小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk
プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る

<   2010年 09月 ( 5 )   > この月の画像一覧

 ほんのメモ書きだがー。

 英最大野党・労働党の新党首として、エド・ミリバンドが選出されたのは、数日前だった。そして今日、兄のデービッド・ミリバンドが、影の内閣には入らないという宣言を行った。

 一体これがどんな意味をもつの?と疑問を持つ方も多いかもしれないが、こちらでは、なんだかすごく大騒ぎになっている。

 兄デービッドは、労働党の党首候補の一人だった。でも、最有力で、ほぼ勝つんじゃないかと言われていた。元の首相のトニー・ブレア氏が影ながら応援していたし、弟のエドが支持を大きくしていたけれども、まあ、勝つんじゃないか、と本人もたぶん思っていたはずである。
 
 それが、ものすごい僅差で、弟が勝ってしまった。ちなみに、前政権では弟が気候変動相で、兄は外相だった。格が違うはずだったー。
 
 党首選の間に、よく兄デービッドは「弟が選ばれたら、影の内閣に入って、弟の下で働けますか?」と聞かれ、「もちろん」と答えていた。

 しかし、やはり現実になってみると、違うのである。チャンネル4というテレビでこの点を聞かれていた。「理論と実際は違う」といっていたが、まあ、無理はないであろう。

 兄弟のドラマという意味でおもしろいと思っている人もいるはずだが、デービッドが影の内閣に入らないという宣言には深い意味がある。

 それは、デービッドが政治の表舞台から消えることで、いわゆる、ブレア派というかニューブレアの重鎮が消えることになる。本当に、世代交代である。

 兄デービッドは官邸の政策ユニットの一人だったので、いわばニューレイバーの頭脳でもあった。しかし、ブレアとブラウンの二人の巨頭にはさまれてしまったかな、という感じがする。一人の政治家として勝負する機会がなかったような。

 党首候補といわれてずいぶん長かった。ブラウン前首相が危機状態になった時、いつも、「次はデービッドだ!」という声がいつもあがったのである。

 ただ、こうしたときに、ブラウンを立てるためか、自分は立ち上がらなかった。今から思うと、これが失点だったかもしれない。いつか、どこかで、思い切ってジャンプ!するところがないと、政治家としてはだめかもしれない。

 というのも、昔々、労働党のジョン・スミスという党首が突然死したとき、ブレアが候補として立つか、ブラウンが立つかのドラマが生じた。結局のところ、ブラウンは立たず、ブレアが立ち、首相になったーー当時、誰しもがブラウンが次!と思っていたらしいのだが。

 ウオッチャーの一人としては、デービッドがいなくなって、良かったなと思う。というのも、労働党が負けた理由というか、重荷になっていたことがあって、デービッドは自分が政権の中枢部にいたために、今になって「間違えました」とはいえない。

 その重荷とは、例えばイラク戦争であるし、拷問疑惑もあった。イラク戦争の開戦までの動きをいつまでも正当化していては、やはり、広い支持が得られない。イスラム系英国人への拷問疑惑も、さまざまな情報からすると、やっぱり英政府関係者(MI6、MI5など)がはからずも(かどうかは分からないが)関わっていたのは否定できないだろうし、この点をひとまずは置いておくとしても、イラク戦争開戦理由や拷問疑惑に関して、事情を説明するデービッド(当時外相)の話しぶりは、何度聞いても、つじつまがあわない感じであった。

 つじつまの合わない話、というのはどんなにきれいに説明しても、納得がいかないものである。頭がいい人だったら(デービッドみたいな)、つじつまがあってないな、ということが自分でも分かっているはずー。見ていてつらい、というか、言っていることに真実味がなかった。

 弟が党首になって、まもなく、「影の内閣の一員にはならない」と結構すばやく決断したのは、デービッドにしては、ものすごくスピーディーなよい決断だったと思う。

 それにしても、弟エドの評判があまりよくないー新聞を主に見ると。昨日、党大会での党首としてのスピーチがあったのだが、厳しい意見が相次いだ。だめだったというわけではないのだが、「まだまだ未熟」という感じー。メディアの評価がそれほどでないので、誰かが後ろで糸を引いているのかなと思ってしまうほどだ(デービッドを応援していた、ピーター・マンデルソンとかー。マンデルソンは元ビジネス相だが、ブレアと非常に親しく、ニューレイバーを生んだ重要人物の一人。)

 エドの政策で(といっても、政策らしい政策はまだである)、自分では「左によっていない」というが、話を聞けば聞くほど(増税をすると言っているようであるし)、やっぱり、これまでのニューレイバーよりも左だなあと感じている・・・。

 2015年に総選挙の予定だが、労働党が政権を取るかどうかはもちろん分からない。エドのスピーチの後でも、「あれでは5年後に政権は取れない」とばっさり言った、労働党のアドバイザーがテレビに出ていた。さて、どうなるか。
by polimediauk | 2010-09-30 06:29 | 政治とメディア

 25日夕方、エド・ミリバンド(元エネルギー・気候変動担当相)が英最大野党・労働党の新党首に選出された。兄のデービッド・ミリバンドも党首候補者の一人で、兄が労働党党員や労働党議員らの間では支持率が高かったのだが、労働組合からの強い支持で兄を振り切った格好だ。

 最後は兄と弟の決選投票になり、なんと兄49.35%、弟50.65%という大接戦。

 26日付の高級紙4紙をざっと見ると、左派系新聞インディペンデントも含め、エドの党首就任を「良かった!」と評価している人が少ない印象を持った。インディペンデントの政治記者はこれではキャメロン(現首相、保守党)に勝てない、とまで言い切っている。

 次の下院選挙は2015年の予定。2007年まで首相だったトニー・ブレアが労働党党首になったのは1994年で、選挙に勝って首相になったのが1997年。保守党のキャメロンは2005年に党首になってから、今年5月、首相就任。エド・ミリバンドが今党首になったのは、時期的には悪くない。

 私が党首決定の様子をテレビで見て思ったのは(私だけではないと思うが)、「これで左に寄ってしまったな」ということだ。デービッド・ミリバンド(元外相)はブレア氏や他の議員のお気に入りで、いわゆるブレア派。ニューレーバー派である。
 
 ブレア氏が最近、BBCのテレビのインタビューで言っていたが、労働党が一ミリでもニューレーバーから離れたら、選挙に負ける、と。

 今どれぐらいブレア派、ブラウン派が労働党内で意味を持つのかは不明だが、エド・ミリバンドはブラウン派である(少なくてともかつては)。ブラウン前首相のスピーチライターでもあったし、総選挙のときの労働党のマニフェストを書いたのもこの人である(-と考えると、労働党が選挙に負けたのはエド・ミリバンドのせいも少しあるのかな、と思うわけである。)

 党首選の選挙キャンペーンを詳しく追っていたわけではないが、エド・ミリバンドの話は国家の役割を重要視していた。労働組合からの支持で勝ったというのは、かなり重要な意味があるだろう。

 実際にそうなるかどうかは分からないのだが、単純に考えて、労働組合の支持をむげにするような政策や発言はしにくくなる。つまるところ、これは象徴的な意味もあるのだが、労働組合重視、国家の役割重視=昔の労働党=左・・・というようなイメージが出る。

 「象徴的意味」というのは、本当にエド・ミリバンドがこのようなイメージに沿った政策を打ち出してくるのかどうかは分からないのである。しかし、そういう印象を与える、それだけでもう、一つの政治的な動きをしたことになる。
 
 つまるところ、ニューレーバーに衣替えした労働党が、一歩後退した、という印象さえ与えるのである。ニューレーバーに取って代わるキーワード(党を統一する役割を果たす)・スローガンがまだないので、人は「古い労働党」のイメージを抱く。エド・ミリバンドは早急に新しいスローガンを作らないといけないだろう。

 エドの党首就任とは直接関係ないが、これから影の内閣の人事に入っていくだろうから、いつも気になっていることを書いておきたい。

 このミリバンド兄弟は、連立政権発足(5月)以前まで、同じ内閣にいた。この内閣+政権中枢部には、党首候補者の一人でもあったエド・ボールズと妻のイベット・クーパーも入っている。

 いささか居心地が悪い感じがする。兄弟で一つの内閣に?そして、夫婦でー?それは、「兄弟(または夫婦)だけれど、どっちも本当に実力があって・・・」ということで「たまたま」そうなったと思うだろうか?どうにもネポティズムのような感じもする。また、利益の対立(コンフリクト・オブ・インタレスト)がないのかな、とも思う。普通の企業や公的機関の勤務で、同様のことが起きているか、起きていないか、もし同様の事態が発生しそうなとき、どのような措置がとられているかを考えると、やっぱり、労働党の前政権の人事はおかしいなーと私は思う。どうにもすっきりしない感じがする。

 何せまだ1日目だが、今後、どうなるか?である。

 それにしても、エド・ミリバンド(40歳)にせよ、キャメロン首相(43歳)、副首相のニック・クレッグ氏(43歳)にしろ、さっそうとして若い。タイプが似ている感じに見える。ミリバンド氏の労働党党首就任で、ほぼ確実になったことがあると思うー首相候補の若年化である。40代前半での就任がだんだん当たり前になってきた。これは良いことのような気がしてならない。

*5月に書いた関連記事
元エネルギー相が英労働党党首選に立候補表明 ー「ニューレーバー」の次は何か?

http://ukmedia.exblog.jp/14394824
by polimediauk | 2010-09-26 20:21 | 政治とメディア
 一人勝ちといわれる状態を維持するのは無理とみたのかどうか、BBCが「これだけはゆずらない」としてきたいくつのかのことを、放棄しつつある。

 先日は国内の活動の主な運営資金となるテレビ・ライセンス料の値上げを凍結する(すでに前年比で2%増となっていたが、これをあきらめる)と自分から言い出した。今のところ、BBCのライセンス料の年間値上げ料は2012-2013年度までそれぞれ決まっているが、BBCトラスト(視聴者を代表して、BBCの活動内容をチェック)が「最後まであげない」、と最近宣言している。

 BBCのライセンス料の値上げ率は、政府との交渉で決まる。

 担当のメディア・文化・スポーツ大臣は、来年4月からの1年分の値上げ率放棄は事実上承認したようだが、その先の数年に関しては「今のところは決めない」ことにしたようだ。

 さらに、22日付の報道によれば、BBCのお金の使い道に関して、監査局(NAO、行政府から独立した機関。行政府の予算執行を監査し議会に報告する)が検証することになった。現状では、この仕事はBBCトラストが担当している。外部の団体がBBCのお金の使い道を原則すべて検証するのは初になる、という。これまでは、BBC側からのリクエストがあった場合にのみ、検証することができた(例えば、あるサービスがお金を効率的に使っているかどうかをチェックする)。

http://www.bbc.co.uk/news/uk-11386735

 問題は、これでBBCの編集の独立が保てるのかどうか、ということ。NAOは最終的に議会に報告する義務があるわけだから、政府とは独立していても、政治家・議員がいる場所(=議会)からの干渉があり得るーすくなくとも理論的には。

 そこで、編集の独立権を維持するために、NAOが数字をチェックした後、その結果はBBCトラストのほうに戻す、という仕組みになるようだ。議会に報告書を直接出すのではなく。そして、トラストが文化大臣を通じて、議会に結果を報告する、という。

 ・・・この部分は、理屈的には分かるが、すっと頭に入ってこない感じもする(間にワンクッション置いただけ、という感じが出る。)
 
 また、従来、BBC側が「商業的に(公開すれば)まずいことが起きる可能性がある」と判断した情報・数字にはNAOはアクセスできない仕組みになるようだ。すべてがNAOに公開されるわけではないのだ。例えば、BBCはトップタレントへの報酬の公開をこれまで拒んできた。この部分は外には出さない、ということだろう。

 それでも、なんとなく分かりにくい(特に第3者からは)話だが、最終的には、「外部(BBC以外の)手や目が、BBCの活動内容を検証する」ということ。これは今までになかったことだし、今後も外部の手が入ることへの布石かもしれない。

 つまるところ、BBCは先手を打とうとしているのだろうーライセンス料制度自体がつぶされないように(国民からライセンス料を徴収して、それを「全部」自分の懐に入れている――他の放送局にまわさずーという仕組みを維持したい)と考えているのだろう。

 8月末のエディンバラのテレビ祭でも、ハント文化・メディア大臣が、「BBCは普通の世界に降りてこないと」という発言をしている。削減は必須だと見て、先手を打ち始めているのだろう。
 

(**PS:MI6の初期の歴史の公式本が出ました。最初の50年ぐらいの話。まだ手にしていないのですがー。テレビや新聞で大きく扱われました。でも、「何故今、税金を使って作らせたんだろう?」という疑問がいつまでもありました。今は、国内外のテロに関する情報収集に大きく人材を割いているようですね。)
 
by polimediauk | 2010-09-23 08:16 | 放送業界
 BBCトラスト(視聴者の代表としてBBCの活動内容を監視・検証する)のトップ、マイケル・ライオンズ氏が、来年、辞任することになった。4年間の就任期間が来年の春終了し、第2期目を続けると夏には話していたのだが、第1期だけにとどめたい、と政府に伝えた。

 BBCトラストの前身は同様の業務内容を持つBBC経営委員会で、2007年、発足した。トラストのトップ(便宜的に委員長と呼んでおこう)はパートタイムの仕事で、週に3-4日の勤務というのが条件だが、ライオンズ氏は、委員長職の責務が非常に大きく、パートタイム以上の仕事が要求されるようになり、他の同氏の仕事との兼任が難しくなったという。

 BBCは来年から、政府とテレビ・ライセンス料(NHKの受信料に相当)の交渉に入るが(現在のライセンス料体制が2013年で終わりになるため)、この重要な時期にBBCトラストのトップが交代にすることになった。

 5月に発足した連立政権を担う保守党は、野党時代、トラストの廃止を要求したこともあった。BBCにとっては厳しい政策を実行するのではないかと言われている。

 次期トラストの委員長職には、「ユーガブ」という世論調査団体のトップか、すでにトラストの委員の一人になっている、パトリシア・ホッジソン氏が候補にあがっているという(噂段階)。「もし」ホッジソン氏になれば、BBC経営委員会及びトラストで、女性がトップに来るのは初めてになる。

http://www.guardian.co.uk/media/2010/sep/14/sir-michael-lyons-bbc-trust

 16日から19日まで、ローマ教皇ベネディクト16世が英国にやってくる。教皇が英国に来るのは28年ぶり。ブラウン前首相が昨年招いた。

 英国とカトリック教の関わりを「英国ニュースダイジェスト」の16日付けに書いたのだが、ウェブサイトのニュース解説の面に、今日明日中には載るはずである。(今はまだ出ていないが。)

http://www.news-digest.co.uk/news/index.php


by polimediauk | 2010-09-15 18:01 | 放送業界
 日曜大衆紙「ニューズオブザワールド」紙の盗聴疑惑と元編集長アンディー・コールソン氏の責任問題が再燃(再・再燃)している。ここ2-3日、ツイッターでもつぶやいてきたが、その経緯を知りたい方は、ご参考に、前のエントリーをあげておきたい。

http://ukmedia.exblog.jp/13816821

 この件がまた注目を浴びたのは、米ニューヨークタイムズに改めてこの問題が詳しく報じられたからだが、コールソン氏が今、官邸のコミュニケーション担当幹部になっているため、与党保守党と野党労働党との戦いのようにもなっている。

 もともとは、ガーディアン紙がずっと追ってきたトピックだ。この件が、どうにも腑に落ちないのは、①編集部内で盗聴という手法を使ってでも取材するという方針を、編集長が果たして知らずにいたのかどうか、そんなことはあり得るのだろうか、②本当に警察は十分に捜査をしたのだろうかーという点である。(以下はガーディアン記事)

http://www.guardian.co.uk/media/2010/sep/06/phone-hacking-home-office-police

 私はコールソン氏が辞職するべきと思うが、辞めても、裏でメディア戦略を担当するとか、関係は切れないかもしれない。

***

 エディンバラで開催された、テレビ祭のことを、新聞協会報9月7日号に書いたので、これに若干追加したものを以下に出したい。いくつか、こぼれ話があったので、次回、書きたい。

***

 英放送界の経営陣、制作・編集幹部など千人余りが毎年参加する「エディンバラ国際テレビ・フェスティバル」(ガーディアン紙他主催)が、英スコットランドの首都エディンバラで8月27日から3日間、開催された。初日の基調講演でBBCのマーク・トンプソン会長は、公共放送と商業放送が混在する英放送界の重要性を訴えるとともに、有料衛星放送BスカイBの巨大化に大きな懸念を示した。多チャンネル化、デジタル化が進み、大きな変革期にある放送界を牛耳るのはどこか? フェスティバルでの議論を追ってみた。

 昨年の基調講演で、米ニューズ・コーポレーション欧州・アジア部門の会長兼最高経営責任者でBスカイB会長のジェームズ・マードック氏は、全英向けテレビ8局、ラジオ10局のほか地域放送、国際放送を持ち、ウェブサイトやビデオ・オン・デマンド・サービスでも圧倒的影響力を持つBBCの存在を「身震いするほど恐ろしい」と形容した。BBCを中心とした英国の公共放送体制を否定し、独立したジャーナリズムを保障する唯一のものとして「利益」を挙げた。

 これに対する反論として、トンプソンBBC会長は今回、放送界が公共放送と商業放送の組み合わせで構成されているがゆえに競争が働くとともに、利益のみでは正当化できない企画に投資でき、結果として質の高いオリジナルの番組制作が可能になっていると述べた。

 そして、BBCの国内事業の主要収入源であるテレビ受信料(年間約34億ポンド、約4380億円)をはるかに超える59億ポンドの売り上げを持つBスカイBが今後も巨大化すれば、「BBCばかりか、商業放送を含めた放送業全体を取るに足らないほど小さな存在にしてしまう」と指摘した。

 会長はまた、有料テレビ市場最大手のBスカイBに対し、オリジナル番組の制作への投資を増やし、民放ITVほかの放送局の番組を放映する際には「再放映料を支払うべきだ」と、経営にまで踏み込む発言を行った。

 BBC自体が、民放局や新聞社からしばしば「民業を圧迫している」とその巨大さを批判されてきた。著名タレントへの高額報酬の支払いや経営陣による高額経費使いが近年明るみに出て、事業サービスの縮小・停止、役員報酬体系の見直しなどへの圧力が高まっている。

 目下の最大の注目点は、BBC運営の根幹をなすテレビ受信料体制が今後も継続するかどうかだ。現行体制は2012年末で終了となり、13年以降、大幅削減となるかあるいは制度そのものが消滅するのかは未定だ。トンプソン会長は「1ポンドの削減は英国のクリエーティブ産業が1ポンドを失うことを意味する」として、来年から始まる受信料体制の政府との交渉を前に、大幅削減がないよう釘を刺した。

 一方、講演の翌日、ジェレミー・ハント文化・メディア・スポーツ相は、受信料体制の将来は「来年から交渉に入るのでなんとも言えない」が「削減を度外視しない」と述べた。政府機関の予算が平均25%削減される中、公的機関のBBCにも同様の削減が期待されていると説明した。(実はさらに次の日、BBCの経営委員会の元委員長だったーー委員会はBBCトラストの前身ーーマイケル・グレード氏が、「BBCはコントロールできないほど大きい」と話している。先のトンプソン会長と一緒に働いていたグレード氏がそう言ったのは重要だ。内部の人さえ、そう思う、と。)

 メディア評論家スティーブ・ヒューレット氏はガーディアンのコラム(8月30日付)の中で、トンプソン会長のBスカイB巨大化批判には一理あるとし、同局の株39%を所有する米ニューズ・コーポレーションが残りの株取得を目指していることを指摘。もし実現すれば、既に傘下の子会社を通じて英新聞市場で複数の大手紙を発行する同社を経営するマードック一家が、英メディア界でさらに大きな影響力を持つ可能性があると警告した。この事態を避けるため、政府がBBCの側に立つ、つまり受信料の大幅削減を打ち出さない可能性もあるという。

 放送界を主導するのはBBCか、あるいはニューズ・コーポレーション所有のBスカイBか? 受信料交渉が始まる来年、議論が白熱化する見込みだ。(終)

フェスティバルウェブサイト(動画他)
http://www.mgeitf.co.uk/home/mgeitf.aspx
by polimediauk | 2010-09-07 16:50 | 放送業界