小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 日本の書籍の印税は10%・・ということを、佐々木俊尚さんのツイッターか「電子書籍の衝撃」のどちらかで目にした。

 英国(米国も?)は著者取り分が50%だそうである。これを聞いて、私は非常に驚いた。例えば日本語と英語で本を書いた場合、日本語では本当にせっせと大量に売らないと、なかなかまとまった収入は期待できない。英語だと半分なのだから、非常に効率が良い稼ぎ方になるだろうーあくまでも仮定の話だが。(追記:8月7日:著者取り分や印税の話は、ここで言うほど単純比較できるものではないことが、コメントを残してくださった方のご指摘で分かってきました。まず①日本と海外では印税計算に掛かる母数が違う。日本の場合「印刷」部数×定価×著者印税率だが、海外の場合「実売」部数×定価×著者印税率、となるのが主流②比較の対象が違うのではないか③例えば卸値をベースにして計算すると、日本とほぼ同じとなる可能性がある、④個々の契約や販売体制が違うので、%の違いにのみ注目しても、あまり意味がないーなどが指摘されたことです。単純比較はできないと思いつつも、数字をやはり知りたいようにも思います。紙と電子本の価格体制、ロイヤリティー体制に関して、情報を整理して、近く改めて書きたいと思います。

 ところが、電子書籍の場合、これが25%に下がるのがザラなようだ。そこで、著者(そして作家のエージェントたち)が、これを何とか50%にあげようと、戦いが起きている。

 エコノミスト The Day of the Jackal
http://www.economist.com/blogs/prospero/2010/07/andrew_wylies_publishing_deal_amazon

 何でも、出版エージェントのアンドリュー・ワイリーという人が、アマゾンを通して、直接電子書籍を売ることにしたらしい。同氏が手がけた作家はフィリップ・ロス、サルマン・ラシュディー、ジョン・アップダイクなど著名な人がたくさんいる。ワイリー氏は、通常の出版社を通して売ると、電子書籍での著者の取り分が少なくなるので、電子出版専門の出版社を自分で立ち上げ、アマゾンと2年間の契約をした。これに対し、大手出版社ランダムハウスは、もうワイリー氏とは仕事をしない(問題が片付くまで)と言っている。

関連記事
http://www.thebookseller.co.uk/news/124047-agent-andrew-wylie-launches-e-book-list-on-kindle.html
http://www.thebookseller.co.uk/news/124089-page.html

 英国の「作家協会」のトム・ホランド氏は、英国の書籍市場で電子書籍は「まだ1%ぐらい」だが、今後どんどん伸びると見ており、「25%」という数字は低すぎるという。(メディアガーディアン報道、12日付)

 教育分野の出版社ピアソン(でもエコノミストやFTが傘下にある)のトップ、マジョリー・スカルディノ氏が、中間決算発表時にこの点について聞かれ、「現在は過渡期だが、印税は上がるだろう」と述べている。

 ただし、スカルディノ氏によれば、紙や印刷など経費は、本の価格の「25%」程度だそうで、電子書籍になったからといって、ものすごく大幅に経費がカットされるわけではない、と釘をさしている。それでも、電子書籍の「正当な印税」を払うべきだという考えを述べた。・・・ということはつまり、25%のままではない、ということだろう。

 さて、日本は一体どうなるんだろう?

                       ****

日本の印税の詳しい話:本の印税ってどのくらい?
http://homepage2.nifty.com/osiete/s653.htm

追加情報:紙媒体:50%、電子書籍:25%の該当箇所をペースト。
上のエコノミスト記事内:
In particular, in contracts for works produced since agents started discussing royalties for electronic books, publishers have at most been willing to offer authors 25% of net revenues on e-books, compared with the typical 50% split for printed books.

作家団体:オーサーズギルドの文章から「4」の一部
http://www.authorsguild.org/advocacy/articles/wylie-amazon-and-random-house-battle.html
Knowledgeable authors and agents, however, are well aware that e-book royalty rates of 25% of net proceeds are exceedingly low and contrary to the long-standing practice of authors and publishers to, effectively, split evenly the net proceeds of book sales.

by polimediauk | 2010-07-31 16:26 | ネット業界
 昨晩、ツイッターを見ていたら、「アフガン戦争の米軍機密書類が大量に公表された」「内部告発サイト、ウィキリークス(Wikileaks)が暴露」といったつぶやきが、ガーディアンやチャンネル4などのアカウントから続々と流れてきた。

 何でも、9万2000点という大量の米軍機密書類が、数週間前に米ニューヨークタイムズ、独シュピーゲル、英ガーディアンにウィキリークスを通じて渡され、26日に(月曜日付けに直しました)各紙が一斉公開したという。

 アフガン戦といえば、2001年に開戦したものの、タリバン勢力を制圧どころか、一人また一人とゲリラ戦で米英兵士が命を落としているのが現状の、にっちもさっちも行かない状態。参戦している政府側にとっては、さぞ自国民から隠したい情報が多いだろうと思わせる戦争である。

 さて、日本のメディアはどう報じるのだろうと楽しみになった。今朝、新聞社の電子版を見ると、ワシントン発のいくつかは、米政府の側に立って、「けしからんことが起きた」というスタンスであるーというか、新聞社の意見らしい意見は皆目見当たらないのだが(紙の新聞には出ていた可能性が大だが、私は無料サイトの速報のみ見た)、米政府の反応(=けしからん)をそのまま、そっけなく伝えることで、足場を米政府側に置いたように見えた。AFPは、情報を肯定的な文脈で伝えているようだった。

内部告発サイト、米軍機密資料9万2000点公表
http://www.afpbb.com/article/politics/2742943/6012373

内部告発サイト「ウィキリークス」とは?創設者が語る「使命」
http://www.afpbb.com/article/politics/2743297/6012826

 英国で力が入っているのが、情報公開の3つの新聞の1つに選ばれた、ガーディアンである。日本時間の午後9時(英国の昼1時)から、調査報道記者デービッド・リー氏がサイトを通じて読者の質問に答える、というコーナーまで作っている。(質疑応答は以下。)

http://www.guardian.co.uk/world/2010/jul/26/afghan-war-logs-david-leigh-webchat

 ウィキリークス創始者ジュリアン・アサーンジ(アッサンジ、Julian Assange)
氏の会見の様子が、昼ごろ、ユーストリームで配信された。(以下のウェブサイトで、後でも録画が見れるようになるかもしれない。http://frontlineclub.com/)
時々途切れがちになったので、ほんのメモ程度などで私が拾ったのは以下である。質問は会見場にいた記者で、答えがアサーンジ氏。答えの順序は若干入れ替わっている(メモの紙の順番がごっちゃになったのでー)。***

―公開した情報の信憑性は?
 これまでやってきたように、情報源や内容の信憑性を確認している(ので大丈夫)。

―低レベルの情報だったのではないか?最高機密は含まれない内容だが?
 今回の情報に含まれていないものは、最高機密=トップシークレット、特殊部隊に関わる情報、CIA情報などだ。通常の米軍の活動を公表した。

―あえて出さなかった情報があるか?
 ある。少なくとも1万5000の情報がある。

―米政府があなたに関わる情報を出身国であるオーストラリア政府から得ようとした動きはあるか?
 ある。オーストラリア政府は常に拒否している。

―今回の情報で、特にこれだ!という情報は何になるか?
 一つのこれだ!というのは、ない。しかし、戦争全体を現している。小さな出来事の積み重ねによる戦争の全体像だ。例えば、181人のアフガンの民間人が米軍による攻撃で亡くなった事件など。

―新聞社との協力体制を教えて欲しい。
 米ニューヨークタイムズ、ウィキリークス、英ガーディアン、独シュピーゲルと協力し合い、いつ情報を公開するかを決めた。ガーディアンで糸口になったのは、調査報道記者のニック・デービス。そして、各紙の編集長と話を進めた。

―英国はウィキリークスにとってどんな意味合いを持つか?
 英国はご存知の通り、監視社会だ。しかし、その一方では、活発な政治ジャーナリズムとこれを支える人たちがいる。西欧社会、そして英国で、自分がウィキリークスの活動のために逮捕される可能性はないと思う。

―米国防省は機密を公開したことで、国防に悪影響が出る、と言っているが。
 米政府が軍に関する情報を出したがらないのは、2つの理由があると思う。1つは、関係者が軍法裁判にかけられること、もう1つは不正を隠すためだ。日々の軍事行動に関わる機密情報は、消え行く存在(=古くなる)だと思う。今回の公表は2004年から2009年末までに関わる情報だから、悪影響はないと思う。

 私が今着ているTシャツには、ノルウェー語の文句が入っている。ノルウェーで雪が積もり、不正を隠そうと思ってその深い雪の中に入っていても、(いつか雪は消えて)真実が明るみに出る、と意味をあらわしている。

 今回の情報は、かつての「ペンタゴン文書」(ベトナム戦争に関する極秘文書、1970年代に公表され、物議をかもす)に匹敵すると思う。しかし、こちらのほうが情報量がはるかに大きい上に、(米国とベトナムのみではなく)はるかに大きな読者層を相手にしている。また、インターネットで公開しているので、人々はコメントを残せる。

―ウイキリークスと政治圧力との関係は?
 個人から集めた資金で運営されているので、政治勢力からは独立している。しかし、同時に、大衆にその活動の説明責任が生じると思う。

―情報の価値とメディアについて
 今回の情報はアフガン戦争の6年間の軌跡だ。例えば、米国の部隊ごとにアフガン人何人を殺害したのかの数字を作成し、これを政府発表の数字とを比較する手がある。大きな、戦略図を壁に描くことができるーやってみてはどうだろうか。

―米軍関係者からのリークが多いようだ。英軍関係者からはないのか?
 たくさんある。ちなみに、英国防省はリークを防ぐために、BTに頼み、同省内からウィキリークスへアクセスできないようにした。

 また、独の情報機関から、コソボでの汚職疑惑の情報を出すなと言われたことがある。裁判に訴えるぞ、と。「どうぞ訴えてください。どんな法律に違反したことになるのでしょうか?」と聞いたら、訴追は起きなかった。

―実際に、今回の情報公開のために、米軍などで犠牲者が出たらどうするのか?
 何故そうなったのかを見て、問題があったら、これを直したい。必要に応じてポリシーを変える。

―何故今回、新聞社だけに限って情報を公開しようとしたのか?何故放送業者に声をかけなかったのか?
 私はもともと、紙媒体のジャーナリストなのでー。今まで番組放送をしたことがないので。今後は考慮する。

―どれぐらいの人数で作業を行っているか?

 「非常に小さい数」といっておきたい。これに、800人のボランティアがいる。支援者は数万人規模だ。***

 ガーディアンの特集記事 Afghanistan war logs
http://www.guardian.co.uk/world/series/afghanistan-the-war-logs

 ガーディアンってすごいな、新聞ってすごい、新聞のウェブサイトってすごいな!と思わせる事件だった。いつもはウェブのみの閲読の私だが、早速、紙のガーディアンを買いに、近くの小売店に走った(一軒目は売り切れだった。)

関連過去記事:
ウィキリークス創始者の横顔
http://ukmedia.exblog.jp/14654443
ガーディアンの調査報道に関する原稿
http://ukmedia.exblog.jp/14423428

ところで「アフガン戦争って、何だっけ?」という人に、
「英国ニュースダイジェスト」のニュース解説によるアフガン情勢
http://www.news-digest.co.uk/news/content/view/6586/263/

日本語ウィキペディアの「ペンタゴンペーパーズ」もご参照を。 





 




 
by polimediauk | 2010-07-26 23:03 | ウィキリークス
 タイムズ、サンデータイムズのウェブサイトの閲読有料化から3週間余となったが、アクセスする読者が減ったのはまず確かとしても、どれぐらい減ったのか、正確にはわからない。タイムズ側がまだ正式発表をしていないためだ。

 いくつかの試算は出ていて、ガーディアン紙の計算によれば、2月時点のタイムズのオンラインサイトの読者と比較して、90%減少した、という。

http://www.guardian.co.uk/media/2010/jul/20/times-paywall-readership

 ただし、これは必ずしも失敗とはいえないだろう。こういうレベルを覚悟してやりだしたわけだし、紙の新聞を買ってくれるか、あるいは購読者になってくれれば、数が少なくてもよい、という考えのはずだ。(ネット上の影響力というのは度外視だ。)

 「英国ニュースダイジェスト」紙のニュース解説「ウイークリーアイ」に、タイムズサイトの課金に関して、タイムズという新聞そのものに注目して書いた。

 以下のアドレスからダイジェストのウイークリーアイのサイトが読める。きれいに表を入れてくれている。このシリーズには他のジャーナリストも英国のその時々のトピックに関して書いているので、ご関心のある方はご覧になっていただきたい。

http://www.news-digest.co.uk/news/content/view/6648/263/

 以下はその元原稿である。内容はこれまでに書いたもの(東洋経済など)と重なるが、タイムズの歴史や「Newspaper of Record」や表が新規分である。

  タイムズのサイト有料化ー大いなる実験の行方は?

 これまで無料で読めたタイムズとサンデー・タイムズの電子版記事が、この7月から全面有料化となった。紙の新聞の発行部数の慢性的下落や広告収入の落ち込みに苦しむ英国の新聞界は、どこも台所事情が厳しい。新聞の存続をかけて、電子版有料化に踏み切った両紙の動きは、果たして成功するだろうか?

 高級紙タイムズとその日曜版サンデー・タイムズのウェブサイトが、この7月から全面有料制となった。両紙のウェブサイトで記事を閲読したい人は、1日で1ポンド(約132円)か1週間で2ポンドの料金を払わないと、読めないことになった(ただし、7月一杯はキャンペーン中で、30日で1ポンドという選択肢がある)。一部の記事だけではなくすべてを有料化するのは英紙では初めてだ。

 閲読有料化の理由を、両紙は「良質なジャーナリズムの維持に必要」、「生き残り戦略」と説明する。日本同様、英国でも新聞の発行部数が慢性的に下落している。読者も広告主もネットに移動する傾向が続いており、景気の動向に左右される広告収入に大きく依存するビジネスモデルからの脱却を狙っているのである。

―勇気ある一歩

 両紙のサイト閲読有料化の決断は、英新聞界では勇気ある一歩、あるいは大きな実験となろう。というのも、英紙がウェブサイトを開設し始めた1990年代半ば以降、主要紙の大部分が過去記事も含めて無料でニュースを提供してきたからだ。動画が豊富なBBCニュース、世界中のニュースサイトから記事を拾ってくるグーグル・ニュースなど、無料で読めるニュースはネット上に氾濫している。いつしか「ニュースは無料で提供するもの」という概念が根付いてしまった。

 英各紙はここ数年、ウェブサイトの拡充に力を入れてきたが、サイトが生み出す利益は紙媒体の発行部数の落ち込みや広告収入の下落でできた穴を埋めるには程遠かった。業界筋によれば、大手紙のデジタル収入は総収入の数パーセントで、アクセス数を急激に拡大させたテレグラフ紙でも「10から20%の間」(同紙デジタルスタッフ談)。そこで、有料化モデルに脚光が集まった。

―経済紙では一定の成功

 サイトを有料化すれば「読者がライバル紙に逃げてしまう」(ガーディアン編集長)という懸念は大きいが、実際に、成功している新聞がいくつかある。有料と無料の記事を混在させたサイト作りをしている米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の有料購読者は現在約100万人。英国では経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が約12万人の有料購読者を持つ。

 いずれも経済紙であり、専門性を持つ媒体だが、一般紙では、米ニューヨークタイムズが過去2年間、有料購読制を取って成功していた。サイト閲読のユーザー数拡大のため、購読制をやめてしまったものの、来年から、新たな購読制を実施予定だ。

 WSJ、タイムズ、サンデー・タイムズはいずれも「メディア王」と呼ばれるルパート・マードック氏の米メディア大手ニューズ社の傘下にある。同氏は昨年、傘下の新聞のサイトのすべてを有料化する方針を打ち出している。

 現在のところ、ほかの大手高級紙がタイムズなどのサイト有料化に追随する動きはまだ出ていない。左派系高級紙ガーディアンは「サイト有料化は民主主義に反する」「ネット上の会話から孤立する」など、有料化反対の姿勢をあらわにしてきた。しかし、同紙編集長は「何が何でも有料化反対という原理主義者ではない」という発言もしている。実際、携帯電話での閲読には有料アプリを販売しており、メディア、アート、環境など、同紙が得意な分野を「有料の壁」(paywall)に入れる可能性もある。

 果たして、マードック氏の「実験」成功するだろうか?ライバル他紙が成り行きを注視している。

ータイムズのこれまで

1785年:デーリー・ユニバーサル・レジスター紙が創刊(3年後、「タイムズ」に改名
1806年:最初のイラストを掲載
1807年:社内最初の外国特派員が任命される
1814年:所有者ジョン・ウオルター2世が、蒸気機関を使った高速印刷機を導入する
1830年:ある貴族を「自殺」とした検死結果はスキャンダルを隠すための上流社会の隠ぺいだと指摘した社説が、非常に迫力のある文章で書かれていたため、「雷が落ちるように怒鳴る」新聞=「サンダラー」というニックネームがつく。一説には、1831-32年、選挙法改正に向けて国民に行動を起こすように促した、怒鳴る口調からこのニックネームがついたとする学者もいる。
1868年:発行部数が6万部に。ロンドンのほかの日刊紙の総発行部数の3倍。
1902年:経営危機に陥り、ノースクリフ卿が所有者に
1914年:1ペニーに価格を下げ、発行部数が16万6000部に急増する。第1世界大戦の勃発で27万8000部に増加。
1922年:ノースクリフ卿が亡くなり、ジョン・ジェイコブ・アスター(後のアスター卿)が買収。
1926年:ゼネラル・ストライキの間、発行を続けた唯一の新聞となる。
1966年:すでにサンデー・タイムズを所有していたトムソン卿が買収する。広告のみだった1面に、初めてニュース記事が載る。英国の新聞では初めて裸の女性の写真を使った広告を出し、世間を騒がせる。
1978年11月:労働争議により、発行がほぼ1年間停止される。
1979年11月:印刷再開。
1980年:トムソン卿がタイムズを売却に出す。
1981年:ニューズインターナショナル社が買収。
1985年:創刊から200周年記念。エリザベス女王が訪問する。
1986年:編集部がワッピングへ引越し。
1994年:記事の一部や要約がネットに掲載されるようになる。
1995年:欧州他国での印刷開始。
1996年:タイムズのウェブサイトがサービス開始。
1997年:電子メールによる投書の受付を開始する。
1998年:外国特派員の数、増える。
2000年:紙面とウェブサイトのデザインの刷新。
2003年:「コンパクト判」と通常の「ブロードシート判」と平行発行開始。
2004年:コンパクト版のみになる。
2005年:国際版の発行開始。
2007年:ウェブサイトのデザインを刷新。
2010年7月:タイムズとサンデー・タイムズのウェブサイトの閲読を全面有料化。
(資料:タイムズ)


ー関連キーワード

Newspaper of record:直訳は「記録の新聞」。①政府の公的記録や法的通知を行う新聞(例えば17世紀に創刊された、政府発行の新聞「ロンドン・ガゼット」)を指すとともに、②「信頼に足る報道を行う新聞」という意味がある。タイムズは19世紀、「Newspaper of record」と呼ばれた。政府や新聞の所有者の意見に左右されない、独自の意見を社説で出し、発行部数や報道の質で他紙を圧した。欧州他国の知識層の間でも広く読まれたタイムズは、エスタブリッシュメントが読む新聞として名声を作った。


ー英主要紙サイトの月間ユニークユーザー数(2010年4月)

新聞名、月間平均ユーザー数、前月比(%)、前年同月比(%)の順です。
メール・オンライン40,500,6773.4075.00
ガーディアン31,900,127-4.4116.70
テレグラフ30,227,486-0.1026.60
インディペンデント9,871,286-1.21-5.38
ミラーグループ・デジタル9,329,485-7.288.52
(英ABC調べ)
(タイムズ、サンデー・タイムズは有料化移行のため、計測に参加していない)

ー主な米英の新聞の電子版課金体制

新聞名、紙の平均発行部数電子版の購読者数、有料化の仕組みの順です。   
米ウォール・ストリート・ジャーナル 2,000,000 1,000,000
(無料記事と有料記事を組み合わせる)
米ニューヨーク・タイムズ950,000 (来年から実施
(メーター制、一定本数以上は有料に、の予定。2005年ー07年、有料購読制タイムズセレクト実施)
英フィナンシャル・タイムズ  400,000 127,000
(登録後、月10本まで無料。それ以上は有料)
英タイムズ  350,000 未発表
(7月から全面有料化。1日で1ポンド、1週間で2ポンド)
英サンデー・タイムズ  1,100,000  未発表
(7月から全面有料化。1日で1ポンド、1週間で2ポンド)

*発行部数はおおよその数字。フィナンシャルタイムズの数字は全世界での部数。ほかは主に自国内。
by polimediauk | 2010-07-26 04:30 | 新聞業界
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 放送批評懇談会が出している月刊誌「GALAC」の8月号で、英国の風刺画のことを書いたのだが(以下のページでコラムが読めます)、その中で言及している「パンツとコンドーム」の風刺画を、ガーディアンのサイトからキャプチャーしたものをアップしておきたい(上)。ご関心のある方はページに飛んでみてください。

【海外メディア最新事情】無礼、大胆、ユーモアいっぱい 風刺画が英国民のハートを掴む

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/galac-20100711-01/1.htm

 (ニフティーの雑誌記事のサイトに載っているのだけれど、このページが実はなかなか見つかりにくい。ニフティーのサイトに載っていたなあと思って飛んでみて、キーワードを入れてようやく見つけている・・・。)
by polimediauk | 2010-07-24 18:12 | 新聞業界
 キャメロン首相が米国を訪問中なので、毎週水曜日の昼(英国時間12時)に行われる、首相と野党議員との「クエスチョンタイム」で、首相の席には副首相のニック・クレッグ氏(自由民主党党首)が立つ。

 5月の総選挙では、前回よりも自民党の議席数を減らしてしまったのに、政治的にはナンバーツーになってしまったというのは、運がいいのか、それとも政治力があるのか?

 自民党の前身は自由党。そこで、いささか乱暴だがクレッグ氏を自由党系とした場合、「自由党出身者」で、首相の席からクエスチョンタイムに参加するのは、1922年以来であるという。

 その模様は、テレビで放映される(BBCニュース24など)が、ガーディアンのウェブサイトでは、「ポリティックス・ライブ」というブログをベテラン政治記者、アンドリュー・スパロー氏が実況中継する。


http://www.guardian.co.uk/politics/blog/2010/jul/21/politics-live-blog-pmqs


 スパロー氏の「ライブブログ」=その日、あるいはイベントの模様を文字でどんどん、再現してゆくブログ=は、とても人気があるようだ。特に、総選挙中はかなり話題になった。24時間のライブブログなのだが、もちろん、休憩を取っているときや寝ているときは、他の人が引き継いで続けていた。

 スパロー氏に限らず、日本での「ツイッター中継」みたいなことが、英メディア界(新聞、テレビ)でも広がっている。
by polimediauk | 2010-07-21 18:50 | 政治とメディア
 (大分、間が開いてしまい、恐縮である。)

 電子書籍の話が日本でずいぶんと盛り上がっているようだ。いろいろ、出版社のほうでも(大手は)どうやって利益を上げるかなどで苦しんでいる(?)ようだが、読み手としては「早く、さっさと、どんどんととりあえずやってほしい」、と思ってしまう。アイパッド用とか、キンドル用とか、リッチコンテンツにするとか、あるいはフォーマットがどうだとか、すごく乱暴な言い方かもしれないが、「どちらでもいいから、早く」という思いが強い。

 もちろん、すでに電子書籍はどんどん出ている途中であるけれども、自分が買いたいような本がなぜか入っていないのだ。そう思う方は、結構多いのではないだろうか。普通の本が(アマゾンで買えるような、普通の本)、「常にPDFでも、即ダウンロードできる」のがデフォールトになって欲しいものである。これはそんなに難しいことなのだろうか?無料にして欲しい、なんて言わないから、普通に定価を払って、すぐに本が読みたいのだがー。電子書籍の話は満載なのに、いざとなると、自分が買いたいような本がPDFなど、非常に簡単な形式で買えないのがつらい感じがする。後どれぐらい待てばいいのだろうー?

 私が今、電子版で購読しているのが、「プレス・ガゼット」。すでに年間の購読料は払ってある。毎月、「できましたよ」というお知らせメッセージが来るので、間を取り持つエージェントのウェブサイトに行って、自分のメールアドレスとパスワードを入れると、雑誌のPDF版に毛がはえたものが開けるようになる。実にシンプルな作りで、音が出たり、クリックするとどこかのサイトに飛べたり・・といったことはできない。これぐらいシンプルでいいのにな、と思ったりする。

 ところで、今日、英新聞の発行部数の数字が出た。(英ABC調べ)。ガーディアンの部数を見て、愕然とした。なんと、20数万部になっている。ついこの間まで、35万部ぐらいだったのに。4大高級紙の中で、一番ビリがインディペンデント(18万部)。これではインディペンデントを笑えない。

 そして、各紙の前年同月比の比較をみると、減少が二ケタ台がざらだ。例えばガーディアンは14%減だし、タイムズも同様。テレグラフは18%減なのだ。なんだか涙が出てきそうである、もし編集部で働いていたら。どんどん、発行部数がこれほど大きく減少しているとは。この下落傾向が止まるかどうか?止まると見ている人は内部ではいないはずだ。なんと、意気消沈な状況であろうか。紙媒体があまりにも急激に下落しているので、本当に生き残りレベルになってきたな、と思う。

 前に、出版コンサルタントのダンカン・クロール氏に話を聞いたとき、もし電子版を提供するなら、「電子版を有料にして、紙媒体は無料にすること。紙はおまけにする。そうしないと、電子版の価値があがらない」と言っていた。

 タイムズの有料版を支持するわけではないが(新聞のウェブサイトはすべて無料閲読が原則であることを望んでいるので)、一般的に、「電子版にまともにお金を払う・買う」という風に段々、なってゆくのだろうー音楽や携帯アプリのように。電子版を過度に安く提供してはいけないのだろうと思うー今はお試し・トライアル期間としても。

 お金のことは横に置いておくとしても、少なくとも、「電子版=本体である」ということが、しっかりと認知されるようにならないと、だめなのかなーと思う。もしそういう意味だったら、紙はなくなるとは思わないけど、「電子版=決して紙の付録ではない=本体そのものです」となるのは近いと思う。

ー英国の主要新聞の発行部数
 2010年6月の発行部数と、前月比(%)、前年同月比(%)の順です。

ー平日・日刊有料紙

サン
2,979,999, 1.50, -1.60
デーリーメール
2,902,643, 0.10, -4.93
デーリーテレグラフ
681,322, -2.45, -18.45
タイムズ
503,642,-2.28, -14.77
フィナンシャル・タイムズ
391,864, -2.00, -4.88
ガーディアン
286,220. -4.74, -14.82
インディペンデント
187,135. -3.79, -6.62

ー日曜紙
ニューズ・オブ・ザ・ワールド
2,828,800, -1.05, -6.27
メール・オン・サンデー
1,908,995, -0.50, -7.29
サンデー・テレグラフ
508,706, -0.80, -17.41
サンデー・タイムズ
1,085,724, -2.87, -10.30
オブザーバー
326,821,-3.95, -20.28
インディペンデント・オン・サンデー
157,135,-4.30, -3.29
(英ABC調べーフィナンシャルタイムズは世界中での数。他はほぼ英国内。)




 
by polimediauk | 2010-07-17 02:47 | 新聞業界
 英週刊誌「エコノミスト」の好調の秘密を探し出すべく、ロンドンの編集部でデジタル部門の編集長トム・スタンデージ氏に聞いた。以下は週刊東洋経済(7月3日特大号「激烈!メディア覇権戦争」)の筆者執筆分。

 実際のインタビューはかなり長いものだったので、そのやりとりなど詳しい流れを知りたい方(&時間がある方、エコノミストが好きな方)は、「ニューズ・マグ」掲載分に飛んでいただけると幸いであるーー英「エコノミスト」デジタル・エディターのインタビュー① 「パッケージで売る」やり方で、飛ぶ鳥落とす勢い http://www.newsmag-jp.com/archives/4141

 スタンデージ氏との話との中で(これまでに取材した人の中でもトップ5本指の中に入るぐらい、しゃべりの早い人でした)、今までピンと来なくて、途中から、頭の中の電球に灯りがともったように感じた瞬間があった。それは、エコノミストは「パッケージで売っている」ということ。紙媒体の雑誌の販売部数と、電子版購読者とがほぼ一致するーつまり、読者は紙のエコノミストがほしいのだそうだ。どこにでも、気軽に持って行ける媒体=一冊の中に世界のありとあらゆることが載っている=これを読めば、「とりあえず、世界情勢はフォローしたな」と思える媒体・・・だから好きなのだそうだ。今までこんな風に考えたことが実はなかった。

 そして、この考えから行くと、ウェブサイトは(例えどんなにかっこよく作ろうと)、「貧弱な代用品」なのである。手に持って行けるわけじゃないし、ぱらぱらとめくることもできない、なんだか見にくいな、と。24時間変わっているから、「ここまで読んだら、ひとまずカバーしたな」という感覚がもてないし、と。

 なんだか、ウェブサイトの拡充に血道をあげている新聞の努力が、急に(少し)ばかばかしく思えてきたのだった。
 
 ・・・ということを考えながらのインタビューをまとめた記事は以下です。


ネットですべて見せているのに部数拡大
好調「エコノミスト」の秘密


英「エコノミスト」デジタル・エディター:トム・スタンデージのインタビュー

スタンデージ氏とは:ウェブサイト、携帯サイト、タブレット、e-reader 版を監修する。ビジネス、金融、経済、科学、技術面担当編集長から現職へ。雑誌・新聞でネットに関わるコラムを書くほか、「The Victorian Internet」など5冊の本の著者でもある。


 世界の政治・経済状況を分析・解説する週刊誌「エコノミスト」の快進撃が続く。発行部数は右肩上がり一辺倒で、現在約160万部に達している。09年3月決算の収入は3億1300万ポンド(前年比17%増)、営業利益は5600万ポンド(前年比26%増)だ。ウェブサイトの広告収入は前期比29%増、ページビューは53%増となった。

――好調の理由は?

 エコノミストのビジネスモデルの特徴として最初に挙げられるのが、収入の65%が購読料、35%が広告で、購読料収入に依存している点だ。市場の変化で広告収入が減った場合にも比較的影響を受けにくい。また、伝統的に景気低迷時期にむしろ売れる傾向があるのも幸いした。

 最大の強みは、ほかでは得られない独自の製品を提供している点だ。つまり、世界で起きているすべての事象を見て分析し、これを手に持てるような1つのパッケージ=雑誌としてまとめている。一種の幻想かもしれないが、エコノミストを読めば「世界の情勢をフォローしている」という印象を読者に与えている。

ニュースサイト、ブログ、新聞、雑誌など情報がたくさんあればあるほど、本当に必要な情報をフィルタリングする媒体の重要性が増す。

――雑誌の記事とウェブサイトに載せる情報の兼ね合いは?

 エコノミストは長年、雑誌の内容をすべてウェブサイトに掲載してきた。雑誌の売り上げにはマイナス面での影響はまったくなく、むしろ雑誌販売のショーウインドウとして役立ってきた。現在は、雑誌の掲載記事のリストはサイトのトップには出ず、有料購読者向けサービスとした。ただし、週を通じて雑誌記事を少しずつサイト上に出しており、次の号が出るころには購読者でなくても、ほほ全部の雑誌記事が読めるようになる。購読者は雑誌発行日の金曜日、一度にすべてが読める。

――どうしてサイトに記事を無料公開しても、雑誌の売り上げが落ちないのか?

 ウェブサイトを抱えて飛行機には乗れないからだろう。雑誌であれば、読後「これで今週はニュースに追いついた」と思える。ところがウェブサイトには常に新しい情報が入り、終わりがない。サイトは雑誌体験の貧弱な代用品だ。2~3年前までは、「雑誌を売るためにウェブサイトを作る」という考えがあったが、今は補完するウェブサイトがある雑誌を作っているという意識だ。

――ほかのニュース週刊誌がエコノミスト・モデルを模倣できるか。

 非常に難しい。世界の隅々の現状を俯瞰する、米国の外からの視点を持ったニュース週刊誌はなかなかない。読者の半分は米国人だが、米国以外の視点を知りたがっている。本誌独自の分析、意見、ウイットを構築するには何年もかかるだろう。


東洋経済・7月3日特大号「激烈!メディア覇権戦争」
http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/toyo/detail/BI/04096f9c9cd2790d9accb3ea894dcbba/

エコノミスト
http://www.economist.com/
by polimediauk | 2010-07-01 17:58 | 新聞業界