小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 今、東京で「Google Enterprise Day 2008 Tokyo」というイベントが開催されているという。詳細は「@IT情報マネジメント」というサイトに出ていた。http://www.atmarkit.co.jp/news/200811/12/apps.html

 グーグルアースが古代ローマを立体復元化(ネット上で)した、というニュースも出ている。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/technology/7725560.stm

 様々な情報がグーグルに一元化されてゆくことに危惧を感じているが、グーグルが本当にオープンになって、一種の公的サービスになってゆく、という道もあるのかなと思ったりする。その時には一民間企業ではなく公的機関になっている、という想定だが。

 グーグルに関してはここに来られる方の方が情報をたくさん持っていらっしゃると思うが、一つの参考情報として、9月の「東洋経済」グーグル特集用に、グーグルのロンドンオフィスで取材した内容を2回に分けて出したい。

 最初のインタビュー相手は、在スイス・チューリッヒのネルソン・マトス氏である。エンジニアリング部門のバイス・プレジデント(このタイトルの訳は普通「副社長」となるようだ。日本の感覚で言えば、副社長とは社内に一人――ナンバー2としてーーだが、「バイスプレジデント」は米国の会社では複数いる。)
 
 世界で12箇所にあるグーグルのエンジニアリング・R&Dセンターの中で、チューリッヒが最大であるという。

 グーグル社内のフラットな組織作り、イノベーションの起きる環境や、いわゆる「ベータ版を先に出してゆく」という考え方が、個人的には大きな参考になった。これは英新聞業界のネット戦略にも通じる。「ネットでまず出して、間違いがあったら後で直したり、補足してゆく」というのが普通になってきている。すると、「最初から完璧を求めない」編集方針でやっていることが分る。また、スピード感を正確さよりも重視していることも分る。これはかなりの思考の変換だ。新聞に出ていること=十分にチェックされた情報・・では必ずしもなくなっている。(日本で、紙の新聞を作っていた時、間違いがあると、場合によっては、上司が始末書を書くはめになったものだ。恥であり、おおごとだった。今後は、事実の確認などに対する考え方が変わってくるのだろうか。また間違いがあれば、これを淡々と正して紙面上で報道する「ガーディアン」のように、あえて間違いを隠さない方向に向かうのだろうか。)

          ****

グーグル成功の「6つのルール」とは?

 グーグル副社長EMEAエンジニアリング担当ネルソン・マトス(Nelson Mattos)さんのインタビュー(上)

―グーグルのサービスで、例えば検索エンジンのみを見た場合、どの点で、技術の面からいうと、他にはない、固有なものがあるのだろうか?他社が絶対に追いつけないものが技術的にあるのだろうか?

マトス氏:グーグルの検索エンジンは非常にユニークだ。過去10年間、検索のアルゴリズムを劇的に向上させてきた。グーグルの強みは検索エンジンの結果の質が違う点だ。第2に それぞれの地域や言語に応じた検索サービスを提供している。

 第3として、グーグルのインフラの規模が大きい点が特徴として挙げられる。検索エンジン業界で、おそらく最大のインデックスを使っている。どのウェブサイトをどれぐらいの頻度でクロールすればどれぐらいの質の高い検索サービスを提供できるのかを何年にも渡って研究してきた。他の検索エンジンはグーグルほど頻繁にはクロールしていない。

―もしあなたほどの経験のある人が(マトス氏はIBMに長年勤めた)グーグルを今辞めて、グーグルのライバルとなる検索サービス会社を立ち上げる・・・ということは可能だろうか?グーグルの「巨大なインフラ」がない場合、できないのだろうか?

マトス氏:まあそれは・・・(笑い)過去10年、検索サービスの向上にグーグルはずい分投資してきたし、誰か一人が短期間でこれをしのぐことは非常に難しい。

―インデックスの数とデータセンターなどで使うコンピューターの台数は?

マトス氏:それは教えられない。

 付け加えたいのは、グーグルは他社と比べて技術面で優位に立つが、組織運営、人材、イノベーションや製品開発のやり方が他社とは異なる。

―では、製品開発やR&Dなどの面で、グーグルはあなたがこれまでに勤務した会社とどこが違うのか?

マトス氏:まず、大きな違いは会社の構造だ。グーグルは非常にフラットな組織体制となっている。会社の中のコミュニケーションが非常にスムーズに縦横に進む。会社の最高経営責任者や創業者たちに誰でもがコンタクトを取れて、議論できる。会社としての意思決定が非常に早く、ものごとが効率的に進む。

 次に、雇う人材だ。技術能力が高い人を雇うわけだが、特に起業家精神にあふれる人を採用する。新たなテクノロジーを市場に送り込み、ユーザーの生活を変え、世界を変えられる人だ。

 内部の仕組みも違う。プロジェクトは少人数のチームで手がけるので、良いアイデアが非常に早いスピードで発展して行く。グーグルの開発サイクルはIBMやマイクロソフトよりもはるかに早い。

 グーグルの哲学とは、何かを発明して、これを市場に送りこみ、ユーザーからのフィードバックをもらい、これをアイデアとして取り入れ、製品をどんどん向上させてゆく、何度でも。これでグーグルは市場により近くなるし、ユーザーが欲しいものに近くなる。顧客からのフィードバックが製品の将来の方向性を決めてゆく。

 他企業は、例えば開発サイクルが2年ぐらいになる。製品を完全に完成後に市場に出すと、変えたくてもほぼ不可能になる。危険なのは、市場に出すまでの2-3年で、市場やユーザーのニーズがすっかり変わっている可能性がある点だ。新しいニーズを追いかけなければならなくなる。私たちは4半期ごとに新製品を出す準備がある。そして市場に出してからすぐにユーザーからフィードバックが来るので、これを次の4半期で実現するようにする。

 また開発センターが12箇所あり、それぞれのセンターで独自にイノベーションが行われている。分権化されている。それぞれの場所の文化の違いを反映した製品作りとなる。アジアで開発された製品があまりに人気なので世界中で使う、ということもある。例えば、「グーグル・サジェスト」というサービスだ。「・・・こういう言葉ではありませんか?」と、お勧めの言葉をユーザーに出す。これは元々、漢字を使うアジア地域で考案されたものだった。もともとは、中国人、韓国人、日本人を想定して考えた。

―グーグルの社員は、勤務時間の20%を独自のプロジェクトのために使うという決まりは今でも変わらないのか?

マトス氏:そうだ。自分が関心のあるプロジェクトのために20%を使う。これが、ボトムアップのイノベーションを可能にする一つのやり方だ。全く新しいプロジェクトの場合もあれば、以前のサービスを改善する場合もある。Gメールはこの20%ルールから生まれた。グーグルアースはここチューリッヒの20%から生まれた。

―部下となるエンジニアたちの「効率性」をどうやって達成しているのか?

マトス氏:具体的な例を挙げて説明したい。私はグーグルに来る前に、IBMで16年間働いていた。グーグルに移ってから、一ヶ月、グーグル内部の仕事の仕方を観察した。何故グーグルはこれほど成功しているのか、何故これほどイノベーションが多いのか?成功のために6つのルールがあることが分った。

 最初のルールとは、まず、グーグルには業界内で最高にレベルが高いエンジニアが集まっている。他の会社も「最高の人材が揃っている」というかもしれないが、中に入ってみると、違いが分る。

 例えば、人を雇う時、採用を担当する幹部マネージャーによる査定と、幹部の同僚や部下などの査定とが同様の重みを持つ。これは非常に重要で、このマネージャーはあるプロジェクトを成功させるという課題を背負っており、成功のためには、目の前にいる就職希望者の資質で気に入らないところがあっても、何とか妥協しようとする力が働く。たいがいの企業は、採用担当マネージャーが最終的な採用の全決定権を持つ。グーグルでは多くの人が査定に加わり、本当に公正な評価が行われる。最高の資質を持った人物が雇用される。

 2つめのルールは、技術上の知識が豊富なだけでなく、起業家精神にあふれ、20%の勤務時間を独自のプロジェクトにつぎ込める人を選ぶこと。

 従業員同士のネガティブな競争をなくするために、グーグルでは透明性を重視する。これが3つ目のルールだ。すべての内部情報に誰でもがアクセスできる。すべての進行中のプロジェクトはデータベースの中に入っている。そのプロジェクトのゴールは何で、誰が関わっているのかが分る。エンジニアたちが何かアイデアを思いついたら、社内のデータベースにアクセスしてみる。誰かが似たアイデアをもう既にやっているかもしれない。すると、その人に連絡して、ダイアローグを開始できる。

 4半期ごとの達成目標はすべての従業員に設定されている。最高経営責任者から秘書職でも。ネガティブな競争がなくなり、共同で働くことができる。

 それでも競争が起きそうになったらどうするか?どうやってあるプロジェクトやアイデアが他のアイデアよりもいいと分るのか?それはグーグルの4つ目のルールになるのだけれど、良い・悪いなどの主観的決定をするには、データでの裏づけを示すことだ。データをグーグルは重要視する。

 さて、データを見ても、良し悪しを判断できない場合はどうするか?それはユーザーに焦点を合わせる。ユーザーがまず第一になる。収益やマーケットシェア、利益率などなど、すべが次に来る。ユーザーにとって良いことなら、グーグルはそのプロジェクトに着手する。

 最後のルールはスピードだ。ネットの世界ではスピードは本当に重要な要素だ。早く開発して、市場に出し、フィードバックを元にアップデートし、また市場に送り出すー何度も。とにかく早く動くことだ。この6つのルールがあるかないかで、グーグルは他企業と大きく違う。

―それでは、IBMから移って、慣れるまでにずい分時間がかかったのではないか?

マトス氏:グーグルは「違う」ということは働き出す前から知っていたが、勤務し出してから初めてこんなに違うものかと実感した。その違いを身体で覚えこみ、効率的に動けるようになるまでには、2-3ヶ月かかったね。

 グーグルのエンジニアリングの文化にはこの6つのルールが色濃く反映されている。これがグーグルの競争力の要因だ過去10年間、早いスピードで開発が可能になった理由だ。

―グーグルのエンジニアと他社のエンジニアは違うと感じるか?

マトス氏:違う。一人一人の人間はそれぞれ同じではないけれど、大きな違いは、人間個人として違うというよりも、働く環境が違うのだ。企業文化が違う。グーグルの企業文化の中ではイノベーションがどんどん発生しやすい。このため、適材もどんどん集まってくる、という状態がずっと続いている。(続く)

参考:

ネルソン・マトス氏のバイオ
http://www.google.com/corporate/execs.html#mattos

「グーグル取材こぼれ話①」
http://ukmedia.exblog.jp/10065152/
by polimediauk | 2008-11-13 23:02 | ネット業界
 9日から11日まで英ブリストルで行われていた、「ソサエティー・オブ・エディターズ」の会議が終了した。新聞業界では広告収入が落ち、発行部数も慢性的に下落する中でどうするのか、マルチスキルを求められる編集現場の課題や、「一体ネットでどうやって十分な利益を生み出すのか?」が大きなテーマとなった。今、BBCは地方ニュースのウェブサイトの拡充を計画しており、これは地方紙にとっては大きな脅威だ。そこで、BBCに対する反発の声もかなり聞こえてきた。

 英国の新聞業界は、日本の新聞業界同様、あまり良い話はなく、ネットと紙の編集部の統一(コンバージョン、インテグレーション)を続々と進めている。何か明るい見通しや確信があってウェブサイトの拡充を進めたり、コンバージョンを行っているというよりも、将来はネットが中心になっていくだろうという大体の勘をもとに、捨て身で、損が出るのを承知でニューメディアに投資している、ということのようだ。ネットから出る利益だけで紙の編集チームを維持することはできず、もし良い方法があるなら、それを「同業他社の前では言いたくない」のだ。

 地方紙の編集長らが会議に出席し、全国紙の例えばガーディアンの編集長、テレグラフの編集長らに加え、FTからもネット主導者が参加。放送業界からも人気キャスター、アンドリュー・マー(BBC)氏、ロバート・ペストン(BBCビジネス)などが参加した。

 ペストン記者といえば、住宅金融で国有化されたノーザンロックの資金繰りの困難さを真っ先に報道したことで著名。その後もスクープ報道を行い、金融危機以降は連日のようにテレビやラジオに出ている。

 ペストン氏は、会議の中で、「メディアが、あるいは自分の報道が金融危機や銀行の取り付け騒ぎを引き起こした、あおった、というのは正しくない」と述べた。例の、BBCの記者らしくないしゃべり方で、である。(どんな感じかというと、波のように大きくなったり小さくなったり、急に言葉を溜めた後に一挙に話す感じになったり)。悪い・責任があるのは「例えばノーザンロックの経営陣なのではないか?無理な貸し出しをしていたのだから」。

 「自分はもともと、金融紙で銀行業専門の記者としてスタートした。最初にいろいろ学んだ。それからさまざまな経験を積み、今は48歳になった。スクープ記事をつかめたのは、これまでの経験と知識があるからだ」と言って、「だから多くの記者に言いたい。ずっとやっていれば何かにはなるよ、あきらめるな、と」。一定の年齢になると記者職ではなく管理職になるかつての同僚に言っているように聞こえた。

 ペストン氏の報道が注目されたのは、番組の中というよりも、BBCのニュースサイト上で読めるブログからだった。ブログでも、放送での報道同様に、「事実関係の確認をし、きちんとしたものを出す。デスクの目を通してから出るし、そういう意味では本当のブロガーではないかもしれないが、ジャーナリズムの基準はブログだからといって変えていない」とも述べた。

 「視聴者・読者に直接、瞬時に語りかけることのできるブログは、すばらしいジャーナリズムの一手段だと思う。今、ジャーナリズムは非常におもしろい時期に来ていると思う」。最後まで明るく、元気いっぱいだった。

 今日、ある人にブログを書いている理由を聞かれた。「取材時に得た情報で、原稿には使わなかった分を自分のところで『死蔵』させたくない」、「情報をシェアしたい」、というのが基本的な理由だが、文字情報に関わる人+ネットにアクセスできる人、書き手として仕事をしている人などが、ブログというか自己の情報発信の場を持っていないのが逆に不思議に思える、今となっては。頻度や何を書くかは個人の自由だろうが、「何故書くか」より、「何故書かないのか」が問いになってきたような感じがする(無料ブログでは原稿料が入らないから、というのはもはや理由にはならないだろう)。ずい分、周囲の状況が変わってきた感じがするのである。(別件だが、休刊となった雑誌「論座」のネット版・・・なるものはできないのだろうか?読者一人から1000円取るとしたら、読者はどれだけ集まるのか?)
by polimediauk | 2008-11-12 08:31 | 新聞業界

ブリストルで戦没者哀悼

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(戦没者哀悼のため広場に向かう人々)

 今、メディアのロビー団「ソサエティー・オブ・エディターズ」の会議で、ブリストルというところに来ている。今日は11月9日で、「リメンバランス・サンデー」(「戦没者の哀悼の日曜」とでも訳せるだろうか?)の式典が各地で行われた(詳しいことは以下アドレスで)。教会などに集まることが多いようだが、私は通常は行かない。日本人だとどうかな?という思いがあった。第一次世界大戦の戦没者の哀悼というのが本来らしいが、実際は第2次世界大戦やイラク、アフガニスタンなど近年の戦没者も含めて哀悼する。

 たまたまホテルの部屋の中にいたら、人々が行進しながら、誰かがラッパかなにかを鳴らしているような音が聞こえ、外に出て、人の流れを追ってみた。朝の10時半頃だ。

 広場に第1次と第2次戦争の戦没者を哀悼する大きな記念碑があって、そこにたくさんの現役あるいは退役軍人や戦没者の家族などが集まっていた。その周りを市民が囲む。何のアナウンスメントもなく、人々が続々と集まってくる。

 午前11時、ドラムをたたく音がした。2分間の黙祷が始まったな、とみんながすぐに分るようだった。子供もたくさんいたが、静まり返った。

 2分間が終わると、もう一度ドラムがなった。

 吹奏楽の音楽が演奏され、教会関係者が話し出した。「亡くなった人たちのことを、決して忘れないようにしよう」。

 私の英国の家族には戦争で父、夫、子供を亡くした人が何人かいる。今頃、教会で同じように黙祷し、涙を流しているだろうなと思った。

http://en.wikipedia.org/wiki/Remembrance_Day
http://en.wikipedia.org/wiki/Remembrance_Sunday
http://www.societyofeditors.co.uk/page-view.php?page_id=145&parent_page_id=142
by polimediauk | 2008-11-10 02:09 | 英国事情
 米大統領選の結果が判明し、英国のネット・ユーザーがもっとも頻繁に訪れたのはBBCのニュースサイトだった。「ヒットワイズ・インターナショナル」による分析だ。

http://weblogs.hitwise.com/robin-goad/2008/11/tv_and_us_media_websites_barack_obama_election.html

 以下はそのリスト。ヒットワイズのロビン・ゴード氏の分析によれば、BBCニュースへのアクセスが増えたのは、こまめにサイトをアップデートしていたという要素もあったと言う。

1. BBC News (18.2% of UK Internet visits to News and Media websites)
2. MSNBC (4.2%)
3. Sky News (3.3%)
4. Yahoo! UK and Ireland News (2.1%)
5. Google News UK (1.6%)
6. Daily Mail (1.6%)
7. Guardian Unlimited (1.5%)
8. Times Online (1.5%)
9. CNN.com (1.3%)
10. The Sun (1.2%)

 今回の大統領選で米英のニュースサイトはどこもアクセス数を増やしたが、今後、ニュースへの強い関心はずーっと続いていくのかどうか。答えは「おおむね続く」になりそうだ。
by polimediauk | 2008-11-07 19:51 | ネット業界
 時期米大統領となることが決定したオバマ氏。今朝のBBCラジオ4「TODAY」もこのニュースでほぼ一本やりだ。

 やはりオバマ氏の勝利演説には感動してしまう。ジーンとくる。

 http://news.bbc.co.uk/

 政治ブロガー+ジャーナリスト、イアン・デール氏は英時間昨晩午後11時から今日の早朝まで、ウェブチャットをやっていた。何人かのキーコメンテーターと読者をつないだ。今でもその様子は見れる(読める)。

http://iaindale.blogspot.com/

 前にも紹介したが、政治ブログ「ガイ(グイド)・フォークス」や上記のブログで自分のコメントを残してみると、ほぼリアルタイムで会話に入っていける。ネット時代の最もおもしろい部分だなと思う。米大統領選の分析やオバマ氏の今後の課題を読むよりも、おもしろいのではないか。あっという間にコメントが増えていく。

 http://www.order-order.com/

 上の2つのコラムで名前が挙がっていたのが、歴史学者のSimon Schama。

http://en.wikipedia.org/wiki/Simon_Schama

 先週のBBCテレビ「クエスチョン・タイム」(米国から放送)に出ていた。この人の歴史もののテレビ番組はおもしろくて時々みるのだが、「クエスチョン・タイム」に出ていたときは、身体をくねくねさせて、変な発音でしゃべっていた。みんな「変な奴!」と思ったようだ。

追記:オバマスピーチの一部が英国人によって書かれていた、という記事がテレグラフ(7日付)に出ていました。複数の人が関わって作るスピーチなので、それ自体は別に珍しくないのでしょうけれども。なぜかテレグラフのサイトで探してうまく見つからなかったのですが、That speech: inspired by Gettysburg, written in Notting Hill (by Jamese Kirkup)という記事です。非常におもしろいなあと思ったのは、オバマのスピーチで、私が「じーんときた」箇所の一つが、まさに英国の人Jacob Rigg (27歳、オバマ選挙戦のボランティアのアドバイザー、税金問題に関するロビー団体勤務)が書いた箇所でした。引用すると、オバマ氏の選挙とは「the answer that led those who have been told for so long by so many to be cynical, and fearful, and doubtful of what we can achieve to put their hands on the arc of history and bend it once more toward the hope of a better day.」というところ。「シニカルな人・・・」の部分が、まさに英国で、私もシニカル組なので、オバマ氏が自分・自分たちに語りかけているような気がしたんですね。この部分を書いたのが英国人だったことを知って、びっくりでした
by polimediauk | 2008-11-05 18:40 | 政治とメディア
 時節柄、米大統領選のことを書くべきだろうが、グーグルの話をとりあえず始めてみたい。

 夏にグーグル(ロンドン)の取材をした時、しみじみと、グーグルは不思議な存在だなあと思ったものだ。グーグルに関してはたくさんの情報が既に出ているし、ここに来られている方は既に私よりもはるかにグーグルに関して知っているとは思うけれども、いくつか気づいた点があったので記しておきたい。

 Google is not evil(グーグルは悪者じゃない)というモットーはよく知られているが、「本当にそうなのかな?」という疑念を持つ人が多くなっているのではないだろうか。かつて、マイクロソフトが、反トラスト法違法として米司法省に提訴された頃、いつのまにか「悪いやつ」的な目で見られるようになったけれども、グーグルも一部の人からすれば、そう見られている部分があるように思う。

 検索エンジンの会社として「世界中の情報を整理する」という目的を聞けば、このまますっと理解したら、「すごいなあ!」と好意的に取れる。しかし、世界中の情報を一企業で網羅してしまうことを究極的にはそして広告会社という側面を支えるためにも必要、ということになってくると、「待てよ」とも思う。

 ロンドン・オフィスの取材のためにグーグル・オフィスに着いた私は、受付に置かれていた、いくつもの赤や青のソファー、白い壁、壁に貼ってある楽しそうな感じのポスターのようなものに、いわゆる「大いなる遊び心」を感じた。非常にリラックスしていて、かつ楽しそうなのだった。会ってくれた広報の女性も、明るく、生き生きと楽しそう、かつ非常にオープンだった。

 しかし、こうした面の一方で、ヒヤっとするような感じの側面も見えてきた。例えば、受付で、「xxさんと面会のアポがあります」と説明すると、待っている間に、コンピューターの画面の文章を読み(結構長い)、その場で、「社内で知りえたことは一切外に漏らしません」という文書(画面上の)にサインしなければならない。(後で広報の女性に、「メディアの人はこれには該当しない。取材したことを書かなければ、仕事にならないものね!」と明るく笑われたが。)この時、「とにかくこれを読んでください。そしてサインしてしてください」というのが、自分にとってはいかにも唐突だった。それも、立ったまま、その場で読まないといけないのである。考えてから・・・ということは許されないのだ。

 その後、取材は無事に済んだが、本当にグーグルは不思議だなあと思ったのだった。

 グーグルの創業者二人はスタンフォード大学の学生たちだった。本社は米サンフランシスコにある。ここで考えたのは、サンフランシスコの「乗り」が私には理解できていないのではないか?ということだった。

 もし私がサンフランシスコの風、ものの考え方に十分になじめば、「悪くない」、「世界の情報を・・・」の意味がもっとすっきり心に入ってくる可能性もあるのではないかー?自分は英国のシニカルなものの見方が頭に染み付いているので、グーグルをシニカルかつ一定の懸念を持ってみているのではないかー?そんな思いがしたのである。

 次回以降で、グーグル・ロンドンでのインタビューの内容を紹介したい。

 

 
by polimediauk | 2008-11-04 02:06 | ネット業界
投票は正しく集計されるか?映画「RECOUNT」で知る米大統領選集計の実態
                               
c0016826_20254554.jpg マッドマン谷口です。今月から英国で上映中の映画、舞台、音楽などの芸能について書かせていただきます。どうぞ、よろしく。

 米国大統領選挙が数時間後に迫ってきました。

 私は実は米国大統領がどのように選出されるのか、未だによくわからないんです。誰か簡単に説明してもらえないか、と常日頃思っているんです。

 複雑で、全米の各州の色がひっくり返ったり変わって両党が陣取り合戦をするという、まるで日本の毎日放送系のあのクイズ番組『アタック25』みたいですよね(笑)。

 ところが、その集計自体が正しくされておらず、操作されているという噂が昔からあるらしいんですね。いわゆる「陰謀論」というやつです。

 Viictor Thornという米国人が2004年に書いた本で、幸いなことに日本語版では未だに入手可能です。次の本にくわしく書いてあります。「次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた」(徳間書店:副島隆彦訳2006年3月発売)。邦題はひどいですが名訳・名著です。

 それから今年の5月にロンドン市内のICAシネマという独立系映画館でHBOという米タイムワーナーの放送局制作のドキュメント番組『RECOUNT』を見ました。これは衝撃的な番組で、2000年の米大統領選挙でブッシュが勝利した時に、正しく投票が集計されなかったことを実証しようという試みの番組。ブッシュの弟がフロリダで知事をやっているのですが、その彼が発注して(役員もしてたかな?)いるコンピューターメーカーの電子投票のシステムをフロリダ州では使っているのですね。だから、ブッシュに有利に集計されたと地元では言われています。

 それでこの番組ではその会社を訪問して、プログラマーと一緒に実際に使われた機械で集計をするのですが、これがいくらでも総数が間違ってできてしまうことをその場で何度も実証するんです。日曜日の晩に1回だけ限定で1か月だけ上映したんですが、まわりの英国人の観客と一緒に「ええー!」とか「やっぱり!」って叫びながら見ました。

 この映像はDVD化されないし、日本では上映されません。ネットでトレイラーを見つけたので時間のある方はご覧ください。

http://www.slashfilm.com/2008/05/08/recount-movie-trailer-2/

 この映像で初めて知ったのですが、2004年に民主党の大統領候補だったジョン・ケリーはこの集計操作の不正を選挙期間中ずっと訴えていたようなのですが、米メディアが黙殺したようです。日本ではこの件は全く知られていませんよね。

 日本でも映画「華氏911」で有名になったマイケル・ムーア監督もさんざんと「ブッシュ大統領は米国民が選んだ大統領じゃない。正しく集計されていないんだから」と長年言ってきましたけど、これはやはり、電子投票になっているから起きた(できた?)ことで、日本のように手書きで箱に入れていれば、さすがにここまでのインチキはできないですよね。ここ英国では地方で投票後の投票箱が夜中盗まれる、なんていう事件はあったようですけどね(笑)。

 私のように在外投票として国際宅配便で日本に投票用紙を送る身としては、つくづく日本はアナログなやり方でよかった、と思います。今後はわかりませんが(不安)。

 10月30日はそのフロリダに泣いた元大統領候補、アルバート・ゴア夫妻がフロリダを訪れたようだし、民主党のリーダーであるオバマとしては、ゴアの雪辱をフロリダで果たすというわけでしょう。フロリダというのは昔から米大統領選では重要な州です。

 2000年、2004年の投票操作の噂を受けて、黒人暴動に備えているようで物騒な雰囲気の中投票がまさに今行われています。

 前置きが長くなりましたが、今日紹介する映画は1か月前に全米で公開された同名ながら新作公開映画『RECOUNT』です。全米でヒットしてるのだろうか。

 全米公開時にBBCの朝のニュースワイド番組「ブレックファスト」に主役で在英の米俳優ケヴィン・スペイシーが出てきてしゃべってまして、ここ英国での劇場公開を楽しみにしていたのですが、なんと、英国劇場公開前に11月1日(土曜日)9時(ロンドン時間)からチャンネル4で放映されました。

 監督はジェイ・ローチ(『ミート・ザ・ペアレンツ』『オースティン・パワーズ』、ケヴィン・スペイシーが前副大統領アル・ゴアの主任のロン・クラインの役、疑義ゆえの最集計作業の監視役に超ベテランの社会派俳優ジョン・ハート、ジェームズ・べイカー長官役にトム・ウィルキンソンと豪華なキャスト。

 この脚本は映画製作者が選ぶハリウッド映画協会による2005年のブラックリスト第一位で映画化の前に脚本が「たらい回し」になったようだ。ここまで徹底した「反ブッシュな映画」だから、そりゃ当然だろう。それでも制作が実現したのは、ハリウッドというのは伝統的に民主党やリベラルの温床だからでしょうね。各役者も気合の入った演技から趣旨に参加してることが伝わってくる映画です。

 勝利確実だったアル・ゴアの票がコンピューターの画面から「奪われてしまう」。その行方を追う、というストーリー紹介だけにとどめておきます。パンチ式カードなんだよね、今の米国の投票用紙は。なるほど。映画には本物のジェシー・ジャクソン(黒人の元大統領候補)やパット・ブキャナン(米国で最も有名な保守派の政治家、評論家)もでてくる。

 ケヴィン・スペイシーは「自分でも取材して調べたんだよ。この話を信じるかどうかは自由だよ。」と言っているが、こんなに反米なスタンスやコメントばかりしていて、この人は英国からいつか米国に帰れるのだろうか?

 米国には昔から優れた政治映画がとても多い。米国の政治を理解しようと思ったら映画が1番である。

 ロビイストの活動とか、メディアの裏、PRの仕方、弁護人(ATTORNEY)やユダヤ人の影響力など日本人にとっては書物ではなかなか理解できないことが今作でもはっきりと描かれている。映画を侮ることはできない、ぶ厚い学術書なんかよりよっぽど政治の仕組みや真実が描かれていたりする。それに日本には面白い政治映画がほとんどない。残念なことだ。

 さて、マケインとオバマ、今回の大統領戦の結果はどうなるか。今回はちゃんと集計されるのだろうか?

(追記:英国でのテレビ上映情報は:http://www.channel4.com/film/reviews/film.jsp?id=169787 ご紹介いただいた映画はアマゾンUKによると、8月DVDで出ていましたが、米国とカナダだけで見られるバージョンとのことでした。残念ですね・・・。コメディー「オースティン・パワーズ」を作ったジェイ・ローチがこんな映画も作っていたなんて、驚きでした!こういう映画を本当は作りたかったのでしょうか。小林恭子)
by polimediauk | 2008-11-02 20:31 | 政治とメディア
 米大統領選挙に向けて、英メディアではそれぞれ特番、特集を組んで対応するようだ。

 今のところ、世論調査やメディア報道を見ていると、オバマ候補のほぼ一人勝ち?とも言えそうだが、在ロンドンのドイツ人ジャーナリストと話していたら、「オバマに票を入れると言っておいて、実際はマッケインに投票する白人は意外と多いのではないか。まだまだ分らない」と言う。「ケリーとブッシュの時を思い出して欲しい。みんながケリーと言っていたけど、ブッシュが最終的に勝ったのだから」。

 米国では一体どんな感じなのか?

 在米フリーランスジャーナリストのマクレーン末子さんから、自分のブログ「Newslog USA」にルポ記事として書いた分を、こちらのブログで「ゲスト・コラム」として再掲載することの了承をもらった。マクレーンさんは、2001年から渡米し、主にネットサイト「ベリタ」に書いている。自分の目と耳で確かめながら、現地の声を拾うルポ記事が多い。

オバマ楽勝ムードの中で「二つの米国」くっきりと
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http://www.newslogusa.com/wordpress/?p=154

 大統領選のカウントダウンが始まった。連日メデイアは選挙予想を更新し、米国全体が4日に向け興奮のるつぼと化しているようだ。私の住むアリゾナは、共和党支持者の多いいわゆるレッド州、その上マケイン候補のお膝元でもある。そのアリゾナ州から国道89号線を北に上がると、カナダ国境のモンタナまですべてレッド州である。オバマ候補優勢が伝えられる中、その国道沿いに点在する小さな保守の町で、住民たちはこの選挙をどのように見ているのだろうか。変革を恐れる人々と、変革に希望を託す人々、オバマ氏は人種を超え「一つの米国」を唱えているが、「二つの米国」は、はっきりとここにあるようだ。

 過去4回の大統領選で、3回以上民主党が勝利を収めたのはブルー州、一方3回以上共和党が勝利を収めたのはレッド州と言われている。主にブルー州は米国の東・西海岸沿いにあり、レッド州は中央に位置している。この色分けは、2000年の大統領選から使われ始めた。それまでは、投票率を地図上で示すとき、ブルーとレッドは使われていたが、メデイア間での色の統一はなされてはいなかった。

 ギャロップ社による最新世論調査では、オバマ候補はマケイン候補に8ポイントの差をつけているという。このレッド州でも、誰が大統領に選ばれるかと問われると、多くの人はオバマ氏の名前を挙げた。

▼ 誰に票を投じるか

 アリゾナ・メキシコ国境ノガレスから北へ30キロのツーバックのコーヒーショップで、トム・ブッシュさんは、「多分オバマが勝つよ」と話し始めた。「でも、オバマが大統領になれば、国にとって大きな不幸をもたらすよ。マケインは、国の隅々まで目を配らせ、立派な経歴があるもの」と話す。

 ツーバックから北へ350キロウイケンバーグで、銃店を経営するロジャー・フォーンオフさんは、「マケイン支持。マケインが勝つと思うよ。だけど、賭ける気はないよ。接戦で勝敗の予測はつかない」と話す。

 ウイケンバーグ近郊のコングレスで、ルース・トンプソンさんは、「オバマは恐い」と言う。「どちらの候補者も信用していない」と言うが、「オバマには大統領になってほしくない。マケインが勝つ」と言いきる。トンプソンさんの情報源は、右派ラッシュ・リンボー氏のラジオトークショー。それを毎日聴き、オバマ氏はイスラム教徒で米国生まれではないと、固く信じているようだ。

 息子のマイクさんも、「マケインに勝ってほしい」と言う。しかし、「誰が勝とうとも、将来は明るくはない。経済は大きな問題で、この国は困難な時を迎えるよ」とつけ加える。マイクさんは、車のデイーラ、最近車の販売数は大きく低下し、知り合いのデイラーはすでに店を閉めたと話す。

 また、食料品店を営むマイク・ソロズさんは、大統領には「マケイン」と即座に言う。「オバマはジョークだよ。マケインは今この時の男だよ。問題は経済だが、マケインは過去から学んで未来へつなげてくれるよ」と楽観的だ。

 一方、小さな土産店を営むリンダ・ウエストさんは、「オバマになってほしい。孫が今イラクにいるの。マケインは戦争屋だもの」と言う。

 ソノラ砂漠に位置するアリゾナ州から北へ上がると、ユタ州、サボテンの風景は消え、針葉樹林が目だつ。ユタは住民の約6割がモルモン教徒であり、保守派の州として知られている。その中で若い人の声をきいてみた。

フリーダ・リットルボーイさんは、ナバホ・インデイアン。ユタ州南グレイ・マウンテンにあるガソリンスタンド兼食料品店で働いている。店から5キロ離れたインデイアン保護地区に住む。賃金は低く、生活費は高すぎるとこぼす。「オバマに勝ってほしい。彼はマイノリテイ、私もそう。オバマは、本当に私たちを助けてくれると思うわ。希望をもっているの」と目を輝かせる。

 ユタ州都ソルト・レイク・シテイの市案内所にいるマイグエル・マルドナードさんは、かつてはヒラリー・クリントン氏の支持者だったという。クリントン氏が予備選で敗れてからオバマ氏に鞍替え。マケイン氏に関しては、「ペイリンを選んだことで、福音派キリスト教徒に迎合しているマケインーペイリンは恐怖だよ」と言う。「オバマは勝利するよ。経済が最悪の時に厳しい挑戦をする大統領となるだろう」。

また、同州リッチフィールドのガスリンスタンドで働くコデイー・カストさんは、熱心なオバマ支持者だ。「問題は経済。物価は上がってきているし、僕の生活も苦しいよ。オバマは、経済を活性化して、僕たちのような人間を助けてくれると信じているよ」。

 オバマ氏を熱っぽく語るカストさんだが、「ここでは、オバマ支持とは言えない」と話す。近くの店でオバマ氏のマスクが売られていて、一つ買ったという。すると近所の人々から、かぶって道を歩くなよと言われた。「かぶっていると、撃たれるよというんだ。狭い心を持っている人が多いから」とカストさんは、首をすくめた。

▼ブラッドリー効果とオバマ効果

 政治学者の間で言われてきた ブラッドリー効果。今回の選挙選でも、よく聞かれる用語だ。人種差別者と言われるのを恐れ、黒人に投票すると言いながら、実際の選挙では白人に票を投じる社会的な現象をさす。

 これは、1982年のカルフォニア州知事選にさかのぼる。当時、黒人の元ロサンジェルス市長のトム・ブラッドリー氏と、白人のジョージ・デユークメジアン氏との戦いとなった。事前の世論調査ではブラッドリー氏が圧勝と予想されていたが、蓋を開けてみると、白人票がデユークメジアン氏に流れ、ブラッドリー氏は敗北した。

 今オバマ氏はマケイン氏にたいして差を広げているが、民主党支持者の中には、この ブラッドリー効果 を懸念する声がある。しかし、米誌ニューズ・ウイークでは、25年以上もたった今ブラッドリー効果はもはや存在せず、オバマ効果が見られるかもしれないと言う。「どちらにも投票したくない」「まだ決めていない」と言う層が、実際はマケイン氏に決めているのではというのだ。

 確かに、このレッド州でも「オバマが選ばれるだろう」と言いながら、誰に投票するかと聞かれると「わからない」と答える人が多い。シャーリー・ロングさんも、その一人だ。モンタナ州から比較的暖かいアリゾナで冬を過ごそうと、夫のジムさんと旅を続けていたロングさんは、「オバマにもマケインにも投票したくない。オバマの言っていることが実行できるかどうかわからないし」とため息をついた。

▼米国の抱える「分裂」

ユタ州リッチフィールド市で、地元紙の編集にあたっているサンデイ・フィリップスさんは、「米国が直面している問題は、分裂とネガテイブな考え方」と話す。「広い心で問題の双方を見ないで、人々は問題を対立化させている。一つになれば、米国は世界の指導者になれるのに」と言う。

 フィリップスさんのネガテイブという言葉は、そのまま終盤のマケイン氏の選挙運動にあてはまる。マケイン陣営は、オバマ候補の中傷広告やロボコールとよばれる自動音声の電話攻勢に出た。自分の政策は語らず、「オバマは危険」「テロリスト」「赤ちゃんキラー」「イスラム」などと、有権者の耳元で囁く作戦にでている。

 しかし、このマケイン作戦は功をなすどころか、多くのメデイアから反発の声が上がった。コリン・パウエル前国務長官は、マケイン氏の選挙運動を非難しオバマ氏支持にでた。

 パウエル氏は、オバマ氏がイスラム教徒とする噂を真っ向から否定、「イスラムではない。彼はキリスト教徒だ。しかし、もしイスラムとしても、それのどこが悪い。そんなのはアメリカじゃない」と強く言いはなった。また、パウエル氏は、「後ろ向きの考え方で、未来を決めることはできない。前向きな見方が必要だ」と強調した。

 このパウエル氏の発言は、オバマ候補の唱える「保守でもない、リベラルでもない一つの米国」「連帯」を語っている。また、8月民主党大会での指名受諾演説でオバマ氏が力説した「米国の約束」「希望」にもつながる。

 10月29日オバマ陣営は、7大テレビ局のゴールデンタイム30分間買い取って、大統領選メッセージを伝えた。その中で、「私は、完璧な大統領にはならないだろう。皆の声に耳を傾け、民主主義へのドアを開けておきたい」とソフトに語りかけた。オバマ氏の姿勢は、「敵に、悪と戦う」ことを前面に出し、強い司令官をうちだすマケイン氏とは相対立する。

 ワイオミング州のジャクソンで、クリス・ハンデイさんは、「オバマに勝ってほしい」と言う。「でももっと多くの人がマケインを支持しているよ。変わるのをこわがる頑固な人がいっぱいいる。誰であろうとも、白くなければ、投票しないんだ」と語気を強めた。

 黒人公民運動家のキング牧師が凶弾に倒れてから40年経った今、多くの人々は、人種は融合し差別など存在しないふりをして生活している。しかし、大統領選択の今、それは大きなハードルになっているようだ。 (マクレーン末子、10月31日)
by polimediauk | 2008-11-02 02:53 | 政治とメディア