小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 左派高級紙インディペンデントを、ロシアの元KGBのレベジェフ氏が1ポンドで買収するニュースがとうとう出た。

 これに衝撃を感じている間もなく、今度は、いよいよ、英タイムズ紙とサンデータイムズ紙が、ウェブサイトの有料化具体案を発表した。5月、それぞれの個別の(今は一緒)ウェブサイト立ち上げ、6月からは閲読有料制を取る。登録後に無料で提供する期間も設ける。

 6月以降、すべての記事が有料化になるかどうかはよくつかめないのだが、ガーディアンには「完全に有料化する」という文章があった。BBCの報道にはタイムズのジャームズ・ハーディング編集長のインタビューも入っている。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/8588432.stm
http://www.guardian.co.uk/media/2010/mar/26/times-website-paywall


 私が驚いたのは、有料の価格である。一日読めるアクセスが1ポンド(130円ぐらい)で、1週間だと2ポンド(260円)。これで両方のサイトが読める。ちなみに、紙のタイムズ(月曜から金曜の平日版)は1ポンドである。

 1ポンドというのは非常に払いやすい価格だ。いまどき、1ポンドではほぼ何も買えない。無料と比べれば確かに違いはあるけれど、かなり心理的抵抗の少ない数字である。日本の100円、あるいは200円ショップのような、区切りのいい数字だ。(1ポンド硬貨一枚のイメージである。)1週間分=2ポンドを払った場合、記事が無料で読めるだけでなく、電子新聞(イー・ペーパー)やそのほかの新しいアプリがついているそうである。

 そして、もしタイムズ(紙)の既に購読者であった場合、追加金を払わず、(これまでのように)無料で読める。

 私は、一日で1ポンド、1週間で2ポンドという数字を聞いた時、非常に新鮮な思いがした。アイパッドやキンドルなどで販売する(あるいは予定の)新聞の購読料がドル計算で15-20ドル(1ドル=92円だと1380円から1840円:訂正)という数字を目にしていたせいもあるだろう。また、フィナンシャル・タイムズのサイト購読料は月額にすると大体15ポンド(サービスによっていろいろ変わるが)=約2000円ぐらい。

 なので、タイムズの有料制を聞いたとき、どんな期間(1日、月額)になるにせよ、5ポンド―15ポンド位を頭に描いていた。それが1ポンド―2ポンドだった、と。しかも、フィナンシャル・タイムズは紙媒体を購読していても、ウェブの閲読には追加料金を払う仕組み(日本の日経のような)であるので、「購読したら閲読無料」もいいなと思った。

 BBCのウェブサイトでティム・ウェーバーというビジネス記者が、「失敗するだろう」と書いている。果たしてそうだろうか?

 BBC側は「ほかにもたくさん同様のニュースが無料で読める」と主張するのだけれど、「タイムズの主張を読みたい」(私のような)人は結構いるかもしれないと思う。有料が10ポンドとか値の張るものだったら、なかなかお金を払う人はいないかもしれないけど、何せ1ポンドなのである。

 私は必要がある時にのみ(調査、特定のトピック)タイムズのウェブサイトを読むタイプだけれど、一日アクセス料を払って、本数には際限がないようだから、思い切りアーカイブから記事をクリップするだろう。英紙はFTを除き、サイトには過去記事も含めてすべての記事が掲載されているので、これができる。

 ハーディング氏のインタビューを見ていて思ったのは、ウェブサイトの有料化の目的は決して「紙媒体のタイムズを救う」ではないのだな、ということ。

 つまり、遅かれ早かれ、新聞はウェブだけになる可能性もある。紙の比率は極度に少なくなるかもしれない。そうした「近い将来」に向けて、布石を打っているのだと思う。ウェブだけで食っていけるようにー。まあ、なかなか「ウェブだけ」ではそうならないかもしれないが、それでも、先を見ている感じがする。

 紙を守ろうとするのでなく、紙は先細りの媒体になるだろう、という認識が底にあると思う。1ポンドは丁度、平日版のタイムズの値段と同じ。そこに結構深い意味があるような気がする。1日アクセスで1ポンド払うことで、事実上、その日のタイムズを「買った」のである。でも、紙をわざわざ買いに行くよりは、自宅や会社で、ひょいと同じ値段を払って、読んだ方が楽だ。まあ、そんな感じがする。

 一つ、気になるのは、どんな形で支払うのかな、と。ペイパルかクレジットカードか。いずれにしろ、このプロセスは非常に簡素でないといけないだろう。ただ、オンラインショッピングがかなり浸透しているので、大きな問題にはならないだろうけれど。その度に煩雑な情報を(再)入力しないとダメなら、面倒くさいなと思う。

 さて、他紙はどうするだろう?

追加:
ハーディング編集長が有料化で読者を失うのは計算済み:質問に答える
http://www.guardian.co.uk/media/organgrinder/2010/mar/26/times-paywall-whitwell

この中に、紙だけでなく、ネットや携帯などで読む広い読者に目を向けていることを示唆したコメントが。

One of the things that we are trying to do here is change the dynamics of the newspaper business. Instead of just defending a dwindling band of existing readers, we're aiming to reach out to a world of people who want to get information and ideas but not from the printed page. They look to their phones and their laptops and their TVs to inform them. We want to be there - and on a host of new devices to come."


マードックの有料化案に反対のジェフ・ジャービス氏のコメント。http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2010/mar/26/rupert-murdoch-pathetic-paywall

 彼のツイートを拾うと、何でも、マードック傘下のスカイニュースに出演して、マードックのことを大批判したとのことである。

by polimediauk | 2010-03-26 20:28 | 新聞業界
 前に何度かこのブログでも話題に上った、歴史学者のNiall Ferguson。果たして彼のファーストネームはなんと読み、これをどのように日本語表記したらよいのだろう?

 私は不覚にも「ニール」とやっていたのだが (Nielなどのスペルであると錯覚)、よくみると違うスペルである・・・と漠然と思っていたところで、ツイッターの中で、誰かが「二アール」と書いていたのを発見した。雑誌「フォーサイト」に載っていたそうである。

 アマゾンで訳書を見ると「二アール」。日本語ウィキペデイアの人物紹介の項目では「二アール」。英文ウィキペディアによれば、Niall は通常「ナイアル」であるで、ただしアイルランドであれば「二アール」。ファーガソン氏はグラスゴー(スコットランド)生まれだ。アイルランドとスコットランドはケルト系であるので、二アールである可能性もあるのかどうかー?

 人の名前なので、一般的な定義が通用しない可能性と、英語・外国語を日本語表記する場合の困難さがあるのだけれど(Davidの訳名もデビッド、デービッドなどいろいろ。本当は最も近いのはデイビッドであろう)、日本語の会話の中に出てきたときに、どっちがいいのかなと思う。

 出版社を通じて確認するしかないのかだろうか?彼の本を訳した人が「二アール」と書いていればそれでよし、とするのかどうか?悩むところである。(もし知っていらっしゃる方がいれば、教えていただきたい。私の方でも新たな情報が入ったら、追加したい。)



皆様、インプットをありがとうございました!!!
「ニオールか二アールかニール」(ichiroさん)の発音のようですね。「ナ」音でないことがはっきりわかりました。

その後、アイルランドに住んでいる方からの情報も、ありがとうございました。(1)実際、一般的には二通りの読み方がある、(2)ファーガソンさんそのものは「ニ」という音らしい (3)いずれにせよ、カタカナで表記することの限界がある・・・というような結論になりそうです。

by polimediauk | 2010-03-21 18:30 | 英国事情
 英国の総選挙は5月6日で、ほぼ決定のようだ。与野党の選挙キャンペーン的な言動が目立つ。

 高級紙の一つ、インディペンデントがロシア人の富豪でロンドン・イブニング・スタンダード紙の大部分の株を持つ、アレクサンドル・レベジェフ(レベデフ)氏が買いそうである。公正取引局OFTが、買収が公正なビジネス上の競争を阻害するかどうかに関して、調査をしない、と発表したのである。

http://www.guardian.co.uk/media/2010/mar/17/oft-alexander-lebedev-independent

 先月、インディペンデント紙を所有するINM社と、イブニングスタンダードの75%の株を持つレベジェフ氏とが、OFTに対し、買収となれば問題が生じるかどうかのおうかがいをたてていた。OFTは4月末までに答えを出せばよかったのだが、急きょ、17日、結果を発表。INM社が株主総会を開くので、これに間に合わせた感じがある。

 何だか嫌なことになってきたな、と思う。富豪・ビジネスマンなどが英国の新聞を所有するというのは、1つの伝統であるけれども、イブニング・スタンダードもインディペンデントも、というのはやっぱり、言論の多彩さを維持するためには、良くないだろう。どうしてこれを阻止できないのかー。というのはやや反語だけれど。もし阻止しようとしたら、それこそビジネスの邪魔をしたとか、保護主義だとか、いろいろ言われるだろう。理由なく止めるわけにはいかない。しかし、不快である。

 インディペンデントは1980年代半ば、高級紙テレグラフにいた記者3人が創刊した。高級紙の中では最も歴史が浅いが、「左」系でずっとがんばってきた。今の編集長はロジャー・オルトン氏。その前はオブザーバー紙にいて、部数をぐんと伸ばした人だ。

 インディペンデントの部数はずっと下がりっぱなしで、他の新聞もそうなのだが、高級紙の中ではガーディアンとともに下げが大きい―年間比較をすると。ともに二けた台の減少だ。「なくなってしまうよりはいい」ということなのかもしれないけれども。イブニングスタンダードもずっと買い手がなくて、レベジェフ氏が買ってしまった。インディペンデントを買収すれば、レベジェフ氏が英国の新聞を買うのはこれで2紙目になる。ロンドン地域ではインディペンデントを無料化するという噂が絶えないー主にガーディアンによれば、だが。ガーディアンはインディペンデントとライバル同士だ。


―イブニング・スタンダードの買収劇やレベジェフ氏の過去記事

元KGBが夕刊紙を所有
「イブニング・スタンダード」の敗因
http://ukmedia.exblog.jp/10784806
by polimediauk | 2010-03-18 08:39 | 新聞業界
 もう、紙の時代は終わりに近づきつつあるのかなー?そんな思いがひしひしと感じられる今日この頃だ。いや、本当に「紙の時代」が終わりに近づいているーというのはやや不正確な言い方で、紙の発行物に書いて・これを制作してお金を得る、ビジネスにする、という時代が終わりに近づきつつある、というのが正しいのだろう。

 私は紙媒体に書くことによって主な収入を得ている。いくつかの出版社は厳しい状態にあって、某媒体の原稿料が若干削減となった。この削減自体は大きな影響とはならない。しかし、これが雪崩の始まりとみるのが正しいのであろう。そのうち、「はい、これでこのメディアは終わりになりました。最後の報告です」といって、ペンを置く・・・ということになるのかもしれない。

 「電子出版があるさ」とは言っても、それがすぐ紙媒体の代わりになるには若干時間がかかりそうであるし、これを待つ時間は私には残されていないかもなと思う。

 ニュースサイトのJAN JANが終わった(休刊かもしれないが)。いろいろな理由はあるだろうが、これも一つの時代の終わりであろう。すっかりメディア環境は変わってしまったのだから。英国のメディア話も、数年前までは定点観測がない感じだったが、今は、米国の話が中心だけれど英国もカバーする「メディアパブ」さんがすごい。そのほかにもたくさんある。メディアのニュースと言えば、テクノロジーのニュースになってしまったのも、大きな変化の1つだろう。(メディアの話がトピックになること自体も。)

 それに、「真実を突く」というメディアの機能だって、たくさんあるネットサイトのレポートがはるかに良い仕事をしてしまう場合もある。佐々木俊尚さんのツイッターから拾ったものだが、


 「 中国って単純じゃないよ」|増田にゃんねるβ http://masuda.livedoor.biz/archives/51403264.html

 こんなに、かみしもを着ている雰囲気がない・本音が出ている・気取らないレポートがネットで読めてしまうのだ。感心してしまったーこんな書き方は、普通、原稿を書いてお金をもらっている人、いわゆるプロの人にはなかなかできない。

 ・・・とあれこれ思いながらも、英新聞を読んだりテレビを見ては面白がり、これまた感心する毎日だ。船が沈むまで、とりあえずは報告を続けたいと思っている。

 新聞協会報の3月16日付に、有料化と英新聞界について書いた。以下はそれに若干補足したものである。

コンテンツ有料化と英新聞界(下)

 「サイト上のニュース閲読は無料」というこれまでの英国の読者の期待を裏切らずに、インターネット・ニュースの配信から収入を得るにはどうするか?英新聞界が目を付けたのが、ネットが本格的に使えて、高度な情報端末として機能する携帯電話、いわゆるスマートフォンや電子書籍端末だ。

 無料のイメージが強い自社ウェブサイトから、課金の仕組みが既に整っているプラットフォームに注目することで、各社は仕切り直しをはかる。

 具体例が、アイフォーン向けに提供する独自の閲読アプリだ。アプリは原則無料だが、ガーディアンが2・39ポンド(約326円)で有料版を販売している。昨年12月中旬の発売から2か月で約10万1千回、ダウンロードされている。3月上旬現在、有料ニュース・アプリのランキングでトップだ。このほか、テレグラフはクロスワード、スポーツ、漫画など、それぞれの有料アプリを販売している。一方、BBCは商業部門BBCワールドのニュースの閲読用に0・59ポンドで「BBCニューズモバイル」アプリを販売中だ。

 今後、テレグラフのように、人気コンテンツを有料切り売りする方法を他社・他局が追随する可能性は大だ。

 米アマゾンの電子書籍端末キンドル上では、英新聞6紙が購読可能だ。購読料はフィナンシャル・タイムズが27・99ドル(約2525円円)、インディペンデント、タイムズ、テレグラフ、デーリー・メールの各紙が22・99ドル、ロンドン・イブニング・スタンダードが9・99ドルとなっている。

 4月末発売予定の米アップル社の電子書籍端末「iPad(アイパッド)」への各紙の参加方法はいまだ明らかになっていないが、アイパッド上のアプリを開発中の2ergo(ツーアーゴ)社のコリン・マッカフリー氏は、アイパッドは出版業にとって「大きな救い」になると述べる(ガーディアン、2月15日付)。紙媒体のコンテンツをネット向けにまったく違う形に編集する必要がなくなり、「紙面のデザインをそのまま」載せられる強みがあるからだ。

 有料テレビの契約料に新聞サイトの閲読を組ませる案も浮上している。例えば衛星放送BスカイBの有料契約者数約1200万人を対象に、毎月の契約料に少額の追加料金を上乗せする。これで複数の新聞サイトのニュースを無制限に閲読できるようにする。読者からの抵抗が予想されるサイト閲読有料化を有料テレビ契約と抱き合わせ、パッケージとして販売する案は一理あろう。各社の知恵比べの時代となった。(*個人的に、この案は非常に頭がいい感じがするー。もし実現したら、だが。紙の新聞を読まない若者層だって、テレビは見ているわけである。そこを狙っているのである。「知らないうちに払っている」というわけだ。ニクイ!あるいはズルイ!)
by polimediauk | 2010-03-16 01:34 | 新聞業界
 新聞社のウェブサイト有料化導入に関する議論が百出だ。アップルのアイパッド(iPad)の発売が英国(米国以外の世界数か国)では4月末となり、電子端末機器を通じての有料化にも大きな期待がわいている。このトピックは非常に話の流れがはやい。先日も、ニューヨークタイムズ(2011年から有料化導入予定)が、書評記事を有料配信するというニュースがあったばかりだ。

 英国の新聞について言えば、以前はあった大きな抵抗感が今はなくなったのが、不思議と言えば不思議。「有料化もありだぞ」という論が随分と出たからだろうか。

 このトピックに関して、新聞協会報に書いた記事を下に貼り付けようと思うのだけれど、その前に、協会報の3月2日付におもしろいコラムがあったので、紹介したい。
 
 「週刊メモ」という1面下のコラム。マーケティング調査会社MIFTの調査を紹介している。この中で、MI世代(20-34歳男性)は「活字を読むの好き」だが、新聞をあまり読まないという。新聞離れの理由は「料金がかかる」「読むのに時間がかかる」「他のメディアから得られる情報で足りている」「余計な情報が多い」=つまり、新聞を非効率な情報源ととらえているからのようだ。ところが、新聞を読む人に聞くと、新聞を効率的な情報を得られる存在と見ていた。

 筆者は、「欲しい情報だけを効率的に検索してくる、そんな情報行動に親しんだ若者が閲読習慣から離れ」たことに目をつける。つまり、効率良い情報源と見なされたら、対価を得る可能性がある、と。

 最近、私は新聞のことを考える時、そして、大人気のソーシャルメディアを考える時、「関係性の高さ・低さ」(relevance 、irrelevance)という言葉が浮かんでくる。

 ソーシャルメディアが何故人気になったかの分析は、既に詳しい人がたくさんいらっしゃるのだけれど、私はある情報が「自分に関係あるか、ないか」ではないかと思う。「自分の」趣味、発言、友達、ネットワークー。よく、「つながりたいという感情があるから、人気が出た」と言われるけれど、これを私は、人と人とが手をつなぐ、つまり、広い意味の友人を作ることととらえていたので、ピンとこなかった。

 しかし、自分に関係のあること、つまり身近に感じられることだと、人は興味を持つものなのだと思う。例えば、事件・事故のニュースにしたって、自分が行ったことがある場所や、住んでいるあるいは通勤している場所・建物だったら、興味の具合がグンと違う。

 自分に関連することが書かれてある新聞―。主義主張に同感できて、その新聞独自の切り口による世情分析がある新聞―。「私の」新聞と言える新聞―。それならお金を払うだろうな、と思う。

                       ****

 以下は新聞協会報3月9日付の掲載記事に若干付け足したものである。

コンテンツ有料化と英新聞(上)

 インターネット上の記事を原則無料で提供してきた英新聞界が、有料化導入志向を強めている。昨年8月、米メディア大手ニューズ・コーポレーションが英新聞数紙を含む傘下の新聞サイトに有料閲読制を取り入れると宣言したのが一つのきっかけだ。英各紙サイトの有料化への動きと、新たな収入源になると期待がかかるスマートフォンや電子書籍閲読端末への取り組みに注目した。

 英国の新聞社サイトは、有料で電子版を提供する経済紙フィナンシャル・タイムズを除き、原則として過去記事も含めて無料でニュースを提供してきた。テレビ受信料で活動費をまかなうBBC(英国放送協会)が無料で提供するBBCニュースの存在やグーグルニュースをはじめとするニュースアグリゲーターサイトの人気が背景にあった。

 しかし、メディア環境の激変と不景気による広告収入の縮小から、有料化が現実味を帯びてきた。ニューズ社による傘下英紙サイトへの有料制導入宣言や、米ニューヨーク・タイムズの有料化案も刺激となった。

 大手紙の中で有料化導入を明確に表明しているのは、ニューズ社発行のタイムズ、サンデー・タイムズ、サン、ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙。早ければ4月末にも導入予定だ。各記事ごとに課金するマイクロ・ペイメント方式ではなく、24時間使える「一日パス」や月額購読料の徴収を検討している。

 ガーディアン紙は有料化反対派だが、同紙のサイトのコンテンツの1つで、デジタル・メディアにかかわる情報を配信する「ペイドコンテント」を年間249ポンド(約3万3800円)で提供する案を視野に入れる。

 テレグラフはニュースの有料化を現時点で想定せず、サイトを使っての物品の販売や特定の趣味を媒介とする「有料会員制クラブ」の会員になってもらうなど、eコマースの開発に力を入れている。

 一部の地方紙ではすでに試験的に有料化が始まった。昨年11月末からは286の地方紙を発行するジョンストン・プレス社傘下の新聞6紙がウェブサイトの有料購読の試験提供を始め、220の地方紙を発行するティンドル・ニューズペーパーズ社は、昨年夏の試験提供が好評だったため、40紙のサイトで有料制の導入を計画している。

 欧州他国では、独出版社アクセル・シュプリンガーが傘下の2紙で2月から、また仏フィガロ紙も同月から有料制を開始した。オランダ、デンマーク、ノルウェーなどで300紙を発行するメコム社も近く導入予定だ。いずれの場合も、無料(フリー)記事を残しながら、プレミアム・コンテンツは有料という「フリーミアム」方式をとる。

 有料会員サイトのノウハウを提供するサブハブ・サイトの経営者エバン・ルドウスキー氏は、「有料の壁」導入には有料・無料の二者択一ではなく、無料記事と有料記事の「バランスを上手にとる」ことが成功の鍵とする(ペイドコンテント、2月22日付)。(「下」につづく)

こんな話も:
 ニューズ社の幹部が、ペイウオールと無料は共存できる、と発言
 News Corp executive: paywalls and free model can co-exist

http://www.guardian.co.uk/media/2010/mar/10/news-corp-paywalls-coexist
by polimediauk | 2010-03-11 02:42 | 新聞業界

ビズ・ストーンのメール

 ツイッターをやっている人で、ニュースレターを受け取ってもいいとした人には、ツイッターの創始者の一人、ビズ・ストーンから4日、お知らせメールが送られている。下にコピーする。

 これによると、ツイッターは1年で利用者が1500%増加し、中で働くスタッフは500%増えたという。現在、丁度、140人目のフルタイムのスタッフを雇ったばかり。

 140人だけで仕事をしているわけではなく、外部には数千人規模のプラットフォームの開発者がいて、7000ほどのアプリを開発したという。

 詳細はhttp://twitter.comで見れる・読めるようだ。

 日本で原口大臣のツイッターが「いかがなものか」と問題視されたようだ(大手メディアに)。チリの災害状況をどんどん流したために。

 ツイッターをやる政治家が増えているようだが、メディアはどうなのだろう?あまり増えているというのを聞かないが。会社名を出さずにやっている人が「ゴマン」と、いることを望む。好むと好まないにしろ、やってみないと分からず、情報の行き来が激しいのだから。そして、誰でも始められるのだから―誰にも気兼ねなく、やめることもできるし。

 できれば、記者が実名でどんどん発信してほしいー少なくとも、英国ではそうなっている。ブログもそうだしー。個人名で発信することを、一般の人は期待し、待っていると思う。でも、ブログだとまだまだ裃(かみしも)感がある。ツイッターなら気楽。

 英語のツイッターと日本語のツイッターをやってみて、違いに気づく。誰をフォローするのかにもよると思うので、この「違い」が本当に日英の文化の違いを現すものなのか、わからないーーと断った上での、あくまでも感想であるが、①日本はなぜかオリンピックのことを見ている・熱狂的に語る人が圧倒的に多かった。オリンピック信仰か?英国はあくまでもクールだった―スキーをしないからかな?②日本は、やや真面目な感じであるのと、③フォロワーが何人いるかとか、誰がフォローしているかとかを、とても気にしている。また、フォローをやめると怒る人も。「断ってから」フォローしてほしい、あるいは去ってほしいようだ。もっと気楽にやりましょう・・・・。「所詮、ジョーク」といった、米教授ジェフ・ジャービス氏の心意気。

***

 
Hi there,

In the early days of Twitter, I used to send out short updates just to keep everyone in the loop since so much was happening. It's been a while, but you signed up for short, monthly updates from Twitter so we thought it was time to start sharing more information. We've had quite a year. If you haven't visited in a while, we'd like to invite you to come have a look at http://twitter.com -- we've been busy!

Growing Up

In the course of a year, registered Twitter accounts have grown more than 1,500% and our team has grown 500%. Recently, we hired our 140th employee! His name is Aaron and he's an engineer focused on building internal tools to help promote productivity, communication, and support within our company. We celebrated with a little dance party.

Features of Note

Some features of note that we released over the course of a year include the ability to create lists, quickly spread information with a retweet button, and an easier way to activate your mobile phone to work with Twitter over SMS. We also built a new mobile web site that looks and works much better on smart phones.

Feeling Inspired

By working together during critical times when others needed help, sharing important information that otherwise might not make the news, and inventing new and interesting ways to use Twitter, you've shown us that Twitter is more than a triumph of technology -- it is a triumph of humanity. Projects like Fledgling and Hope140 were inspired by you.

Chirp!

While there may only be 140 full-time employees working at the Twitter offices, there are thousands of dedicated platform developers who have now created more than 70,000 registered Twitter applications creating variety and utility for all of us. We'll be gathering this spring at Chirp, our first ever official Twitter developer conference.

Thanks,

Biz Stone, Co-founder (@Biz)
Twitter, Inc.
by polimediauk | 2010-03-04 21:54 | ネット業界
 デンマークの有力紙「ポリティケン」が、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を再掲載した件で、イスラム教団体に謝罪したことが26日分かり、デンマーク国内の他のメディアや政治家らから非難の嵐が起きている。

 複数の媒体が報道したところによると、ポリティケンは、中東諸国やオーストラリアのムスリム教徒を代表したサウジアラビア人の弁護士との間で和解に応じ、謝罪を行ったもようだ。
ポリティケンのトゥア・セイデンファーデン編集長は、風刺画がムスリム教徒に対し侮辱感を与えたことを謝罪したのであって、再掲載自体を謝罪したのではない、という。「私たちには(ターバンを巻いたムハンマドに見える風刺画を描いた)カート・ウェステガードの風刺画を掲載する権利がある、元々の12枚の風刺画を掲載する権利がある、世界中にある風刺画を掲載する権利がある」と述べている。(補足だが、ウェステガード氏は、ターバン姿の風刺画に関し、これは「ムハンマドではない」と説明しているようだ。)

 もともと、デンマークの別の新聞「ユランズ・ポステン」紙が2005年9月末、12枚のムハンマドに関わる風刺画を掲載した。06年年明けから、イスラム教徒を冒とくしたとして、中東を中心にしたイスラム教国から非難の声が上がった。欧州数か国では、掲載への抗議は表現の自由を侵害する動きとし、逆にユランズ・ポステンを支持する運動が起きた。ポリティケン紙の風刺画再掲載は2008年だ。

 和解は、ポリティケンとムハンマドの子孫94,923人を代表する8つの団体との間で合意された。

 ポリティケン編集長によれば、和解は「前向きなステップ」だ。風刺画掲載の反対者と表現の自由派の間の「緊張感を取り除く可能性がある」、「デンマークと他国との関係が改善される希望を示している」。謝罪・和解は「言論の自由の安売りではない」としている。

  イスラム教徒側を代表した弁護士ファイサル・ヤマニ氏は、「良い結果になった」と満足している様子だ。独シュピーゲル・オンラインによれば、「これを勝利として語るべきではない」、「両者が背景を理解した」結果である、「謝罪をしたポリティケンには勇気があったと思う」。

 複数のデンマークの政治家はポリティケンの動きを非難している。極右派とされるデンマーク国民党の代表は、編集長がデンマークの、そして西欧の言論の自由を「売り渡した」と表現する。与党自由党の政務広報官は「謝罪する必要はなかった」と述べる。

 自由党の元議長だったウッフェ・エレマンーヤンセン氏は、肯定的に見る。対立ばかりの世界の中で、「互いに共通の理解」を得ようとしたのだ、と。

 ヤマニ弁護士がデンマークの11紙に対し、ウェブサイト上に掲載されている風刺画を削除し、謝罪と再掲載しないよう約束することを求めたのは、昨年の8月だ。この中で、和解が成立したのはポリティケンのみ。

 もともとの風刺画を掲載したユランズ・ポステンも同弁護士から削除や謝罪を要求されたが、和解には応じていない。同紙の編集長は、ポリティケンが「言論の自由の戦いを裏切った」「脅しに屈服した」としている。

 ユランズ・ポステンとポリティケンは同じ出版社から出ているが、編集局は独立している。互いにライバル関係とも言える2紙だ。

 私は2006年と07年、デンマークに行って風刺画問題を取材した時、ポリティケン編集長に会って話を聞いた。一体何が起きたのかな?と思う。

 ユランズ・ポステンはよく「保守派」と言われる。与党自由党に近い、とも。(現在のNATO事務総長アナス・フォー・ラスムセン氏は、元デンマーク首相。在任当時、風刺画問題が発生した。)

 一方のポリティケンはやや親イスラム教徒かな、という感じがした(デンマークに住んでいて、もっと知っていらっしゃる方は教えていただきたい)。 

 もしかして、巨額の裁判費用を出したくない、という考慮もあったのかなと思う。サウジアラビア出身の弁護士が非常にやり手だったとか。

 ポジティブな意味で、「区切りをつける」ならいいのだけれども。

 ーセイデンファーデン氏への2006年の風刺画事件当時のインタビューは以下
 http://ukmedia.exblog.jp/6560560
by polimediauk | 2010-03-01 22:47 | ネット業界