小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 前に、英法廷内へのテレビカメラ導入の可能性(チャンネル4の報道、9日放映)を紹介したが、これを機に裁判報道と撮影に関する原稿を新聞協会報(1月27日付)に書いた。以下はそれに若干補足したものである。

 その前に関連情報の付け足しだが、英法廷取材の「規制緩和」は、家裁審理の「オープン化」にも見られる。4月から報道陣の出席を奨励する、という方針を法務省が昨年末発表していた。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/7786369.stm

 既にパイロット・プログラムもいくつかの法廷で実施中だ。しかし、一体どれだけオープン化されるのかというと、その内容がやや不透明で、それほどたいしたことではなかったのか、ほんの一部の変更で「オープン化」と称しているのか判別がつかなった。そこで下の原稿には入っていない。

 政府によれば、家裁審理はほとんどが関係者のみが出席できる「プライベート」審理だ。児童保護の精神が基本にあるようだ。特に養子に関する審理は規制がきつい。あまりにも報道規制が多いせいなのか、治安判事裁判所(日本で言うと簡易裁判所)での家裁審理は報道機関が出席可能でも、「殆ど出席しない」(政府文書)。

 実際、子供に関わる審理では、親の住所や子供が通う学校名などを報道した場合、子供の身元が判明してしまうことがある。報道できる範囲が非常に狭まれることになる。


英国の法廷取材に緩和の兆し
「映像撮影を原則支持」
―公訴局長官の発言追い風に


 長年に渡り、報道機関による法廷でのテレビ・カメラの使用が禁止されてきた英国で「規制緩和」の動きが出ている。スコットランド地方で1992年から例外的に認めているのに続き、イングランド・ウェールズ地方でも導入論議が再燃している。

―報道側の努力反映

 情報化社会の成熟により、市民、メディのみならず、法曹界の中からさえ、さらなる情報公開や透明性の向上が叫ばれるようになった。これを反映する形で、近年、メディアが司法審理の透明性に向け種々の活動を続けてきた。今回の規制緩和はこうした努力を反映している。

 英国の司法制度(スコットランド、イングランド・ウェールズ、北アイルランドに分化)の原則の1つに「司法は開かれたものであること」(「オープン・ジャスティス」)がある。司法審理の進行は公に広く開かれたものであり、報道機関や市民が傍聴する権利を持つ。吟味される証拠は公にされ、審理の公正かつ正確な報道が妨げられてはならないー。

 こうした原則の一方、公正な司法審理を確実にするためさまざまな規制もかかる。市民・メディアは法廷内で大声を上げないことや携帯電話の使用禁止に加え、録音機・録画機を使っての記録や写真(静止画及び動画)撮影も禁じられてきた。

 9日、英公訴局(日本の検察庁に当たる)のスターマー長官が管轄下にあるイングランド・ウェールズ地方の法廷でテレビ・カメラの導入を認める発言を行なった。刑事司法体制の将来図を描いた演説の中で、国民の信頼感を得るため、司法の透明性と報道機関との一層の協力を説いた。

 演説後報道陣に対し「裁判は出来うる限り開かれ、透明であるべき。慎重に扱うべき事例では一定の限度もつくが、カメラの使用を原則支持する」と述べた。カメラ導入を待ちかねてきた報道機関にとって朗報となった。

―04年に試験実施

 イングランド・ウェールズ地方の法廷でカメラ撮影は1920年代半ばまでは禁止されていなかった。10年代、妻を殺害した罪に問われた医師が法廷に立つ様子を撮影した写真が今も残る。法廷内の人物の写真撮影や出版目的での似顔絵描写は1925年施行の刑事司法法41条で禁じられた。

 しかし、2004年、大法官(当時)は実施に向け試験計画を実施させる。その2年前に女児2人が、通っていた小学校の用務員の男性に殺害され、事件の公判開始のきっかけによる視聴者の高い関心を背景に、放送界による映像撮影を求める声が一段と強くなった。法曹界から賛同の声も上がった。

 放送局各社はロンドンの高等法院での複数の裁判の様子を数週間に渡り撮影した。実際の放送には使われず、現在でも未公開のままだ。政府はその後、この件に関し行動を停止した。

 報道番組制作会社ITNの法務部門を担当するジョン・バトル氏は「カメラが法廷に入ったからと言って『空が落ちてくる』ような大異変は起きなかった」「弁護士がカメラに向かいパフォーマンスをすることもなく、審理は通常通り進んだ」と当時を振り返った(9日放送のチャンネル4の番組内での発言)。

 メディア法が専門の弁護士マーク・スティーブンス氏はBBCラジオの取材の中で、撮影を支持する一方で、司法審理の公正な遂行を維持するため、法廷侮辱罪が禁じる陪審員の個人情報が報道されないよう、カメラの位置を考慮するなど「一定のルールが必要だ」と述べた。

 法廷内の撮影を禁止されてきた放送各局は、裁判所前で関係者を待ち構えたり、俳優を使って審理の再現場面を作ってきた。05年からは裁判官から許可を得られれば、裁判の開始と終了の辞、評定結果や量刑の言い渡しなど速記者が使われる場面を撮影し生放送してもよいことになった。衛星放送のスカイ・テレビが裁判所と交渉し、実現させた。

―3件で認められる

 イングランド・ウェールズ地方と別の法体系を持つスコットランド地方では1992年から法廷でのカメラ導入を例外的に認めている。原則は禁止であるものの、放送局から申請があれば、状況に応じスコットランド最高裁判事あるいは担当の裁判官らが判断する。主に教養・ドキュメンタリー番組の制作を目的とし、司法審理に影響が無いことなどが条件だ。裁判関係者からの撮影の承諾を得ることも必要とする。

 現在までに撮影が許されたのは3件で、昨年5月が直近の事例となる。妻を殺害し2003年から服役中の男性が、裁判所の判断が誤審であるとして控訴した事件だ(控訴は却下)。市民の関心が高く、テレビ局2社が撮影を求めた。BBCスコットランドがカメラを法廷内に置くことを許され、約18分間、裁判官が判決を読み上げる場面を撮影した。

 カメラは1ヶ所に固定され、控訴中の男性や弁護士などの関係者の撮影は許されなかった。BBCは撮影した映像を他局にも提供し、ウェブサイトにも掲載した。サイト掲載時からほぼ半日で7400回の視聴があった。公判後、裁判所から男性が出てきたところを、BBCのカメラが追い、短いインタビューを撮影。この映像もサイトに載せた。法廷内の撮影はかなり限定されたものだったが、男性の生の声が入った映像と合わせて、報道に厚みを持たせた。

 07年10月にはスコットランド・グラスゴーの刑事上級裁判所での公判の様子を携帯電話で撮影した3分ほどの動画が動画投稿サイト「ユーチューブ」に掲載される事件があった。撮影機器の小型化や投稿サイトの出現で法廷内の撮影の禁止が困難になっている。

 イングランド地方での法廷での撮影禁止は法廷内の映像を専門に流すケーブル・テレビ(旧「Court TV」,現「tu TV 」)がある米国の事情とは大きく異なる。元フットボール選手OJシンプソンが1995年、元妻とその友人の殺害の被疑者となった。逮捕から裁判の様子が世界中にテレビ放映され、一種の「メディア・サーカス」化した。

 スティーブンス氏は、裁判の見世物化に対する懸念が英国民の間に存在していることを認めながらも、スターマー長官の発言が撮影の原則許可を実現する「大きな追い風になる」と期待をかける。
by polimediauk | 2009-01-29 22:34 | 放送業界

イングランド銀行の歩み

 週末、鉄鋼大手コーラスが英国で3000人規模の人員を削減するという報道が出た。27日には、自動車業界への政府の高額支援策も発表された。毎日悪いニュースばかり出るので、伸びていた労働党の支持率が止まってしまったと言う。

 事態は急展開しているが、「英国ニュース・ダイジェスト」1月22日号に、イングランド銀行(英中央銀行)の話を書いた。8日、政策金利を0・5%引き下げ、年1・5%とすると発表し、1694年の創立以来最低の金利となったことに合わせて書いたものだ。以下はそれに若干補足したものである。内容は「イングランド銀行とは」という概要で、資料は主にイングランド銀行のホームページを参考にした。Bank of England Museum, ウェブサイト
http://www.bankofengland.co.uk/about/index.htm

創立から315年
 英中央銀行の歩み


―オランダがモデル

 イングランド銀行(英中央銀行)が創立されたのは17世紀末の「大航海時代」にあたる。時のイングランド王国は世界をまたにかけた貿易活動の拡大のための資金作りや欧州内の覇権争いに勝つための戦費を捻出してくれる銀行が必要になっていた。モデルになったのは1609年に創立されたアムステルダム銀行で、この銀行はアムステルダム市、政府、オランダ東インド会社に資金を貸し付け、硬貨の製造を行い、後に民間企業への貸付も行なっていた。オランダの繁栄の陰には中央銀行の存在があったとされる。

 1694年、スコットランド人ウィリアム・パターソンが創業したイングランド銀行が営業を開始した。国民から集めた120万ポンドが運転資金となった。王国の財政は悪化しており、イングランド銀行は年8%の利率で貸し出しをし、管理費として4000ポンド請求したという。
以降、現在までの300年余の歴史の中で、イングランド銀行は政府の財政政策を支援する銀行として、金融体制の安定を維持するための「銀行の銀行」として、また紙幣の供給を調節しながら経済の安定維持に貢献する重要な金融機関として機能してきた。

―高い評価を受けたイングランド銀行の独立

 1997年、労働党政権が成立すると、ブラウン財務大臣(当時)が金利を決定するための運営責任をイングランド銀行に移譲すると発表した。伝統的に政策金利などの決定は財務省が行っていた。翌年から施行されたイングランド銀行法によって、銀行の金融政策委員会が、政府が設定するインフレ率(インフレ目標、関連キーワード参考)を達成できるように金利を決定することになった。同銀行法により、これまでイングランド銀行が持っていた銀行業務監督権は新たに設立された金融サービス庁(FSA)に移管された。財務省、イングランド銀行、FSAの3機関が、国の金融・経済体制を支える体制になった。

 1975年には27%にまで上昇したインフレ率は2003年以降、目標値となった2%前後で推移した。「ニュー・レーバー」政権下で好景気が長期続いたこともあって、イングランド銀行の独立が効を奏したと高く評価された。ブラウン財務相(当時)の株は大いに上がったのだった。

―ノーザン・ロックの教訓か?

 しかし、2007年秋、住宅金融大手ノーザン・ロックが資金繰り難に陥り、取り付け騒ぎが起きると、イングランド銀行や財務省、FSAなど金融当局に対する国民の批判が高まった。信用不安を解消するための当局の処理は後手に回り、ノーザン・ロックは国有化されてしまった。「そもそも、銀行監督業務をFSAに移管してしまったことが問題だ」とする声が上がり、キング総裁に対しても「行動が遅い」、「市場の動きを十分に理解していない、学者エコノミスト」(市場関係者)と言われた。

 世界的金融危機の影響が昨年秋から本格化すると、イングランド銀行は大胆な金利引下げを迅速に行なうようになった。10月時点では5%だった金利は今年1月、「銀行史上初めての」1・5%にまで引き下げられた。今回の低金利が消費を刺激し、好景気に向う契機となるかどうかは不明だ。今年のGDPは昨年比で2.5%減(「キャピタル・エコノミックス」社調べ)と予測されている。イングランド銀行の動きに大きな期待がかかる。

―主な業務

―通貨の安定
―金融体制の安定
―紙幣発行
―政策金利の設定
―外国為替、ゴールドの備蓄管理等

―豆知識

*ニックネームは「スレドニードル通りの老婦人」:1797年に出版された政治風刺画の中で、イングランド銀行が時のピット首相が気を引こうとする老婦人として描かれたことに由来する。ゴールドが入った整理ダンスの上に座った老婦人は1ポンド札を貼り付けたドレスを着ていた。スレドニードル通りはイングランド銀行の所在地。

*「糸と針」の不思議:通りの名前がスレドニードルThreadneedle(糸・針)と呼ばれるようになった理由には2説ある。針を作る職人たちがここで商売をしていたという説と子供たちの遊びの呼称だったという説。後者は、子供2人が手をつないでアーチを作り、ほかの子供たちがアーチの中を走って通り抜け、これが針に糸を通す仕草に似ている、というもの。

*王室の肖像は昔はなかった:エリザベス女王の肖像が描かれたお札は私たちにとっておなじみだが、国王あるいは女王の肖像が紙幣に印刷されるようになったのは1960年代からだ。

*軍隊が守っていた:1780年から1973年まで、銀行の建物は毎晩、ピケット隊と呼ばれる銀行護衛隊が警備していた。

―キング銀行総裁のプロフィール

 マービン・キング(Mervyn King)氏は、1948年、イングランド南部バッキンガムシャーで生まれる。父親は鉄道会社で事務員として働いていた。子供時代から頭脳明晰で知られ、ケンブリッジ大学を1969年、優秀な成績で卒業。ケンブリッジ大、ハーバード大、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(LSE)などで教鞭をとる。LSE時代に書いた税金に関する論文が政府の目に留まったと言われ、1991年、43歳でイングランド銀行にチーフ・エコノミストとして就職。1998年に副総裁、2003年6月から現職。任期(最初の5年間の任務は昨年終了し、6月から二期目に入っている)は2013年まで。金利決定では保守派とされ、金融引き締め姿勢を維持してきたが、昨年来の金融危機で金利引き下げをせざるを得なくなった。サッカー・クラブのアストン・ビラの熱心なファン。2007年、20年来の知人のフィンランド出身の女性と初婚。

―イングランド銀行の歴史

1694年:ウィリアム3世とメアリー2世の勅令により、イングランド王国政府の銀行として設立される。
1725年:手書きだった紙幣の一部が印刷されるようになる。
1734年:現在の敷地に移動。
1793年:対仏戦争で財政赤字が膨らむ。
1797年:戦費がかさみ、金(ゴールド)の備蓄が激減したため、政府はイングランド銀行に対し、金での支払いを1821年まで禁じた。
19世紀:大英帝国の拡大に伴い、「世界の銀行」として国際投資で利子を稼ぐ。
1844年:金の備蓄に裏付けられた紙幣の発行をイングランド銀行の占有権とする。
1855年:紙幣が完全印刷化。
1870年:金利政策決定に責任を持つようになる。
1914年―18年:第1次世界大戦中、政府の借り入れ管理を支援。
1927年頃まで:紙幣は「ホワイト・ノーツ」と呼ばれ、表は黒字印刷、裏は空白だった。
1930年代頃まで:一部民間銀行が紙幣発行を続けた。
1931年:英政府、金本位制度から離脱。
1931年:ゴールドと外国為替の備蓄が財務省に移管される。
1946年:国有化される。
1997年:インフレ目標達成のため、政策金利を決定する権利を移譲される。
1998年:イングランド銀行法により、経営陣が総裁1人、副総裁2人、ノン・エグゼキュティブ・ディレクター16人の陣容となる。

―関連キーワード

INFLATION TARGETTING:インフレ・ターゲット。中央銀行が、金利の調整などを通してインフレ率を一定の目標の数値内に収めようとする金融政策を指す。政府が設定した現在のインフレ目標は2%。インフレ率は消費者物価指数(CPI)を見る。目標となるインフレ率を上下1%越えると、イングランド銀行総裁は財務大臣宛てに申し開きの公開書簡を書く。2007年4月16日、キング総裁は当時のブラウン財務相宛てに公開書簡を初めて書いた。
by polimediauk | 2009-01-28 03:07 | 英国事情
 今朝のBBCラジオ4の「TODAY」という番組で、赤十字の人がガザで負傷した人を助けるべき云々の話をしており、「何故今これが問題に?」と思っていたら、「災害緊急委員会」(Disasters Emergency Committee, DEC)というところがガザで人道支援を行なうための資金集めを行なっており、その広告(動画クリップ)を出すか出さないかで、テレビ界がもめているのだった。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7848614.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7848673.stm

 大手テレビ局は一旦は「広告を放映しない」と決めたようだ。何故そうしたのかは不明だが、恐らく、公共放送(運営資金がどこから来るかとは別個に、BBC,ITV、チャンネル4などもこの枠に入る)枠ではニュースは偏向してはいけないことになっており、放映すれば親パレスチナ側と目される、と判断したのかもしれない。

 このDECの「ガザ人道支援アピール」は、BBCサイトによれば、1月22日に発足。ガザ復興のために募金活動をしている。参加チャリティー団体は英国赤十字、オックスファム、セーブ・ザ・チルドレンなど著名なものが多い。私腹をこやすための変な団体ではない、とは言えるだろう。

 国際開発問題担当のダグラス・アレクサンダー大臣も(「が」というべきか)放送を支持している。

 問題は、BBCのトンプソン会長が、BBCの公平性を保つために、放送を却下してしまったことが発端だ。紛争の一方の側に傾いた放送になる可能性を避けるための正しい判断のはずだった。これが視聴者からの大きな非難を招いた。23日放送のBBCラジオ4「エニー・クエスチョンズ」という番組でも(識者によるパネリストに対し、視聴者が質問をする)、99%がBBCによる今回のチャリティー・アピールの動画放映不可は「間違いだ」と考えていた(挙手による)。

 BBCがあまりにも「政治的に正しい」ことをしようとするあまり、今回、判断を間違えたのではないか、という声が強い。

 この番組の中に出演していた政治家(元BBC記者、中東担当)は、「一般的にイスラエル側からBBCへのプレッシャーは強い。今回放送しないようにとプレッシャーがあったという意味ではないが。BBCには放映でガッツを見せて欲しい」と述べた。

 例によってBBC側は「判断は間違っていなかった」と今のところ言い続けている(こういう時、恐らく面子を守るためだろうが、BBCは決して前言撤回をしないのだ。)こうした中、ITV、チャンネル4, ファイブが放映方針を発表し、波紋が広がっている。先ほど、アルジャジーラ英語から送られてきたメールによれば、こちらも放映をするという。アルジャジーラ英語放送は、衛星テレビスカイを通じて英国で番組が見れるのである。

 24日はBBCの建物の1つの前に200人の抗議者が集まり、BBCに対し「恥を知れ」と叫ぶと共に、放送要請の嘆願書を出したという(・・・ということさえも自社ウェブサイトまで流すのがいいところではあるのだが・・・)。

 果たして、BBCはいつまで放送しないままでいられるだろうか?もちろん、放送しない局が1つぐらいあっても不思議はないのだが、BBCで放送すれば集まる募金の額が大きく違うはずなのだ。

 思い起こすと、BBCはかつて、反イスラエル報道で批判されていた。内部調査でそういう傾向があったようだが、その詳細は公開されていないようだ(以下参考。他にも別の調査があったと思うが、今見つからなかったので、とりあえず以下のみ)。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/6599927.stm

 今回はその逆で批判されていることになる。BBCがどうもお役所的に見えてしょうがない。報道機関としての信頼感・期待が大きいだけに一挙一動が批判の対象になってしまう。

 他局での放映は26日(月曜日)からになる見込み。

 BBC云々の話はやや横に置くとしても、今回の紛争で公平な報道はどうあるべきか?という議論が英メディア界である。今回のような紛争の場合、公平と言うのが難しい。また、メディアのアクセス度により露出度も変わってくる、単純な話だが。誰も行かない場所のニュースは表に出ないのである。また、今回の紛争に限ると、「公平性をいかに維持するか」なんて、どっちでもいいじゃないか、偏ってもいいじゃないか、と言う声があるのも事実だ。

 このチャリティー団体のアピールの話に戻れば、先のアレグサンダー氏(閣僚)は、動画を見て、募金するかどうかは国民が決める、それでいいのではないか、と述べている。

(―「災害緊急委員会」(Disasters Emergency Committee, DEC)はhttp://www.dec.org.uk/ で開くはずだが、少し前までアクセスできたが、いまやって見たらアクセスが殺到したのか開かなくなった。)


追加:BBC経営陣の見方

 BBCのトンプソン会長の見方は社員宛のメールに書かれてありました。以下から見れますが、
http://www.bbc.co.uk/blogs/pm/2009/01/the_bbc_and_the_dec.shtml

 2つ大きな理由があって、まず(1)実際に困っている人に届くのかどうか疑問、(2)今まさに進行中の紛争であるので、どちらか一方に肩入れしたくない・・・と。また、これまでにはDECのアピールを放映したことがあるそうで、DEC自体がダメというわけではない。しかし、今回に限っては・・とのこと。

 私の見方は、「変にこだわっているところが、何かおかしいなー?」という感じです。裏情報を持っているわけじゃないんですが。基本的に英国の大手メディアの報道は親パレスチナだと思っています。どうでしょう?前にレバノン紛争があった時も、反イスラエル感情が強まりましたよね、英国では。

 今回、BBC経営陣が親イスラエルになったとは思わないと言うか、まだ十分な証拠が無い感じなんですが、イスラエルがプレッシャーを加えた、という大それたことじゃなくて、あくまでも官僚主義的な動きのような気がしています。BBCが片方に偏ったような報道(一方に同情的な報道)をしたことは限りなくあるわけですし。

 それと、新聞の投書欄に「DECのことがニュースになったので、募金が増えた」という声と、「BBCはこのニュースの報道で、自社ウェブサイトにDECのアドレスを載せている、やっていることのつじつまが合わないのではないか」という声もありました。

by polimediauk | 2009-01-25 00:58 | 放送業界
 とうとう、ポンドが120円台にまで下がった。主に円で働く私にとってはうれしい限りだが、一体どこまで下がるのか。ついこの間まで、240円ほどだったので、ほぼ半分になってしまった。(逆に、ポンドを持って日本には行きにくい。余りにも価値が下がってしまった。)金融不安でここまで落ちた。

 ロンドンの夕刊紙イブニング・スタンダードをロシア人富豪アレクサンドル・レベジェフ氏が購入した。発行元のアソシエーテッド・ニューズペーパーズ社が、レベジェフ氏とその息子が経営するイブニング・プレス社に対し、たったの1ポンドで売ったのだ。イブニング・スタンダード・リミテッド社(新規設立)の75・1%をイブニング・プレス社が、残りのほぼ24・9%をアソシエーテッドの親会社デイリー・メール&ジェネラル・トラスト社(DMGT)が所有することになった。

http://www.guardian.co.uk/media/2009/jan/21/alexander-lebedev-london-evening-standard1

 DMGT会長兼大株主のロザミア卿は、181年の歴史を持つイブニング・スタンダード紙を所有できたことを誇りに思う、と述べている。

 スタンダード紙はロンドン近辺に通勤する人なら誰でも手に取ったことがあるにちがいない。駅構内や路上などに置かれたスタンドで販売されている。現在一部50ペンスで発行部数は約15万部。同じアソシエーテッド社が販売する無料新聞(朝のメトロ、夕刊のロンドンライト)に押され、発行部数は減少の一途を辿っていた。ガーディアンによれば、毎年2500万ポンド(約30億円)の損失を出しているそうだ。

 通勤電車の中で新聞などを読む時間はせいぜい20分ほどであるし、読みやすいメトロが超人気となったのも無理はなかった。わざわざお金を出して新聞を買おう・・・という気がなくなってしまう。特に、内容はとてもかるーいものの、無料の2紙ロンドンライトとロンドンペーパー(マードック)が3年前、スタンダードと同じ時間帯に販売を開始してからというもの、さらに買う人が減った。それでも、数百万人規模(推定)で人の出入りがあるロンドンで、有料新聞として15万部しか売れないというのは、どこかに問題があるのだろう(スタンダード自体というよりも、ビジネスモデルの転換が必要という意味で)。

 このロシア人は一体どんな人なのだろう?プレスガゼットのサイトによれば、Russian National Reserve Corp.の会長で、ロシアの大手銀行ナショナル・リザーブ銀行の大株主でもある。航空会社アエロフロートの株30%も所有。

 これまでの経歴に関しては他紙も報道したが、結局は「?」という感じもした。かつては旧ソ連国家保安委員会(KGB)の元スパイだった。ただ、元KGBだったこと自体は「たいしたことではない」と見る人もいる。

 スパイ活動の延長という部分が本人に全くないとしても、ロンドンに拠点を持つメジャーな新聞を所有するということは、政界、財界、娯楽業界の情報がかなり入ることになる。ネットワークも出来るだろうし、ロンドン市そのものとのつながりも深まる。情報力という面でも、政治パワーと言う意味でも、ものすごい力を手にできる感じがする。特に外国人の場合は。普通、なかなかインナー・サークルの中にはかなり努力をしなければ入れない。ところが新聞を所有すれば、向こうからこっちに情報がやってくる。

 テレグラフによれば(1月16日付)、レベジェフ氏は1959年12月生まれの49歳。Moscow State Institute for International Relationsで経済学を勉強した。スニーカーをはくのが好きで、豪勢なヨット遊びも好き。友人にはゴルバチョフ氏や米俳優ケビン・スペーシーやジョン・マルコビッチ。ロシアの国会で議員当選し、政府を批判し、言論の自由を大事にする。お金のことに関しては正直で、金融危機で資産(20億ポンド、約2400億円)の三分の二を失ったとテレグラフ記者に告白している。

 1980年代KGBに入り、1998年、英国で情報収集活動に従事した。スパイ行為よりも資本主義に関して勉強していた、という。ソ連崩壊後はエリツイン元大統領に親しく、銀行業で財を成した。

 本当に英国が好きで、新聞を所有したかったらしいが、真意は今のところ分からない。

 サンデータイムズ(1月18日付)によれば、米フォーブス誌の世界の金持ちリスト2008年版に載ったそうだ。また、ロシア政治を批判しているものの、自分が所有していたロシアの大衆紙が、プーチン首相とオリンピック選手との不倫疑惑を報道し、これがプーチンの逆鱗に触れた結果、レベジェフ氏はこの新聞を廃刊にしたそうだ。

 いずれにしろ、「外国人」と言う部分にこだわる必要はないが(マードックも元はといえばオーストラリア人)、いくらなんでも「元KGB」という人に英国の新聞が所有されていいのだろうか?疑問が残る。――もちろん、裏では様々なパワーと英エスタブリッシュメントがつながっているとしても、である。

プレスガゼット記事
http://www.pressgazette.co.uk/story.asp?sectioncode=1&storycode=42877&c=1
http://www.pressgazette.co.uk/story.asp?sectioncode=1&storycode=42876&c=1
http://www.pressgazette.co.uk/story.asp?storycode=42819
by polimediauk | 2009-01-22 02:19 | 新聞業界
 いくつか、気づいたことのみの走り書き。

 ーフェビアン協会でのピーター・マンデルソンはやっぱり「役者」で、根っからのニューレイバーだ。「金持ちへの高額税金は反対」が本音のようだ。

 ー保守党のフロントベンチにケネス・クラークが戻ってきた。マンデルソン同様、ビジネス大臣らしいので、対マンデルソンというのもあるのだろう。いつ総選挙があるかは分からないが、実質的に選挙戦は始まっている。

 ー英国の銀行の支援策第2弾が発表された。とにもかくにも銀行がもっと貸し出しをしてほしい、ということだ。ずい分ごり押しだ。私が心配になるのは、つじつまの合わない面があることだ。これだけ「不況」、人員削減が起きている中で、銀行がお金を貸したがらないのはある意味まともではないか?かつ、自己資本率を増やせ、といわれているのだから。ブラウン首相の選挙対策の一環という意味もあるだろう。何かをやっているように見せないといけないのだから。「悪い資産」を買い取る、という話もあるが、日本の例を振り返れば、「悪い資産」というのは線引きがものすごく難しい。前に日本である外資系金融のエコノミストの人に取材したとき、「不良債権の金額はどうしても分からなかった。不可能だった」と聞いた。

 -そろそろ、英テレビ界の将来を左右するレポートが2つ出る。1つは通信団体オフコムが出す、「公共放送の未来」に関する報告書。もう一つは、政府が出す、「デジタル英国」の将来図を描いたもの。BBCは受信料を他局と分けたがらない。チャンネル4は分けて欲しいと思っている。溝が埋まらない。チャンネル4とファイブ(別の放送局)との合併案も報道されたが、チャンネル4は否定している。BBCが自分勝手に見えて仕方ない。

 -今週金曜日(23日)夜、ジョナサン・ロスがテレビに帰ってくる。BBC1の夜のトーク番組の人気司会者でタレントだ。「留守番電話事件スキャンダル」で謹慎状態になっていた。出ても謝罪する必要はないとは思うが、ゲストが楽しみだ。トム・クルーズや英国の才人スティーブン・フライが出るらしい。オバマに関するジョークが必ずあるはずだ。ジョナサン・ロスの給料は高すぎるとは思うし、BBCでなくても、どこのテレビ局に出ようが視聴者からすれば関係ないのだから、BBCは高い額を払う必要はないだろう。

 -ロシア人富豪がイブニング・スタンダード紙の新しい所有者になるようだ。氏はロシアのリベラルな新聞も所有していると言う。ロシア人が・・・というのが時代の流れのような気がする。

 -・・・とにかく、オバマである。これから2日ぐらいは英メディアはオバマ一色になる。すると、「関係ない」というひねたコラムニストもきっと出てくる。何だか今から予測できてしまう。
by polimediauk | 2009-01-20 02:29 | 英国事情
 労働党とも関係が深いフェビアン協会の新春大会が、明日(17日)、ロンドンのインペリアルカレッジで始まる。エド・ミリバンド、ピーター・マンデルソンなどの政府閣僚に加え、元ロンドン市長ケン・リビングストンなどがパネリストとなり、複数のワークショップが一日中開催される。参加費は非メンバーだと有料だ。不景気をいかに好転させるかに注目が集まりそうだ。

http://fabians.org.uk/events/events/fabian_nyc-2009

 21日には大和日英基金主催で、日英の外交問題に関し議論をするイベントがある。

http://www.dajf.org.uk/event_page.asp?Section=Eventssec&ID=402&ticket=1

 パネリストは日本大使館のクサカ・スミオ氏、BBCの元ジャーナリスト、ウイリアム・ホースリー氏、元英大使グレアム・フライ氏。参加費は無料だが、事前申し込みが必要だ。ホースリー氏はオックスフォード大学で日本語を勉強し、BBCの東京特派員でもあった。日本語がかなり話せるはずだ。

 昨晩、パントマイム「シンデレラ」(ウインブルドン)に出かけた。クリスマスといえば「パント」、ということで、たくさんの人が子供と一緒に見に行く。もうクリスマスはとっくの昔に終わっているのだが、舞台上の役者が歌い、踊る。必ず憎まれ役がいて、子供たちを中心とした観客が、役者たちに声をかけて+叫んで、何とかヒーロー、ヒロインたちを憎まれ役から救おうとする。シンデレラが意地悪なお姉さんたちにいじめられる場面はかなり迫力があった。結構有名な役者たちも出演する。おそらく、割に合わない仕事なのかもしれないが、知人によれば、「社会への還元行為、何かを返す」という意味合いもあるのだと言う。これも英社会の一面だろう。何かあたたかいものをもらった思いで帰途に着いた。
by polimediauk | 2009-01-17 07:32 | 英国事情
 「日経ビジネス」のサイトが15日からリニューアルした。

http://business.nikkeibp.co.jp/

 私が今作っているサイトのレイアウトとちょっと似ているところがあった。こういうデザインは今トレンドなのかもしれない。

 どこが新しいのかの説明を見てみると・・・。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090114/182626/

 (引用)

 日経ビジネスオンラインは、組織を変革する創造的な個人に役立つサイトでありたいと考えます。既存の答えが用意されていない課題を解決するための発見、気づきがある記事に巡り合える場です。そのため、異論を重んじる雑誌の複眼思考をさらに進めて、多様性に富んだ記事ラインアップ、1つのニュースへの多面的・重層的な論説を充実していきます。そうした色彩が強い、おすすめ記事を毎日「Breaking Views」として最上部に配置しています。

 (中略)

 2008年のリーマン・ショック後、世界経済の変調が鮮明になりました。これまで繰り返した景気後退にとどまらず、資本主義の仕組み、企業経営の常識、働くことの意味など経済の本質的な部分が大きな転換点を迎えた可能性も指摘されています。国や社会、組織という枠組みが揺らぐ海図のない時代、成長への突破口は個人の創造性にあります。

 企業、市場、政治から世相、サブカルチャーまでの幅広い分野。日経ビジネス・日経ビジネスオンラインの記者だけでなく、企業の実務者、会計士、弁護士、大学の研究者、小説家やコラムニスト、フリーランスジャーナリストなど多彩な執筆陣。欧米メディアに加え、アジア各国の現地メディアが掲載した記事。

 こうした記事の多様性の中に、見通しにくい時代の先を示すヒントが必ず隠れているはずです。(引用終わり)

 そして、スェーデンで障害者集団が働く会社を紹介する記事が・・・。アジアのニュースも紹介。欧州にも目が行く。

 なんだかすごく面白い感じになったなと思う。「個人の創造性」を鍵にしている点もいい感じだ。

 先日、在英日本人で日本から帰ってきたばかりの人と会話をしていたら、「日本はずい分変わった」という話で、NHKの番組がおもしろく、既存メディアが活性化している話を聞いた。その人の話では、「ネットでの言論は『終わった』」のでは?とも。

 ネット(オータナティブメディア)に行けば何かおもしろいこと、既存メディアがカバーできない何かがある、という時代は、ある意味、確かに終わったのかもしれない。既存メディアが捨て身で、本気でネットで何かをやろうとしたら、強いのかもしれない。

 この「強い」というのは、必ずしも「お金がもうかる」ことを意味しない。

 多彩なアイデア、考え方が自由にたくさん出て、個人(仕事もするし、遊びもするし、子育てや料理もする)の生活が前よりも知的に深まったり、楽しくなったり、危機に対応する手段や考え方が増えたりすることに貢献できるーそういう意味の強さ。新聞やテレビ・ラジオは今までずっとそうしてきたと思うし、ネットでもこれを本気でできたらおもしろい。

 今このサイトを読まれている方で、日経を嫌いな人、新聞が嫌いな人、「マスゴミ」と思っている人は多いと思うけれども、「国や社会、組織という枠組みが揺らぐ海図のない時代、成長への突破口は個人の創造性」にある、という発想はやっぱり新鮮だ。「個人としてどうするか?」ー今これしかないと思う。

 翻って英国では、中東やアフリカの話が多い。ガザの件があるから、というのもあるが、フランス、ドイツ、オランダなど、近隣欧州諸国の話がめっきり少ない。思い出したようにやる、という感じ。欧州でもやるのはロシアと東欧か。いつもどうも固定観念がある。目隠しをされている思いがする。ネットでニュースは拾えるけれど、日常的に欧州他国の日々のニュースが,普段のなんでもないようなことなどが報道されておらず、ステレオタイプがどんどん増えていく。

 イスラエルーガザの件も、昔は親イスラエル報道だったそうだが、今は親パレスチナが主のようだ。これについては稿を改めたいが、日本のメディア報道に関しては、デイズ・ジャパンの広河編集長が詳しく書いている。ご参考までに。

http://daysjapanblog.seesaa.net/article/112508511.html
by polimediauk | 2009-01-15 07:55 | 日本関連
 ヘンリー(ハリー)王子が、3年前、サンドハースト陸軍士官学校で訓練を受けていた時、人種差別的発言をしたという件が大きなニュースとなった。BBCニュースのサイトでも、日曜日(11日)、ずっとトップだった。

 (以下でビデオが見れるが、ずい分便利なサイトができたものだ!!)

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00147368.html

 
(引用)流出した映像で、ヘンリー王子は「あれが『パキ』(パキスタン人の差別語)の友人、アハメド」、「『ラグヘッド』(ターバンを巻いた人の差別語)みたい、こっち向いて」などと話していた。2006年の陸軍士官学校時代に、仲間の兵士に対する差別語を連発していた映像が流出した(中略)
  
 映像の中には、訓練中に祖母であるエリザベス女王に電話している場面もあった。映像の中でヘンリー王子は、電話を手に「おばあちゃん、もう行かなきゃ。おじいちゃんと犬によろしく!」、「(王子様、行くぞ!)じゃあね、もう切るね」と話していた。(引用終わり)


 パキスタン人(ここではパキスタン系英国人)のことを、普通にいえば「パキスタニ」Pakistaniということになるのだが、「パキ」となると、人種を指しているのではなく蔑称と解釈される。(「ベッカムに恋して」という映画でも、主人公が「パキ」と呼ばれて悲しむ場面があった。)

 それでも、軍隊の仲間同士ではいろいろ言うであろうし、記事を読めば読むほど、それほど大したことではないと思う感じがした。もちろん、王子は謝罪し、謝罪しないわけにはいかないのだろうけれども。英国には人種差別禁止法があるので、うっかりはしておられず、パキスタン系英国人もたくさんいるし、本当に気をつけなければならない。

 問題は、メディアが騒ぎすぎることである。元々報道が最初に出たのは日曜紙の「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」である。こちらは「売りたい」という欲望がある。

 しかし、BBCがまるで鬼の首でも取ったかのような(BBCはどちらかいうと反王室なのでーー王室が嫌いなのでなく、反権力という姿勢をいつも出す必要があるので)大事件として扱うのがいやらしい感じがした。自分たち自身もちょっと失言があると、視聴者から大量の文句が来る。今度は他の人が対象になったので、思い切りやっている感じがした。

 BBCサイトが視聴者から意見を募っている。これを見ると、「大したことはない」、「政治的に正しいーーポリティカリーコレクトーに過ぎるのではないか」?という声が結構あった。テレグラフの読者からの投稿欄でも同様だった(12日付け)。

 このトピックからやや離れるが、ネットも含めて様々なプラットフォームで24時間情報を出せるようになったメディアにとって、課題になるのは、「大げさに騒ぎすぎずにいかにニュースを伝えることか」、ということかもしれない。時に、3ぐらいのものを10ぐらいに見せてしまうことがある。すると、ことの本質がすり抜けてしまうと思う。

 私たち視聴者にとって重要なのは、新聞を読む時も同じだが、やはり自分の頭の中で一度咀嚼してみる、ということなのだろう。それにしても、騒ぎすぎのような事件だった。(・・・しかし、もし日本の皇室の誰かがこんな発言をしたら、そういうことはありえないが、もしそうならこれは大騒ぎだろう。日本の皇室と英国の王室の国民の間での受け止められ方がずい分違う。)

 一方、日本でも「ミスター・ビーン」で知られるコメディー俳優ローワン・アトキンソンが「キリストを侮辱した」コントを民放ITVのテレビで行い、これに対して視聴者から不満が寄せられた。通信規制団体オフコムがこれを「問題なし」としたことが分かった。

http://www.guardian.co.uk/media/2009/jan/13/rowan-atkinson-jesus-sketch-cleared-ofcom

 アトキンソンは聖職者として番組に登場し、水をワインに変えたキリストを、一種の手品師として描いたコントだった。このコントは前に何度もやっている。おそらくビデオ・DVDにも入っていると思う。

 私自身、この番組を見ていたのだが、特別な番組だった。チャールズ皇太子の60歳の誕生日を祝うイベントで、英国内のコメディアンが集まり、劇場を借りて皇太子や観客を笑わせてくれた。その様子がITVで放映された。

 前にこのコントを見たときは笑ったのだけれど、今回のテレビでアトキンソンのコントを見て、どうにも場違いな感じがして、テレビを消してしまったのを覚えている。オフコムに不満の声(500件余)が寄せられたと聞いて、不快に思った人は他にもいたのだなと思った。

 一方、オフコムはMTVチャンネルの中に出演した米国のバンドが、いわゆる4文字言葉や「ニガー」などと言う言葉が入った歌を歌ったことで、「重大な」放送規定破りが起きた、と結論づけた。ネット時代、多チャンネル時代に、こういう規制があること自体が古めかしい感じがするが、難しい時代になったものだ。
by polimediauk | 2009-01-13 23:43 | 英国事情
 英イングランド・ウェールズ地方では、裁判の様子のテレビ放映は今のところ行なわれていない。ところが、こうした状況が変わる可能性が出てきた。

 昨年11月検察庁のディレクターに就任したキア・スターマー氏が、司法の透明性と公開度を拡大するため、テレビ放映の必要性を報道陣に語ったからだ(チャンネル4で9日放送分より)。

ニュース
http://www.channel4.com/news/articles/society/law_order/calls+to+televise+court+cases/2900667

ビデオ

http://link.brightcove.com/services/link/bcpid1184614595/bctid6805212001

 イングランド・ウェールズ地方の法廷にかつてはカメラが入っていたが、これは1925年に停止された。法曹界ではカメラをシャットアウトする状態は時代錯誤的と見ている、とチャンネル4は伝える。スコットランドでは一部カメラ撮影が許されている。

 これまでイングランド・ウェールズ地方でテレビカメラが法廷に入ったのは3年前のパイロット・プログラムが行なわれた時。3週間に渡る撮影だったが、当時のフィルムは公開されていない。

 裁判報道での自由度がどんどん広がりつつあるが、テレビカメラがOKということになると、ずい分大きな変化になるような気がする。スターマー氏はテレビ放映は法廷に「新鮮な風」をもたらす、と述べる。しかし、チャンネル4も指摘しているように、テレビカメラを使って裁判を一種の政治ショーとして使う人も出てくるだろう。例えば、死刑になったフセイン元イラク大統領の公判の様子は誰でも思い出すだろうと思う。「あなたには裁判をする資格がない」と裁判長に向かって言うなど、なかなか本題に入れないままに時間が過ぎた。

 ところで、英国では陪審員の評議によって、刑事裁判の一部で有罪・無罪が決められている。メディア側は陪審員に関しての報道に厳しい制限をつけられる。12人の陪審員中で男女の比率の報道ぐらいはいいのだが、そのほかの情報に関しては事実上一切報道が禁止されている。テレビカメラが法廷内に入った時、現状では、カメラは陪審団を撮ってはいけないことになる。顔が出ては身元が割れてしまうからだ。しかし、この点もいずれ変わるようになるのかもしれない。日本では陪審制度に似た裁判員制度が5月から始まるが、報道機関の裁判員への接触は奨励されていないはずで、英国での変化が日本にもそのうち影響を及ぼす・・・なんてことがある「かも」と思ったりする(先は長いだろうが)。
by polimediauk | 2009-01-11 07:05 | 英国事情
 英領北アイルランドの日曜紙「ベルファースト・サンデー・ライフ」に対し、7日、裁判所が性犯罪者ケネス・キャラハンの写真を生涯掲載しないようにという命令を出した。報道の自由の侵害を危惧する人もいる。

 ベルファーストテレグラフ紙(昨年2月11日付)、インディペンデント紙(8日付)、またガーディアンのロイ・グリーンスレード氏のコラム(7日)を総合すると:

 1987年、キャラハンは当時21歳の女性に性的暴行を働き、殺害した。刑期を終えて刑務所から出ることになっていたが、保釈中に撮られた写真がサンデーライフ紙に出ることが分かり、これを阻止するため掲載差し止め申請をしていた。昨年2月、ベルファーストの高等法院が仮の掲載禁止令を出している。写真が掲載されることで男性の身に降りかかるかもしれない危険を防止するためだった。今回の写真(ピクセルをかけないもの)掲載禁止は「生涯」と言うのだから、徹底している。

 サンデーライフの編集長マーティン・ブリーン氏が7日、BBCアルスター・ラジオで語ったところによれば、予定していた写真掲載で、市民が男性の顔を認識でき、接触を避けることができる、つまりは公益がある、という主張だ。同じ番組に出ていたグリーンスレード氏はそんなことをすれば、男性が市民から追跡されると指摘した。ブリーン編集長は「そんなことはない」と否定。しかし、裁判官はもし写真が出れば男性の命があやうくなる、と判断した。

 裁判官は、男性の写真だけでなく、住所、勤務場所や旅行(移動)情報などの報道も禁止した。米国には、性犯罪者に関する一部情報を市民に対して公にする「ミーガン法」という仕組みがあるが、裁判官は、掲載で「サンデーライフは自分たち自身がミーガン法となる」、掲載が「公益に適うのかどうか」をまったく考慮に入れていないと批判した。

 ブリード編集長は市民には知る権利があり、写真掲載への支持を読者から得ていると語っている。判決は「厳しすぎる」、「メディアへの影響は大だ」。

 グリーンスレード氏のコラムについた読者コメントの中で、ベルファースト市民が、こう書いている。「近所に性犯罪者とされる人がいて、2-3ヶ月前に抗議集会があった。集会から2-3軒先の場所で、ある男性の家が焼かれた。『レイピスト(性的暴行者)』と家の前にスプレーで書かれてあった」。

 1993年、当時で11歳の少年2人が幼児を殺した事件があった。2人は2001年出所したが、名前も変えられ、今どこに住んでいるか分からない。身元情報に関する生涯の報道禁止令が出ている。今回は、21年前の犯罪、しかも一人の女性の殺人で生涯報道禁止とは確かに厳しい感じがするが。この件は、続きがあるかもしれない。

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/paper-banned-from-printing-killers-photo-1232063.html

http://www.guardian.co.uk/media/greenslade/2009/jan/07/pressandpublishing-law

メディアへの影響を懸念するベルファースト・テレグラフの記事(昨年2月)
http://www.belfasttelegraph.co.uk/opinion/callaghan-ruling-could-set-dangerous-p.htmldent-13383829.html
by polimediauk | 2009-01-08 20:39 | 新聞業界