小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 個人的に今最も興味のあるトピックの1つがカトリック教会の神父による性的虐待とローマ法王の責任問題である。英メディアでもさかんにとりあげている。毎日の記事は以下。

カトリック教会:神父の性的虐待次々発覚 バチカン窮地に

http://mainichi.jp/select/today/news/20100403k0000m030065000c.htm

(引用)【ローマ藤原章生】カトリック教会神父による子供に対する過去の性的虐待が、3月以降に米欧で相次ぎ発覚している。しかもローマ法王ベネディクト16世(82)が虐待を知りながら見逃していたとの疑惑も報じられ、法王の辞任を求める抗議デモが起きるなどバチカン(法王庁)は窮地に追い込まれている。
 騒動の直接のきっかけは、アイルランド政府の調査委員会が昨年11月に出した報告書だ。それによると、アイルランドでは1930~80年代にかけ、学校など教会運営の100以上の施設で、数百人の神父や尼僧が少なくとも2500人の未成年者に性的虐待を加えた。9年がかりでまとめた報告者は「組織的な隠ぺいがあった」と結論付けた。
 また、ドイツのシュピーゲル誌によると、ベネディクト16世の生地ドイツでも75年から83年にかけ、西ベルリンのイエズス会系の名門校で約500件の性的虐待があった。
 被害はドイツの他の都市や、スイス、スペイン、オランダでも続々と発覚している。(引用終わり):
元記事はもっと長いので、関心のある方は見ていただきたい。

 この問題は、西欧カトリック教会の存続を揺るがす大きな危機ではないかと思っている。何しろ、(多くは子供の・中心は男児)信者の信頼・信仰を利用して性的虐待を続け+虐待者を警察に出すよりも、むしろ覆い隠そうとしていたからである。信頼・信仰が最も肝心な部分だとしたら、この裏切りは相当重い。

 そして、カトリック神父は生涯独身(他者と性的交渉を持たない)ということになっているのだけれど、これも関係してくるだろう。もちろん、性的交渉を持たない=だから子供信者への虐待につながったとは必ずしも言えない。「それとこれは別だ」とカトリック教会がいうのも分かる。それでも、(これは私が信者ではないから言えるのだろうけれど)、性的欲望を止めることは何か人間にとって不自然すぎることではないのかどうか、信仰ゆえにそうした欲望を抑えるのは、神に身をささげるという観点からはいいのかもしれないが、それにしても、一度ここで、どうするべきか考えてもいいのではないか?―虐待をした神父は全体のほんの一部ではあろうけれども。

 男子児童(とその親や信者)の心と体の傷がまだ残る中、信頼を取り戻すには、聖職者が信頼を裏切る行為を行った時、教会内で処理するのではなく、世俗の機関に引き渡すことや、子供を作る以外の目的での性行為も人間の自然な行為として肯定するなど、教義や習慣の大きな変更があるべきだと思う。・・というのは簡単で、これを変えるには長い時間がかかるのかもしれないが。

 本当に胸がいたむ出来事である。ローマ法王の退位運動を行う人の気持ちが分かるような気がする。実現することはないかもしれないが、「けじめ」をつけてほしいという気持ちが底にあるような気がする。相当の強い思いがー。生半可の改革では信頼感は取り戻せない。決して、法王庁の一部が言ったように、単なる「メディアによる攻撃」ではない。(今の法王がドイツ人なので、常に攻撃はされてきたのだけれども。)

カトリック教会の避妊の考え方(参考)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1010478325

性に対する考え方

貞潔に反する罪(Offenses against chastity)として,淫行(lust)[2351],自慰(masturbation)[2352],姦淫(fornication)[2353],ポルノ(pornography)[2354],売春(prostitution)[2355],強姦(rape)[2356]

http://www.catholic-teachers.com/2.htm
 
 ウィキペディア日本語の同性愛とカトリックに関する説明によると、「同性愛行為は自然法に反する罪深いものだとされる」。男児への性的虐待はこの意味でもかなり罪深いことになろう。
by polimediauk | 2010-04-05 17:52 | 英国事情

 英国で洋服を買いに行くとき、ウインドーショッピングでもいいのだが、実際に洋服を手に取ってみると体のサイズがでかいものが多いーこんな経験をする日本女性はかなり多いのではないかと思う。(逆に日本に帰ると、体に合いそうなサイズのものがたくさんあって、感激するわけだが。)

 実際、体が小さいインド系、パキスタン系の女性もたくさん住んでいるので、よく探せばいろいろあるのだけれども、一通りウインドーショッピングをして、何だか馬鹿にされたような思いがして帰宅する・・・そんなことがかつてよくあった。

 つまり、自分は想定購買者の中に入っていないな、と。相手の視野に入っていない。これに対するがっかり感。中に入っていけないような感じ。疎外感。

 話は飛ぶようだが、英国でも(日本のように)政治の世界にもっと女性を増やすべきだ、メディアの目立つところにももっと女性が出るべきだーという声がある。これを、単に「フェミニズム」の一つとして解釈すると抜け落ちるものがある気がする。つまり、女性は人口の上で半分だし、女性は重要な存在なのだから、もっと女性の声を・・・と考えるとしたら、である。「女性独自の視点」(???)ということで、女性を重宝するやり方もあったな。(日本の媒体の某ウェブサイトは女性記者だけのコーナーがある。驚きである。「記者」という職業で男女のどこが違うのだろう?)

「女性が」という部分が大事なのでなく、「一定の特性を持った人たちに、政界なりメディアの目立つ部分がほぼ独占されている」という点が問題なのだ。

サンデータイムズのコラムに
Dear BBC, women vote too (BBCよ、女性も投票するんだぞ)
http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/columnists/guest_contributors/article7086628.ece

という記事があった。


 具体的にコラムニストが指摘しているのは、BBCの朝のラジオ報道番組「TODAY」のプリゼンターが一人を除き、全員男性であること、そしてこの番組のエディターが、「女性にはこれほど難しい仕事はできない」と発言したことだ。この番組では、政治家を相手に丁々発止のインタビューを行う手腕が問われる。考えてみれば本当に失礼な言い方(エディターが)だな、と思った。

 この記事の中で紹介されているのが、政府の数字で、若い女性の大学進学率が51%であるのに対し、男性は38%、新任弁護士の60%が女性だという。

 ・・・というのはフェミニズム的な「もっと女性を」という見方とも言えるが、コラムニストは、「自分は白人、中流階級、女性」であり、そんな自分も疎外感を感じるのであるから、「アジア系、あるいはイスラム系の人の疎外感はいくばくか」と書く。

 私は「TODAY」を熱心に聞かなくなってずいぶんになる。その大きな理由の1つは、「男性、中高年、白人、英南部」というグループに属するような人々がプレゼンターで、ものの見方、言葉の応酬の仕方、価値観が似通っており、何だか鼻につくようになったからだ。同じような考え方の同じようなバックグラウンドというのはインタビューされる方(政治家など)も同様だ。コラムニストは、BBCの夜の解説番組「ニューズナイト」を見ての同様の感想を書いている。

 女性も投票しているーまさにそうだなと思う。
by polimediauk | 2010-04-04 21:02 | 英国事情