一部残される。一部の記者の原稿はデスクを通さず、サイトに掲載するという。

 地方紙の統合化では、8月、トリニティー・ミラー社が、英ウェールズ地方の主都カーディフに「メディア・ウェールズ」と呼ばれる統合化編集室を立ち上げた。ウェスタン・メール紙を始めとする3紙、雑誌数誌の紙及びサイトを編集する。ミラー社は近くイングランド中部バーミンガムにも5紙を制作する同様の統合編集室を作る予定だ。

 統合化は一方で、人員削減にもつながる。FTでは一割の編集要員を削減した。テレグラフは労働組合との摩擦が絶えない。ガーディアンの場合も、新体制への移行過程で人員削減が生じている。大衆紙を発行するエキスプレス・ニューズペーパー社も、簡易な制作ソフトを使うことで記者が原稿を直接紙面に流し込む方式を採用する予定で、サブエディター職80人程が削減されると報道された。既に無料経済紙「CITY AM」は「必要がなくなった」として同職を廃止している。

 メディア各社が所属する「ソサエティー・オブ・エディターズ」のサッチェル代表は、紙と新聞の編集体制の統合化に関し、「業界にとっては厳しいが、いつでもどこでもニュースに触れることができる一般国民にとっては歓迎する動き」と述べる。通信社や放送業もマルチメディアの統合編集室を設置しており、「新聞業、あるいは放送業という区別があまり意味をなさなくなった」(英国にいると、しみじみ、そう思う)。

 サッチェル代表は「現在は、500年前、ウイリアム・カクストンがイングランドに印刷業をもたらした時を思わせるような大きな動きがメディア界で起きている」とまで言い切っている。
by polimediauk | 2008-10-30 22:39 | 新聞業界
 BBCのラジオ2という番組の不祥事がずい分大きなニュースになっている。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7696714.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7694989.stm

 若者たちに人気のラッセル・ブランドというタレントの番組(10月18日放送)に、別の人気者・放送番組のプレゼンター、ジョナサン・ロス(日本のアニメのファンとしても知られる)が登場した。

 番組が収録されたのは16日で、2人は「フォルティー・タワーズ」という往年のテレビのコメディー番組で、英語の分からないスペイン人のウェイターを演じた俳優アンドリュー・サックスの家に電話した。サックスが不在だったので、留守番電話にメッセージを残し、「ブランドが孫娘さんをファックした」と言った。ブランドは孫娘でダンサーとして働く23歳の女性と前に会ったことがあった。

 電話のメッセージは数回に渡り、途中でブランドがサックスに謝罪しようとするが、ロスがいつもまぜっかえす流れになった。書き取った部分を読んだだけだが、悪ふざけの少年2人が78歳のサックスの電話にメッセージを残し、遊んでいる雰囲気が分かる。もし私が聞いていたら、きっと笑っていただろう。「あなたの孫娘とやっちゃいました」と言ってしまうなんて、とても恥ずかしいし、ショッキングだ。「笑っちゃいけないのだろうけど、笑ってしまう」という人は多かったのではないか?まともな神経の持ち主なら言わないことを、言ってしまうのがコメディアンだし、それも台本なしみたいな感じで、大先輩となるサックスに非常に失礼なことを言ってしまう・・・タブーだらけの行動だからこそ、大笑いになる。もちろん、笑ってはいけないのだろうけれど。

 しかし、このニュースを最初に聞いたとき、非常に不快だった。サックスもスタジオにいて、一緒に馬鹿なことを言っているならフェアだと思うけれど、プライベートな空間にいる時のサックスに不意打ちを加えるなんて(そしてそれを放送するなんて)、おかしい感じがしたのだ。

 事の次第をBBCのサイトで知ると、結局のところ、コメディアン2人のおふざけだったんだなと思い、やや気が楽になった。それにしても、プラクティカル・ジョークというか、そういうことであっても、「何故これが番組の制作デスクの承認のもとに放送されたのだろう?」と疑問になった。

 まさにこの「何故どのように」という部分が現在調査対象となっている。

 BBCによれば、当のサックスは、「番組収録の日に、問題の箇所を放送していいかどうかと制作側から聞かれた」そうだ。サックスは「その箇所がよく聞き取れなかった」、「次の週、スタジオに行くから、今週はその部分を放映しないでほしいと言った」。

 昔の「どっきりカメラ」のように、芸能人に不意打ちをかけ、狼狽振りを見る・・・というのは1つの番組の形であろうけれども、今回のBBCの番組ではきちんとサックスの合意を取っていたのだろうか?何だか、よく分からない。

 ブランドとロスの行為が「けしからん」という人の声は大きくなり、BBCに対して不満の声が2万件は送られたようだ。新聞も書きたてるようになり、とうとう、29日、BBCのディレクター・ジェネラル、マーク・トンプソン氏が、2人を一時番組作りからはずすという発表をした。ロスは、毎週金曜日に放映される対談番組を持っている。通常であれば水曜日(29日)、これを録画するはずだったが、流れた。金曜日、何が放送されるのかはまだ分からない。

 どうもBBCの対応が遅すぎる感じがするが(こういうことが起きると、BBCは直ぐに自社内の調査を開始するが、こうした調査にいつもものすごく時間がかかる。決定権を持っていた人や関係者はそれほど多くないはずだが、数週間かかるのはざらである。弁護士との交渉に時間がかかっているのかどうか)、トンプソン氏の手紙を読んでいると、組織を守ることばかり考えているように見える(当たり前かもしれないが)。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7697354.stm

 たくさん視聴者から不満の声が出されたので動いた・・・という感じである。「騒がれたから動く」のでなく、コトが変な方向に行き出した22日、23日頃からすぐに赤信号が点くべきだったように思う。

 メールオンサンデーなど右派系メディアが騒ぎ出し、何とブラウン首相までもが「不適切」と発言している。通信・放送業の規制団体オフコムも調査に乗り出している。

 何だかものすごく大事に発展しているが、巨額の報酬でBBCの番組に出ているブランドやロス(特にロス)へのバッシングというか、ねたみ感情も国民の一部にはあるようだ。

 回りまわって、結局はBBCバッシングにつながってゆく。「貴重なテレビライセンス料をこんな人たちを雇うのに使っている」と・・・。


 ・・・と書いていたら、ラッセル・ブランドが担当してきたラジオ番組をみずから降りる宣言をした。ジョナサン・ロスも謝罪文を出した。しかし、ここまで神妙にされてしまうと、度が過ぎる感じがしないでもない。「非国民!」といわれて、謝罪したような。とにもかくにも、制作側が悪い感じがするのだが。後で謝罪するような番組を放送するのがおかしいのでは?と。BBCには編集方針規定もあるのだから。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7698417.stm

 まあ詳細はまた段々明らかになるだろう。

(新聞の話の続きは後日。)
by polimediauk | 2008-10-30 03:09 | 放送業界
 風は(かなり)冷たいが、まだまだきれいな秋の日が続く。

 インディペンデント紙の記事をウェブで読み、プリントアウトしようとしたら、いくつかの選択肢が出た。(以下のアドレスから、試しにどれかを印刷しようとしてみていただきたい。)

http://www.independent.co.uk/

 「print」を選択すると、「どんな印刷をしたいのか?」と聞く画面が出てくる。いくつかの選択肢の中で、1つ目は「5枚以上印刷したい人」用で、これを選択すると、10枚までは一枚1ポンド(約160円―200円)で販売する、とある。枚数が増えるほど単価は下がる。この場合は、紙に広告が載らない。

 「再印刷」として、ビジネス用に使う、新たな資料を作るなどの用途が想定されている選択肢は、自分の連絡先をインディペンデントに送るようになっている。後でインディペンデント側から連絡があり、値段の交渉をする。

 3番目が印刷料がタダのオプションだが、広告が入る。そして、印刷は5枚まで、とある。使うコンピューターを変えればどうなるのか分らないが、印刷してみると、確かにトップに広告が印刷されるものの、あまり気にはならない。広告主にとってはありがたいだろうし、インディペンデントからすれば、どっちに転んでもお金を稼げる方法を見つけたことになるのだろう。(日本ではやっているところはあるのだろうか?)

 どこの新聞社もウェブサイトから収益を上げるのに必死なようだが、また新しい方法を一つ見つけた、ということか。これが英新聞のウェブサイトの標準になるのかどうかは分らないが。

 このサービスを管理しているのが著作権ライセシング会社iCopyright だ。著作権ライセシングを初めて自動化した会社、と書かれている。
http://info.icopyright.com/about.asp

 前に、コメントを書かれた方に「何故新聞業界(=死んだ木の産業)のことを何度も書くのか?」と言われた。新聞や活字メディアのことを業界出版物に書いてきたということが直接の原因だが(前に新聞業界にいたということもあり)、ラジオやテレビ同様に、新聞は単純に「気軽に入手できておもしろい」という要素がある。また、良い意味でも悪い意味でも世論を動かす一端になっていることは確かであろうし(ただその意味合いは昨今希薄になっているのかもしれないが・・・)、知的なコンテンツを蓄積してきた(紙の)新聞媒体が、「これからどうやって変化していくのだろう?」という部分に大きな関心を持っている。

 何十年か先のメディアの様相がどうなっていくのかは分らないが、紙・新聞はどんどん変貌していくのではないかと思っている。「紙」部分はかなり縮小してゆきネットの比重が高まるであろうが、人が絡むドラマというか、さまざまな事象の動きの報道はこれからも何らかの形で続くだろう。もう媒体は何でも良いだろう。新聞業の崩壊あるいは変貌は時代を映し出すであろうし、これはこれでおもしろいのではないかと思っている。 

 既に近未来と言うか、次の時代の方向に進んでいると思えるのが英国新聞業界である。・・・という結論は、主にネットでの言論や紙媒体での記事を読んでそう思ったのだが、ひょっとしたら、新聞業界にだまされている可能性もあるだろう。つまり「進んでいる」部分のみが報道され、遅れている部分は外にほとんど出ないから、全体からするといかにも進んでいるかのように見えるが、実は・・・という可能性もなくはない。

 しかし、はっきりしているのは、英新聞に限っては、「新聞=紙が本体」という考えはすっかり廃れてしまった。前に、ガーディアンのラスブリジャー編集長が、「ネットのガーディアンと紙媒体のガーディアンのどっちが『本体か』と聞かれたら、どちらかというと『ネットの方』」と答えていた。数年前の話で、「ずい分思い切った言い方をするなあ」と受け止められていたように思う。

 今は何だか切れ目がなくなった。ネットも紙も同様に重要で、広告媒体としての位置づけや認知度などの意味からはネットの方が重要になっていると言っても言い過ぎではないかもしれない。

 で、今までは「主」だった紙媒体の編集とネットの編集を一本化する、つまり同じ一つの編集室で作る(インタグレーション、コンバージョン)動きが広がっている。英国だけでなく、米国や日本でもこの動きは注目されている。業界以外の人からすれば、「それでどうしたの?」的にも見えるだろう。ところが、これが結構大きい。それは、編集統合の過程で、例えば英新聞界の組織が変わっているし、紙媒体の新聞記事の書き方にまで影響を及ぼしているからだ。

 この経緯を書いた記事を次回、出したい。
by polimediauk | 2008-10-26 07:48 | 新聞業界
(追記)を後ろに入れました。
 (影の財務大臣オズボーン氏が窮地に陥っている。誰のリークだったんだろう?ブラウン首相か?保守党と労働党の支持率の差は思うように狭まっておらず、このままだと労働党が総選挙で負ける確立が高い。ここで一度保守党側、特に目立つオズボーンを叩いておこう、という目論見か?キャメロン保守党党首を叩くのは大事過ぎるから、と。総選挙への戦いが(時期は未定だが)本格化している証拠なのだろうか?)

 近頃、「ニュースサイトを作りたい」という思いが日を追うごとに強くなっている。

 誰でもが簡単にブログを使えるようになって、もう数年が経つ。ブログ・ジャーナリズムといえば米国の例が著名だけれども、それに比べて遅咲きだった英メディア界でも、政治ブログでは、個人が書く「ガイ・フォークス」が既存メディアのネタ元になっており、昨今の金融危機のスクープを出し続けているのも、BBCのビジネス記者ロバート・ペストンのブログだ。BBCは記者がブログを書くことを奨励しているようだが、記者個人がBBCのサーバーを使って書くブログは必ずデスクの目を通っている(はず)。飯の種である放送時間内にではなく、ブログでスクープ記事を出す、という現状がすさまじい感じがする。弱肉強食。形が何であれ、「BBCが出した」ことが大事なのだろう。

・・・話がでかくなったが、個人の話に戻ると、一人のブロガーが書いたブログにはその人の知恵やセンスが出てたくさんの面白みがある(あり得る)と思うけれど、複数のニュース、トピック、書き手たちが参加して作り上げてゆくサイトの面白みは、複層構造になって、もっともっと面白いのではないか?さまざまな興味深い複数のブログに飛んでゆく、あるいはRSSで自動的に情報をもらうのもいいけれども、一つの場に集まる・集めることで、面白いパワーが出てくるのではないか?つまりその「場」で、書き手同士、あるいは読み手同士がつぶやきや意見を発してみれば、もっと面白いのではないか?

 人が集まった時のパワー(電力のような)に関しては、その昔、「ほぼ日」のイトイ氏に聞いたのだけれども、久しぶりに彼のサイトを見てみると、その日のエッセーの下にさまざまな人のコラムが並んでいた。これをクリックするとそのコラムに行ける。非常に明るい感じで、面白い。ブログやコラムを一堂に集めたサイトは他にもあるが、ここまでうまく作られているのは珍しい感じがした。(「言いまつがい」、「書きまつがい」には大笑いである。)

http://www.1101.com/home.html

 こんなサイトを作りたいが、サイト制作費や管理費でこちらが払えるのはせいぜい数万円程度。

 「お金がなくても出来るソフトはないものか?」と物色しているうちに、(グーグルの)「ブロガー」(英語ほか)のソフトが結構面白くなっていることに気づいた。

http://katnsatoshiinjapan.blogspot.com/
http://www.vividotonline.com/blog
http://readingadventures.blogspot.com/

 「複数の書き手が1つのブログを作る」(例えば日替わりに書く)ことができる。毎日、一本だけニュース記事を出すサイト、ということであれば、続きそうだ。「ニュース記事」といっても、トピックは広くして、「ニュース心のある人が思ったことを書く」でいいと思っている。

 基本は、とにかく作ることではないかと思っている。巨額の資金を先に貯めたり、誰かエライ人(既存の大手メディア関係者)に編集長やデスクになってもらったり、誰かに「やっていいかどうか」とお伺いを立てたりせずに。「市民記者」になるために、お金を払って講習を受けたり、試験に合格する必要もなしに。

 果たして読みに来る人がいるのかどうか?「誰か」は読みに来るだろう。知的に興味深いことを書けば、きっと読みに来てくれるはずだ、存在が知られてさえいれば。取り上げるトピックを吟味すれば。読ませるコンテンツを出せば。

・・・というようなことを最近、考えている。書き手やそのほかの形で参加したい方はぜひお声をかけてください。Mikさんから、「もう既にに他の方が同様のことをやっています。これから始めるには遅いです」、と指摘されそうだが・・・。

 手始めに、このブログを使って、時折「ゲスト・コラム」のような形で何か書いてくださる方を探しています。良かったら、何を書きたいかをメールしてください。1回が1500字ぐらいをめどに考えています。

 (追記:皆様、いろいろコメント、ありがとうございました!大変心強く思いました。フラット+簡単+楽しい+知的に読み応えあるものができないかなーと思い、日々準備中です!)
by polimediauk | 2008-10-23 07:02 | ネット業界

大学ランキングと英国

 英国に戻る前のばたばたでずい分更新のない日々が続いてしまった。こちらはかなり気温が低い(12度から15度)が、黄色や緑、茶色の落ち葉が非常に美しい季節でもある。

 どことなく体調がまだ元に戻っていないので、「英国ニュースダイジェスト」最新版(ウェブでは21日から掲載)向けに書いた大学ランキングの話を入れたい(若干補足)。

 教育出版団体が毎年作成する「タイムズQS世界の大学ランキング」が、今月上旬、発表された。トップ10は米国と英国の大学が独占したが、英大学のランキングは下がり気味。上位100に入る数も減っており、教育関係者の間では不満が募る。ランキングの上下は大学の評判に影響を及ぼすので、「優秀な学生が集まらなくなる」、「研究への投資が減る」ことを心配しているのだ。

 200位までを見ると、日本の大学で最初に入っているのは19位の東大。120位には今回ノーベル賞受賞者を出して名をはせた名古屋大学が入っている。大学関係者同士の評価が大きな影響力を持つランキングで、つまり「国際的に知られていなければ評価されない」ということか。結局のところ、あまりこだわることはないのだが、ずい分と英国の大学関係者や政治家が気にしているようなのがおもしろい感じがした。

 もとの資料は:

http://www.timeshighereducation.co.uk/hybrid.asp?typeCode=142&pubCode=1&navcode=118

世界の大学ランキング発表
英国があせる理由とは?


 10月9日発表された「タイムズQS世界大学ランキング」は、高等教育情報誌Times Higher Education(THE)と教育関連企業QS社が作成し、2004年から毎年、発表している。世界中の学者約6300人、企業側から約2300人が調査に協力した。順位付けの最大の要素(40%)は同分野の専門家からの評価だ。

 今年トップを占めたのは米ハーバード大学。5年連続のトップだ。昨年2位に並んだのはイエール米大学、英国のケンブリッジ大学、オックスフォード大学だったが、今年はケンブリッジが3位、オックスフォードが4位と英国組は下に落ちた。トップ10は米国の大学(6校)と英国の大学(4校)が独占したものの、トップ100に入る米大学は37校であるのに英国は17校。前年は19校であったことから、「米国を追い抜けない英国」、「評価を下げた」等、失望感漂う報道が出た。

 英国では、高等教育に関する様々なランキングが発表される。各教育機関の切磋琢磨の一助になるという目的以外に、進学希望者やその保護者にとっては、大学選定の目安となる。上位になれば、優秀な学生や指導陣が集まるだけでなく、研究・実験のための資金も集めやすくなる。ランキング付けは、大学の利益に直結する、無視できない指標となっている。

―米国に追いつけない?英国

 今回のランキングのトップはハーバード大でこれにイエール大が続いた。英国の名門中の名門「オックスブリッジ」を僅差で抜いた。世界の優秀な頭脳や研究費用の投資が英国ではなく米国や他国に流れるのでは?そんな懸念を抱く大学関係者もいたようだ。

 ランキングを行った雑誌の編集長アン・ムロズ氏によると、「ハーバード大学の年間の寄付金総額は、英国のすべての大学の年間収入とほぼ同じ規模」だ。「金」がランキングで上位になるための決め手と見る関係者は多い。ロビー団体「ラッセル・グループ」も、英国が将来高等教育にもっと投資をしなければ、「中国をはじめとする他国に追い抜かれてしまう」と警告を発している。

 イングランド地方の高等教育大臣デービッド・ラミー氏は、BBCニュースの取材の中で、「現時点で優位にある教育機関が10年か15年後にもそうである保証はない」として、高等教育機関への財政支援の増加の必要性を訴えた。政府は2011年までに、1997年時点と比較して30%増の年間110億ポンド(約1800億円)の財源を高等教育機関に当てる計画を立てている。

 日本の大学では19位に東京大学が入っているものの、米英に比べると影が薄く、英国の「懸念」や「警告」は贅沢な悩みにも聞こえる。

 一方、英国の大学は、教育の質を高める、研究資金をできるだけ多く集めるという目標の他に、別の面で大きな課題を課せられている。それは、中・上流家庭の師弟に集中しがちな高等教育の機会を、低所得層にも開放することだ。元祖格差社会というか、階級社会英国ならではの(こうした格差をなくするための)社会的要請といえるだろう。会計検査院(NAO)の6月の調査では、家庭の裕福度による高等教育進学率のギャップは依然として残っている。まだまだ努力は続く。

―THE-QS世界の大学ランキング2008 
200校の中で、20位以下は日英のみを抜粋すると・・・

1 ハーバード大学(米)
2 イエール大学(米)
3 ケンブリッジ大学 (英)
4 オックスフォード大学 (英)
5 カリフォルニア工科大(米)
6 インペリアル・カレッジ・ロンドン (英)
7 ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ (英)
8 シカゴ大学 (米)
9 マサチューセッツ工科大 (米)
10 コロンビア大学 (米)
11 ペンシルベニア大学 (米)
12 プリンストン大学 (米)
13 デューク大学 (米)
14 ジョンズ・ホプキンス大学 (米)
15 コーネル大学 (米)
16 オーストラリアン・ナショナル大学 (オーストラリア)
17 スタンフォード大学(米)
18 ミシガン大学 (米)
19 東京大学(日本)
20 マッギル大学 (カナダ)
(以下、日英のみ抜粋)
22 ロンドン大学キングス・カレッジ (英)
23 エジンバラ大学(英)
25 京都大学 (日本)
29 マンチェスター大学 (英)
32 ブリストル大学(英)
44 大阪大学(日本)
61 東京工業大(日本)
66 ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(英)
69 ウォーリック大学(英)
73 グラスゴー大学(英)
75 バーミンガム大学(英)
76 シェフィールド大学(英)
81 ヨーク大学(英)
83 セント・アンドリューズ大学(英)
86 ノッティンガム大学(英)
99 サザンプトン大学 (英)
104 リーズ大学(英)
112 東北大学(日本)
120 名古屋大学(日本)
122 ダラム大学(英)
130 サセックス大学(英)
133 カーディフ大学(英)
133 リバプール大学(英)
152 バース大学(英)
153 アバディーン大学(英)
158 九州大学(日本)
160 ロンドン大学クイーン・メリー (英)
162 ニューキャッスル大学 (英)
170 ランカスター大学(英)
174 北海道大学(日本)
177 レスター大学 (英)
180 早稲田大学(日本)
194 レディング大学(英)
199 神戸大学(日本)
(61位を後で直してあります。)

英国の大学Q&A

―大学の種類

 主に5つに分類される。19世紀以前に創立された「古代の大学」、19世紀から20世紀初期にかけて創立された「赤レンガ」大学、1960年代に創立され当初「新しい大学」と呼ばれていた大学など。現在ではこうした大学は一般に「古い大学」(オールド・ユニバーシティー)と呼ばれる。1992年の高等教育法施行以前に創立された大学すべてを指す。実用的なコースもある総合高等教育機関「ポリテクニック」が、この年大学に移行している。また、1968年に創立の「オープン・ユニバーシティー」は英国で唯一の通信教育専門の大学。

―経済環境と入学率の影響

 会計監査院の「Widening Participation in Higher Education」という報告書によれば、社会・経済レベルが低い家庭に育つ18歳から20歳の若者の間で、高等教育を受けている比率は全体の20%(2005年ー06年度)。一方、中・上流家庭の同年齢層の場合、43.3%が高等教育に進学している。

―高等教育で学ぶ学生の内訳

英国人学生:2006035人
EU他国出身者:106225人
EU以外の他国出身者:223855人
合計:2336115人
(2005年―06年度、フルタイムとパートタイムを総合。Universities UKより)

関連キーワード: Russell Group ラッセル・グループ。研究を主とする20大学の団体。元々、ロンドンのラッセルホテルに集ったことからこの名前がついた。ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、インペリアル・カレッジ・ロンドンなど著名大学が所属。1994年、ロビー団体として結成された。英国の大学に投資される研究費用全体の60%以上がこのグループの大学に入る。米「アイビー・リーグ」と同列とも見なされる。2006年から実施された、大学の授業料値上げを訴えて注目を浴びた。
by polimediauk | 2008-10-21 02:03 | 英国事情
 日本滞在も後数日となった。視点を変えてみると、日本にずっと住んでいた時とはものごとがまた違った風に見えてくるのが新鮮だった。

 久しぶりに、前に働いていたことがある英字紙「デイリー・ヨミウリ」の実物紙面を手にした。12年ほど働き、翻訳から紙面制作、取材、原稿書きをした。日本人スタッフの場合、読売新聞の日本語記事を英語に直す作業があり、翻訳力に長けていないと「ダメ」となる。私はトップクラスではなく、いつも翻訳に苦労し、たくさんの人に迷惑をかけたと思う。紙面制作も苦手だった。それでも、一通りの工程をやらせてもらえたので、紙面を手に取ると、とても懐かしい。

 時を置いて改めて紙面を眺め、ここ1-2週間分を検証してみた。今現在、編集部がどのように仕事をしているのか分らないので、あくまで私の昔の経験(2001年末時点)と、現在の紙面を見ての判断であるが、デイリーヨミウリはずい分と大きく変わってしまったようだ。私の頭には連日目にする英国の新聞のイメージがある。

 非常に気になったのが、頁を開いても開いても、デイリーヨミウリ記者(ジャーナリスト)たちの声が一向に聞こえてこないことだった。デイリーヨミウリのバイラインの記事が、スポーツ面と特集面を除いて、一本もなかったーー私が見落としたのでなければ。

 「スポーツ面と特集面(週末・ウイークエンドなど)にあるのなら、いいんじゃないの?」-そう考える人もいるかもしれない。確かに、スポーツも、特集(映画や本の紹介、言語欄など)も重要だろうが、食事で言えば副食の感じがする。主食にあたる国内ニュースー社会、政治、経済などーにバイライン記事が一切ないのは、一体どうしたことなのか。

 「声がない」新聞になったのだろうか?

 バイラインの代わりにあるのは、読売新聞の翻訳であり、APやロイターなど通信社記事や外国の新聞の記事である。1面から入って何頁もめくり、うしろの方に来るまで何の声もない。書評、映画評も大切だが、こういうところにだけバイラインがある、というのは一体どうしたことか。しかも、これは私がいた時もそうだったけれど、特集面では同じ人が3本ぐらい、同頁や次の頁に渡って書いている。「書く人がいない」のか?

 10年ほど前は、例えば政治部、国際部、郵政省、文部省(表記は変わっているだろうけれど)などの記者クラブに人を出してもいたが、今はなくなったのだろうか?

 つまるところ、スポーツと特集面を除いては、記者が誰も取材に出ていない、ということなのだろうか?バイラインの記事がないということは、やはりそうなのだろうと推測するしかない。

 そうすると、例えば日本人スタッフで特集面にいない人は、かつ英文の整理記者・編集者(英語のネイティブスピーカーたち)は、逆に言うと、翻訳のみ+翻訳文のリライトのみをしている、ということだろうか?何か心に溜まるものができてしまう、ということはないのだろうか?才能がある人がたくさんいるだろうに、なんともったいないことか。

 しかし、と翻って考えると、これも1つの生き方ではあろう。紙媒体への広告が減っており、どこも台所事情は苦しいと聞く。デイリーヨミウリの部数の上下に関して、私は一切知らないけれど、日本で英字新聞を読む人の数は一定しており、決して増えていないということが常に言われてきた。かなり苦しい戦いを強いられていることもあるのかもしれない。

 これからどうなっていくのだろう?読売新聞の声を出す新聞=デイリー・ヨミウリとして位置づけるなら、デイリーヨミウリのオリジナル記事が少なくても驚くには値しないのだろう。理想論を言ってもだめなのだ。

 願わくば、デイリーヨミウリのウェブサイトが大きく花開くようにできないものか。英文毎日の話があったが、ヨミウリ英字のウェブはもっともっと可能性を秘めている感じがする。お金を投資すれば、ずい分とすごいことになるのではないか。英国の新聞の感覚からすると、過去記事=アーカイブが読めるようにすると、ガーディアン(サイトの読者2000万人)にも負けない、日本に関する英語の情報ハブになれる「かも」しれないと思ったりする。
by polimediauk | 2008-10-13 17:32 | 新聞業界
 世界で金融危機が広がる中、英国の地方自治体が大きな困難にぶつかっている。少なくとも70以上の自治体(ここでは「カウンシル・オフィス」)がアイスランドの銀行にかなり投資をしていたのだが、立て続けに3行が破綻+国有化となったのだ。アイスランドでは9日、該当銀行株の取引を停止したようだ。破綻銀行の1つLandsbankiには、英国人預金者が30万人いるという。英国人顧客が全体としてはどれぐらいの預金を全破綻3行に置いていたのかは、分っていない。ただでさえサービスが遅いという批判があるカウンシルが、ごみの収集もまともにできなくなるのではないか、あるいは財政破綻になるのではないか、という懸念の声が出るのも無理はない状況になっている。株価下落や「金融危機」は生活のあらゆる部分にまで影響が出るのだろう。不景気では弱いものから切り捨てられる。金融の仕組みなど、構造を変える必要があるのかどうか?を考える時が来た。あおるわけではないが、考えをめぐらせるのは悪くないだろう。

 FTのジリアン・テット記者は英政府発表の総額500億ポンド(約9兆億円)に上る公的資金の注入計画を歓迎している。「気づくのが遅かったが、とにかく行動を起こした」。これで不景気の進展をとめられるというわけではないが、と。

http://www.ft.com/cms/s/0/e27751fe-9563-11dd-aedd-000077b07658.html

(追記:前にテットさんに取材したときのエントリーです。経歴もちょっと入れてあります。)
http://ukmedia.exblog.jp/8648665/
by polimediauk | 2008-10-10 00:00 | 英国事情
 (株価暴落でどこでもすごいことになっている。経済危機、不景気、紙媒体の不振・・・・経済の大きな流れの中のほんの一葉の自分にも影響は必須だ。)

 前々回、金融危機報道とBBCのロバート・ペストン記者(ずっと「プレストン」だと思っていたが「ペストン」だった)のことに触れた。住宅金融大手ノーザンロックの資金難を最初に報道したジャーナリストとして知られている。

 オンラインマーケティングの会社「ヒットワイズ」によれば、株価がどんどん下がる一方で、ペストン氏に関するサイトの人気が上昇中だ。 http://weblogs.hitwise.com/robin-goad/

 8月16日以降の4週間(10月初めまで)だと、ユーザーは「ロバート・ペストン」と検索後を入れ、その35%がウイキペディアの氏の項目にたどり着く。30%はBBCの氏のブログにやってくる。BBCのジャーナリスト・ブログで最も人気があるのは、政治記者のニック・ロビンソン氏のものだ。

 BBCのサイトは夏のオリンピック時に1年のピークを迎えたが、9月も金融不安+危機や政治危機(ブラウン党首すげかえ要求など)から順調にアクセスが伸びている。

 ヒットワイズのサイトからガーディアンのペストン氏のインタビューに飛ぶと

http://www.guardian.co.uk/media/2008/oct/04/bbc.creditcrunch

 氏が「ノーザンロックはずい分リスキーなビジネスをしているな」と思ったのは2,3年前だそうだ。しかし、これを誰もまともに聞いてくれる人は当時いなかった。「完全な馬鹿」と思われていたそうだ。元々紙媒体のジャーナリスト(インベスター・クロニクル、フィナンシャル・タイムズ、サンデータイムズ)で、BBCに移って放送ジャーナリストにはなったものの、ぺらぺらとスムーズに話すタイプではなかった。実際、朝のBBCのラジオのニュース番組で聞いていて、「こんな聞きづらい、変な人をよくラジオに出すものだなあ」と思ったものだ。頭の回転が遅いようにも聞こえ、「この人は一体何なのだろう?」と。しかし、「一旦喉をえへんとやると」、スムーズにしゃべるそうだ。ロイズTSB銀行によるHBOSの救済合併を最初に報じたのもこの人だ。

 父親が、労働党の上院議員モーリス・ペストン氏だった。父はエコノミスト。ゴシップめくが、テレグラフの金融頁のエディター候補にもなったが、「社交好きではない」ということではずされた、というエピソードが紹介されている。「仕事の後で、職場の仲間とともにパブに飲みに行く」タイプではない、と自分でも認めている。群れないタイプ、ということか。

追加:まだ詳しく見ていないが、批判的な視点を紹介したのが「ポリス」のチャールズ・ベケット氏。金融ブログが危機をあおるのではないかという意見を検証している。(8日付け)

http://www.charliebeckett.org/
 
 


 
by polimediauk | 2008-10-08 18:36 | 放送業界
 昨今の金融危機の報道はどうあるべきか?報道が危機をあおったことはないのだろうか?あるいは、危機となる前に報道が警告をすることはできなかったのだろうか?

 ・・・という問いを、放送ジャーナリスト、スティーブン・ヒューイット氏がBBCラジオ4の「メディア・ショー」(10月1日放送)で行っている。(1週間過ぎると消えるはずなので、聞きたい方はその前に。)

http://www.bbc.co.uk/radio4/factual/mediashow/

 BBCのビジネスの記者ロバート・ペストン氏(前に「プレストン」と書きましたが、ペストンの間違いです!!)は、現在は国有化された英住宅金融ノーザン・ロックの危機(資金繰り難)を最初に報道したことで著名だ。この報道の後、ノーザンロックの支店前には預金を全額出そうとする人々の長蛇の列ができた。取り付け騒ぎが起きてしまったのである。ペストン記者自身に危機を起こした一因があるのではないか、報道の責任があるのではないか、という問いに、ペストン氏は、「ノーザンロックの構造自体に問題があった」と述べる。例えば、多くの預金者が銀行に押しかけたとき、これをスムーズに処理できるほどの支店がなかったなど。預金者の数と比較して支店数が極度に少なかった、と。

 報道記者としての責任は十分に自覚しているが、基本として、これは BBCに入る前からもそうだが、まず視聴者を「大人として扱う」ようにしている、という。

 一方のフィナンシャルタイムズ紙のジリアン・テット記者は、世界に広がる金融市場の動きを「メディアは責任を持って報道した」、と述べた。放送業界が動きを刻々と報じていったので、それに市場が反応し、これにまたメディアが報道する、というすばやい動きがあったと述べた。

 ペストン氏は「迫り来る危機を大きな声で報道することは非常に難しかったーー政治などのコンセンサスが『異常なし』という文脈を作っていたからだ」と告白。
 
 テット記者は「過去4年ほど、金融業界の先行きに大いなる懸念を持ってきたし、いくつもの記事を書いてきた」、「しかし、大きな問題は、過去7年間で金融上の改革(テクノロジーなど)が非常に大きな変化を遂げたにも関わらず、これを誰も語ろうとはしなかったことだ。そんなことを書けば、テクノロジーのオタクであると思われてしまう、という雰囲気があった。金融業界の人が語りたがらなかったのだ」。それと、「普通の人がノーザンロックの問題を知るべきではないという考えがあった。しかし私は、金融業界を運営している人だけがあることを知っていて、口座を持つ(普通の)おばあちゃんが知らない、ということは許されないと思った」として、ペストン氏の報道を弁護した。

 他にも、保守党党首キャメロンのメディア戦略の是非、公共放送の将来などのインタビューが入っている。

 来週(10月8日放送)は広告収入激減に悩み、地方ニュースを手放したがっているITVの会長マイケル・グレード氏が出演するそうである。


 
by polimediauk | 2008-10-04 11:41 | 政治とメディア
 「ニュー・レーバー」と言えばこの人。元祖スピン・ドクターの一人、ピーター・マンデルソン(現在EUの通商担当委員)が英政権に戻ってくる。現在改造作業が続くブラウン内閣に、ビジネス大臣として入ることになったのだ。あっと驚きの人事である。ブラウン首相とマンデルソンは犬猿の仲と言われているからだ。

 労働党がまだ野党だったころ、マンデルソンはもともとはブラウンに近い人物だった。1994年、ジョン・スミス労働党首が死去すると、党首選への立候補を逡巡していたブラウンからブレアへと支持をスイッチ。マンデルソンからの支持が続くと思っていたらしいブラウンはこれを機にマンデルソンを嫌いになったと言われている。1997年、ブレア党首で労働党は総選挙に勝ち、18年間の在野生活を終わらせた。

 元ロンドン・ウイークエンドテレビ(今はITV1の一部)のプロデューサーだったマンデルソンは、「見せること」、プレゼンテーションに主眼を置いてニューレイバーを国民に印象付け、一部では「ダーク・アーツのプリンス」とも言われた。彼に関しては嘘か本当か見分けがつかないさまざまなエピソードが残っている。メディアを囲い込んで・抱きこんでのニューレイバーの戦略についても、これまでにかなりの本が書かれている。

 ブレア政権時代に2回内閣入りしているが、どちらの場合も最後まで職を全うせずに、辞職する羽目に陥っている。ブレアにはたいそう気に入られており、マンデルソンがメディアに出ても、歯の浮くようなブレア賞賛が多い(なので、私は思わずテレビのスイッチを切ってしまう)。前にロンドンの外国プレス協会にマンデルソンが来た。すらっとした長身の男性で、顔が青白く、ちょっと歌舞伎の女形みたいな感じもした。

 ブレアが辞任前にマンデルソンをEU委員としてブリュッセルに飛ばしたのは「最後の愛情」のようで、相思相愛だったとも言えよう。

 そんなマンデルソンがブラウン内閣に入るとは。よっぽど「国民に良い印象を与える」ことが緊急の課題となっているのだろうか。表向きは、「国際ビジネスの経験を内閣に」と言うのが理由のようだ。

 一体何が起きているのか?に関しては、BBCの政治記者ニック・ロビンソンのブログも参考になる。ロビンソン記者はブラウンへの単独取材も何度かしており、熱心なブラウン・ウオッチャーの一人だ。

http://www.bbc.co.uk/blogs/nickrobinson/

 彼の読みによれば、マンデルソンを内閣に入れるのは、ブラウンから、労働党内反乱勢力へのメッセージでもある。つまり、「かつての敵さえが、今はブラウンの味方なのだから。君もそろそろ支持に回ったら?」というメッセージを伝えたいのだそうだ。

 ニューレイバーを作ったブラウン、マンデルソン、ブレア(ブラウンは定期的にブレアと話す機会を作っているそうだ)、もう一人のスピンドクター、アリステア・キャンベルは、かつての対立を水に流し、また一緒に働くことができるようになった、とロビンソンは書いている。
by polimediauk | 2008-10-03 22:42 | 政治とメディア