小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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<   2009年 02月 ( 14 )   > この月の画像一覧

 フィナンシャル・タイムズのウェブサイトで、無料で読める記事の本数が激減している。確か、昔は一月に30本だったはずだ。これ以上になると、「有料購読しませんか?」という勧誘文句が出る。昨年、FTのネット関係の人と話していたら、「月に20本だよ」と言われ、調べてみるとそうなっていた。

 ところが、つい最近また読んでいると、これが月10本になっている。ちょっと調べ物をすると10本はすぐだ。20本から10本へという激減振りに「?」と思っていた。

 販売価格も2007年6月時点ではウイークデーで一部1ポンド(約140円)だったが、数回に渡り値上げをし、昨年11月からは1・8ポンドに。倍まではいかないが、ほぼそれに近い数字になった。

 昨年末辺りから人員削減の噂が出ており、今年に入って80人の削減が決まった。このうちの20人は編集記者だ。FTの編集人員は550人なので、全体からすればそれほど大きな数字ではないが、働く側からすれば衝撃である。削減は3月から実施される予定で、ジャーナリスト組合(NUJ)がFTの経営陣との話し合いを行なっている。

 今月に入り、週に3日の勤務体制を含めた「フレキシブルな勤務案」を経営陣が出してきた。6月から8月の間に週に3日から4日働く案や給与の30%を支払う代わりに1年間の長期休暇を取ってもらう案など。こうした休暇をとっても、「将来の雇用にマイナスの影響がない」ことが確約されている。また、3万ポンド以上の給与を貰っている場合、今年は賃上げなしとなる見込みだ。

 マードック一家が経営するニューズ・インターナショナルも景気は良くない。サンデータイムズ紙が20人、タイムズ、サン、ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙がそれぞれ15人を削減する予定だ。

 もっと厳しいのが全国紙ミラーに加え140以上の地方紙を出版するトリニティー・ミラー社だ。過去1年でほぼ1200人を削減している。地方紙の合併や、統合編集室を作って余分になった人員を削減した。1200人は昨年初頭時点での従業員全体の約13%にあたる。今年1月と2月の2ヶ月間で、トリニティー・ミラー社の地方紙の広告収入は、前年同時期よりも37%減少し、全国紙の場合は16%減少した。昨年の営業収入は前年よりも22%下落した。コスト削減もやっているが、収入の減少のスピードに追いつかない。

 新聞の販売部数は長年下落気味だったが、広告収入の減少はいつかは底をつくという希望的観測から、とにかく現在の不景気を乗り切ることをどの新聞社でも主眼にしているようだ。

 不況になったら人を斬る・・・残酷だが、これが良い意味の経済の活性化につながればいいのだが。収入が減っても人材を抱え続けたら、企業は倒産に陥ってしまう。といって、一定のスキルのある人を手放したら、人材としてもったいない。それでも、メディアで働きたい人は山ほどいる。いつでも人材確保には不自由しないのではないか。ある意味では、人気業界のメディアだからこそ、人をどんどん削減できるのかもしれない。別の見方では、メディア企業モデル(大きな設備投資、巨大な本社、大規模な人の配置など、とにかく大きさで勝とうとする)が崩壊しつつあって、今が過渡期ということもできるかもしれない。-将来はもっとスリム化した存在に?しかし、「人がコンテンツを作る」という部分は欠かせない。どうやってこれを経費をかけずに維持するのか?これはFTの悩むところでもあろう。

 (上記の情報源は主にガーディアン紙、プレスガゼット紙他。)

 一方、唯一、各紙が威勢がよいのはウェブサイトの人気ぶりである。

http://www.guardian.co.uk/media/2009/feb/26/record-traffic-for-guardian-website

 ガーディアンサイトの1月のユニークユーザーが約2980万人(内英国内のユーザーが38%)、で、テレグラフが2500万(同36%)、タイムズが2289万(36%)、メールオンラインが2287万(32%)、サン・オンラインが2100万(37%)、インディペンデントが1000万人(43%)である(ABC調べ)。海外からアクセスする読者が圧倒的に多い。
by polimediauk | 2009-02-28 00:48 | 新聞業界
 いくつか走り書きのようなことだが、

―野党保守党党首の息子が亡くなった。重度の障害でいつまで生きるとも分からない命だった。毎週水曜日議会でやっている、首相と野党党首との「クエスチョン・タイム」が中止となった。ブラウン首相のお悔やみの言葉に重みがでる。首相自身も生まれたばかりの子を亡くした経験があるからだ。・・・という一方で、BBCラジオを聞いていたら、「アフガンではいつも英兵士が死んでいる」という人がいた。4人の英兵が亡くなっていた。もう140人ほどが亡くなっている。タリバンはどれぐらい殺されたのか。病死と戦死を比較するのはあまり意味があることではないだろうが、ゆっくりと英兵が死んでゆく(タリバンがその何倍も死んでゆく)状況が続いている。(本当に英国は戦争をずーっとやっている国である。)

―政府が70-80%所有するロイヤル・バンク・オブ・スコットランドRBS銀行の元CEO(50歳で昨年秋、早期退職)が、年間65万ポンドの退職金をもらうことがいいことか、悪いことか、議論になっている。破綻を避けるために公的資金を使った経緯がある。政府は「一部放棄して欲しい」と元CEOにプレッシャーをかけているようだが、この男性は今のところ、断っているようだ。

―銀行の話になると、誰を信じていいのか分からない感じだ。今は銀行バッシングが大流行だが、特に投資銀行がお金を稼ぎすぎている状況は、ずーっと、ずーっと続いてきた感じがする。1980年以降。ついこの間まで、「いいこと」だったのだが。2001年の米エンロンショックがあって、「改心した」はずだが、また繰り返しである。また同じこと(反省、しかしすぐに元に戻る)になるのではないだろうか?「見えざる手」による市場主義信奉はおいそれとは変わらないだろう。

―がんで先が短いと言われている、ジェイド・グッディーという女性の話でここ数日もちきりだったが、「病気を売り物にしている」という批判もあったはずだ、少し前まで。マックス・クリフォードという人が、パブリシティーを担当している。亡くなった後、子供たちが十分に食べていけるように、今のうちにたくさんお金を稼ぐ必要があるそうである。それでも、プライバシーを切り売りしている感じがする。グッディの話を見ていると、英国は本当に階級制の社会だなと思う。彼女の場合は次第に神格化されているようなので悪い話は消えつつあるが、自分の子供を偽装誘拐して保険会社からお金をもらおうとした女性の場合、明らかにいわゆる労働階級の女性であったので、中・上流の人々からのバッシングがすごかったように記憶している。

―政治が好きな方は、サッチャーのドラマや関連番組が目白押しである。

http://www.bbc.co.uk/iplayer/episode/b00hy18h/Margaret/
http://news.bbc.co.uk/1/hi/magazine/7899707.stm
by polimediauk | 2009-02-27 08:48 | 英国事情
 昨年11月から「始める」といっておきながら、なかなかできなかった、ニュースサイト「ニューズ・マグ」のベータ版を25日から公開することになりました。まずは3月末から日本で公開予定の映画「フロストxニクソン」から始めています。まだまだ本当に試験段階ですが、映画に興味のある方はのぞいてみて下さると幸いです。

http://www.newsmag-jp.com/

 友人、知人たちに「どんなサイトになるの?」と聞かれ、「日本の夕刊のような感じ」ととりあえず答えています。硬派と軟派が混在する、読みやすい、かつ身近な話が載っているサイト・・・と考えました。自分が日ごろ知りたいと思っていた情報を、一先ずは出していこうと思っています。

 今のところ、参加者はボラインティアなのですが、報酬がなくても書きたい、写真やイラストを使ってもいいという方が(もし)いらっしゃいましたら、ご一報ください。

 朝日新聞の月刊誌「ジャーナリズム」2月号に、裁判報道と英国メディアの話を書きました。私以外の執筆者の方の原稿を読むと、日英の事件報道の違いが出て、非常におもしろい構成になっています。(詳細は次回以降。)もしどこかで手に取る機会がありましたらお目を通していただけると幸いです。
by polimediauk | 2009-02-26 07:50 | ネット業界
 キューバにある米グアンタナモ基地のテロ容疑者拘束所に2004年から拘留されてきた元英国住民の男性、ビンヤン・モハメド容疑者が来週早々にも英国に帰国できるようだ。帰国後、一段落したら、一体どんなことが暴露されるのだろう?前に帰国した人のように、簡単な取調べの後、「無罪」になるとしたら、一体何のために何年も拘束されてきたのかー?弁護士はBBCテレビで、釈放の理由は「有罪であるという証拠が全くなかったから」、「政権が変わったから」と述べていた。

 経済悪化のニュースが連日だ。差し押さえ件数が昨年1年間で4万件で、これは前年より50%増だそうだ。今年は、7万5000件になると予測されている。同時に6000人が働く自動車メーカーの工場(どのメーカーかは不明)が稼動停止になるという報道もあった。

 政府は銀行救済案、自動車業界支援、雇用支援、差し押さえを待ってくれるよう(ローンの支払いを待ってくれるよう)な施策を出しているはずだが、何故かあまり効果がない。1つには経済の悪化のスピードが非常に速くて追いつかない、というのもあるのかもしれない。それと、チャンネル4の「ディスパッチ」という番組でやっていたのだけれども、「方策は良くても、これが実現されていない」という面もあるのだろう。実際、ローンが支払えなくなって、困ってローンの支払い先に連絡しても、「猶予してくれるという声は全く聞かなかった」という消費者の声が複数のニュース番組で報道されていた。

 「エコノミスト」で経済に関する記事を拾っていたら、少し前になるが、ブラウン首相は「ハイパーアクティブ」に動いているが、実際の効果があまりないという指摘の記事があった(1月8日付け)。不景気が続けば、「何もしていない」とブラウン氏が批判する野党に意外とチャンスがある・・・という内容だ。振り返ってみると、昨年の10月以降、世界に先駆けて大型銀行救済策を発表するなど、目立っていたブラウン首相(ノーベル経済学賞受賞のポール・クルーグマン氏にも高く評価されていた)。「世界を救った」と、議会でポロリと失言してしまうほどの上機嫌だったような気がする。ついこの間も英国各地を回り、「雇用支援」とうたっていたけれど、その動きの割には・・という感じがする。もしかして、情報のスピンにだまされたのかな、という感じがしている。4月2日のG20の会議は大プロパガンダ大会になるのだろうか?

エコノミスト、記事

http://www.economist.com/world/britain/displaystory.cfm?story_id=12896724
by polimediauk | 2009-02-21 07:26 | 政治とメディア
 昨日、外に出ていたら、私が日本人と分かると「日本の財務相が辞めたんだってね。会見の様子をユーチューブで見たよ」と何人かに言われた。BBCでもビデオが見れるようなっており、ロンドンの無料紙にも写真が出ていた。

http://www.excite.co.jp/News/politics/20090218/20090218M10.139.html

 景気が悪いと誰かに責任をかぶせたくなるもので、今のところ、外国人労働者が一つのターゲットになっている。12日発表された、日立が在来線用の高速車両と保守サービスを担当することになった件で、デイリーエキスプレス紙は早速、「日本人に仕事を持っていかれる」とする見出しの記事を出していた。

 今月5日まで、イングランド東部のリンジー製油所で、1週間に渡り非合法ストが起きていた件があった。同製油所がイタリア人やポルトガル人労働者を優先雇用としているとして、地元労働者が抗議ストを開始したところ、英国内の各地でこれを支援するストが勃発。数千人規模の労働者が「英国人に英国の仕事を与えて欲しい」と訴えた。不景気を理由に人員削減が続く中、外国人労働者が不満の捌け口となったのだろうか?この経緯を「英国ニュースダイジェスト」最新号(ウェブは火曜日、紙は木曜日)に書いた。以下はそれに付け足したものである。

―「英国の雇用を英国人に!」

 1月28日、イングランド東部リンカンシャー州のリンジー製油所で、約800人の労働者が「非合法」スト(所属する労働組合からの認可を受けていないスト)を開始した。同製油所を操業する仏石油メジャーのトタル社の下請け会社が、プラントの拡張工事に約400人(300人という説もある)のイタリア人及びポルトガル人を雇用することに決定したことへの抗議ストだった。英国人をことさら閉め出したかのように見えた動きに怒りを爆発させた労働者たちは、「英国の雇用を英国人に!」と書かれたプラカードを持っていた。

 「英国の雇用を英国人に」とは、昨年9月の労働党党大会で、ブラウン首相がスピーチの中で使った文句だ。大手銀行や不振が続く自動車業界への税金による巨額支援が打ち出される中、製油所の労働者たちは「自分たちはどうしてくれるのか?」とブラウン政権に抗議のメッセージを送っていた。

 雇用の先行きに同様の不安を持つ、各地の製油所、発電所などでも同様のストが始まった。リンジー製油所のストも約1000人が参加し、1週間後には英国全体で3000人近く(エコノミスト誌によると6000人)が抗議ストを行なった。全国各地に広がったストは、不景気に入り、将来を不安視する多くの国民の懸念、戸惑い、怒りを代弁しているようだった。

―「外国人」の雇用は違法か?

 トタル社は、英国人労働者を不公平に扱ったことはなく、公正な入札をし、イタリア人やポルトガル人労働者を使う会社が建設を担当することになったと説明する。

 英国は欧州連合(EU)加盟国だが、EU域内では人・モノ・サービスの自由な移動が原則だ。他のEU諸国出身の労働者よりも自国の労働者の雇用を優先することはできない。ブラウン首相の先のスピーチも、(もし英国人を優遇するようだと)「EU諸国出身の労働者を差別することになる」、といった批判が当時から出ていた。

 「英国人に英国の職を」とするプラカードを持ったストが発生し、政府側は弁明にあわてた。マンデルソン企業相は「英国の労働者も他のEU諸国で働ける」として、決して一方的な動きではないことを説明した。

 しかし、これは理論的には確かにそうだろうが、実用的ではない。多くのEU諸国では英語が広く使われているか、あるいは外国語として学校で教育を受けている場合が多く、英語以外の言語にどちらかというとややうとい英国人(しかもブルーカラーワーカー)の場合、言葉の面でハンディがつく。また、現在はポンドがずい分下がってしまったけれど、ついこの間まではポンド高と物価高の英国の労働者は、海外に行って賃金を稼ぎ、これを英国に送ってもマイナスか余り残らない。経済移民の波は大雑把な言い方だが、貧しい国から富める国に、というのが一般的だ。好景気が続いた英国に人が集まってきた期間が続いた。元EU官僚で、見るからにエリートのマンデルソン氏から「いやなら欧州に行って仕事をすれば?」といわれても、反感を買うだけだった。

 さらに、一連の「外国人労働者」への抗議には、英国の反EU感情も若干あったかもしれない。英国からすれば、「EU=外国」という感情が強い。人、モノ、サービスの行き来が自由になる、一つの共通の地域という感覚が薄いのかもしれない。

 英政府はこれまで、EU諸国からの労働者に対し一貫して開放政策を取ってきた。2004年、EUの東方拡大時、多くのEU諸国は新規加盟国からの労働者に対し最長7年間の雇用規制を課したが、英国は事実上規制なしの方針を取った。

 04年以降、ポーランドやチェコなど旧東欧諸国からやってきた移民の数は現在までに100万人に上る。飲食店や配管業に従事する旧東欧諸国出身者の姿は、英国の日常風景となった。

 昨年の金融危機の本格化から失業者が増え、「EU出身者が英国人の労働を奪っている」という思いを抱く人がいても不思議ではなかった。「外国人排斥感情」に目を付けた、極右政党BNPの党員がストの場所に現れ、党加入を迫るという事態も起きた(労働者側はこれを追い払った)。

 それにしても、ついこの間まで、英国人の間ではなり手が少ない配管工職にポーランドの移民がなってくれるので、助かったと考える人がたくさんいたはずだ。景気が悪くなると、こうした移民さえも「英国人から職を奪っている」と見られがちになるのだろう。

 英国に限らず、金融危機が経済危機に発展した欧州各国で労働者によるストが相次ぐ。アイスランド、フランス、ロシア、ギリシャ、ドイツなど。

 EU内の企業が他のEUの国で労働者を雇うとき、現地の労働条件や賃金に見合う条件・賃金を提供することになっている。これはEU Posted Workers Directive(外国人労働者指令、仮訳)で定められている。

 ところが、2004年、最低賃金のない国スウェーデンで、ラトビアの企業が学校を建設しようとした時、この企業は、ラトビアから労働者を連れてきて、ラトビアの賃金で使おうとした。ラトビアの賃金とスウェーデンの賃金との間に大きな開きがあるだろうことは想像できる。

 スウェーデンの労働組合はスウェーデン人の労働者を差別しているとして、建設作業の中止を求める訴えを起した。しかし、EUの裁判所は、作業中止は労働者の「公益を損ねる」として、この訴えを退けた。(この判断を忠実に現実に当てはめれば、企業側はEUのどの国でも自由裁量で賃金などを決められることを示唆する。ただ、この判決がどこまで広くEU内で認識されているかは、私自身不明だ)。

参考は以下
http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/7860622.stm)

 リンジー製油所のストはトタルが英国人向けに102人分のポストを追加する案で終息を見せたが、問題が完全に消えたわけではない(英国人向けポストの提供は違法という見方もある)。2012年開催のロンドン五輪の会場建設や原発の新規建設など、大規模な労働力が必要とされる大型建設事業が目白押しとなっている。首相はBBCの番組の中で「失業者が雇用市場に戻れるよう最大限の努力をしたい」と述べたが、政府が依然ジレンマ状態にあるのは変わりがない。

―ブラウン首相の雇用に関するスピーチ

 「英国民の技術と創造性、積極性、柔軟性、交通やインフラへの投資によって、英国は世界を牽引する。科学や金融・ビジネス部門、原子力から再生エネルギーなどの分野、またはクリエイティブ産業や近代的な製造業において世界の指導者でもある。英国の労働者のために英国の雇用を確保するよう、あらゆる人材を総動員する」―。(2007年9月24日、労働党大会での、首相就任後初のスピーチの一部を翻訳)

―関連キーワード

TREATIES OF ROME: ローマ条約。1957年に調印された2つの基本条約、欧州経済共同体(EEC)設立条約と欧州原子力共同体設立条約を指す。1958年に発効。人・モノ・金・サービスの自由移動を目的とし、現在の欧州連合(EU)成立の基礎になった。EEC設立条約は1993年のマーストリヒト条約によって欧州共同体(EC)設立条約に改称された。英国は1973年、ECに加盟。欧州統合の動きは、第2次大戦後の経済を立て直し、仏独の不戦体制を構築するため、1952年に欧州石炭鉄鋼共同体が設立されたのが最初だ。これがEC、EUへと発展した。現在、EU 加盟国は27カ国。
by polimediauk | 2009-02-18 18:46 | 英国事情
 イラン革命から30年ということで、様々なテレビ番組が放映されたり、イベントが開催されている。

 イランのことに詳しい人には「そんなことは分かっている」という内容なのかもしれないが、BBCが放送している三部作「イランと西洋」(Iran and the West)を見ると、いかにイランと米国がボタンのかけちがいをして数十年を過ごしたかが分かる。イランによる米国人人質事件がこれほどの影を米政治に落としているとはー。

 特に驚いたのは、第1回目で、人質解放のために努力を続けたカーター元米大統領によるイラン側との交渉が、次の大統領レーガン氏の就任式当日まで行なわれていたことだった。結局、最後の最後、就任式が終わった直後、つまりカーター氏が大統領ではなくなった時に解放交渉が成立した。何としてもカーター氏の手柄にしたくなかったかもしれない。

 番組は英国に住んでいる人であれば、BBCアイプレイヤーで見れるほか、幾度か再放送がある。2月21日に最後の回が放送される。

http://www.bbc.co.uk/programmes/b00hmrvt

http://www.bbc.co.uk/programmes/b00htnkq

 次期大統領選に立候補する予定のハタミ氏のインタビューもある。

 この番組のプロデューサー、ノーマ・パーシーさんに聞いたところ、NHKでも2月中位に放映されるようだ。日にちは分からないが、NHKに映像を送って放映のOKが出たと聞いた。

追記:イランと革命のドキュメンタリーは、NHKBSで2月23日から27日まで、放映されるそうですね。最後まで見た感想は、やや米国と言うか欧米寄りだったかな?という感じもしました。特に最後の回で、英国がいかにイランに妥協させながらも制裁を解除しようとしたかという件の説明があって、「イランはこれを振り切った」というニュアンスで、突然終了します。もう少し見たかった感じがします。ロシアとか中国は一体どう関与していたのかも気になります。プーチン氏も一瞬出ます。少々真面目すぎる感じもあるんですけど(息を抜くところがない)、おもしろいです。ワインでも飲みながら、ご鑑賞ください。

 上の番組がおもしろいと思っていたら、もっとおもしろいのがあった。同じくBBCで放送されたのだが、「イランと英国」Iran and Britainという題だ。英国では23日の午後7時半から再放送される。

http://www.bbc.co.uk/programmes/b00hq1w7

 イラン在住のジャーナリストが取材したもので、イランでは「アンクル・ナポレオン」という小説+テレビドラマ(70年代に放送)が人気だそうだ。これは、1940年代の設定で、何でもかんでも「物事の裏には英国人が関与している」という妄想に取り付かれた男性の話。コメディーだが、こうした感情は、イラン人の多くに根付いていると言う。20世紀初頭からの英国のイランへの関わりを辿ると、植民地化はされなかったものの、英国とロシアの勢力争いの舞台になったり、石油産業(後国有化)で割を食ったりと、英国はずい分と「裏で操る」ことをしたと感慨深い。

 少々先になるが、3月3日、グローバル・ポリシー・インスティチュートというシンクタンクが、「オバマ政権とイラン」という題でイベントをロンドンで開く。午後5時から。http://www.global-policy.com/ 出席にはメールで登録する必要がある。
by polimediauk | 2009-02-16 21:57 | 政治とメディア
 オランダのウイルダース議員が、やはりヒースロー空港で拘束され、その後オランダに戻された。在英オランダ大使の努力もきかなかった。

 本人の事情説明はBBCのビデオで見れる。拘束中に電話でさまざまなメディアとの取材に応じたようだ。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/7885918.stm

 夕方、英独立党が開いた会見に行ってみた。もともと、独立党のピアソン卿の招きで議員は英国に来たのである。

 オランダ、デンマークなどからの記者が多かった。英国のメディアは結構すぐ関心を失った感じがした。それでも、英国内の苛立ちは、政府や知識人の中にある、イスラム系住民への遠慮のようなものに対して向けられていた。「イスラム系の人に特別に気を使いすぎているのではないか?」という声をよく聞くのだ。

 ウイルダー氏は12月にも訪英していて、そのときは何も問題はなかったそうである。

 オランダのテレビ界の人に聞いたら、今オランダではウイルダース氏のニュースでいっぱいである。結局、すべてがウイルダースのPR戦略の一部になってしまったのか。ウイルダース氏自身はそのつもりは当初なかったかもしれないが、あまりにも騒動になってしまったので。

 会見場にいた英国独立党のメンバーが何となく「わけも分からずそこにいる」という風にも見えた。不思議の国のアリスのような・・・。オランダでは「表現の不自由さの象徴」とウイルダース氏を見る人が多い、とオランダ・ジャーナリストは言う。コーランを禁止するべきだ、と言っているからである。そのウイルダース氏を表現の自由の権化であるかのように扱うのはいかがなものかー?どの独立党議員もこれにまともに答えられないように見えた。

 昼のBBCの番組で、ピアソン卿が、「ウイルダース氏の結論は同意しない。つまり、ここに来てもらって、彼の理論を議論で論破して、次に進もう・・・と思ったのに」と言っていた。うまいところをついているな、と思った。この観点からは、すべてが一種の笑い事でもあった。

 何かを知らないと、それに関して、幻想を抱くことがある。ピアソン卿はこれを打ち砕きたかったかもしれない。英国の中でウイルダース氏の神格化が起きないといいなと思って、会見場にいた。


(追加:関連参考)

http://www.shinchosha.co.jp/topics/shiono/nami.html

by polimediauk | 2009-02-13 07:15 | 欧州表現の自由
 オランダの反イスラム国会議員、ヘルムート・ウイルダース氏が英国への入国を阻止されたことが、11日、分かった。本人が英国内務省からの手紙を報道陣の前で読み上げた。本人は12日、「それでも英国まで行く」と言っているようだ。

 英国独立党(UKIP)のピアソン上院議員の発案で、ウイルダース議員の反イスラム短編映画「フィトナ」が、12日、英上院議員向けに上映される予定となっていた。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/7882953.stm

http://www.radionetherlands.nl/currentaffairs/region/netherlands/090211-Wilders-UK-ban

 自分自身がムスリムのアーマド上院議員は、ウイルダース議員が英国に来れば「憎悪を引き起こしただろう」として、入国拒否を歓迎した。

 フィトナが公開されたとき、オランダ首相は「何の目的も果たさない。侮辱するだけだ」と述べていた。「公開」といっても、ネット上での公開だ。

 BBCのアドレスからリンクをたどると、この動きに賛成派と反対派の意見が読める。下のリンクに寄れば、同じEU諸国の国会議員の入国を拒否するとはいかがなものか、という意見がオランダ議員の中で出ていることが分かる。

 サルマン・ラシュディーの「悪魔の詩」を巡る騒動で、英国内で焚書騒ぎが起きたのは丁度20年前になる。在英のムスリムたちの中には、「反対運動を起こしてよかった」という人もいれば、「やり方がまずかった」と考える人もいるとBBCの番組が先日紹介していた。

 映画フィトナやウイルダース氏のインタビュービデオはユーチューブでも結構見つかりやすい。特にフォックステレビでの氏のインタビューを見ると、また氏の違う側面が見える。

 今朝のBBCラジオ「TODAY」を聞いていたら、英国知識人はイスラム批判には及び腰ではないか、という聞き方を、司会者が自民党議員にしていた。

 ウイルダース議員が英国に来て、さまざまなメディアのインタビューに応じ、いかに論理が破綻しているか(もし論理が破綻しているなら)、いかに映画が偏っているか・偏っていないかをオープンに議論できる場があれば最もよかったと思う。

 2005年以降、オランダに出かけて、対ムスリム関係の話をいろいろな人から聞いてきたことを振り返ると、何故ウイルダース議員が反イスラムを言うのか(ある意味では反移民でもある)、何故そのようなことを言い出すことになったのか、何故一部のオランダ国民の支持を受けているのか(圧倒的多数は反対、政府もお手上げ状態)の背景が想像できるような気がする。

 増えるムスリム市民に対する漠とした恐れは欧州の一部の国民の中にある。知らないものに対する恐れかもしれないし、ベールで顔をおおうなど自分たちとは違う風習を持つものに対する反発かもしれない。ムスリムのアーマド議員がウイルダース氏への入国不許可を歓迎しているところが、どうも気になる。英国のムスリムはデンマークのムスリムたちと比べて人数が多く、政治的な発言力もあるはずで、よい議論の機会になりえたように思ったのだが。
by polimediauk | 2009-02-12 20:20 | 欧州表現の自由
 銀行が巨額ボーナスを支払うべきかどうかで論争が続いている。いくつかの大手銀行は税金による支援を受けている。例えばロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)の場合、70%近くが実質政府所有(財務省が管理)になっていると言う。政府が口をはさみたくなるのも当然だ。不景気感が強いため、国民も黙ってはいない。

 銀行側の言い訳は「それ相当のボーナスを払わないと、ライバル社に移ってしまう」。しかし、移り先のライバルはもういない、という説もある。ボーナス制度自体が悪いという説もあるが、「今回に限りダメ」というのが本当だろう。国民の税金がそのまま巨額ボーナスになってしまう構図が見えてしまうのがつらい。契約でボーナスの支払いが既に決まっているという説明もあるが、貰った人が「自分からこれを戻す、いらないという」ことも可能ではないのだろうか?米国で、オバマ大統領が米銀行のボーナスに上限を定めたという報道もあって、ボーナス支払いの件はここ英国でまだ熱い議論となっている。

 話は変わって、BBC(商業部門のBBCワールドワイド)とITV,チャンネル4が協力して開始しようとした、ビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス「カンガルー」だが、2月4日の競争(防止)委員会の判断で、お流れになった。理由はVOD市場の競争を阻害するからである。

http://www.competition-commission.org.uk/press_rel/2009/feb/pdf/05-09.pdf

 2年前から取り組んできたプロジェクトの頓挫に各社は失望を隠さなかった。

 しかし、この3社以外の企業にすれば、これで例えばBBCと手を組んで動画サービスを提供できるなら、大きなチャンスが訪れたとも言える。

 プロジェクトはこれまでに2500万ポンド約33億円)の費用を計画段階で使ってきたという(「エンダース・アナリシス」社の推定)。

 ITVは自社サイトITVコムにもっと力を入れるようだ。既にテレビ放映と同時にネットでも番組が見られるようになっている。カンガルーでオンライン収益を上げる予定だったので、これは見直しとなる。

 チャンネル4は4ODに集中するが、資金難に悩むチャンネル4にとって、また一つ資金源が減ったことにもなる。

 BBCワールドワイドは、BBCの国内向けオンデマンドサービス、アイ・プレイヤーの商業版開発を狙っており、カンガルーを通じてやろうとしていたけれど、ダメになった。BBCの新規事業が「公益に適うかどうか」を判断するBBCトラストの承認が受けられれば、アイプレイヤーの国際版のサービスを開始できるのだが。

 他に目されているのはアイプレイヤーの技術を他局とシェアする動きで、これはプロジェクト・マーキーと呼ばれているそうだ。BBCとBT,ITVのジョイント・ベンチャー、プロジェクト・キャンバスもある。

 プロジェクトカンガルーがダメになったので、このプロジェクト推進に関わっていた50人の人員が仕事を失うことになった。

 ガーディアンのデジタル部門のトップ、エミリー・ベルは、カンガルーの停止で、例えば米国のオンデマンドービス「HULU」のようなネットワーク・サイトに英国のテレビ局が番組を配信することになれば、収入は米国の会社に流れ、英国の放送業界にとって良いニュースではない、と述べる。

http://www.guardian.co.uk/media/organgrinder/2009/feb/04/killing-kangaroo-analogue-thinking

 プロジェクト・カンガルーの過去記事

 http://ukmedia.exblog.jp/10256716

 
by polimediauk | 2009-02-10 20:24 | 放送業界
 サッチャー元首相(首相在任は1979年―1990年)の娘、キャロライン(55歳)が、BBCテレビの夕方の番組「ワン・ショー」から下ろされたニュースが波紋を広げている。番組収録後、スタッフとくつろいでいた時に、テニス選手の話になり、混血の選手をGolliwog(黒い顔、グロテスクな人、の意味)と呼んでしまったのがきっかけだ。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7875242.stm

 番組収録後の、いわば「オフ」の時間での発言だったことから、「BBCはやりすぎではないか?」という声が出た。「辞めさせるべきではなかった」という意見が3000件以上、BBCに寄せられたと言う。

 最初、私も放送外の時間での発言でこうなるとは、うっかり何も言えないな、まるで思想警察だと思ったものだ。

 キャロラインが番組を下ろされた一方で、コメディアン、あるいはトークショーの司会者などは様々なきつい表現をする。場合によっては言葉の使用を撤回する、あるいは謝罪することもあるが、番組を下ろされるところまではなかなかいかない。

 このところの具体例としてよく出されるのが、人気トークショーの司会者ジョナサン・ロスの件だ。あるコメディアンの留守番電話に「あなたの孫娘とブランド(別のコメディアン)はベッドを共にしました」というメッセージを残し、3ヶ月の謹慎状態になった。それでも、BBCはロスを辞めさせたわけでも、番組からはずしたわけでもなかった(番組にロスの名前がついているので、はずせば番組事態を停止さざるを得なくなるが。)

 そもそも、何故、オフの時間の言葉が明るみに出て、それが処罰の対象になるのだろうか?ここの経緯が十分には明確でないのだが、これまで報道されたところをまとめると、番組収録後、出演者やスタッフの数人が、仕事が終わったということで、くつろいでおしゃべりをしていたという。

 そこでテニス選手の話になり、キャロルは「黒人」を指す言葉を何度か使った。キャロル自身は、冗談のつもり、軽い気持ちで使ったようだが、同席していたジョー・ブランドと言う女性コメディアンがこれに抗議し、席を立ったとも言われている。他に番組の司会者2人が同席していたが、2人は苦情を申し立てていないそうで、制作スタッフの誰かが、「これはまずい」と上に報告したのかもしれない。

 「人種差別主義者」とは仕事ができない、と思ったのかもしれない、報告した人物は。恐らく、今回のケースだけでなく、似たような行動が前にもあったのかもしれない。たった一度の例で番組をはずされるところまでいくのは信じがたい。

 当初のBBCの説明によれば、キャロルに対し「全面的に謝罪するよう」迫ったが、これに応じなかったため番組からはずすことにした。

 「サッチャーの娘であること自体をBBCは気に入らなかったのだ」という説もメディアを駆け巡った。サッチャーはBBCの民営化を目論み、反BBCとしても知られる。

 しかし、今回の件が露出しなくても、キャロルはサッチャーの娘であり、ずっと金持ちであったわけで、昔の帝国主義者のような考えを持つ「かも」しれない人物であったことを、番組制作者は最初から知っていたはずなのだが。彼女の傍若無人さを買って、番組のレポーターにしたはずだが・・・。

―言われたほうの気持ちは?

 しばらくして、このテニス選手の母親が「発言に傷ついた」とする報道が出た。他の人からもいかに肌の色の違いで差別を受けたかという話が報道されるようになった。

 「オフの発言だから・・・」、「冗談なのに・・・」という弁明はつじつまがあうように思えたのだが、タイムズの記事(以下にアドレス添付)などを読むうちに、この言葉が与えるマイナスの影響や、同じ社会を生きる仲間として、傷ついた思いをした人に対する共感があるべきではないかと考えるようになった。

 こうしたもろもろのことを考え合わせると、厳しいようだが、BBCが何らかの行動を起こしたのも一理ある。キャロルがすぐに謝罪しなかったのも、致命的だった。タレントにとってイメージはすべてだ。(それにしても、即はずす、というのはいくらなんでも厳しすぎるとは思うがー。それだけ「人種」が英社会で重要な意味を持つ、非常にセンシティブな問題になっていること示すだろう。)

 番組から外されたからと言って、彼女の人生に重大な烙印が押されたわけではなく、ほとぼりがさめたら、きっとまた何かに出てくるだろうから、「可哀想」と思う必要もないのだろう。ただ、こういう間違いと言うか、失言は、そういう考えを持っているからついつい出るので、キャロルに限らず、誰もがやってしまう危険がある。私自身も含めて、である。

 そこで、他人の感情に配慮できる社会にするには、まずこの言葉が黒人系の人にとってどんな意味を持つかを理解する必要があるだろう。(ハリー王子が士官学校時代に同僚を「パキ」と呼んだ件では、呼ばれた本人も「構わない」と言っていたが。)

 まず「Golliwog」(ゴリウオッグ)という名前の由来だが、19世紀に書かれた、児童文学の中に出てくる登場人物の名前だ。作者が子供時代に見た「ミンストレル・ショー」を参考にしたという。

 このショーはウイキペディア日本語版によれば、

 ミンストレル・ショー(minstrel show)とは、顔を黒く塗った(Blackface)白人(特に南北戦争後には黒人)によって演じられた、踊りや音楽、寸劇などを交えた、アメリカ合衆国のエンターテインメントのこと。ミンストレル・ショーは、そのステレオタイプ的でしばしば見くびったやり方で黒人を風刺した。ミンストレル・ショーは1830年代に簡単な幕間の茶番劇(Entr'acte)として始まり、次の10年には完全な形を成した。19世紀の終わりまでには人気に陰りが出て、ヴォードヴィル・ショーに取って替わられた。職業的なエンターテインメントとしては1910年頃まで生き残り、アマチュアのものとしては地方の高校や仲間内や劇場などで1950年代まで存続した。アフリカ系アメリカ人が人種差別に対して法的にも社会的にも勝利し政治的な影響を持つようになり、ミンストレルは大衆性を失った。

 子供向け小説の登場人物を模して作られた人形が人気となった。1960年代まで、米国、英国、オーストラリアなどで多くの子供がゴリウオッグ人形を腕に抱えた(現在でも一部で販売しているところはあるだろう)。

c0016826_354758.jpg このゴリウオッグ人形の別形として、タイムズ2月6日号が、日本で言うところの「ちび黒サンボ」の絵を載せている。紙面には児童小説の作者フローレンス・アプトンが持っていたといわれるゴリウオッグ人形の顔の写真もある。これはやや度肝を抜かれる。もろ「黒人の顔」なのだ。(といっても、今思い出すと、小さい時、青い目の人形を所有していた。人の顔に似せるのが人形の特質とすれば、黒人の顔そっくりの人形があってもおかしくはないが、今見ると、どうも、居心地の悪さを感じる人は多いのではないか。世の中の考え方はこの数十年でずい分変わった。)

http://women.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/women/the_way_we_live/article5671433.ece
 
 この記事の中で、ナイジェリア出身の女性が、英国の学校に入って同級生の男児に「黒いサンボ」と呼ばれたことや肌の色の違いを指摘され馬鹿にされ続けた屈辱的な体験を書いている。屈辱感は今でも消えていないようだ。

 また、マシュー・サイド氏が、「肌の色で人生の成功や失敗が決まってしまう」ことの不合理さを以下の記事に書いている。ゴリウオッグや「ニガー」といった人種差別的言葉はいやな過去の歴史を思い出させるばかりか、時計の針を元に戻してしまう危険がある、と指摘する。サイド氏はこうした点からキャロル・サッチャーの番組はずしを決定したBBCは正しかった、としている。

http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/columnists/guest_contributors/article5671546.ece

 この一連の事件に関して、正解はないと思う。また、絶対傷つけないようにすることもできないし、偏見や差別も簡単にはなくならないだろう。ただ、一つ一つの具体例に接して、お互いの感情を言葉にして伝えてみて、その都度、学んでいくのだろう。
by polimediauk | 2009-02-07 03:55 | 放送業界