小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 28日から、内部告発サイト「ウィキリークス」が機密文書も含む米外交公電を公開している。サイトが入手したのは、米国の在外公館と国務省との間の公電約25万点。この一部を米ニューヨーク・タイムズなどが独自に編集し、同じ日にいっせいに報じた。

 その内容は続々と日本語でも報道されているので、ここでは省くが、どのようにして今回の一連の記事が出たのかという点に、まずは注目したい。

 まず、報道されるまでの経緯だが、ウィキリークスは情報公開前にいくつかの世界の大手メディアにコンタクトを取り、情報を渡して、公開日に関する取り決めをしている。これを各メディアが独自に分析し、編集して、あらかじめ決めた日に一斉に出した。生情報をどのように料理するかは、そのメディアの編集者が決める。そのメディアが本拠地とする国にもっとも身近な情報を中心に「料理」・編集するのは自然の流れであろう。これは今までのウィキリークスの大量データ公開時と同じパターンである。

 ガーディアンによれば、ウィキリークスと大手メディアとの間でこのように情報をシェアし、一定の日に同時に各メディアが報道を開始するーというパターンを作ったのは、同紙の調査報道記者ニック・デービス氏であるという。デービス氏がウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ氏にコンタクトをとり、これを持ちかけた、と。

 今回、事前に情報を渡されていたのは、スペインのエルパイス、フランスのルモンド、ドイツのシュピーゲル、英国のガーディアン、米国のニューヨーク・タイムズ。

 ガーディアンでは20人ほどのチームを作って、情報の分析と編集にあたったという(BBCニュース)。
 
 昨晩、ツイッターを見ていたら、ガーディアンのメディアジャーナリスト、ダン・サバー氏が、「ニューヨークタイムズは、出版前に、米政府に対してどの公電を使うかを相談していた」とつぶやいた。私は非常に驚いた。どんな報道にしろ、コメントを取るため、あるいは事実確認のために、書いている記事の中に出てくる人や事実に関係のある人に、メディア側が連絡を取ることは良くあるだろう。通常の業務の一環である。

 しかし、リークされた政府情報を元にした記事を載せるとき、政府側と「相談」する必要があるのだろうか?これはおかしいのではないか?

 そう思って、実際にニューヨークタイムズのサイトに飛んでみた。以下がそのアドレスである。

A Note to Readers: The Decision to Publish Diplomatic Documents(読者のお知らせ:外交文書を報道する決定について)
http://www.nytimes.com/2010/11/29/world/29editornote.html

 これによると、ウィキリークスからの情報に対し、ニューヨーク・タイムズは独自の判断で秘密を持っている人物や国家の安全保障を脅かすような項目を「編集」したという。実際には、いくつかの項目をあえて出さないようにした、ということであろう。どの項目を「編集」したかは他の新聞やウィキリークスに伝えたという。「他のメディアやウィキリークスも同様な編集作業をする」ことを期待している、とサイトには書かれている。

 私は、この段階での「編集」は各メディアの編集部の判断であるから、これはこれでよいと思う(ウィキリークスが各メディアの判断に従って、サイト上の項目を「編集」するかどうかは、ウィキリークスが決める)。ガーディアンも、特定の個人が危険な目に合うことを避けるため、あるいは名誉毀損罪で訴えられることを防ぐためなど、さまざまな理由から一定の項目をあえて出さない、消すなどの編集作業を行っている。

 その後、ニューヨーク・タイムズは、同紙が出版予定の外交公電をオバマ米政権側に送った。該当の公電が「国家の利益に損害を与えると政府側が判断する情報であれば、異議申し立てをしてほしい」と頼んだのである。政府側は「追加の編集作業」(つまりは、消して欲しいあるいは隠して欲しい項目の追加)を伝えてきた。ニューヨーク・タイムズは「すべてではないが、(追加の編集作業の)いくつかに同意した」。そして、米政権の「懸念」を、他の新聞とウィキリークス側に伝えたのである。

 私は、「すべてではないが、(追加の編集作業の)いくつかに同意した」点に大きな疑問を持った。これはつまり、米政府との共同作業、ということになりはしないだろうか?また、米政府の懸念事項を他の新聞に伝えているあたり、なんだか米国の使い走り的な役目を担っているようにも見えるー何を出して、何を出さないか、どのようにどれぐらいのスペースで出すかは、各紙の編集長が決めるはずなのだ。例えばだが、「xxxの項目に関しては、米政府が『かなりまずい』と言ってました。なので、私たちは出さないことにしました」・・という言い方をしたのかどうかは、もちろん分からない(憶測のみ!)だが、なんだかそんな感じに見える。

 ニューヨーク・タイムズは米政府に近すぎるのではないだろうか?愛国心が強いともいえるのかもしれないが。(私の記憶が間違っていなければ、「愛国心が強い」米新聞各紙は、イラク戦争開戦前夜、大量破壊兵器がイラクにはないことを見抜けなかった、あるいは政府の参戦理由を十分に分析し得なかったはずである。確か、後で謝罪したような記憶があるのだがー。)

 ・・・と思って(当初、私はニューヨーク・タイムズが「原稿」を事前に見せていたと勘違いしてつぶやいていたので、内容が少々ずれてはいたのだが)、「けしからん!」というようなことをツイッターでつぶやいていたら、「何を最優先するかの価値判断が違うのではないか?」ということをつぶやかれた方がいらした。

 なるほどなあと私は思った。確かに、イラクにもアフガニスタンにもたくさん兵を送る米国の外交文書の暴露の衝撃が、最も大きいのは米国。英国やフランスのように高みの見物ではない。リアルな危機があって、リアルな懸念もある。そこで米国の新聞ニューヨーク・タイムズは、政府の意見を事前に聞いて、アドバイスを受けたのだろうー想像だが。

 ところがまた別のつぶやきを出した方がいた。ちょっと紹介すると

nofrills nofrills メモ魔ですhttp://twitter.com/#!/nofrills
ウィキリークスに関してNYTの行動がまるでスパイのようだったのは前回のイラク戦争ログのときから顕著(アフガン戦争ログでも変な挙動を示していた)。今回もNYTなど見ないで、ガーディアンを見ましょう。ウィキリークスに関しては、ガーディアンはガチ。

nofrills nofrills メモ魔です
英メディアは、取材源の秘匿と国家安全保障を天秤にかけて後者を選ぶということを原則的に しない。北アイルランドで英軍を襲撃したリパブリカン武装組織と直接インタビューしたジャーナリストに対し、当局が情報源開示を求め法廷に訴えたとき、法 廷は情報源は秘匿すべきとの判断を示した。


 そうなのかーと改めて思い、「さて、ガーディアンは英あるいは米政府にお伺いを立てたのかな?」と疑問になった。お伺いは立ててはいないとは思うけれど、ひょっとしてと思い、ラスブリジャー編集長にツイッターで聞くと、「ない」という返事(念のためだが、私は個人的にラスブリジャー氏と親しいわけではない。タイミングがよければ、英メディア関係者は結構ツイッター上で返事をくれるのである。これは日本でもそうだろう)。

 やっぱりなあとひとまず思って、今朝起きてから、じっくりと上のニューヨーク・タイムスの記事を最後まで読んでみて、また驚いた。

 それは、この一連のリーク情報の告発者と推測され、今米軍に逮捕されている、若き兵士マニング氏の表記である。この人が告発者であることはほぼ確定しているというか、少なくとも「告発者そのものである」という前提で、今のところ、話が進んでいる。(何かの陰謀説で全くの別人という可能性もあるが。)

 ガーディアンとニューヨーク・タイムズのマニング氏の描写を見ると、その書き方の違いに唖然とする。日本の英作文の授業にでも使えそうなぐらい、同じ人物を全く違う角度から書いている。

 つまり、ガーディアンでは、マニング氏は公益のために情報をリークした、一種の英雄である。ところが、先のニューヨークタイムズの記事では、そのまま書き抜くと、
「a disenchanted, low-level Army intelligence analyst who exploited a security loophole.」になる(訳せば、「・・・セキュリティーの抜け穴を(不当に)活用した、幻滅を覚えた、低いレベルのインテリジェンスの分析家」である。

 日本語だとうまい具合にニュアンスが出ていないが、文章の前後を見ると、low-levelであることを指摘する必要性がない。セキュリティーの抜け穴をexploitした、というのも、まったくその通りではあるけれど(事実としては)、文章全体として、この人物をやや暗いイメージで描き、少々貶めることに成功している。これをまともに受け取れば、「そんな人物から受け取った情報を、天下のニューヨーク・タイムズが大々的に報じていいのか?」とも思えてしまうー。まあ、こちらの深読みの部分もあるかもしれないが、ガーディアンとニューヨーク・タイムズの人物像に大きな開きがあって、驚いてしまう。

 結局のところ、「ニューヨークタイムズ、大丈夫?」と聞いてしまいたくなるような雰囲気である。そんなに政府に近くて、大丈夫か?と。

 さて、ガーディアンの外交公電報道に関し、編集長、記者、元外交官、歴史学者、情報公開で本を書いたジャーナリスト(テレグラフが暴いた下院議員の灰色経費疑惑のもともとはこの人の仕事がきっかけ)などの短いインタビューが入った動画は、以下のアドレスから見れる。
 
 「外交情報の伝達の仕方を変えないといけなくなった(電子ではもれる)」という意見から、「何が秘密で何が秘密でないかを再度検証するべき。今回の情報もほとんどが秘密のレベルではないと思った」(ジャーナリスト)、「外交の秘密はこれからも必要で、続くとは思うが、国民にはもっと情報が出たほうが良い」(元外交官)など。

http://www.guardian.co.uk/world/video/2010/nov/28/us-embassy-leaks-data





 


by polimediauk | 2010-11-30 06:40 | ウィキリークス
 「新聞(紙)の発行部数は落ちている。ネットでニュースを取るほうが早いし、簡単だ、まして無料である」ーそんなことを考えて、「紙かネットか」という敵対・対立構造でものごとをとらえる時代は、とりあえず、終わったとしよう。

 もちろん、現況を敵対・対立構造でとらえて、「困った」と考えるのはあくまで新聞経営者側であって、読む方・情報を得る側からすれば、特に困ったこともなく、むしろネットで多様な意見を拾える点からは、「良い方向に向かっている」とさえ言えたのかもしれない(新聞ジャーナリズムが縮小化することで、見落としてしまうあるいは報道されなくなるトピックがあるかもしれない、という問題が残るのだが、やや具体性に欠ける、つかみどころのない話になるので、一旦、ここでは論外とする)。

 そこで、では一体、今後、ジャーナリズムはどうなるのか?「ジャーナリズム」という言葉が堅苦しければ、メディア報道は、あるいはマスメディアとネット言論とはどんな風な生態圏を作っていくのだろうかー?

 その答えは人によってさまざまで、私自身、これといった一つの答えがなかった。

―ウィキリークスとメディア

 それをすっぱりと解決してくれたのが、ITジャーナリスト、佐々木俊尚さんが書いている有料メルマガの最近の内容であった。同氏の有料メルマガは、全文そっくりそのままではない限り、内容の引用を可としているが、せっかく有料でやっているということでもあり、その一部のみをご紹介したい。

 まず、例のウィキリークスである。大量の「生データ」(戦闘ログなど)をサイトで出す、告発サイトのウィキリークス。ウィキリークス自体は報道機関ではない。

 ウィキリークスはイラク戦争やアフガン戦争に関する米軍の戦闘ログなどの大量の機密文書を、大手メディア(英ガーディアン、ドイツ・シュピーゲル、米ニューヨークタイムズ)に対し、発表の数週間前にあらかじめ渡していた。メディア側は生データを分析の上、ウィキリークスのサイト上での発表と同時に、紙面に大々的に掲載した。
 
 ここで(日本の文脈で特に)肝心なのは、英米の大手メディア側がウィキリークスを「何か不正なもの・正体が怪しいもの」と考えて、あるいは自分たちより一つ下の存在と見て、もらったデータを調査・分析したのではない、ということ。

 佐々木さんのメルマガ(11月15日号:マスメディアとインターネットはどう補完しあえるのか?前編)から引用すれば、

 
「9万点以上もの書類を整理するのは容易ではありませんし、それらの書類の中から何らかの意味を見つけ出すのは専門家の手を使わなければ不可能といっていいでしょう。だからこれらの情報をウィキリークスがジャーナリストたちに事前提供したのは非常に良い戦略であったといえます。」

 「実際、提供を受けた各紙は詳細な分析を行っています。ニューヨークタイムズは、パキスタン政府が時刻の情報機関員がタリバンと接触することを容認していたことを資料の中から発見しました。またガーディアンは、アメリカ軍によって多数の一般市民が誤って殺害されてしまっていることが明るみに出た、と報じています。」
 

 そして、佐々木さんが紹介するのは、米教授&ジャーナリストのジェフ・ジャーヴィスの、ガーディアンの編集長に対するインタビュー。編集長は、ガーディアンを含む新聞とウィキリークスは「相互補完(mutualization)」の関係にある、と説明している。

 「ジャーヴィスはコラボレーションと言い換えています。内部告発者とメディアのコラボレーション。そしてそのコラボレーションを実現する『場』として、ウィキリークスのような媒介者がある。そういう構造。そしてこの媒介者の場で、ジャーナリズムは内部告発者の提出した情報に対して価値(意味)を付与するわけです。」
 

 ネットサイトのウィキリークスと大手メディアガーディアンが、互いに補完しあう関係―。上下関係ではないのである。

―データジャーナリズム

 ところで、生データや情報をドンドン出しているサイトは何もウィキリークスばかりではない。政府もかなりの情報をネット上に出しているし、統計や数字、世論調査、生の声(ブログ、ツイッター、SNS)など、かなりの情報が氾濫する状態となっている。

 そこでこうしたデータ・情報を分析し、解釈する、意味を与える行為としての「データ・ジャーナリズム」という概念がある。(興味のある方は、英語でこの言葉を検索してみればと思う。)

 
「データジャーナリズムは、政府などが持っている膨大な量の統計資料などのデータを分析し、それらをわかりやすく可視化していくというジャーナリズムです。これは調査報道手法から、デザインやプログラミングまでをも含む非常に広い分野の手法を統合させて、そこにひとつの重要な物語を紡いでいくというアプローチ」(佐々木氏のメルマガ、後編)。
 

 同氏によると、もともと、この概念が出てきたのは、「オープンガバメント(開かれた政府)という考え方の台頭」があり、その中でも「最も有名なのはアメリカのケースで、オバマ大統領が就任直後の2009年1月、「透明でオープンな政府」という考え方を発表し、Transparency(透明性)、Participation(国民参加)、Collaboration(政府間及び官民の連携・協業)という3つの原則のもとに政府のデータをできる限り開放していくような政策を採り始め」たことによる。

 しかし、

 
「残念ながら日本政府については、オープンガバメントはまだスタート地点にさえ到着していません。もちろん情報公開制度はありますが、これはあくまでも国民の側が情報を「引き出す」という行為を行わなけれ情報は公開されない。オープンガバメントではこのような手続を経なくても、さまざまなデータセットがウェブ上にオープンに公開されているという考え方で、情報公開制度とはかなり異なる性質のものです」(同氏メルマガ)。

 「あー、やっぱり。残念」と思わざるを得なかった。
 
 細かい部分はメルマガを購読するしかないのではしょるが、最後の結論が、本当にすごいと思う。

 「情報の存在場所がかつてのような政府・企業の広報文や官報など紙のデータにあった時代は、そのデータにアクセスできるのは館長などに出入りしているマスメディアの記者に限られていました。しかし多くのデータがウェブで公開されるようになってデータはオープンになり、誰でもアクセス可能になってきています。こういう段階になってくると、データの分析自体もクラウドソーシングのように集合知化され、ネット発でさまざまな分析や可視化が行われてくる可能性が浮上してくるでしょう。そういう意味で、データジャーナリズムというのはウェブときわめて親和性が高いのです。」(佐々木氏メルマガ)

 「このようなオープンなデータをもとにした集合知的ジャーナリズム。先週号で紹介したウィキリークスのような内部情報告発プラットフォーム。そして制限された一次情報にアクセス可能な新聞やテレビの組織ジャーナリズム。さらにフリーランスのジャーナリストが行っているような専門的な分析能力。こうしたモジュールが相互に補完しあうことによって、未来のジャーナリズムは成立していくということがいえるのではないかと思います。」(同じ)


 ここまで、それぞれのメディアの役割やポジショニングをきっちりと1つの文章にした人は、(日本語では?)ほかにいないのではないか?

***

関連:ご参考

ガーディアン紙による、ウィキリークスのデータ分析サイト  http://www.guardian.co.uk/news/datablog/interactive/2010/nov/08/wikileaks-data-visualisations-iraq-afghanistan
 
データの分析に、ジャーナリストの将来がある:ティム・バーナーズ=リーの講演
http://www.guardian.co.uk/media/2010/nov/22/data-analysis-tim-berners-lee
by polimediauk | 2010-11-24 19:44 | 新聞業界
 尖閣諸島のビデオ流失問題(しつこい!!?)が発生してから、ウィキリークスのことを良く考えるようになった。

 東京新聞の18日付けぐらいに、ウィキリークスのことについて、取材を受けた記事が掲載されたはずである。

 これを機会にまた考えたり、主にネット(日本語)で意見を拾っているうちに、自分が当たり前と思っているいくつかのことが、必ずしも日本の主流メディアでは常識になっていないようであることに気づいた。

 その中の1つが、ブログを読まれている方にはあまりにも当たり前のことで、ここに書くのも恥ずかしいぐらいのことだが、私は、ネットとリアルの議論・報道を分けて考えていない。

 これは空気のようなものかもしれない。英国では(英国が進んでいるとか、英国のほうがいいという意味では全くないことにご留意願いたいが)、ネット上の言論(ツイッターやブログ、ネットコラム)とリアルの言論(例えば「紙」の新聞、ラジオ、テレビから発される言論、集会所での議論など)を分けないようになってきたと思う。

 もちろん、それぞれのカテゴリーがあるし、どのメディアに良く接するか、あるいは言論に関わるかを人口分布や社会的背景(どの階級か)で分けることはできる。だから違いがないわけではない。それでも、「分けない」というか、つながっているのである。

 一種の「空気」だというのは、一見したところ気づかないかもしれないからだ。外から見れば、別々のように見えるかもしれないが、しかし、ネットとリアルは実は同じなのである。例えば、民放チャンネル4のあるキャスターがいる。この人はテレビカメラの前で番組の司会をするが、その前後にツイッターで視聴者あるいは他のツイッター仲間と情報をしょっちゅう交換している。またはチャンネル4のブログに自分の思うところを書く。この人にとって、全てがつながっている。ツイッターか、ブログか、テレビでしゃべるかの間で、プラットフォームが違うという意識はあるものの、同じ一人の人間が、時と状況によってさまざまなツールを使い分けて情報を発信している。どのツールを使っていても、同じ人間の書くこと・しゃべることだし、主張が変わるわけではない。
 
 新聞社でもウェブサイトと紙用原稿の制作作業が一体化している。テレビ番組は、テレビの前に決まった時間に座って番組を見るだけでなく、時間をずらしてオンデマンドで無料で呼び出して見れるし、コンテンスト(誰か当選者を選ぶなど)の場合は、リモコンを使って「投票」できる。PCで記者会見の様子やインタビュー、見逃したテレビ番組を見ることも日常茶飯事である。いろいろなメディア・プラットフォームが切れ目なくつながっている。すると「リアルとネット」という感覚がなくなってくる。

 そうすると、かつて日本で耳にした「ネットの情報は(リアルより)いい加減である」という見方がなくなってくる。切れ目がないのだから。「リアルが上でネットが下」という判断感覚もない。

 あえて2者対立で比較をすれば、真偽の判断が非常にしやすいのがネットだろう。常に他の情報との比較にさらされているし、比較が非常に簡単だからだ。誰がどのような形でその情報を発したかで、すでに情報の真偽の判断がある程度はできる。

 ・・というようなことを考えていたら、ITジャーナリスト、佐々木俊尚さんの有料メルマガに、先週と今週の2回に渡り、将来のジャーナリズムに関しての論考があり、思わず、ひざを打つほど感心してしまった。

 佐々木さんのメルマガの内容は、全文を出さない範囲で引用自由という太っ腹の仕組みになっているので、次回、その一部を紹介したい。
by polimediauk | 2010-11-23 07:17 | ネット業界
 英編集者団体「ソサエティー・オブ・エディターズ」の年次会議が11月14日から3日間、スコットランド最大の都市グラスゴーで開催された。新聞社、放送局の編集幹部や学者ら約200人が参加した。今年の会議のテーマは「良いニュースが一杯だ」。不景気で先行きは不透明だが、現実を直視しながら成功例を共有し、生き残り策を考えようというメディア界の意欲を反映した。会議の概要を上下に分けて紹介したい。(「新聞協会報」11月23日号掲載分より)

 英新聞界で、今年最大の「良いニュース」と言えるのが、部数が低迷し、英国内では誰も買い手がいなかった夕刊紙ロンドン・イブニング・スタンダード、高級紙インディペンデント、その日曜版インディペンデント・オン・サンデーを買収した上に24年ぶりに新高級紙を創刊した、ロシアの富豪アレクサンドル・レベジェフ氏の動きであろう。
同氏はスタンダード紙を一部50ペンス(約70円)の有料紙から無料紙に変えて、発行部数を大きく伸ばした。10月末には通常の高級紙の5分の1の価格で、インディペンデント紙の簡易版「アイ」を創刊させた。

 レベジェフ氏は旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の元スパイ。当初は同氏による新聞買収にメディア界の一部から懸念の声があがったが、「所有者として編集方針に干渉しない」という方針を貫き、評価が高まった。

 レベジェフ氏は会議初日の基調講演で、旧ソ連で「うそに満ちた報道」に触れて育ってきた同氏に、英国の新聞が実践する報道の自由は、「人生を変えるほどの衝撃」をもたらし、「酸素と同じように」自由な社会にとって必須な存在であると述べた。「世界の汚職を暴く」調査報道を支援するための基金を、来年設置する予定だという。

 今年7月から本格的に始まった、タイムズとサンデー・タイムズのウェブサイトの閲読課金制度だが、メディア・コンサルタントのジム・チゾム氏は、その将来に否定的だ。会議2日目の最初のセッション「誰がオーディエンスか」で同氏は、読者は高級紙の閲読に約30分を費やし、そのウェブサイトの閲読にかける時間はわずか4分ほどだと指摘。「サイトのユーザーは4ページ分を読むだけ。この間に十分な広告収入を上げるのは非常に困難」であり、また「タイムズが有料だと、読者は他の高級紙の無料サイトに流れる」と述べた。ただし、独自の地方ニュースを掲載できる地方紙は、他紙サイトへの移動が起こりにくく、この固有の特徴があるため、「課金制が成り立つ」と付け加えた。

 チゾム氏はまた、複数の国での市場調査の結果、「自社サイトに無料で記事をすべて載せた場合、その新聞の紙の発行部数の売上げが減少することを裏付ける統計は見つからなかった」と述べた。これは一部の新聞業界参加者が抱く、サイト掲載と紙の売れ行きとの相関関係に関わる不安を払拭するものであった。また、サイトでは記事の最後に記者のメールアドレスを必ず入れて、「双方向性を高める」よう提唱した。(「下」につづく)
by polimediauk | 2010-11-23 07:14 | 新聞業界
 日本でも、ホームレスの人が売る「ビッグ・イシュー」はかなり名前が知られるようになった。

 私は最初、英国でその存在を知り、東京に戻ったときに、有楽町駅近くで一部を買ってみた。ある著名俳優が表紙になっていて、販売人の方から、「お客さん、目が高いねー。この人が表紙になると、すぐに売れきれちゃうんですよね」と言われたことがあった。

 日本の「ビッグ・イシュー」は英国の「ビッグ・イシュー」よりも厚地の、質の良い紙を使っている。オリジナルの記事もたくさんあって、読みがいがある。英国の「ビッグ・イシュー」は、日本と比べるとややペラっとした紙を使う。ものすごくまじめな記事が多い印象を持っている(英国版)。私の友人たちは、なぜか、「読みたい記事がない」というのだがー。

 さて、先進国では紙の新聞の発行部数下落が続いているが、ホームレスや貧困の解消を目的として街中で販売される「ストリート・ペーパー」の部数が世界中で増えていることが、慈善団体「INSP」の調べで分かった(先週のグラスゴーでの編集者会議で、プレス・リリースをINSPの広報担当者からもらったのである)。「ビッグ・イシュー」も、そんな「ストリート・ペーパー」の1つだ。

 世界40カ国で115のストリート・ペーパーを販売する組織が加盟する、国際慈善団体「INSP」(インターナショナル・ネットワーク・オブ・ストリート・ペーパーズ)が22日発表したところによると、過去1年間でストリート・ペーパーの世界での販売部数は、前年よりも平均10%増加したという。

 INSP傘下の新聞はすべてホームレスたちが販売している。今年9月時点で、世界中で151万部が販売された。昨年同月は137万部だった。読者数は479万人から530万人に増加したという(1部を数人が読む、という想定)。

 アジア諸国では部数は前年比で48%増加し、これに米国(36%増)が続いた。欧州の増加は6・4%である。

 「先進国では雑誌も含め、紙媒体の発行部数が減っている。このニュースはその逆を行く動きで、すばらしい」(メディア動向の分析会社エンダース・アナリシスのダグラス・マッケイブ氏)というコメントがついていたぐらいだから、「良いニュース」として紹介したいのだろう。

 しかし、果たして、良いニュースなのだろうか?どちらかといえば、ホームレスの人が町でストリート・ペーパーを売らなくなったり、ストリート・ペーパーがなくなりつつある・・・という方がよっぽどいいのでは?また、販売部数が増えたということは、ホームレスの人が増えた、あるいはホームレスになることが多くの人にとって身近になった、ということを意味しないだろうか?

 リリースの中にあった、米国の例を見てみよう。米ナッシュビルで売られている、「コントリビューター」というストリート・ペーパーがある。今年1月、販売部数は1万2000部だった。9月には6万部になったという。「昨年9月には、1500部だったので、非常に大きな伸び。信じられない」、とコントリビューターの編集長タシャ・フレンチ氏は語る。(これは米国での不景気が悪化したことを示さないのだろうか?)
 
 コントリビューターがアンケートをとったところ、一ヶ月以上売っている人の中で、29%が住む家を見つけたという。3ヶ月以上売っている人の中では、これが35%になった。

 INSPによれば、傘下のストリート・ペーパーの71%が、ホームレスがストリート・ペーパーを売らなくてもよいようにし、25%が該当地域での住宅及びホームレスに関わる政策を改善させたという。

 いずれにしても、「部数が増えた」といって、喜んでばかりもいられない思いを持ったー理想論かもしれないが。ホームレスの人の生きる糧になっているという意味で、その存在は大きいという点は変わらないとしても。

 INSPは、ウェブサイトを通じて、日本語も含めた複数の言語で社会のさまざまな問題を配信している。ご関心のある方は以下のサイトへ。

http://www.streetnewsservice.org/
by polimediauk | 2010-11-22 05:11 | 新聞業界
c0016826_9121537.jpg 瀕死の状態にあった英新聞イブニング・スタンダードとインディペンデント、インディペンデント・オン・サンデーを買ったロシアの富豪アレクサンドル・レベジェフ氏が、14日、グラスゴーで開かれたメディアの編集者会議の初日に姿を見せた。今年の基調講演がレベジェフ氏になったのだ。

 レベジェフ氏は(今日は「レベデフ」と呼ばれていた)元KGB。今年春、イブニングスタンダードの経営権を取得したとき、メディア界の中で「本当に、元スパイに買わせていいの?」と言う声があがった。

 それが、今年秋の会議で、新聞社や放送局の編集幹部の前で基調講演をするまでになったのだから、たいしたものだ。また、新聞界の動きは実にめまぐるしい。

 息子とともに会議場にやってきたレベジェフ氏。黒のジャケットに白いシャツ、黒の細身ジーンズに黒のスニーカー。ラフだけどクールな装いである。スニーカーをはくのが好きなのだそうだ。

 どんな話になるのだろうー?期待を大にして始まったスピーチ。ほそぼそと話し出すレベジェフ氏。どうも声がやや小さい人である。静かに、穏やかに、そして時々はユーモアを混ぜて話す。

 スパイと聞いて、ジェームズ・ボンドのイメージ(世界中を飛び回り、アクションシーンの連続)があるかもしれないが、レベジェフ氏の仕事は英国でたくさんの新聞を読むことだった。新聞を読むことで英国社会がどうやって回っているのか、ジャーナリズムの力を学んだという。

 話の中心は、「世界の腐敗をなくし、自由な社会を作るには、報道の自由が必須」。そして、これを実現するのは「ジャーナリズムだ」。ある意味では青臭い、または理想主義的。こういう高邁な論法は、普段はあまり英メディア界では聞かない(聞くとしたら、ガーディアンの編集長のスピーチとか)。したがって、レベジェフ氏のスピーチは、どことなく、やはり違う文化から来た人が話しているなあ・・・という思いを持った。当たり前かもしれないが、違うものを見て、考えて、育ってきているわけであるから、視点が違ってくるし、表現も違う。そして、この「違う視点」はかなり新鮮に会場では響いたのである。

 レベジェフ氏は英国のメディア(ジャーナリズム)をべた褒めした。また、どうやって英国メディアを手なづけるかのやり方を学ぶために、ルパート・マードックに関する本を(マイケル・ウルフ著)を読んだが、「やり方はかかれていなかった」とやや落胆した様子。マードックが先日ロンドンに来て、サッチャー元首相記念講演を行った。この時の長いスピーチも、レベジェフ氏はしっかり読んだという。自分自身が英国のメディア王になりつつあるので、先輩マードックの足跡に興味があるのだろう。

 しばらくは新たな新聞を買う予定はないそうだ。2年ぐらい前まで、新聞大会は暗い雰囲気だったが、今年はすっかり明るい感じであった。その明るさを具現していたのが、レベジェフ氏だった。会議は16日まで続く。
by polimediauk | 2010-11-15 08:35 | 新聞業界
 英高級紙「アイ」(i)。創刊から、ほぼ2週間。インディペンデントとアイの両紙を買って、読み比べる日々が続いている。アイの創刊と専門家らの評価について、新聞協会報(11月9日付)に書いた。以下はそれに若干補足したものである。

                 ***

 英国の左派高級紙インディペンデントを発行するインディペンデント・プリント社が10月26日に創刊した高級日刊紙「i(アイ)」。「多忙で新聞をじっくり読む時間がない人」や「以前は高級紙を読んでいたが、現在は購読を止めた人」を対象に、インディペンデントの良質のジャーナリズムを通常の高級紙の価格の5分の1(一部20ペンス=約27円)で気軽に読んでもらうことを狙う。新たな高級紙の誕生は、1986年のインディペンデント創刊以来24年ぶりだ。

 アイは本紙となるインディペンデントと同じく小型タブロイド判で、平日発行(ただし、日曜日には、インディペンデント・オン・サンデーに4頁が折込で入っている。本紙というよりも販促っぽい)。全面カラーで、1面左端に紙名「i」の赤い大きなロゴを置く。トップ記事の写真も大きい。2~3面は見開きにし、新聞全体の見取り図(「ニュース・マトリックス」と呼ぶ)を載せた。ここを見るだけで、その日の新聞全体の内容が一瞬にして概観できる。経済面、論説面にも「マトリックス」方式が使われている。

 アイは一部56ページ構成で、80ページを超えるインディペンデントと比較すると薄めだが、内容は本紙のオリジナル記事で、通信社電が多い無料紙と差をつける。本紙と同じ記事でもデザインを変え、独自性を出している。

 記事の中には時折、記号「{i}」を使って補足情報が入る。読者の感想を複数の面で紹介し、編集長が直接読者に語りかける欄もあり、双方向性を重視している。

 アイ創刊と同時にインディペンデントも紙面を刷新した。字体を変え、カラーの使用を極力抑えて原則白黒紙面にした。抑えた色調が「真剣な新聞」であることを強調している。

 創刊日には無料配布も含め40万部を発行したアイは、「朝刊無料紙メトロを高級化した新聞」、「(廃刊となった)夕刊無料紙ロンドンペーパーに、読みやすさや明るい色使いの点で似ている」と複数のメディア評論家が指摘した。

 業界誌プレスガゼットのドミニク・ポスフォード編集長は、大衆紙並みの価格設定とじっくり読める内容との組み合わせはこれまでの新聞市場にはなく、「隙間を探し当てた」と好評価(10月26日付ブログ)。しかし、「一ポンドで販売するインディペンデントの部数がさらに下落する」(メディア学教授ロイ・グリーンスレード氏、同月25日付ブログ)という懸念も指摘された。同氏は、部数下落を続ける有料紙が無料紙に転換して成功した例から、将来両紙が無料化すると見込んでいる。

 両紙の統括編集長サイモン・ケルナー氏は、ガーディアンのインタビュー(10月25日付)の中で、無料化は「十分な利益を上げるほどの広告が集まらない」という経営判断から可能性を否定。アイの創刊で、高級紙を読む層の拡大を目指す道を進むことにしたという。

 アイは、インディペンデントの発行部数約18万部をしのぐ、25万部の発行部数達成を目指す。ガーディアンは11月8日付で、アイの現在の部数は「大体12万5000ではないか」とする推察を出している。

 経営難に陥っていたインディペンデントは、今年3月末、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の元スパイで、ロシアの富豪アレクサンドル・レベジェフ氏に買収された。新経営陣の下で新規投資が可能となり、アイの創刊が実現した。

ー英紙「インディペンデント」のこれまで

1986年10月:元デイリー・テレグラフ紙の記者3人が、新しい高級紙インディペンデントを創刊。発行元はニューズペーパー・パブリシング社。
1989年:凝った写真と調査報道で人気を博し、発行部数が40万部を超える。
1990年:日曜版インディペンデント・オン・サンデーを創刊。経営悪化の時期に入る。
1995年3月:ニューズペーパー・パブリッシング社の株がインディペンデント・ニューズ&メディア社(43%)、ミラー・グループ・ニューズペーパーズ社(43%)、プリスラ社(12%)ほかに分割所有される。
1998年3月:インディペンデント・ニューズ&メディア社が残りの株を買いあげる。アンドリュー・マーがインディペンデントの編集長に。
同年5月:マーが編集長職を辞職し、BBCの政治記者に。サイモン・ケルナーがインディペンデントの編集長に。部数が20万部前後に。
2003年9月:それまでの大判に加え、小型タブロイド判を平行して発行開始。
2004年5月:平日の新聞はタブロイド判のみとなる。
2005年4月:フランスのリベラシオン紙をヒントにレイアウトを刷新。小冊子「エキストラ」を平日版に織り込む。
同年10月:日曜版も小型タブロイド判のみとなる。
2008年1月:ブログや動画を使いやすく配置し、ウェブサイトを刷新。
同年9月:全頁カラー化。エキストラを「インディペンデント・ライフ・サプルメント」に変え、毎日別テーマを特集。
同年11月28日:アソシエーテッド・ニューズペーパーズ社の本部に引っ越す。
2010年3月25日:インディペンデント・ニューズ&メディア社がインディペンデントと日曜版をロシア人の富豪アレクサンドル・レベジェフとその息子の会社に売却する。
同年4月:見出しを小さくし、論説や特集記事を入れた「ビューズペーパー」の頁を作る。
10月26日:インディペンデントの廉価版となる、新高級紙「i(アイ)」創刊。
by polimediauk | 2010-11-09 21:45 | 新聞業界

 (若干バタバタしているので、ほんのメモ書き。)

 例の「尖閣ビデオ流出問題」の件。数日前に、たまたま、グーグルで国際ニュースを見ていて、このトピックにぶち当たった。ライブドアのBLOGOSで意見をいろいろ、読んだ。

 その時点では、「流出、けしからん」論が非常に強かった。驚いて、何か書こうと思ったが、一筋縄では行かない気がして、2-3日が過ぎた。今朝ぐらいまでに、すっかりいろいろな意見が出て、「流出でもいいじゃないか」「出たほうが良かった」という意見もぞくぞくと出るようになっていて、ほっとした。

 私が尖閣ビデオ流出問題を知ったとき、いわゆるウィキリークス的な話で、あまりにも似ている状況だ、と直感として思った。しかし、その反応は、少なくとも当初、日英の間で、あまりにも大きく違っていたように思う。(英国では、ウィキリークスの場合、「すごい!」「よくやった!」という好意的な反応があり、焦点はその後、リークの中味の議論に移る。リーク慣れしているのだろう。)

 ウィキリークスの話は、ジャーナリズムの面、軍事機密の面、ネットの常態化の面から、非常に大きなトピックであろう。アメリカ(だけ)の話でなく、日本も関係している(ネットでみんながつながっている)、ネット上の情報をどうするかの話でもある。尖閣ビデオ流出問題での日本のいろいろな人のあわて方(?)をみると、やっぱりというか、そういう状況を想定してなかったのだろうか。

  ・・・という過去の話は良いとしても、今、本当に、ドンドン、ネットで情報が「勝手に」出る状況になっている。

 その「勝手に」出る状況は、1つの、新たな「リークを元にしたジャーナリズム」になっているのではないかと思う。前からもリークを元にしたジャーナリズムはあったのだろうけど、ネットの出現で、誰でもが、「そのまま」出せるようになったわけだから、そういう意味で、新しい感じがする。

 「勝手に出る」ことが常態になった時、いろいろ、不都合なことや恥をかくことはたくさんあるだろうと思う。例えば、「国の沽券」とかは、吹っ飛ぶのかもしれない。

 「あえて、勝手に(許可を得ずに)出す」ジャーナリズムが、国民の了解・支持を得られるのは、公益がある場合だろうと思う。(その公益があるかないかは、情報を出す人が決める、そして情報を得た人が、判断する。)

 ・・・っていうのは、私の持論というわけではなく、ウィキリークスに代表される、権力に挑戦するジャーナリズム・あるいは行動の理由付けに使われている。

 それと、尖閣ビデオ流出問題やウィキリークスをちょっと脇において、「当局」というか、政府というか、いわゆる「お上」と、どういう関係を持つか、という点も気になる。

 「当局」が気に入らないこと、憤慨すること、恥ずかしく思うことをあえてする=ジャーナリズムの使命・・というのが、きれいごとかもしれないが、英国のジャーナリズムの基本的態度だと思う。(きれいごとばかり言っているようで、恐縮ですが。)

 (軍事機密をどうするのか?という問いもあるだろう。軍事に限らず、「機密」は今、常に破られる・暴露される時代になっているのだと思うー英国にいると、そう思う。もちろん、今回のビデオが本当に「機密」に足りえたのかという議論もあるだろうと思う。)

 
by polimediauk | 2010-11-09 08:40 | ウィキリークス
 ネット上でニュースを無料提供する方針を維持してきた英ガーディアン紙が、携帯アプリに購読制を導入することになった。

http://paidcontent.co.uk/article/419-guardian-flips-iphone-app-to-subscription-model-except-in-u.s/

 英新聞の主要ウェブサイトは閲読有料派(タイムズ)と無料派(そのほかの大部分)に分かれているが、無料派の筆頭ともいえるガーディアンが、唯一、例外として昨年導入したのが、携帯アプリの有料化だった。これは一回こっきり、このアプリを購入すれば、その後、追加として料金を払うことがない仕組み。

 アプリの代金は2.39ポンド(約312円、現時点)で、アイチューンズで買える有料ニュース・アプリとしては(アプリは無数にあるが)、必ずしも安くはなかった。しかし、昨年12月の発売後、有料ニュースアプリのカテゴリーですぐにトップの座についた。

 このアプリを買わなくても、携帯でガーディアンの記事は読めるので、「ネット上でニュースを無料で出す」というガーディアンの基本原則は守っていた。

 しかし、ペイドコンテンツ(上のアドレスの記事)が報じたところによれば(ペイドコンテンツはガーディアンの一部)、一回限りの支払いで得られる収入の限度にそろそろ達していたようである。そこで、来月から、半年間で2・99ポンド(約390円)、1年で3・99ポンド(約521円)の購読料を課金することにしたのだそうだ。(円換算にしてみると、ものすごく安い感じがする。)

 デジタルコンテンツの閲読を購読制にして利益を上げる、というのはなかなかおいしいやり方のようで、経済紙フィナンシャル・タイムズが成功しているが、一般紙がウェブサイトに課金するというやり方は、どこも(タイムズ以外は)及び腰だ。

 しかし、ウェブサイトに有料購読制を導入するのは拒んでも、携帯での購読制なら「アリ」―。ガーディアンは自分たちなりのやり方で、このデジタル購読料(サブスクリプション)ビジネスに参入してきた、ということなのだろう。

 それでも、ガーディアンは「デジタル・ニュースを無料で提供している」という看板をすぐには下ろさないであろう、ウェブでもまた携帯でも、確かに無料でアーカイブも含めたすべてのコンテンツが読めるのだから。

 新規の有料購読アプリは、米国以外の世界各国で導入される。米国では広告収入でカバーする、つまり無料のようだ。
 
 ペイドコンテンツによれば、昨年12月に発売となった有料携帯アプリは20万5000回ダウンロードされた。これは48万9950ポンド(約6390万円)の売上げになるという。アップル社のコミッション分を取ると、34万2965ポンド(4470万円)になるそうだーあまり大きな収入ではない感じがするが、どうだろう?

 携帯電話での購読制アプリの販売は、先週、すでにメールオンライン(大衆紙デーリー・メールとその日曜版メール・オン・サンデーの内容が入る)が6ヶ月で4・99ポンド、1年で8.99ポンドの販売をアイフォーンアプリとして提供しだした。メールオンラインよりは、ガーディアンの予定アプリは値段が低いことになる。

 ガーディアン、あるいは、メールの記事が読みたい・・ということで、継続して読者が購読料を払い続けるかどうかー?ペイドコンテンツは、「ブランドへの忠誠心を試すテストだ」と書いている。


 

 
by polimediauk | 2010-11-05 20:33 | 新聞業界