最前列にいたトラストのライオンズ会長に聞いてみた。「スカイテレビの人だからああ言うことを言うのだ」と言う分析だが、それにしても失礼過ぎるのではないかという思いが消えなかった。
後でBBCの「ニューズナイト」に出ていたFT編集長がマードックの肩を持っているような態度で、?と思った。
やりだしたばかりのツイッターをつけて、「M25、交通渋滞」などのキーワードを入れてみると、ヒースロー空港の近くのホテルでガス漏れがあって、これが原因で道が渋滞し、高速道路の一部が完全に入れなくなっていることが分った。みんながどんどん生の情報を出していくので、非常に役に立った。後でニュースサイトを見たらでていたのだけれども、ずい分便利なものだなと感心した。
また、英国の著名人でツイッターといえばこの人という、スティーブン・フライ (Stephen Fry)という人の「追っかけ」(フォロワー)になってみると、本当にこの人の書くものはおもしろい。露出狂味なのかどうか、よく分らないが、まともに読めるというか、読んでいておもしろいのだ、中味があるから。こういう人は稀有かもしれない。
自分もやや意味のあることを書きたくなって、とびきりおいしかった魚料理のことなどを書いた。時事通信の湯川さんがブログ上で、英語でツイッターをやりながら、英語力を上達させよう、という運動をやっている。やってみたい方はどうぞご参加ください。
http://it.blog-jiji.com/
ちなみに、私は@ginkotweet でやっている。
1988年、スコットランド南西部の町ロッカビーに、米パンナム機が墜落するという事件があった。荷物の中にあった爆発物が爆発し、飛行機が墜落。この事件で爆破犯として有罪となり、スコットランドの刑務所で受刑生活を送っていたリビア人男性が、8月20日、スコットランド司法局の恩赦によって釈放された。末期がんを患い、余命いくばくもないことからの措置だったが、犠牲者を多く出した米国から大きな反発が出た。釈放の背景には英国とリビアとの間のビジネス権益が絡んでいたという説が出て、ここ数日、大きなニュースになっている。
政府はもちろん権益がらみはないと言っているが、ブレア元首相が2007年、リビアの最高権力者カダフィ大佐のテントを尋ねた映像を見た時から、「何かあるに違いない」とは思っていた。もちろん、特別の裏情報を持っているわけではないが、どうにも「おかしい」感じがあった。真相は最後まで明らかにはならないかもしれない。
無料で過去記事も含めニュースを提供してきた英新聞界が、かつてタブーとされていた有料化を考え出している。この経緯を25日付「新聞協会報」に書いている。以下はこれに若干付け足したものである。
有料化を本格的に考え出した英新聞サイト
英新聞界で電子版有料化案が急速に現実味を増している。今月上旬、米ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック最高経営責任者(CEO)が傘下の英新聞各紙電子版の有料化を来年半ばまでに実行すると宣言し、経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のライオネル・バーバー編集長も「新聞業界を救うために」即刻有料化することを呼び掛けた。広告収入に頼るビジネスモデルの行き詰まりが背景にある。
英新聞各紙はFT紙を除き、ウェブサイト上でニュースを過去記事も含めて原則無料で提供してきた。外部のサイトやブログなどから収集したコンテンツを編成するニュースのアグリゲーションサイトや、無料で幅広いニュースを提供するBBCのサイトを競争相手とするため、無料化への大きな圧力が働く。
これまでにも有料化案は浮上したが、「読者に逃げられる」「有料化で成功するのは経済紙だけ」という考えから一般化しなかった。しかし、部数の慢性的下落に加え、昨今の広告収入減少の加速化で方針転換を迫られている。
マードック氏は5日、広告収入頼みのビジネスモデルは「機能していない」と述べた。2007年にニューズ社は、電子版を有料化している米ウォールストリート・ジャーナル紙の発行元のダウ・ジョーンズ社を買収しているが、マードック氏は傘下のニューズ・インターナショナル社が英国で発行するタイムズ、サンなど複数紙の電子版を、来年夏までに有料化する考えを明らかにした。他紙の課金方針に影響が及ぶのは必須だ。
マードック氏の発言と前後して、電子版を有料で提供してきたFT紙のバーバー編集長は複数の英メディアの取材に対し、「新聞界の最大の間違い」は、「ニュースコンテンツは無料で提供するものだ」という考えに、各紙が「誘惑された」ことだと述べた。
「経済という専門分野があるから、WSJ紙やFT紙などは有料化できたのではないか。一般紙ではできないのではないか」と聞かれ、同編集長は「他紙とは違う固有ブランドの構築、スポーツや娯楽など特定分野の有料化など、工夫をすれば可能」と答えている。
メディアコラムニストのジェフ・ジャービス氏は「有料化は狂ったアイデアだ」と否定的だ。5日放送のBBCの番組の中で同氏は「無料で同様のサービスを提供するメディアが出てくる」「自由に情報が行き来するインターネットの世界で孤立化する」「専門性がない一般紙では不可能」などを理由として挙げた。
しかし、一部サービスの有料化は英国で既に始まっている。インディペンデント紙は電子版記事の印刷の際、一つの記事を5部まで印刷するのは無料(記事の上に広告が印刷される)。6部以上では広告が印刷されない代わりに有料とする。6~10部の印刷では1部当たり1ポンド(約160円)。印刷枚数が増えるにつれて料金は下がり、251~500部では1部25ペンス(約40円)となる。タイムズ紙は電子版でのクロスワードパズルに月額4・95ポンド(約790円)の利用料を徴収している。
有料音楽配信サイト「アイチューンズ・ストア」を通じて1本の記事から買える「マイクロペイメント」制を検討するFT紙のバーバー編集長は「支払い方法をいかに容易に設定できるかが、電子版有料化の重要な要素である」と話している。有料化案はタブーではなくなった。
***
記事は以上で終わりだが、インディペンデント紙の印刷有料化の仕組みに関して、若干補足したい。
インディぺデントでは、記事+写真に著作権があることを利用して、読者がどのように自社の著作権物を利用するかに関して、制限・規則を設けている。その仕組みに沿って、「欲しい部数が5部までの場合は、広告付きになるが、無料で印刷できる」「利用は家庭及びオフィス用」という限定・規則をつけている。6部以上欲しい場合は、使用料として「お金を払ってください」と。
6部以上は有料の「インスタント・プリント」を選択することになる。これはお金を払う代わりに、広告なしの印刷ができる。もちろん、ひそかに無料印刷(例えば1部)をしてこれを数十枚コピーして数十部作るとか、しかも広告部分を切り取って広告なしの印刷物を作り、これも数十枚コピーして数十部作ることは、物理的には可能だ。しかし、これをインディペンデントは著作権違反とみなす。利用者は5部以内であれば広告付きの記事を無料で印刷できるが、これ以上の印刷は無料では許可されていない。(ただし、実際に「1部印刷」を選んで同じ記事を数回印刷してみると、6部以上できたのだが。)
どのようにして何部印刷したかが分るのか?その仕組みの詳細をインディペンデントは明らかにしていないが、この仕組みを委託されている会社が「コンピューター技術を使って違法印刷がないか定期的にモニターしている」ことが明記され、「大量違法印刷をしている人がいたら、インディペンデント社に連絡する」ことを呼びかけている。
実際のところ、殆どの人にとって必要なのはせいぜい1部か2部であることを考えると、学校や会議(会社)で大量(10部以上)に必要な場合はお金をとるというのはまあ妥当な感じもする。ただ、無料で印刷してコピーで数十部作った場合は著作権違法にあたる可能性があり、学校とかで見張っているわけではないだが、こう言うことによって、違法行為を抑止する、歯どめをかけているのだと思う。本当に必要があってきちんと使いたいなら(学校の授業など)、著作権を払って、広告なしで購入することを選択させようとしているわけである。
有料印刷を選択すると、必要な部数を選び、カードで支払いをする。支払わないと印刷画面に進めないようになっている。この方式を私は他の主な英新聞のサイトでは見たことがないので、インディペント独自のやり方かもしれない。
日本と比較しておもしろいかもしれないのは、日本の場合、争点は女性になるのではないか(女性の社会進出度など)。英国では恵まれない家庭出身者にいかに機会を与えるかが争点となることが多い。
それと、ちなみに報告書の中の「専門職」(Professional)とは:経営陣、管理職、エンジニア、研究員、医師、看護婦、裁判官、弁護士、政治家、ジャーナリスト他のことだ。
「ソーシャルモービリティー」と専門職 -政府調査が貧富の差をあらわに
出身家庭の社会・経済的環境が教育程度や貧富の差に結びつくと考えられている英国で、「やっぱり」と多くの国民が思うような調査結果が、先日発表された。アラン・ミルバーン元保健相がまとめた、「願望を解き放つー職への公正なアクセスに関わるパネルの最終報告」は、医師や弁護士などの高給を得る専門職が富裕な層にほぼ独占されている状況を明らかにした。
パネルの調査は、今年1月、ブラウン首相がミルバーン氏が率いるパネルに依頼したもので、社会の流動性を促進するための戦略を記した「新たな機会白書」を受けて作成された。社会の流動性とは、ある家庭が社会のヒエラルキーの中で、上下に動くことを指すが、この報告書及び労働党がイメージするのは教育や職業によって、出身よりも上のヒエラルキーに移動することだ。
報告書によると、私立校(この場合は「インディペンデント・スクール」、関連キーワード参照)で勉学する若者は全体の7%であるのに、裁判官の75%、金融業界経営陣の70%、弁護士の55%、トップジャーナリストの半数以上、高級官僚の45%が私立校出身者だった。また、給料が高い専門職の仕事、つまり医師、弁護士、会計士、銀行家などは世帯収入が平均より上の家庭出身だった。また、若者層の半数が低社会経済環境の家庭出身であるのに対し、大学進学者では29%で、トップクラスの大学で構成される「ラッセル・グループ」の大学では16%のみとなっている。
―エリート化の背景
何故大学や高給ホワイトカラー職から低社会経済層の家庭の人材が阻害されているのだろう?パネルの報告によれば、子供の大学進学を考える割合が低社会経済層の場合、中流以上の家庭と比較して低い。雇用過程においては、既に勤務している専門職の人材と同様の人材を採用する傾向があること、大学卒を条件とすることや職の見習い制度が候補者のコネを通じて行われている傾向が強いためだ。
ミルバーン氏自身は、貧困の代名詞ともされるカウンシルハウスで育ち、下院議員になった。社会的流動性を自ら具現化した人物だ。「大きな社会的流動性の波」が起きるべきという訴えに熱がこもる。「この調査で最も個人的に衝撃だったのは、多くの若者が『自分たちには無理だ』と考えていたことだ」。高給の専門職を親に持つ子供の2人に一人は自分も専門職に就くことを考えるが、平均所得の家庭の場合は、専門職就職を希望する子供は6人に一人に減ってしまう。「全員が医師や弁護士になればいいというのではない。しかし、能力や願望を持つ子供たちを何とかしたいと思った」。
家庭の社会経済状況に関わらず、全ての子供に機会を与えたいーそんな思いを形にした報告書は、小中学校から職歴の選択を広く捕らえ、志を高くするための個人教授制度、コミュニケーション能力など「ソフト・スキル」の伝授計画、大学では親の元で暮らす学生に学費免除制度、就職には公正な職の見習い制度の実施などを含む、88の推薦事項を列記した。
将来、ホワイトカラーの専門職はこれまで以上に増える見込みで、この需要を満たすためにも採用の網を広げておかないと、中国やインドに負けるという危機感も政府内に共有されているという。果たして英国は、ミルバーン報告の提言で社会的流動性を高め、より活気ある社会に変われるだろうか?
―報告書要旨
調査結果
―将来は90%の職が専門職となる。
―専門職従事者の半分以上が、学生全体の7%しか行かないインディペンデント・スクールで教育を受けている。
―1970年代以降、専門職従事者を生み出す世帯の収入と平均世帯収入の開きが大きくなっている。ジャーナリスト、会計士は世帯収入の多い家庭出身者の割合が特に高く、排他的職業となっている。
主な推薦事項
―社会的流動性の促進を現政権の及び将来の政府の社会政策の中で最優先事項とする。
―小学校から将来の仕事に関する支援を行う。
―毎年、大学入学者の社会的背景の詳細を発表する。
―自宅に住む学生や25歳以上の学生に学費免除などの支援策を取る
―企業の職見習い制度では、幅広い層から公正に人を探す。
―政府組織は社会の幅広い層から人員を採用する方針を率先して実行する。
―「生涯教育口座」を通して、最大5000ポンド(約810万円)の教育クーポンを発行し、再教育の機会を支援する。
―関連キーワード
Independent school: インディペンデント・スクール。運営のための財源を国や地方自治体に頼らず、授業料や寄付金などでまかなう、私立学校の一種。名門イートン校やラグビー校などの「パブリックスクール」(中世以来の伝統をもつ私立の中等教育学校。大部分は寄宿制)が著名。一般校では教職員の学位や免状に関して政府や組合が規定するのに対し、インディペンデント・スクールは独自の条件下で優秀と認めた者を雇用できる。親が学費を負担するので、「学費を払う学校」と呼ばれることもある。私学教育の代名詞としても使われ、子供をインディペンデント・スクールに送ることができる親は中流以上で一定の資産があると解釈される。
11紙ある全国紙の日曜版(日曜紙の全国版と言ったほうが正確だが)の中で、前年同月比及び今年2月から7月の半年分の前年比の両方で増加したのは大衆紙の日曜紙「デイリースターサンデー」と高級紙「サンデータイムズ」のみ。他は軒並みマイナスなのだが、インディペンデント・オン・サンデーの下落が極端だ。
7月の前年同月比では19.98%減で、半年分の前年比では22.12%減。去年の7月は約20万部だったが、今年7月では約16万部に。まるでがけから滑り落ちる感じだ。これでは作っている方の士気も落ちるだろうし、広告主もいい顔はしないだろう。
何だか薄くなったように感じられるインディペンデント・オン・サンデーで、やや寄せ集め的記事もあちこちに見られるけれど、まだまだ面白い記事がたくさん載っている、しっかりとした新聞なのに、何故これだけ極端に落ちているのだろう。「インディペンデント」というブランドが行き場をなくしているのだろうか。英国はやはり保守メディアが強い国、ということになるのかどうか。少なくとも、支持する読者がどんどん減っている。あるいは市場が飽和しているので、お金を使って(情報を買って)特ダネをとれるところでないと生き残れないのか。このままだとなくなってしまいそうだ。ちなみに、ガーディアン・メディア社が発行する、閉鎖の噂がある日曜紙オブザーバーだが、7月の発行部数は約40万部である。
http://www.guardian.co.uk/media/table/2009/aug/14/abcs-sundays-july-2009
http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/london/8194235.stm
日本の感覚からすると、あまりにも懲罰志向が高いように見える。罪は罪だが、勧善懲悪というか、「悪い人を罰したい」という心情というか欲望(?)を満たすために出しているかのような報道ぶりだ。情報公開や今後の同様の犯罪を防ぐという抑止効果、それに「顔写真や実名などが出ないほうがおかしい」と考えるのは根拠があるとしても、そのやり方があまりにも懲罰的過ぎるように見える。
実際、実名・顔写真が出てしまったので、この2人が受刑生活を終えて世間に戻ってきた時、同一人であることが分らないように様々な諸策が施される予定だ。例えば名前は別なものになる。健康保険とかそのほか様々な社会保険がらみの情報もすっかり新しいものになるはずだ。顔の様相を変えることもある「かも」しれない。また、報復などによる攻撃から守るため、警備がつくことも考えられる。こうした処理は全て税金でまかなわれる。―本当に驚くことばかりだ。
それは、英国の一般紙、例えばタイムズ、ガーディアン、インディペンデント、テレグラフ紙などの場合だが、サイトを有料購読制あるいは課金制(一部はもうそうなっているけれども)にした場合、問題として言われるのが「グーグルに引っかからなくなる」あるいは「読者が他に逃げる(ライバル紙、あるいはグーグルに)」というものがある。(課金にしてもそれほど収益を上げられないという大きな理由もあるだろうけれども。)
収益面の問題をちょっと棚上げして、単に読者として考えると、一つの新聞が例えば有料購読になって、殆どサイト上では読めなくなった場合、「他の新聞あるいはグーグルニュースに移る」ということは、「ない」感じがするのである。
つまり、タイムズはタイムズであり、ガーディアンはガーディアンである。(それは読売あるいは日経という言い方でもいいのかもしれない。)タイムズのサイトに行くときは、タイムズの記事が読みたいのであって、何でも良いからニュースが読みたいわけではない。グーグルに行ってある一つのトピックの広がりを見ることはあるけれども、グーグル・ニュースはタイムズのニュースの代わりにはならない。テレグラフもガーディアンも、インディペンデントも、それぞれあるアングルがある。その癖みたいなものを、それぞれのアングルを見たいのであって、グーグルにはアングルはないーランキングはあってもーだから、タイムズ、テレグラフ、ガーディアンなどの代わりにはならない。
私がFTやエコノミストを有料購読しているのは、別に経済関係の媒体だからではない。なので、「経済紙は特別だから、だから有料にできるんだ」というのは、神話というか嘘じゃないかなと思う。FTやエコノミストのテイクというか、ものの捕まえ方が知りたい・読みたいからお金を払っているのである。もちろん、無料で読めるなら、それに越したことはないのだけれども。
例えば、タイムズが有料購読になって、サイトではほとんど無料では記事が読めなくなった場合、どうだろう?読者としては有料購読者になるか、あきらめるか。あきらめた場合、少なくともオンラインではタイムズという新聞そのものの見方そのものを、丸ごと捨てる、というか、あきらめざるを得ない。繰り返しになるが、代わりはないのである。
昔、もう数年前になるが(10年前かもしれない)、アイリッシュタイムズである記事を探していて、全て前の記事は読めないようになっていたので、あきらめたことがある。購読者にならないと読めない、と。その時、私にとって、サイトで読む限りにおいてはアイリッシュタイムズという新聞、そのものの見方、素晴らしいジャーナリズムは「消えた」のである。残念ながら。
私はいくつかの日本の新聞をウェブサイトで見ている。ある新聞を特によく見ているが、その新聞は主にニュースは短いものばかり載せるので、解説記事が有料購読者にならないと読めない。私は日本にいたとき、その新聞の解説記事を愛読していた。でも、今は、全く読まなくなった。私にとって、その新聞の解説面は消えたのだ。時々、その新聞のロンドン支局の人とすれ違う。その人の記事を読みたいなと思う。私は今、その人がどんな素晴らしい記事を書いているか、殆ど知らないのだ。残念だけども、お財布の中身には限りがあるから・・・。
私はソニー・リーダーを書店で見かけて、手に持った感じが軽くて、字が大きくて読みやすくて、いつか書いたいと思っているが、実際に使った人はどう思ったのだろうと気になっていた。
今、夏休み中に何を読むか?が知識人の間で話題になっているが、これにあわせたのか、テレグラフ紙に Why not pack an ebook for your holiday(電子ブックを休暇に持っていこう)という記事が出ていた。
その中でまず、テレグラフのエディターの1人が試したところによれば、「トーストの大きさで、軽い」リーダーには114冊の主に古典的な作品がダウンロードされていた。本を選択するのは簡単で、読むのも楽しかったが、頁をめくる時に、左のボタンを押すので、これがやややりにくい。頁をめくる時、英語の本の場合、通常は右手でめくるからだ。また、頁めくりの時、一瞬、画面が光り、白地の背景に浮かび上がる黒字のテキストが、黒字の背景に白地のテキストに変わるそうだ。これがちょっと気になる、と。また字体がどの本も一緒なのでつまらない。
児童作家の1人は、欲しい本を探すまでに苦労した。頁を変えるときに左のボタンを押すのもいやだそうだ。また、普通に紙の本を読んでいる時は「あそこにこんな文句があったなあ」と覚えていられるが、リーダーではそういうことができにくい、と。頁をめくる時に画面がいちいち黒くなるのもやはり好まれていない。
元医師の女性はリーダーを気に入った。夜中にベッドに持っていけるし、次の本を読みたくなったら、起き上がって書斎に行く必要もない。すでにダウンロードされているから、と。また、大きな字であることが高齢の自分にとって都合よく、ソニー・リーダーが欠かせない存在になったというー。やはり一度は手にしたいソニー・リーダー(あるいはキンドル)。本はとにかく重い。書棚のスペースも限られている(私の場合)ので、読書用電子端末はいいなあと思っている。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/8186701.stm
もう1つ、おもしろいのは、少し前に発表された、ニューズグループの中にあるが、衛星放送BSKYB(有料契約者が顧客)の業績だ。6月決算で、前年度は損失を出したのに、今回は利益が出た。そして、契約者数も40数万人増えて、900万人となった。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/8175898.stm
不況で家でテレビを見える人が増えたからではないか、という見方があるようだ。BBCラジオを聞いていたら、あるアナリストの発言で、何でも、BSKYBの総収入の中で、広告に頼るものが7%だけという。このアナリストの見方は、「広告費に頼らない経営体制で成功した」という。FTも前から広告だけに頼らないモデルを作りたい、と言っていた。
こうした考えの反論は、FTやWSJなどの経済紙は専門紙だから有料化ができるのであって、一般紙は無理というものだが、FTのバーバー氏などは一個一個の記事に課金する方式や、分野の専門化(スポーツやエンタテインメントなど、しかしこれに限らない)で、課金が可能、という見方をしている。
前に朝日GOBEに書いた、BBCに関する原稿がサイトで読めるようになった。
http://globe.asahi.com/mediawatch/090727/01_01.html
他の方の記事も含め、このサイトに載ったものは半永久的に掲載されている。今のところ、無料提供。これもまた新しいやり方だが、例えば先のバーバー氏の考えで行けば、こうしたものを有料化する、ということになるのかな?とちらっと思った。
http://www.channel4.com/news/articles/business_money/is+paying+for+online+news+the+future/3294462
また、フィナンシャル・タイムズのバーバー編集長が取材を受け、「10年ほど前に、新聞サイトは無料購読であるべきという誘惑にのったのは間違いだった」と述べている。FTは今11万人近くの有料購読者がいる。年間日本円にして2万5000円から3万円近くを購読料として払う(私も毎月払っているが、年で考えると結構大きいかもしれない。額が大きい割には、読むサイトの記事の本数が少ないことに。やはり紙のほうが読みやすいのだ、じっくり読むには)。
一部有料化(記事ごとにチャージするマイクロ・ペイメント、月ぎめあるいは年間購読、特別なコラムなどだけにチャージなど)が少し増えるという動きが起きているのだろう。
バーバー氏のインタビューで、チャンネル4の記者が「BBCのサイトは無料。それに若者層は特に有料でニュースサイトを読むという習慣がない。変えられるのか?」と何度か聞いていた。しつこいぐらいに。バーバー氏は、「ブランド化でできる」と答えていた。
サイトのブランド化の強化、それでお金を取る・・・こういう論理や言葉遣いはこれまでに何度もいろいろな人から聞いてきた。番組の中に出ていた米教授は、「最終的には読者から見放される」と厳しかったが、エコノミストやFTの有料購読者である自分はやはりブランド・記事の内容などに対してお金を払っている。まさにブランド化がきいている。これが一般紙に通用するかどうか?やり方しだいではないかと思うーとバーバー氏が言っている。
ところで、このブログを書き出して、ほぼ5年になる。英国事情と英国メディア界の業界話を主に書いてきたが、ここ数年で、ずい分とメディアに関する情報が出るようになった。ライブドア+ホリエモンがきっかけで、メディアに対する関心が、日本で非常に高まったと思う。ネットメディアや既存メディアのネット戦略に関しては「メディア・パブ」さんの情報が深く、早い。在英の日本の報道機関もずい分と直接情報を取るようになった。自分としては書き尽くしたような感がある。
今後は、このブログでは私が書いた記事の紹介やちょっとした気づきなどを主にし、ある程度まとまったものは諸処の紙媒体あるいは市民メディア「ニューズマグ」や「日刊ベリタ」などに出していきたいと思っている。引き続き業界の動きなどにご関心のある方にはメールマガジン(あるいは単にメール通信)などで情報を出していくことを考えている。英メディア界の動きは在英日本人やメディアの将来を憂う人など、特定の読者が関心を持つトピックなので、そのほうがいいかなと思っている。
早速だが、朝日新聞の月刊誌「Journalism」次号(8月10日ごろ発売)に、陪審員への取材を行った事例について、書いた。日本の裁判員制度では、裁判員への取材は事実上閉じられている。同様の状況にあるのが英国。何かしらのご参考になるかと思う。この中で、BBCの調査報道記者に取材した。彼自身が無実の罪で受刑していたという変わった人物。発言には迫力があった。どこかで見かけたら、どうぞ頁をめくってみてください。(インタビューは日を改めて「ニューズマグ」などに掲載予定。)