小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 日本では見逃し番組の(再)視聴サービスが苦戦していると聞いているが(お金を取るせいか?)、英国ではいつのまにか、米HULUに対抗するかのような無料番組視聴サービス、Seesawができていた。http://www.seesaw.com/ 英国に住んでいないと見れないようだが。2月18日、サービス開始。10秒間のコマーシャルもできて、通常のテレビに流れる。

http://www.guardian.co.uk/media/2010/feb/18/bbc-channel-4-five-online-on-demand
http://www.guardian.co.uk/media/2010/feb/26/seesaw-fallon-advertising-campaign

 番組自体は、ダウンロードしない方式を使っているせいか、最初にコマーシャルが入るが、すぐ見れる。BBCとチャンネル4、ファイブが参加している。現在は視聴が無料だが、今年中には米国の番組も見れるようになり、そうなると一部有料になる見込みだ。

 ITVが入っていないのは、HULUが英国でサービスを展開するときに、そっちの方に参加するためではないかと言われている。

 ウェブテレビの市場は、今年、激化しそうだ。

 BBC,チャンネル4、ITV,BTが協力する、同様の番組視聴サービス、プロジェクト・キャンバスは1年以内にスタート予定だそうだ。

 http://www.guardian.co.uk/media/2010/feb/26/project-canvas-launch

 こちらは、テレビの画面で見れる。やっぱり、ウェブテレビはテレビ受信機(あるいは番組を見るのに最も似つかわしい機械)で見るのが一番くつろげる。
by polimediauk | 2010-02-26 21:04 | ネット業界
 マードックのニューズ社の傘下にあるタブロイド日曜紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」(NOW)が、著名人の電話を盗聴して情報を得ていた・スクープ記事を書いていたとする事件(数年前、王室担当ジャーナリストと私立探偵が有罪になったが、これ以外にも、大規模に行われていた疑惑が出ている)が、再燃している。

 NOW紙側は、盗聴が該当記者と探偵による単独の事件だったと主張しているが、下院のメディア問題小委員会が24日、報告書を発表し、同紙による盗聴が「産業」的な規模で行われていた、と指摘した。NOW紙の編集長や経営陣が知らずにこれが行われていたとすれば、「集団的な健忘症にかかっていた」と言わざるを得ない、とした。

 詳細はガーディアンのサイトにある。

 http://www.guardian.co.uk/media/2010/feb/24/phone-hacking-scandal-mps-report

 委員会はまた、2006年に盗聴疑惑を調査したロンドン警視庁が王室問題担当記者にのみ捜査の焦点をあてたことを批判した。
 
 報告書の結論は、ガーディアンにとっては朗報だった。同紙は、NOWにおける電話盗聴などの「闇の芸術」が幅広く、社内全体で行われていた、「数千人規模」の著名人の電話盗聴が行われていたと昨年、報道していたからだ。

 ガーディアンの報道後、下院小委員会(上記)で聞き取り調査が行われ、この様子はテレビでも放映された。召喚されて質問に答えた人物の中には、NOW紙の元編集長アンディー・コールソン氏がいた。同氏は現在、野党保守党のコミュニケーション部門の責任者である。最初の盗聴疑惑勃発時、引責辞任している。

 昨年秋、メディアの自主監督団体PCCが、盗聴が広範に行われていたとするガーディアンの報道の信ぴょう性に疑問を呈した。ガーディアンはもちろん反論したが、打撃になったのは確かだった。

 下院の報告書は、PCCは「骨がない」として批判しているようで、ガーディアンにとっては、万々歳のような評価となった。(ガーディアンのサイトには関連ビデオや記事がたくさん載っている。)

 保守党にとっては、面白くないニュースである。コールソン氏の将来と関連付けてほしくない話題である。同氏はキャメロン保守党党首のメディア戦略に欠かせない存在と言われている。

 コールソン自身が下院小委員会の先の公聴会で認めたように、同氏が編集長時代のNOW紙では、「スクープにはお金を払う」体制が敷かれ、コールソン氏はスクープ集めのために記者にはっぱをかけていたようだ。

 編集部内で電話盗聴を含む手法が使われていた場合、編集長が全く知らなかったというのは(コールソン氏の説明)、信じがたいー例えば探偵一人使うのにも、お金が払われるわけだから。ガーディアンの言うほどに大規模だったかどうかは別としても、かなり普通のこととして行われていたのかもしれない。

 しかし、ニュースネタにお金を払うとか、私立探偵を使うとか、そういう裏の手をはたしてガーディアンは全く使っていないのかな?となると、何だか怪しいなあという気もするのであるー。(ただの推測だが。)ガーディアンは調査報道に定評があるが、BBCの報道などを見ると、放送局で調査報道のためにおとり取材がずいぶんとあるようだ。どこのメディアも法律違反ぎりぎりの手法を多かれ少なかれ、使っているということはないのかな、と思うわけである。

***

ご関心のある方はー関連の過去記事

電話盗聴疑惑、英新聞界を揺るがす (上) ガーディアンとニューズ社の対決の顛末

http://ukmedia.exblog.jp/12238230

その(下)
http://ukmedia.exblog.jp/12250665

by polimediauk | 2010-02-25 16:37 | 新聞業界
 オランダ連立政権が、アフガン派遣問題を巡り、20日、崩壊していたことを知った。以下は東京新聞より

オランダ連立崩壊 アフガン駐留で対立激化
2010年2月21日 朝刊
 【ロンドン=松井学】オランダのバルケネンデ首相は二十日、アフガニスタンに派遣している軍部隊の駐留延長をめぐる連立政権内の対立が激しくなったことから、「現内閣はこれ以上、共に進めない」と記者会見で述べ、連立崩壊を発表した。
 同首相は北大西洋条約機構(NATO)が求めているオランダ部隊の駐留延長を図ったが、連立政権の第二党・労働党が強く反対。キリスト教民主勢力を率いる首相は分裂回避のため前日から長時間協議したが、合意できなかった。連立崩壊を受け、首相は五月にも総選挙に踏み切るとみられている。
 オランダは今年八月以降に部隊を順次撤退させる方針を掲げていたが、オバマ米大統領のアフガン新戦略を受けて、NATOが駐留延長を求めた。
 オランダ軍部隊はアフガン南部ウルズガン州で約二千人が国際治安支援部隊(ISAF)の作戦に従事。
 南部は反政府武装勢力タリバンによる攻撃が多発、オランダ兵の死者は二〇〇六年の駐留開始以後、二十一人に上り、国内世論は早期撤退に傾いている。
 同国では三月三日に地方選挙があり、劣勢が予想される労働党が、駐留延長に強硬に反対することで、支持回復を狙ったとみられている。
 連立政権内の対立点はアフガン駐留延長にとどまらない。オランダが〇三年のイラク戦争を支持した決定は違法だと結論づけた今年一月の同国の独立調査委員会の報告を受けて労働党を中心に、開戦時に首相だったバルケネンデ氏への批判も強まっていた。
(引用終わり)


 左派の労働党と保守中道系キリスト教民主勢力とは、かなり政策が違うようで、総選挙後に連立政権が発足するまで、随分と(3-4か月?)時間がかかったことを思い出す。

 「違法」のイラク戦争に加担したこと、「テロ戦争」の一環でアフガニスタン侵攻を続けていることなどへの反対の声がオランダ国内ではよほど強いのだろう。

 衝撃だ。つまり、政権離脱を政党が決めるほど、こだわる問題なのである。そうであるべきであろう、人が死ぬ話なのだから。

 今、英米を中心に大規模アフガン侵攻計画が進行中だが、どうか思い直してほしいと思っている私にとって、このオランダの動きが何とか歯止めにならないかと期待している。

 どんなに英政府が説明しようとも、どうしてもアフガン侵攻・あるいはアフガンの和平・国づくりなどと、「英国のテロの脅威を取り除く」(政府の説明)こととが、論理的につながらないのだ。(イラクの大量破壊兵器の無理な論法のように・・・。)

BBCの関連記事
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/8526933.stm

 今、ブラウン首相がいじめっ子だったかどうか、部下を殴るほどだったかどうかが、トップストーリーになっている。この分析はBBCの政治記者ニックロビンソン氏のブログが詳しい。
http://www.bbc.co.uk/blogs/nickrobinson/2010/02/browns_behaviou.html

 とにかく、選挙戦まっしぐらである。(4月22日か、5月上旬の総選挙説が出ている。)


by polimediauk | 2010-02-22 01:23 | 新聞業界
 BBCのプレスリリースによれば、4月から、BBCオンラインが新しいモバイルアプリを提供する。

http://www.bbc.co.uk/pressoffice/pressreleases/stories/2010/02_february/17/mobile.shtml

 具体的には、BBCのニュースとスポーツコンテンツの提供だ。世界中からアクセスできて、無料(携帯電話の使用料金は通常にかかるが)。アイフォーンなどのスマートフォーンで利用できる。見逃した番組などを見れる、大人気のアイプレイヤーのサービスは英国に住む人だけが利用できるが、これも無料だ。

 今でもBBCニュースは携帯で見れるし、専用アプリもあるのだが、これをさらに使いやすくしたものになるようだ。もっとスピーディーにコンテンツにアクセスできるとか、ツイッターとかフェイスブックとかに直接投稿できる・・なども入るのだろう。アプリは今後どんどんアップデートもしていくだろうし。

 有料・無料問題で悩む英新聞サイトにとって、最大の強敵である。もちろん、利用者にとっては、うれしいけれども。

 BBCのニュースサイトはほぼ辞書代わりに使えるところがなかなかよい。英語も放送局のサイトだからなのかどうか、おそらく故意にシンプルにしてある。そういう意味では、ネット向きなのだーさっと読んで意味が通る。(ただ、全部が全部ではないが。)

 BBCの拡大策略(!)は、ある意味、国家戦略(英国発のメディア・コンテンツを英語で広める)にもつながるだろう。

 マードックがぶっとびそうな動きである。

 英国に住む人にとっては、BBCの携帯サイトが利用者に何かを売ろうとしているものでないことが、ほっとする。(どの「無料」サイトもほぼ必ず広告が入るのとは別、という意味で。)BBCのイメージは売っているのかもしれないけど。

 もうBBCに勝てる英国の放送局はないのかな。
by polimediauk | 2010-02-18 07:43 | 放送業界
c0016826_19485486.jpg ロンドン・ウィークリーという週刊新聞が今月上旬、創刊した。期待大だったが、スペルの間違いが多いなど、「プロ」のメディア評論家から批判が出た。それでも、続けることに意義があるのかもしれない。

 第2週目の批評と紙面内容は以下をご参考に。
http://www.guardian.co.uk/media/greenslade/2010/feb/12/london-weekly-second-edition

 ロンドン・ウィークリー紙の意味合いを16日付の「新聞協会報」に書いた。以下はそれに若干付け足したものである。

新ロンドン無料紙創刊
 「スタンダード」の独占崩す


 ロンドンの通勤客を対象とする無料紙市場に2月5日、新無料紙ロンドン・ウィークリーが参入した。主要無料夕刊紙2紙の相次ぐ廃刊後、有料紙から無料紙に転換したロンドン・イブニング・スタンダードが夕刊紙市場を独占しているが、ウイークリー紙の創刊はこれを崩す動きとなる。広告収入のみで運営する無料紙のビジネスモデルが再評価されたともいえよう。

 ウィークリー紙の発行は金曜日と土曜日。地下鉄の駅近辺で25万部が配られる。内容は「軽い読み物、ゴシップ、政治、健康、音楽、ファッション」。編集面(記事と写真)の3分の1は読者からの投稿による。発行元はグローバル・パブリッシング・グループ社で、創刊資金は1050万ポンド(約15億2千万円)。

 スタンダード紙による夕刊紙市場の独占に風穴を開ける存在として発行が注目されていたが、創刊号の原稿には誤植が目立ち、「レイアウトがあか抜けていない」「素材が古い」などの不満の声がガーディアン紙(6日付)に寄せられた。一方、ロイ・グリーンスレード教授(メディア学)は「綴りや文法の正確さを気にしない何十万人がロンドンにやってくる」点を指摘し、ウィークリー紙の広告媒体としての意義を指摘した(同紙、同日付)。

 好景気時代、広告収入を主要な収入源とする無料紙のビジネスモデルがもてはやされたが、景気後退による広告市場の縮小で、朝刊無料紙ロンドンペーパーが09年9月に、ライバル紙のロンドンライトがその2か月後の11月に廃刊に追い込まれた。1999年、アソシエーテッド・ニューズペーパーズ社が無料朝刊紙メトロを創刊して以来の「ロンドン無料紙戦争」が幕を閉じた格好となった。

 しかし、昨年10月、スタンダード紙が有料から無料に移行すると、無料紙モデルが再評価されてきた。有料時には20万部前後だった同紙の発行部数は、昨年12月で60万部を超えた(英新聞雑誌部数公査機構ABC調べ)。「主要無料紙が消えたことで、広告主からの引き合いが増えた」(同紙編集長)という。高級紙インディペンデントが無料化を考案中という噂も絶えない。

 メディア・コラムニストのピーター・ケーワン氏は、無料紙は不特定多数を読者としているように受け止められているが、実は配布者側は新聞を受け取る人物の性別や職種などの情報を把握している(「メディア・マネー」ブログ、09年11月10日付)。無料紙は特定の顧客に新聞を渡せるという点で、広告主にとって魅力的な媒体となる。ウィークリー紙の参入で、ロンドンの「無料紙市場は新たな競争の時代に入った」(同氏)という。

 ***

 感想:広告の意味では「競合相手ができた・増えた」ことになるが、ジャーナリズムの面では「?」であろう。今後どうなるかは分からないがー。ただ、イブニング・スタンダードは無料と言いつつも、一部では有料で販売されている。あまりにも需要が多く、一部では新聞販売店が20ペンスから50ペンスで販売しているというのである。

http://www.guardian.co.uk/media/greenslade/2010/feb/15/london-evening-standard-free-not

****他ご参考***

ロンドン・ウィークリーのウェブサイト
http://www.thelondonweekly.co.uk/

創刊号に関しての厳しい批判に対する、ロンドン・ウィークリー側の反論
http://www.prweek.com/uk/news/983009/London-Weekly-hits-back-critics-its-production-standards/
ガーディアンサイト上の批判
http://www.guardian.co.uk/media/greenslade/2010/feb/05/pressandpublishing
by polimediauk | 2010-02-16 19:49 | 新聞業界
c0016826_0373522.jpg プレス・ガゼットの報道によれば、政治ジョーク満載の週刊誌(バイウィークリー)「プライベートアイ」の09年下半期の部数が18年間で最高になったそうである。時事問題を扱う雑誌の中ではトップだ。平均発行部数は約21万部で、前年同期比で3・4%アップ。英ABC調べ。

 エコノミストも1・2%増で好調。部数は約18万9000部(英国版)。中東・アフリカ版は2・1%増の約2万8000部。

 時事問題を扱う雑誌は部数の伸びが全般的に良いようだ。下落したのが、保守系政治雑誌のスペクタテーター。8.9%減で約7万部となった。スペクテーターは昨年9月、ウェブサイトに有料制を導入した。このために印刷している紙の発行部数が増えた、というわけではなさそうだ。

(写真はプライベートアイの現在の表紙より)

関連記事

http://www.private-eye.co.uk/
http://www.pressgazette.co.uk/story.asp?sectioncode=1&storycode=45038&c=1
by polimediauk | 2010-02-12 00:37 | 政治とメディア
 NY在住の文芸エージェント、大原ケイさん(女性)をご存知の方はいらっしゃるだろうか?情報と知恵+ひらめきがいっぱいの素敵なブログを2000年から書かれている方だ。私は佐々木俊尚さんのツイッターで知った。

 アマゾンとマクミラン(アマゾンがマクミランと価格の件で争いごととなり、マクミランの本がアマゾンサイトから消えた件)の話や、NYタイムズのサイト有料化の話など、非常に詳しく、かつ本当におもしろい。新聞サイトの有料化問題に関しては、以下のNYタイムズの話が私は特に面白く思った。

NYタイムズが有料化するってニュースなの?
—When the inevitable and known fact becomes a news item
http://oharakay.com/archives/2024

 何故私が「特に」面白いと思ったのかというと、大手新聞サイトの有料化問題で、いろいろな議論をつらつらとネットで拾っていると、あることに気付いたからだ。つまり、日本の新聞の話と英語(米英)の話、それも英語の大手新聞の話とは、ある意味、別物ではないかという点である。

 大原さんはNYタイムズサイトが有料化されたら(すでに一部は有料だが)、おそらく、購読者になるだろう、と書いている。それはつまり「NYタイムズが読みたいから」である。

 私自身は、英国の新聞サイトの「有料化」(これまた一部有料になっているところがあるのだが)は、ビジネスモデルとして「アリ」だと思っている。有料化が一般的・観念的に正しい・正しくない、と言っているのではなくて、①もう事実、そうなっている、②あまりにも経営が苦しいので、生き残りのためにやるところはあるだろうし、③お金を出してでも読みたい人がいる(それが収入減少分をカバーするかどうかは別として)、④今やろうとしているところが、ブランド力の強い新聞である、⑤有料化はすべて読めなくなることを意味しない=つまりおそらく一部有料化になるという予想…などの理由による。

 しかし、この「アリ」というのは、米英の新聞、特に「英国の新聞」のハナシである。なんと表現したら最善なのか迷ってしまうが、土壌・環境がそんな感じなのである。英語のニュース情報というのは、英語が国際語というだけあって、本当にありとあらゆる種類・量がある。競争が非常に激しい。ブランド力をつけて、情報を有料で売る、というのも、1つのモデルとして「アリ」であって、それで民主主義がおろそかになる・・というのはあまりない感じがする。前回書いたが、英国の新聞はこれまで、無料で圧倒的な情報量をサイトで出してきた。無料メディアBBCの存在が大きいので、「無料の圧力」がすごくある。しかし、「いや、待てよ、別のやり方でやってみようではないか」という揺り戻しもあるように思う。

 日本の新聞の場合、サイトで無料では全部出していないようであるし、日本の新聞サイトのやり方と米英の新聞サイトのやり方を、必ずしも一緒には語れない感じがする・・・と思っていたので、大原さんのコラムを読んで、いろいろ刺激を受けた。

 前回の「NSK経営リポート」の原稿には、フィナンシャルタイムズのFTコム担当役員のインタビュー記事もついていた。この記事の基になったインタビューそのものをまとめ、ニューズマグに出している。ご関心のある方は閲読いただきたい。読者との直の関係を望むので、アップルとの協力(マイクロペイメント)はないと言っていたが、どうなるだろう?

「FTコム」担当役員インタビュー:「世界で200-300万人のコア読者に力を注ぐ」
http://www.newsmag-jp.com/archives/2936
by polimediauk | 2010-02-06 03:15 | 新聞業界
 新聞ウェブサイトの閲読有料化・無料化問題は、今年のホットな話題の1つだが、ニューズ社が、2日、昨年10-12月期の売上などを発表した。マードック会長は、有料化に大きな自信を見せているようだ。

 まず、日経の関連記事を見ていただきたい。

米ニューズの10~12月、最終黒字に 映画「アバター」など寄与http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20100203ATGM0301703022010.html

 
引用: 「米メディア大手ニューズ・コーポレーションが2日発表した2009年10~12月期の売上高は前年同期比10%増の87億ドル(約7800億円)だった。SF映画「アバター」のヒットなど映画をはじめとする主力部門の多くで業績が改善。前年同期に赤字だった最終損益は2億5400万ドルの黒字に転換した。ルパート・マードック会長は「コンテンツはデジタル時代の『皇帝』だ」と話し、業績回復に自信を示した。(引用終わり)


米出版・新聞大手5社、ネット配信で提携
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20091209AT2M0900A09122009.html

引用: 米ニューズ・コーポレーションや米タイムワーナー(TW)傘下のタイムなど5社は(2009年12月)8日、インターネット上のコンテンツ配信事業で提携したと発表した。雑誌や新聞、コミックを電子書籍端末などで手軽に読める配信サイトや技術などの標準をつくる。策定した標準は公開し、賛同者を集める。電子書籍端末市場で独走する米ネット小売り最大手アマゾン・ドット・コムなどへの巻き返し策といえ、メディア大手とIT(情報技術)企業の主導権争いが激しくなりそうだ。提携した5社はほかにハーストとコンデナスト、メレディス。5社の購読者数は合計で1億4460万人となり、雑誌・出版業界の大手が大同団結する。 (引用終わり)。
 

 ガーディアンの同トピックの記事を見ると、マードックは、「無料化を捨てるメディアは忘れられてしまう」とした、ガーディアンのラスブリジャー編集長の講演(私自身はこれに感動したが)に言及し、「まあ、BS(ブルシット)だな」と述べている。

ニューズ社の記事
http://www.guardian.co.uk/media/2010/feb/03/murdoch-news-corp-increases-profit

ラスブリジャー氏の講演のテキスト
http://www.guardian.co.uk/media/2010/jan/25/cudlipp-lecture-alan-rusbridger

 話は非常にスピーディーに進んでいるが、英国の事情に関して、日本新聞協会の経営幹部向け季刊誌「NSKリポート」3号に書いた。(アマゾンジャパンの幹部のインタビュー、新聞デザインを一新することで部数を伸ばした、ポーランド人のデザイナー、ジャチック・ウツコ氏**の紹介もある。)以下はその原稿である。情報は1月上旬時点でのものを基にしているのをご了解願いたい。


「無料の壁」と戦う英メディア
ー新聞各社、サイト有料化への動き


 英国の新聞業界で、今最もホットな話題と言えば、ウェブサイト上のニュースを有料制にするかどうかだ。米メディア大手ニューズ社のルパート・マードック会長が昨年、傘下にある新聞のウェブサイトに今年中に課金制を導入すると宣言し、アーカイブも含め無料でのニュース提供を慣行としてきた英新聞界に衝撃が走った。同社傘下となる英新聞は国内で発行部数が最大のサン紙や高級紙タイムズを含み、合計の発行部数は約800万部に上る。業界内の他紙の動向に影響を及ぼすのは必至で、もし同氏が成功すれば、広告のみに頼らない新たなビジネス・モデルができることになる。

 デジタル・コンテンツからいかに収入をあげるかは新聞・雑誌業界のみならず、見逃した番組をオンデマンドで再視聴できるサービスの拡充に力を入れる放送業界にとっても課題となっている。

 ここでは英国の新聞業界を中心にサイトの有料化への背景と最近の動きに注目する(放送業界については『新聞研究』昨年12月号のBBCに関する拙稿参照)。

ー主戦場はネット

 まず、英新聞業界の現況を概観したい。日米両国同様に、英新聞界でも長年にわたり、読者の新聞離れや読者及び広告主のネットへの移動が起きている。英新聞雑誌部数公査機構(ABC)によると、全国紙11紙の11月の部数は前月比でほぼ全紙が下落し、特に下落が激しかったのは高級紙ガーディアンで14.83%の減。昨年6月から11月の半年間では前年同期比でインディペンデントが14.07%減となった。地方紙88紙の発行部数は昨年上半期で同8%減少し、主要都市を拠点とする地方紙では10%減少した。2008年秋以降の景気後退による広告収入の減少も大きな負担となっている。調査会社エンダース・アナリシスは、最悪の場合、今後5年間で国内の約1300の新聞の「半分が廃刊に追い込まれる可能性がある」と大胆な予測を出している。英国の新聞販売店の団体NFRNによれば、宅配率は25%で、残りの読者は当日、新聞販売スタンドから買っている。「毎日が勝負」のリスキーな状態で新聞を売っていることになろう。

 大きな伸びを示しているのはウェブサイトの月間ユニークユーザー数だ。ABCによれば、11月のトップはガーディアンで、約3580万人(前年同月比37%増)、これに続くのがメール・オンライン(約3130万人、50%増)とテレグラフ(約3080万人、34%増)。各紙は自社サイトの拡充にここ数年力を入れている。「ネットか紙か」という議論は消滅しており、「ネットで何をやるか」を巡って激しい競争を繰り広げている。

 英国の多くの新聞サイト、特に主要新聞のサイトは、過去記事も含めて無料でニュースを提供してきた(購読制をとる経済紙のフィナンシャル・タイムズ=FT=を除く)。「ニュースは無料」とする風潮を作り上げる数々の要因があって、すべてを無料としなければ競争に負けると考えた。例えば無料で読めるグーグルニュースの人気や、年間34億ポンド(約5110億円)のテレビ・ライセンス料(日本のNHKの受信料に相当)を資金源に動画も豊富なニュースサイトを無料で提供するBBC、好景気時代の広告収入の増加を背景に創刊された無料新聞(メトロ、ロンドンペーパー、ロンドンライトなど、後者の2紙は昨年末廃刊)など。しかし、07年までの2年間、自社サイトに購読制を採用した米ニューヨーク・タイムズ紙が再度、課金制導入を計画しているとするうわさが流れ、マードック氏が傘下のサイトの有料化計画を発表すると、課金制は英新聞経営陣にとって大きな関心事となった。

 ニューズ社傘下の日曜紙サンデー・タイムズは、これまで平日紙のタイムズとサイトを共有してきたが、今年中に独自のサイトを立ち上げ、有料制にする予定だ。一本の記事ごとに料金を支払う「マイクロペイメント」制よりも、24時間、タイムズの記事が自由に読める「一日パス」の採用などを考慮中だ。

 昨年11月末には、286の地方紙を発行するジョンストン・プレス社傘下の新聞6紙が、ウェブサイトの有料購読制の試験提供を始めた。試験期間の3か月間、サイト記事の閲覧に利用者は5ポンドを支払う。

 サイトの有料化に反対してきたのはガーディアン、日曜紙オブザーバーに加え地方紙を発行するガーディアン・ニューズ&メディア社である。ティム・ブルックス取締役は同社にはオンラインニュースに課金する意思は「全くない」と筆者に語った。理由は「ガーディアンのニュースのリーチと影響力を保つ」ためだ。BBCを含め無料のニュースサイトへの読者の移動が脅威だという。

 しかし、アクセス数の増大を最優先にし、コンテンツをネット上でほぼ無制限に提供するというこれまでの各紙の戦略は今後も長期間維持できるだろうか?

 米コロンビア・ジャーナリズム・レビュー電子版(11月5日)は、ニュースの制作のように人手がかかる構造を維持し、オンラインからの収入では経費がカバーできないなら、「核となる読者に焦点を絞るべきであって、無料ニュースの配信で、全く何の収入ももたらさない読者を名目的にたくさん増やす」のは意味がないと指摘した。

 12月中旬、無料派のガーディアン社が携帯電話アイフォーン用のニュース閲読アプリを有料(2.39ポンド)で販売した。ライバル紙はいずれも無料で同様のアプリを提供する。ガーディアンは無料で閲読できるこれまでのアプリも同時に提供しているが、新アプリの開発担当者は将来的に携帯電話で提供するコンテンツの一部を有料化する可能性を示唆しており、今年は有料・無料の戦いの場が携帯電話アプリに移動することになる。(つづく)

**ウツコ氏のユーチューブでのスピーチは隠れたヒットになっているようだ。ご参考(日本語翻訳入り)

デザインは新聞を救えるか?
http://www.ted.com/index.php/talks/lang/jpn/jacek_utko_asks_can_design_save_the_newspaper.html
by polimediauk | 2010-02-03 20:55 | 新聞業界