小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 26日付の日経新聞に、「電子新聞を来春創刊へ」という記事が出ていた。「パソコンで携帯で 紙と違う魅力満載」という話。購読料を払うと、全ての記事が読めるが、払わなくても一定の本数が読める。「最新のデジタル技術により記事、動画、数値データなど様々な情報を」まとめて読める。

 イメージとしては、今、私はプレス・ガゼット紙(電子版)を購入しているが、これは電子ブックのようになっていて、言葉をサーチできる。過去のアーカイブの利用も可能だ。これをさらに深くしたものなのかなと思った。

 海外に住んでいると、日本の新聞を読みたければ衛星版を通常は買うのだろうが、非常に高額になる。しかし、電子版だと日本で読んでも海外で読んでも購読料は同じだろうから、期待大である。衛星版はこれで売れなくなってしまうということになるのだろうか?

 一つ、気になったのが、今自分が電子版を購入しているいくつかの媒体だが、例えばスポーツクラブの会員のように、「会費(購読料)のみ払って、読む機会が意外と少ない」状況になったりする。やはり紙の方が読みやすい。電子版購読にしたことで、「とりあえず全て目を通す」(見出しだけでも)がなくなった。ある意味では情報がありすぎる。別の意味では情報が探しにくいーいっぺんに俯瞰することができない、などの理由がある。もちろん、サーチをかけることはできるのだけれど。この点、うまく説明できないが、電子版にした場合、読まない記事がものすごく増えるだろうと思う。読者にとってはマイナスの面もあると思う。紙版も電子版も読めるようであるのが一番いいのだろう。

***

 先日出席した「ソサエティー・オブ・エディターズ」(英編集者協会)の会議について、2回に分けて「新聞協会報」に書いた。以下は25日掲載号に若干付け足したものである。
 
 英編集協会年次大会(上)
―「反撃する」がテーマ
 

 英国内の新聞・通信社、放送局の編集幹部が加盟する「ソサエティー・オブ・エディターズ(編集者協会)」が15日から3日間、英南部スタンステッドで年次大会を開催し、経営幹部やジャーナリストを含む200人以上が参加した。インターネットの普及によるメディア環境の構造的変化と、近年の広告収入の減少で危機にひんする現況に「反撃」することをテーマとした今回の大会では、新たなネットテクノロジーの活用方法、サイト閲覧課金を含む収入源拡充の可能性、先細り状態にある地方メディアの将来などに議論が沸騰した。2回に分けて紹介する。

 2日目のセッションで市場調査会社エンダース・アナリシス社のクレア・エンダース社長は「英経済は日本、ドイツ、フランスよりも状況が悪い。来年も引き続き景気後退が続く」と予測した。不景気は読者の新聞講読や広告主の出稿意欲に悪影響を及ぼし、「特に地方紙に大きな打撃を与える」と述べた。

 英新聞雑誌部数公査機構(ABC)によると、今年上半期(1~6月)の英紙発行部数は、全国紙が前年同期比(以下同)で4・5%減。地方紙は10・0%減だった。各紙が進めてきたデジタル戦略についてエンダース氏は「ウェブサイトへのアクセス数の増加に貢献したが、人員を20-25%増加させた結果、コスト負担も増加した」と指摘。失われた紙媒体からの収入をオンライン収入では補えない中、最悪の場合、国内の約1300の新聞のうち半分が今後5年間で廃刊になる可能性あると予測した。

 一方、メディアコンサルタントのジム・チショルム氏は、ページ数の減少、印刷代の効率化、編集局員の削減などの経費削減努力や景気の回復により、新聞社の営業利益は今後5年間で現在に比べ50%上昇すると語った。また、廃刊の比率は「多くても10%」と述べ、エンダース氏ほどの悲観的な見方には同意しないとした。

 しかし「一定の発行部数がない新聞は廃刊にならざるを得ない」として、高級紙の中で最も規模が小さく、部数の下落幅が大きいインディペンデント紙は「生き残れないかもしれない」と述べた。

 同日の別のセッションで地方紙発行大手トリニティー・ミラーの地方紙部門のニール・ベンソン氏は、新たな収入源を確保するため、広告業への参入を提案した。「不偏不党の報道機関としての新聞社の本筋から離れるようだが、将来の収入源の行方が不透明な中、背に腹は代えられない」として、広告会社業務の開始に加え、①顧客に検索エンジンの最適化の方法を有料でアドバイスする②地元自治体のサイト構築を引き受ける③地元企業に動画制作サービスを提供する--ことなどを提案した。

 同じセッションで広告会社ヒュージのモーガン・ホルト氏は「ニュース提供は利用者へのサービスと捕らえてほしい」「利用者のニーズを知り、これに沿ったサービスを提供するため、ソーシャル・メディア・サービスの活用などを積極的に考えてほしい」と述べた。(12月1日掲載号に続く。)
by polimediauk | 2009-11-27 20:09 | 新聞業界
 アイルランドのカトリック教会で、聖職者が子供たちに性的虐待を長年行った上に、 この事実を何とか隠そうとしていたことが明らかになった。「明らかになった」というよりも、委員会が調査をし、この事実が再確認された、ということか。今日、個人的に最も衝撃を受けたニュースだ。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/8381119.stm

 調査の期間は1975年から2004年まで。関わった聖職者は・・・なんと46人である。もっといた可能性もあるけれども。すごくはないだろうか?ターゲットになった児童は300人を超える。

 聖職者だからということで人々は信頼し、その信頼を利用して、という話である。パターンとしては、聖職者(男性、妻帯は許されない)が男児に暴力的行為を働く、となる。なかなか犠牲者は声をあげることができない。アイルランドの暗い部分だ。

 日本だと、子供への性的暴力というと、犠牲者は女児というイメージがあるのではないだろうか。英国、アイルランド、欧州他国には大人の男性が男児へ、という一つの悪しき流れがあると思う。

 勝手な言い方も知れないが、システムをばらばらにしないと直らないかも知らない。信頼を裏切ったという意味では、自己否定だと思う。(まともな人もたくさんいるのだけれど。)
 
by polimediauk | 2009-11-27 02:59 | 英国事情
 ルパート・マードックが自社サイトのニュースに関して、「グーグルのクローリングをブロックしたい」とテレビのインタビューで語り、「さすがのマードックにも焼きが回ったか」とがっかりした人(笑った人も?)多かったようだ。「そんなバカなことをしたら、アクセスが減少する」「1人だけ抜けて、一体どうするというのか?」「ネットの世界が分っていない」など。

 しかし、同氏は意外と本気らしい。フィナンシャルタイムズが22日報道したところによれば、今度は新しい検索エンジンBINGをプッシュしたいマイクロソフトとニュースの配信を巡って協議中らしい。マイクロソフトはマードックのニュース社のみならず、他の媒体とも協議をしているようだ。

http://www.ft.com/cms/s/0/a243c8b2-d79b-11de-b578-00144feabdc0.html

 つまるところ、BINGがニュース社の記事を集めて出す代わりに、一定の使用料をニュース社側に払う仕組みを想定しているようだ。

 FT記者ブロガーは、ーつの可能性としては悪くないのではないか、と書いている。広告主にとって、購読料を払う読者は、通常の通りすがりの読者よりも、そのバックグラウンドが分る意味では魅力があるはずだ。したがって、それほど奇妙なアイデアとは言えないのではないか、と。

http://blogs.ft.com/gapperblog/2009/11/murdoch-tries-to-swap-google-links-for-microsoft-cash/

 グーグルからはずれてもそれほど失うものは多くはない、とした記事もツイッターで見た。

 英国の新聞サイトはアクセス・固定ユーザー数で競っているが、アクセスが多いのが利益の増大に十分に結びついていないようだ。そこで「別の道」を探す・・・というのは一理あるのかもしれない。

 いずれにしろ、ニュースの課金に関しては神話が多い感じがする。

 英新聞サイトが「敵」(かつ味方?)とするグーグルニュース(世界中から記事を拾ってくる)は、一昔前(ツイッターの前)だと、有用だったのだろうが、今はどうなのだろう?おそらく、数字的にはまだまだ巨大だとは思うが、段々、その重要度が相対的に及び実質的に低くなっているのではないか?

 広い意味で考えると、ニュースの読み手としての自分はどこかでお金を払っている。BBCはテレビライセンス料だし、アイフォーンで読める「無料」記事も毎月アイフォーンの契約料を払っている。ネットも毎月ケーブルサービス料金を払っている。テレビライセンス料の支払いが必要でなく、継続投資も全く必要ないのは、ラジオのニュースぐらいだ(ラジオを買うという意味での初期投資がかかるが)。

 そこで私が考える「神話」とは

 ①「ニュースは無料だ」-。無料で読める大手新聞サイトの制作費は購読料(自分が出すかあるいは誰かが買っている)+広告収入で、そしてBBCのテレビライセンス料(自分が払う)でまかなわれている。ネット上での利用は確かにタダかもしれないが、誰かがあるいは自分が先に払っていることを忘れている。

 ②「ニュースは無料神話―その2」。実際のところ、みんな必要なサイトは購読料を払って読んでいるのではないか?ー例えば自分だったらFTやエコノミスト。お金でニュースを買っている。

 ③「ウオールストリートジャーナルやFTなど、経済の専門紙だから人は有料購読をしている」も神話ではなかろうか。1つのブランドになっている及び、読みたい独自の内容があるから、購読しているだけである。本当に経済のことのみを読みたいなら、もっと高い経済情報を有料で買っているか、それこそグーグルや他の方法で経済記事のみを集める。FTが何を言っているか、WSJがどう見ているかが知りたいわけである。

 ④「一般ニュースの場合、有料化してしまったら、読者は他にーー無料のニュースが読めるところにーー移動してしまう」は必ずしも当たっていないのではないか。例えばタイムズ、インディペンデント、ガーディアンなどそれぞれ独特の視点があるので、原則として代わりはない。

 ⑤そして、もしその「無料ニュースに移動する」先の1つがグーグルニュースだとしたら、本当にそうかな?と思う。一体どれくらい役に立つのかな、と。つまり、どんなトピックがニュースになっているかを知りたい場合、今は他にもいろいろな方法がある。例えばツイッターである。グーグルニュースは必ずしも良質な記事ばかりを集めていないように自分には思える。

・・・というわけで、BINGがどんなことをするのかなと自分は興味シンシンである。

 (追加)
 後で待てよ・・・と思ったことなのだが、実際、自分はこれまでにネット上でずい分と無料で情報を得てきた。ブログを2004年に始めたのも、時事通信の湯川さんのブログを読んで、「これからはこうなるのだ!」「無料の時代だ」と感激したからだった。ウキペディアも今ではかなりの市民権を得たと思うし、他の人のブログを読んだり、無料検索エンジングーグル、ヤフーを使ってずい分と欲しい資料や会いたい人、感動する言葉や事実に出会えた。

 長年、思う存分、無料で(ネットにつながっている状態までこぎつけたとして)情報を得てきた後で、ふと気づいたら、ここにきて、何だかずい分と有料サービスが増えてきた感じがしている。

 ニュースをアグリゲートするサービスも、アクセス数の高いランキングよりも自分にとって重要な順位で見たいというか、やや深い編集の手が入ったものを見たい感じがする。編集長の目が入ったものを読んでみたい。グーグルニュースと言う一つのやり方が、何だか古めかしくも思える昨今だ・・・というわけである。

by polimediauk | 2009-11-25 22:00 | 新聞業界
 報道のサイクル、あるいは日常生活のサイクルが以前より早くなっているとしたら、あまりゆっくり考えたり、分析したりする時間がなくて、どんどん情報を出せねばならない事態が発生する。自分がある程度知っていることならば、あまり時間をかけずに情報は出せるのだが、何だか複雑な話だと、結構手間取る。また、自分が知っているはずのことであっても、確認してみると新しい事実が出てくることもある。最近、しみじみと「調べれば調べるほど・・」と思ったトピックがいくつか、あった。そのうちの1つが以下のことだった。

 先月、ツイッター上で「Trafigura」(トラフィギューラ、トラフィギュラ)という名前が頻繁に出たことがあった。環境問題に関心のある方で既に知っている方もいたのだろうが、一般的にはそれほど知名度が高くなかった。それが、ガーディアン紙が英議会報道とかませて報道した後、一気に知られるようになった。

 トラフィギュラのこれまでの報道の文脈は、アフリカ・コートジボワールでの毒性が高いとされる汚染物廃棄事件がらみだ。「毒性が高い」という側と「いや、そうではなかった」という側とが相反する。

 ガーディアンとトラフィギュラ社は、この廃棄物の危険度に関わる報告書(「ミントン報告書」)の掲載を巡って、弁護士をはさんで戦ってきた。会社側はこの報告書は「現地調査をしていない、単なる理論であり、ドラフトだ」とし、ガーディアン側はそれでも報道しようとした。現在は、英文ウイキペディアなどを通じてミントン報告が読める。他、関連資料もガーディアンを通じて読める。

 ガーディアンとトラフィギュラ社の裁判は、同社の「報道差し止め」が消えたので、とりあえず一件落着した。しかし、BBCとはまだ裁判が続いていると聞いた(10月末時点)。BBCはニューズナイトという番組でこのトピックを扱い、トラフィギュラ社は内容の訂正、謝罪、賠償金支払いを求めているのだ。

 トラフィギュラ事件をメディアの視点から「新聞協会報」(11月10日付)に書いた。以下はこれに若干補足したものである。

英ガーディアン紙の廃棄物汚染事件報道
 高等法院が2重に差し止め
-代わりにネットが暴露
 

 9月に英高級紙ガーディアンが、高等法院の命令によって廃棄物汚染事件の報告書に関する報道を差し止められた上、この命令が出ている事実を報じることも禁じられた。これを問題視した議員が10月、議会での審議を提案すると、命令によって議案内容を詳報できない同紙に代わってネット媒体が暴露し、報道差し止めは解除された。ネットの威力が発揮される一方で、ガーディアン紙は議会の議案内容を詳報できないという、国民の知る権利を侵害するともいえる事態が発生したことで、メディア界に大きな衝撃を与えた。

 差し止めとなったのは、多国籍石油取引大手トラフィギュラが3年前にコートジボワールに廃棄した有毒物の報告書に関する報道。報告書は、トラフィギュラ社が調査会社に依頼して作成され、人体や環境に対する影響を分析した。廃棄物は高毒性で、場合によっては死に至る可能性もあることを指摘していた。

 コートジボワールでは約3万人が頭痛や重度のやけど、肺不全などを患い、同社を相手取り集団訴訟を起こしていた。

 トラフィギュラ社は報告書の公表を見送っていたが、ガーディアン紙は今年、この報告書を極秘に入手。トラフィギュラ社は同紙が「違法に入手した極秘」報告書の掲載を停止させるため提訴した。ガーディアン紙は、報道には「公益性がある」として反論していた。

 高等法院は9月11日、「報道の公益性がない」などと述べ、報告書に関する報道の差し止めを命令。同時に、報告書の内容が公表されればトラフィギュラ社に重大な悪影響をもたらすとの理由から、同社の名称を判決文で匿名化するとともに、差し止め命令が出ている事実を報道することも禁じた。二重の報道差し止めとなったことから、後者は「超報道差し止め命令」と呼ばれている。命令を無視して報じた場合、ガーディアン紙側は法廷侮辱の罪で禁固刑もあり得る事態となった。

 高等法院の命令を問題視した下院議員が10月12日、議会での審議を提案したところ、命令によってこの議案内容を詳報できないガーディアン紙は同日午後8時30分すぎ、自紙のサイトに同紙が「議会報道の差し止めを受けた」と題する記事を掲載。「ある議員がある議案に関して、議会での審議を提案したが、報道差し止め命令により、この議員名や議案内容を報道できない」と一報した。

 この報道の直後に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「ツイッター」の利用者やブロガーらが、議員名や議案内容を議会のサイトなどから突き止め、ウェブ上で情報発信を開始。超差し止め命令は事実上無効となり、第一報が出た翌日(13日)に解除された。また、報告書自体の報道差し止め命令も16日に解除された

 今回の事件であらためて注目を集めたのが、ネットによる情報発信の威力と、個人あるいは企業に関する差し止め命令が、関係者にとって都合の悪い事実を暴く調査報道にとって大きな脅威となる点だ。関係者情報や差し止め命令の発令自体の報道も禁じる超差し止め命令は、事件を完全に闇に葬ってしまう。

 こうした超差し止め命令は、これまで主に養子問題など家裁が扱う事例で発令されてきたが、ここ10年ほどは企業や個人の名誉棄損やプライバシー保護からの発令が増えた。ガーディアン紙に対しては2006年に6件、昨年は5件、今年は現在までに12件の超報道差し止め命令が出されている。

 (補足):他の報道機関は一体どうしていたのか?という疑問がわくかもしれない。他紙とBBCは基本的に13日の昼、超差し止め令が解除されてから報道を開始。新聞の紙は14日付けからになった。一方、保守系週刊誌「スペクテーター」はウェブサイト上で、12日、これを報道。また、政治風刺の週刊誌「プライベートアイ」は12日発行分で議員が何を質問するかなどを書いた雑誌を発行。英議会ではどの議員が何について質問するかを出版しているが、これにも既に書かれていた。それと、ガーディアンのラスブリジャー編集長がツイッターで超差し止めのことをつぶやいていたそうである。

 BBCのウェブサイトのどこかで読んだのだが、BBCあるいは他紙がこの件・経緯について事前に全く知らなかったどうかは分らないのだが、いずれにせよ、1つのメディアに報道禁止令が出ていた場合、他の報道機関が「これを知りながら無視して報道した場合」、何らかの罰則が下るもののようだ。例えば、今回は法廷侮辱罪になるかもしれなかったわけなので、他紙も、もし報道すれば、同様の措置になる可能性があった。ラスブリジャー編集長は侮辱罪となれば「無限の罰金と禁固刑」の恐れがあるとして、「差し止め令を無視できなかった」とBBCのラジオ番組で語っていた。

 そして、何故「議会で質問が?」という件だが、質問をした議員は、ガーディアンのトラフィギュラ報道の記者と懇意の仲で、「質問をしてくれ」と直接お願いしたかどうかは不明だが、決して偶然ではなかった。そこまでしないと、やはり差し止め令は解除されないのだろうと感じた。
by polimediauk | 2009-11-23 05:31 | 新聞業界
 「シリコンバレーが英国にやってくる」というイベントが18日から開催されており、昨日19日には、ツイッターを作ったビズ・ストーンズと100万人のフォロワーを持つ英国の俳優・作家・ブロガー・ツイッターのスティーブン・フライがいろいろな考えを交換した。その様子はウェブカムで流されたが、少し前にビデオでもアップされている(英語)。大体1時間20分ぐらいの内容で、実際に話が始まるのは3分半を過ぎたころである。既に話の内容は報道されているが、そのまま見たい人のために。(携帯ではこのサイトからはビデオは見れないかもしれないので、PCで見たほうがいいかも。)

http://www.stephenfry.com/2009/11/19/social-media-force-for-good/

ガーディアン記事
http://www.guardian.co.uk/media/pda/2009/nov/20/stephen-fry-twitter
by polimediauk | 2009-11-20 21:23 | ネット業界
 15日から17日まで、英国の新聞や放送業界の編集幹部がメンバーとなる「ソサエティー・オブ・エディターズ」の会議(年次大会)に出ていた。今年のテーマは「ファイトバック:反撃する」だった。つまり、部数の下落や広告収入の減少で困っている業界で、ぐだぐだ悩むだけでなく、状況を変えるために能動的に動こう、というわけだ。

http://www.societyofeditors.co.uk/

 1年前と比べて、「ずい分雰囲気が変わったなあ」と思った。昨年は「困った、どうしよう」というオロオロ感、「もうだめだ」という悲壮感、「こんなにしてくれたお前が憎い」という敵対心(例えば無料でニュースを出すBBCなど)が充満していた。それが、今回は「反撃」である。実際にどうやって生き延びるかという道を、具体的に共有しよう、必要であれば自分自身が変わろう、どんな手法も禁じずにやってみよう・・・というアクティブな動きが一杯だった。決して事態が好転したわけではない。むしろ不景気は続いているのだが、変われば変わるものだ。

 また、この会議の報道そのものも変わった。つまり、大手メディアが直ぐ報じるのはこれまでと変わらないとしても、ずい分スピードが速くなった。例えば、会場の片隅に報道記者たちが集まって、ラップトップを使って、原稿をどんどん打ち込んでいくと同時に、ツイッターでの情報発信をしてゆく。原稿でなく、ツイッターだけのためにラップトップを開いている人も何人かいた。

 自分自身も、1年前とは様変わり。当時、私は主に自宅で書くことが多いので携帯電話を電話以外の機能では殆ど使っていなかった。第一、キー操作が面倒くさくて(言葉を打ち込みにくい)、日本でやっていた携帯メールをほぼ完全にやめていた。今年は、アイフォーンを買ったので、会場ではツイッターで他の人のつぶやきを読んだり、自分で打ち込んでいた。退屈な議論の時には(政治家のスピーチ!)、携帯からメディア記事をネットで読んでいた。

 主催者のソサエティー・オブ・エディターズも、会議の経過をどんどん記事にして、演説の原稿や、プレゼンで使われた資料をウェブサイトに載せていった(書く方としては、これが非常に助かるーまた、来れなかった人も、主要な動きが分るわけである)。

 最後のセッションでは、たまたま、ガーディアン記者の隣に座っていた。ここではウェブサイトの課金の是非に関しての議論となったが、タイムズのハーディング編集長が来春からの課金を改めて話し出したのが午前10時ごろ。記者は、セッション中はノートにメモを取ったり、PCに原稿を打ち込み、携帯で社のデスクあるいは同僚と話していたようだった。セッションが終わったのが11時少し前。後で確認したら、12時少し過ぎには結構長い記事がアップされていた。事前にスピーチ原稿をもらえていたとしたら、予定稿を作っていたかもしれない。それでも、その記者個人の力量というよりも、私はウェブに載るまでの編集プロセスのすばやさに驚いた。前にテレグラフで話を聞いたときのことを思い出すと、おそらく、この原稿に関わっていたのは、最低3人ぐらいかもしれない。記者とデスク、実際にシステムに送る人。もしかしたら、デスクが直接送っているとしたら、2人だけかも。

 そして、これだけでなく、この記者は別の記事もほぼ同時にやっていた。それも、朝、聞いたばかりのトピックだ。私がいたテーブルには、元ガーディアンの編集長のピーター・プレストン氏がいたが、セッションが始まる数分前、つまりは9時25分頃、プレストン氏がこの記者に向かって、「アラン(ラスブリジャー現編集長)が辞めたよー報道苦情委員会の倫理問題グループから」、とささやいたのである。「今朝、電話があったんだよ」と。この報道苦情委員会問題は別の機会に書きたいが、夏にガーディアンが報道した盗聴疑惑問題を巡り、報道苦情委員会とガーディアンとの間が険悪になっていた。いろいろあって、抗議のためにラスブリジャー編集長は辞めたようだ。すると、この記者はメモを取り出し、同時にセッションが始まり、終わり、タイムズの課金の話を書きながらも、この辞任事件のフォローアップをしていたようだ。サイトを見ると、午後2時にこの記事が出ていた。

 とにかく、記者は忙しいし、ウェブサイトがあるので、忙しさが増大しているのである。どんどんやらないと間に合わないし、ツイッターで出てしまう。でなければ、噂を聞いたライバル紙が書いて、サイトに出してしまうのだ。

 会議の実際の内容は後で詳しく書きたいが、今年の大会に出席してみて、しみじみ思ったのは、来年はまたずい分変わっているだろうな、と。英国メディアには悲観論が多いのだが、意外としぶとく、より強く、いい意味の競争が働いて、変貌を遂げているかもしれないー。明るい気持ちになった。(ただ、地方紙で人員削減の対象になった記者は、他に記者職として働けるところがないので、タクシーの運転手や全く違う職場で働くか、失業状態になっているという・・・。一般的に、大手メディア企業を辞めた場合、フリーではなかなか食っていけないので、「メディアコンサルタント」になる人が多いと聞いたー不景気の前の話だが。)
by polimediauk | 2009-11-20 00:57 | 新聞業界
 一体、ブレア元首相は「EU大統領」になるのか、ならないのかー?全ては19日にブリュッセルで開催される、初代の欧州理事会常任議長(EU大統領)を選ぶための臨時首脳会議で決まる。もうあと数日である。

 欧州連合(EU)の新基本条約「リスボン条約」をチェコが批准したのは今月3日。欧州は新たな統合の時代に入ったともいえる。来月発行予定の新条約下では「EU大統領」とも呼ばれる欧州理事会常任議長の職が新設されるが、ブレア元英首相が有力候補の1人として名前があがった。政府がブレア氏を推す一方で、国民の中からは反対の声も出た。この話をブレア元首相に焦点をあてて、「英国ニュースダイジェスト」(11月12日号)にまとめてみた。以下はそれに若干足したものである。

―EU大統領の仕事とは?

 詳細はまだ未定のようだが、BBCニュースが報じていたところによれば:

―全加盟27カ国が選ぶ
―就任期間は2年半
―再選は一度限りのみ可能
―年間給与は24万7000ポンド(約3660万円)
―欧州連合(EU)のサミット会議の議長役に
―EU理事会の仕事を前進させる
―欧州内の結束と合意を促進する
―世界の舞台で欧州連合を代表する

―これまでの話

 2007年6月、10年以上に渡る首相の職を辞したトニー・ブレア元英首相。現役時代に比べるとメディアに登場する頻度はすっかり減ってしまったが、アイルランドが2回目の国民投票でリスボン条約(詳細は関連キーワード参照)を批准した先月あたりから、再度の脚光を浴びだした。

 リスボン条約は既存の欧州連合(EU)基本条約を修正する条約で、欧州理事会の常任議長の新設を定めている(現在は6ヶ月ごとに交代する)。いわば「EU大統領」ともいうべきこの職に、ブレア氏が最適だという声が出てきたのである。現在56歳でまだまだリタイアする年齢ではなく、かつ知名度は欧州に限らず世界的に高い。中東特使であることを除けば公的な要職に就いているわけではないので、身体があいているーそんな点が候補枠の射程内に入ったのだろう。リスボン条約の発効には全加盟国で条約が批准される必要があったが、アイルランドの批准で、残すところは後チェコ一国のみとなった上に、当初、サルコジ仏大統領がブレア支持の姿勢を見せたことで、一気に「ブレア=新大統領」への現実感が高まった。

―英政府も支援

 しかし、国民の意見は賛成派と反対派とで大きく分かれた。反対派は「ブレア氏は欧州よりも米国に近い政治家」「ブッシュ前大統領に協力し、イラク戦争を開始したのは許せない」「首相時代、欧州連合のために何もしなかった」「欧州の悪いイメージを世界に広げてしまう」など。賛成派は「知名度が抜群」「英国の政治家が欧州を代表することは英国にとっても良い」「北アイルランド和平の実現など交渉力に優れている」など。

 特にブレア支持の旗振り役となったのがミリバンド外相だ。欧州は「強い声」を持った指導者が必要だとして、ブレア氏は最適だと表明した。ブラウン首相もブレア氏は「素晴らしい候補者」であり、政府としてもブレア氏のEU大統領就任を支持する姿勢を示した。ミリバンド氏自身が新設予定の「EU外務大臣」に就任するのではないかという噂まで出た(本人は11月上旬、記者会見できっぱりと否定。)

―独仏の支持は得られず

 ところが、一時はブレア支持派とされたサルコジ仏大統領が(候補者は)「ユーロ圏の国がいい」(英国は自国通貨ポンドを維持)と発言しだし、ドイツとフランスはともに英国以外の国から候補者を出すことに合意したと伝えられると、ブレア有力説はいつのまにか急に勢いをなくした。

 ブレア氏自身は直接には候補者となる意欲を示していない。ただし、ブレア氏に近い、マンデルソン企業相はBBCの取材に対し、「ブレア氏はやってみたいと思っているそうだ」と声を代弁した。また、9日付タイムズによれば、ブレア氏は欧州各国の指導者たちに電話し、支持を求めたという。

 チェコ大統領の条約批准署名の後、リスボン条約は12月発効予定となった。外交問題に詳しいBBCの記者マーク・アーバン氏のブログによれば、「大国同士の密室の会議で物事が決まる」という状況は、新基本条約が発効後も変わらないようだ。果たしてブレア氏の返り咲きが可能なのかどうか、目を離せない。

―候補者と噂される人物のプロフィール
(10月末時点での一部の候補者。他にも最有力と言われるのがファンロンパイ・ベルギー首相やメアリー・ロビンソン元アイルランド大統領など。)

ブレア元英首相
 1997年5月―2007年6月まで英国の首相56歳。立候補したわけではないが、ミリバンド外相が最適の人物と賞賛。首相退任後は、中東特使、コンサルティング業務を扱う「トニー・ブレア・アソシエーツ」代表、「トニー・ブレア・フェイス」財団代表、ベンチャー支援の「ウインドラッシュ・ベンチャーズ」、JPモルガン銀行やチューリッヒ・フィナンシャル社の顧問、講演、米イエール大学のフェローなど、忙しい日々を送っている。

ジャン=クロード・ユンケル
 ルクセンブルクの首相兼財務相」。出馬を表明している。55歳。ユーロ圏の大蔵大臣・財務大臣で構成される「ユーログループ」の議長で、「ミスター・ユーロ」と呼ばれる。保守中道系のユンケル氏をサルコジ仏大統領は支持する見込みだが、「欧州連邦」の形成を危険視するブラウン英首相は反対すると言われている。

ヤンペーター・バルケネンデ
 オランダ首相。53歳。小説「ハリー・ポッター」シリーズの主人公ハリー・ポッターに顔が似ていると言われる。ベルギーの元外相が「ハリー・ポッターにお堅いブルジョアの知恵を混ぜた人物」と評され、外交問題にまで発展したことも。2002年から首相となり、オランダの国際的地位を高めた政治家と評価される一方で、国内の人気は低迷気味。

ウォルフガング・シュッセル
 オーストリアの元首相。64歳。1999年、極右のオーストリア自由党と連立を組んだことで大きな批判を浴び、欧州連合内でオーストリアは無視された状態にもなった。しかし、自由党の弱体化と内部分裂をもたらした人物として後に高く評価されるようになった。ドイツの支持が得られるのではという噂が。

ヴァイラ・ビケフレイベルガ
 ラトビアの元大統領。71歳。同国初の女性大統領(2000年―2007年)だった。イラクやアフガニスタンの派兵を支持し、ラトビアの「鉄の女」とも言われる。リスボン条約発効後にEU大統領に立候補をすると表明している。同国ばかりか隣国リトアニアからも欧州連合大統領就任への支持が出ると見られている。

ジョン・ブルトン
 元アイルランドの首相(1994年ー1997年)で現在は駐米欧州大使。62歳。北アイルランド和平に尽力した。ワシントンで欧州連合の「顔」になっている点や保守中道「欧州人民党グループ」のバイス・プレジデントだった点からも最有力候補の1人。

―関連キーワード

Lisbon Treaty: リスボン条約。既存の欧州連合(EU)基本条約を修正する条約で、12月発効予定。全加盟国による批准が必要とされていたが、2005年、フランスとドイツが国民投票で条約批准を否決し、一時、危機状態に。両国は後、それぞれの国会で批准した。アイルランドは今年10月の第2回目の国民投票で批准した。チェコのクラウス大統領が批准署名を見送り、発効までの最後の障害となったが、11月3日、同国の憲法裁判所が条約を合憲としたことで、署名に至った。条約は欧州理事会常任議長(EU大統領)職の新設を定めている。

ー欧州連合加盟27カ国とは

国名(加盟年*)
ルクセンブルグ(1958年)
ベルギー(1958年)
フランス(1958年)
ドイツ(1958年)
イタリア(1958年)
オランダ(1958年)
デンマーク(1973年)
アイルランド(1973年)
英国(1973年)
ギリシャ(1981年)
ポルトガル(1986年)
スペイン(1986年)
フィンランド(1995年)
オーストリア(1995年)
スェーデン(1995年)
ハンガリー(2004年)
リトアニア(2004年)
ラトビア(2004年)
マルタ(2004年)
エストニア(2004年)
キプロス(2004年)
チェコ(2004年)
ポーランド(2004年)
スロバキア(2004年)
スロベニア(2004年)
ブルガリア(2007年)
ルーマニア(2007年)

ー欧州連合(EU)の歴史

1951年:フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグの6カ国が欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立条約(パリ条約)に調印。
1952年:ECSC設立
1957年:同6カ国が欧州経済共同体(EEC)と欧州原子力共同体を設立するローマ条約に調印
1958年:EEC、欧州原子力共同体発足
1967年:ECSC、EEC、欧州原子力共同体の執行部が統合し、欧州共同体(EC)発足
1992年:欧州連合条約(マーストリヒト条約)調印
1993年:欧州連合(EU)の発足。
1999年:単一通貨ユーロの段階的導入
2001年:EU拡大に向けてのニース条約調印
2002年:ユーロ通貨発行
2004年5月:中・東欧の10カ国が新規加盟。
同年10月:加盟国が欧州憲法条約に調印
2005年:フランスとオランダが国民投票で憲法条約批准を否決
07年1月:ルーマニアとブルガリアが新規加盟し、全加盟国は27カ国に
同年12月:リスボン条約を調印
2008年:アイルランドが国民投票でリスボン条約批准を否決
2009年10月:アイルランドが2回目の国民投票でリスボン条約批准賛成
同年11月:チェコのクラウス大統領がリスボン条約の批准書類に署名
同年12月:リスボン条約発効予定
by polimediauk | 2009-11-13 23:13 | 政治とメディア
 ガーディアンのスクープ報道によると、マンデルソン企業相がロビー記者に対する政府のブリーフィングを自らの手で毎週行う「かも」しれない。また、ブリーフィングの様子はテレビ放映されることも想定されているという。

http://www.guardian.co.uk/politics/2009/nov/11/mandelson-tipped-as-information-minister

 テレビ放映及び自らが広報官になる、という動きについて、ガーディアンは、これはマンデルソン氏が言ってみれば「情報大臣」になることだ、と書いている。大衆紙サンが野党保守党に支持を移したので、いろいろ嫌気がさしたということも背景にあるだろう。

 「嫌気」の大きな引き金となったのは、アフガニスタンで亡くなった兵士の遺族に向けて、ブラウン首相が送った手書きの手紙事件だ。この手紙には兵士の名前などつづりの間違いがあったらしい。ブラウン首相は謝罪のために兵士の母に電話したのだが、何とこの時の会話をサン紙が今週、紙面で掲載したのだ。
 
 私はこの話を最初に聞いた時、「やっぱりサンは電話を常に盗聴していたんだな」あるいは「やらせだ」と思ったが、いくつかの報道を見ると、兵士の母親が会話を録音し、この内容をサンに知らせたのだという。これが事実だとしたら、これもまたいやーな感じだと思っていた。自分の息子が機材の不備などで亡くなり(と母親は言っており)、無念でしかたないのは想像できるが、ブラウン首相はまさか会話が新聞に提供されるとは思っていなかった。何だか汚い感じがした。よりによってサンである・・・・。

 いずれにせよ、昨日(10日)、官邸で記者会見があって、この件を問われた首相の態度が「真摯だった」と後にこの母親はメディアを通じて語り、今朝の新聞は首相に対して同情的な論調となった。

 そして、今朝のBBCのラジオ4の番組「TODAY」にマンデルソン氏が出て、サンつまりはマードック側が保守党支持に回ったことを指摘し、その後の手紙騒動などで「サンやスカイテレビが、まるで敵は政府であるかのように振舞っている」(攻撃している)と怒り+不満やるかたない発言をしていた。

 そこで、マンデルソン氏としては、「黙っていて、やられっぱなし」というのがもう我慢ならなくなったのであろう。元々、昔はテレビのプロデューサーだった人である。また「ニューレイバー」のPR担当だった。労働党のイメージを刷新し、選挙に勝てるようにするために雇われたのがマンデルソン氏だった。

 それから長い月日が経った。ある意味では、いよいよ出る人が出たというか、本気で総選挙を戦わないといけないと思っているのかもしれない。しかし、「自らが表に出る」というのは何だか余裕がない感じがする。それでも、他にいないのだろう。
 
 ガーディアンの記事を読むと、まだ詳細は決まっていないようだが、1つの案としては、毎週月曜日、ロビー記者へのブリーフィングをマンデルソン氏がやるというもの。そうすると、月に一度会見をやっているブラウン首相の影が薄くなるという見方もあるが。

 記事の中にも書いているが、ロビー記者へのブリーフィングは長い間秘密だった。80年代以降から次第にオープン化が進み、1997年、労働党政権になってから、官邸ブリーフィングが正式にオンレコになり、2002年からはブリーフィング(朝夕2回)を記録したものが官邸サイトに載っている。ブリーフィングは官邸広報官が行っている。

 記事によれば、官邸は新しいコミュニケーションのやり方を模索しており、これをリードしているのが最近雇用された、サイモン・ルイスという人だという。この人は、テレグラフ紙の編集長ウイル・ルイス氏の兄である。

サンとスカイテレビを批判するマンデルソン氏の発言
http://www.guardian.co.uk/politics/2009/nov/11/mandelson-contract-sun-tories
元官邸にいたランス・プライス氏の見方:大衆紙にいつ反撃するべきか
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/nov/11/sun-gordon-brown-jamie-janes
自分の新聞が反ブラウンになって残念と言うルパート・マードック
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/nov/11/sun-gordon-brown-jamie-janes
by polimediauk | 2009-11-12 03:46 | 政治とメディア
 ブラウン英首相とメディア王ルパート・マードックは親しい関係にあったが、何だか先行きがあやしくなったかもしれない。ブラウン氏は来週発売される「GQ」という雑誌のインタビューの中でマードック傘下のサン紙を批判しているのだ。

http://www.pressgazette.co.uk/story.asp?sectioncode=1&storycode=44561


 9月末にサン紙が与党支持を撤回したが、ブラウン氏はこれに言及して、「サンは政党になろうとしている」と述べた。サンが野党の保守党にその支持をくらがえしたことは「大きな間違いだ」と続けた。

 「ルパート(マードック)を個人的に悪く思っているわけじゃない。いつも私には非常に友好的にしてくれている」、しかしサンは・・・というわけである。

 マードックはもうブラウン氏にさよならを言ったのかもしれないーサンを保守党支持にすることで。サンの編集長は常に否定するのだけれど、マードックがサンの最終的な編集長であることはマードック自身が認めている。

 英国の新聞は支持政党を結構表に出す。そんな状況をサンの例を見ながら、新聞協会報(10月27日付)に書いた。以下はそれに補足したものである。

英大衆紙「サン」が与党支持を撤回
 新聞は総選挙にどこまで影響を及ぼせるか?


 英国で最大の発行部数を持つ大衆紙サンが、9月30日付の紙面でブラウン労働党政権への支持を撤回し、野党保守党にくら替えする方針を打ち出した。来年6月までに実施予定の総選挙で、サン紙の支持を失った労働党はより厳しい戦いを強いられそうだ。英国の新聞はそれぞれの支持政党を明確にする。サン紙の支持政党は選挙結果を先読みする指標となってきた。しかし、有権者への影響は思っているほどには大きくないという見方もある。

サン紙は発行部数が300万部を超える。ライバルとなる大衆紙デーリー・メールの部数は約220万部、高級紙4紙(テレグラフ、タイムズ、ガーディアン、インディペンデント)の合計部数は200万部ほどで、サン紙の部数規模は突出している。

 サン紙はメディア王ルパート・マードック氏傘下のニューズ・インターナショナル社が発行。英国には同氏傘下の新聞としてサン、タイムズ(約60万部)、日曜紙ではサンデー・タイムズ(約110万部)とニューズ・オブ・ザ・ワールド(約300万部)があり、合計部数は約800万部となる。これらの「マードック・プレス」がどの政党を支持するかが世論の動向に影響を及ぼす構図がある。

 中でも特に大きな影響力を持つとされるのがサン紙だ。1979年、サッチャー保守党政権誕生直前に、これまでの労働党支持を変更し、「保守党に投票しよう」と呼びかけた。92年の総選挙では、世論調査で保守党の支持率を超えていた野党労働党に投票すれば悲劇的な結果をもたらすと予測した紙面を投票日当日に発行。保守党が勝利すると、「勝ったのはサンだ」と投票日から2日後の紙面で宣言した。

 97年3月には「サンはブレアを支持する」と1面で表明。5月、ブレア党首率いる労働党が圧勝し、サンは政権誕生の立役者としての地位を喧伝(けんでん)した。

 2005年の総選挙では、投票日前日にブレア氏の男性としての魅力を妻が語る記事を掲載し、投票日当日はブレア氏とブラウン財務相(当時)をサッカー選手に見立てた写真を1面に出し、労働党に投票しようと呼びかけた。

 メディア操作に関する複数の著作を持つニック・ジョーンズ氏は、サン紙の「プロパガンダ」報道は「民主主義社会にとってよくない」と嘆く。 

 今回、サン紙の支持政党くら替えが判明したのは、早版が出た9月29日夜。同日午後にはブラウン首相が労働党の年次大会で「勝利に前進を」とするスピーチを行っていた。サン紙は翌日付の1面で「労働党は自らを失った(Labour's lost it)」と題する社説を掲載した。

 新聞が世論を決めているのか、あるいは世論が新聞の論調を決めるのかに関しては、政治学者の間でも諸説がある。10月4日付のガーディアン紙で、ストラスクライド大のジョン・カーティス教授は「サン紙が世論を決めているのではなく、世論の動きを反映した論調を掲載しているだけだ」と述べた。インターネットの普及などメディアの多様化で、1紙の影響は少ないとする見方もある。

 (補足)一方、コラムニストのピーター・ウィルビー氏は毎日のように特定の視点を持った報道に触れていれば、「何らかの影響が及ぶのは自然」であり、連日、ある政党にとって否定的な報道が出れば党内の「士気に影響する」と見る。ブレア元首相の元側近アラステア・キャンベル氏はメディアが多様化したので、「1つの新聞が支持政党を変えたからといってあまり大きな影響はない」(9月30日付)としている。(これをそのまま信じる必要はない。むしろ、衝撃を少なくするための嘘の発言である可能性もある。サンの今回の報道に労働党員らはかなり衝撃を受けたという報道がある。)

 私自身の判断は、サンはムード作りがうまい感じがする。実態は違っても「そうかな」と人に思わせてしまう。典型的なプロパガンダだろう。「サンが世論を作っている」と思わせるプロパガンダという意味でも。

 それにしても、もうブラウン政権はだめかもしれないと思う。アフガンで英兵が続々と亡くなっているのに「後戻りはできない」というようなことを言っている。まじめな人なのだろうが、言葉が心に響かない。アフガン派兵と国内のイスラム・テロ発生を防ぐという2つのことは、どうしてもうまくつながらないのだ。それに、アフガンを西欧型の民主国家にするのに、一体何年かかると思っているのだろう(30年?)。国家再建というのは2-3年ではできないだろう。といっても、2001年からもう8年になるのだが。何せ結果がなかなか出にくいのだ。うろうろしているうちに、選挙で負けそうだ。
by polimediauk | 2009-11-07 05:46 | 政治とメディア
放送批評懇談会が発行する月刊誌「GALAC」の記事の何本かが、ニフティが運営するサイト「@niftyニュース」に掲載されるようになった。この中で、私がリレー連載の執筆者の1人となっている「海外メディア最新事情」コラムも入った。8月末のエジンバラテレビフェスティバルでのジェームズ・マードックのスピーチの受け止められ方について書いたもの。11月号に書いたが、そろそろ12月号が書店に出ている頃だろう。ご関心のある方は以下がアドレス。

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/galac-20091020-01/1.htm

 今月上旬発売の朝日新聞「Journalism」11月号に、英国政治報道について書いてる。以下のサイトではまだ10月号の写真が載っているのだけれど、そのうち11月号のものに変わるはずである。

 http://publications.asahi.com/ecs/66.shtml

 英国では、議会(国会)を根城に活動する「ロビー記者」たち(国会記者にほぼ相当)が存在する。その存在さえも秘密とされた時代が長く続いたのだが、現在は議会サイトに個人の記者名が載るまでになった。排他的な存在+政治家に優先的に会える存在であるという意味では特権記者たちとも言える。その「特権」は公のために、つまり所属メディアを通じて情報・分析を出すために与えられている。一定の権威を持って、政治の分析・解説をしてきたのだが、現在は個人でもネットで情報発信が可能だし、著名政治ブロガーも多くなった。また、権威に対する英国民の軽視も次第に広がって、ロビー記者たちの存在感は相対的に低下している・・・というのが私の見方である。

 11月号には民主党政権下の政治報道の行方や例の記者会見問題に関する記事も入っている。
by polimediauk | 2009-11-07 02:37 | 政治とメディア