小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 ウィキリークス関連本が、2月中旬ぐらいまでに、各国で続々と出るようだ。

 英語圏の本を拾ってみれば、ウイキリークスのジュリアン・アサンジと共同作業を行った大手報道機関の1つ、米ニューヨーク・タイムズは「オープンシークレッツ」という内幕モノをすでに出している。ただし、これは今のところ、電子ブックのみでの購読だ。それでも、コンパクトにまとめた抜粋版がサイトに掲載されており、とりあえず、大体のところは分かるようになっている。

http://www.nytimes.com/opensecrets/

 元ウィキリークスにいたダニエル・ドムシャイト・ベルグが 「ウィキリークスの中:世界で最も危険なウェブサイトでのジュリアン・アサンジと私の時間」を出す。
Inside WikiLeaks: My Time with Julian Assange at the World's Most Dangerous

https://www.amazon.co.uk/Inside-WikiLeaks-Assange-Dangerous-Website/dp/0224094017/ref=sr_1_6?ie=UTF8&qid=1296429673&sr=8-6

 さらにグレッグ・ミッチェルという人が「ウィキリークスの時代」という本を出した。
http://www.blurb.com/bookstore/detail/1949679

 オーストラリアでも、誰かが書いているはずだ。

 米政府に関する機密情報暴露の共同作業を提唱した、「本家」とも言える英ガーディアン紙の「ウィキリークス:ジュリアン・アサンジの秘密の戦争の内幕」(Wikileaks: Inside Julian Assange’s War on Secrecy)は、2月10日頃の発売予定だったが、一挙に早まったようだ(日本語版もすでにアマゾンに出ていた)。現在、サイトで一部が読める。数回に渡り、新刊本の中味を連載する予定だ。

http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/30/julian-assange-wikileaks-profile

 ガーディアンの記事を読み始めたが、波乱万丈なアサンジの人生が迫力あるタッチで書かれていた。アサンジは自分でも自伝を書いているそうだが、ガーディアンと協力しているはずで、やはり、本人が関わったとすれば、ドキュメンタリーとしても面白いに違いない。

 日本語でもウィキリークス本はいろいろと出てくるようだが、今日、目に留まったのは、ガーディアンのアラン・ラスブリジャー編集長のアサンジとの協力体制に関する文章である(1月28日サイト上で公開、これは新刊の一部であるという)。

http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/28/wikileaks-julian-assange-alan-rusbridger?intcmp=239

 すこし長いが、いくつか気になったことをメモってみる。

―ペンタゴン文書の弁護士からもらったメール

 編集長は、数ヶ月に渡る機密情報の公開後、「空が落ちてきたわけではなかった」と指摘する。「ウィキリークスの敵は、こうした情報が公開されればいかに危険かと何度も繰り返した」、と。そして、「ここら辺で、アカデミックな機関などが公開の損害と恩恵とのバランスに関して、調査をしたらどうか」、と提唱する。また、米国がさまざまな外交公電を簡単に読まれ、ウィキリークスに渡されるような管理体制をしていたことを検証する必要があるのではないか、と問う(最後の点は他の論者もたびたび指摘している)。

 ウィキリークスと共同作業をした報道機関の編集長たちが悩んだのがどこまでどのように機密情報を公開するかー。ラスブリジャー編集長は、40年前のペンタゴン文書事件(軍事分析家のダニエル・エルスバーグが、国家機密であった「ペンタゴン文書」をニューヨークタイムズにリーク。タイムズが報道を開始して数日後、政府がこれを止めるために、裁判所に差止め令を出させた事件)で、ニューヨーク・タイムズ側の弁護士だったマックス・フランケルから、電子メールを受け取ったという。昨年11月末の米外交公電報道から、まもなくのことであった。

 フランケルは現在、80歳。ニューヨーク・タイムズに向けて書いたメモを、ガーディアンのラスブリジャー編集長にも送ってきた。

 フランケルは、こう書いてきたそうである。機密情報の公開に際し、フランケルは

①出たがっている情報は出てしまうものだと私は思っている。私たちの役割は、情報を責任を持って受け取り、私たち自身の普遍のニュース基準によって掲載する、または掲載しないことだ。
②情報提供者が自分の職務上の誓約や法律を破ることになる場合、私たちは、当局がこの誓約や法律を実行するようにさせるだけだー私たちはこれに協力せずに(注:この意味は、職務上の機密を守らせるようにするのは当局の仕事であって、メディアの仕事ではないということ、と私は解釈した)。私たちは、当局との協力や情報源の公開を、はるかに大きな理由のために拒絶する、つまり、『すべての』(注:強調)情報提供者は私たちが彼らを守ることを知っているべきだからだ。しかし、情報を漏えいをする、あるいは情報を出す人のバイアスや明確な目的を明らかにするのも、私たちの義務である。
③もしある情報がペンタゴン文書事件で最高裁が設定した基準を超えるようであれば、つまり、掲載によって直接的な、修復できない損害をもたらす場合は、私たちには掲載を適宜限定する義務がある。もし懸念があるならば、当局に対し、こうした直接の危険が起きると私たちを説得する機会を与えるべきだ。
④それ以外のすべての情報に関しては、掲載の結果起きることを誰も予測はできないと私は常に考えてきた。エルスバーグの望みとは裏腹に、ペンタゴン文書はベトナム戦争の終結を早めなかったし、特に大きな反戦抗議を引き起こしたわけでもなかった。掲載は政府を当惑させるかもしれないが、政策を向上させるかもしれない。あるいは、政府によるリークであった場合は、政策に損害を与えるかもしれない。ジャーナリスト、スコッティー・ジェームズは「勝手に公表しろ」(Publish and be damned、もともとは英首相にもなったウェリントン公が使った表現)とよく言っていた。ひどい表現に聞こえるが、ジャーナリズムのモットーとしては、これまでの歴史を見ても社会に恩恵を与えたと思う。(注:若干意訳、言葉の補足などあり。もっといい訳がある方からのご指摘を歓迎します。)

―米英のウィキリークスに対する見方の違いについて

 メガリークを巡り、米国のメディアや政治家が報道の自由や情報の透明性よりも、「愛国精神」のほうに傾いた反応をしているのではないかーこれは私自身がそう感じてきた。「米国の」機密情報が暴露されてきた以上、これは自然な流れだったかもしれないが、海を隔てた英国からすれば、やや「いかがなものか」的感想を持ったのは確かだった。

 ラスブリジャー編集長もこの点を感じていたようだ。記事の後半部分で、編集長は英国では「ほとんどのジャーナリストたちは、公開情報に明確な公的価値を見ることができた」。

 しかし、「米国では別だった」「様々な度合いの愛国主義に曇らされ、もっと苦々しく、パルチザン的な議論があった」。「ロンドンにいて、ほぼ主流と見なされる米国の論者たちがアサンジの暗殺を唱える姿を見て」、驚いた、という。また、「米国人ジャーナリストたちの間に、ウィキリークスの一般的な理想やその仕事を支持することへのいやいや感があることを知って、驚いた」とも。「一部の米国人ジャーナリストたちは、アサンジがジャーナリストであることも認めたがらなかった」。〔「愛国主義」で単純に判断できない件は、コメント欄をご覧ください。) 

 こうした態度が「アサンジが起訴された場合に変わるのかどうか」が見ものだ、という。

 ラスブリジャー編集長は、「頭の冷静な米司法関係者は、戦闘日記や外交公電を出版したことで、アサンジを起訴するのは事実上不可能であること」を理解するようになった、と指摘する。それは、もしそうすれば、メガリーク報道をした世界の5大報道機関も責任を問われることになるからだ。

 しかし、情報漏えい者とされるブラッドリー・マニング米軍上等兵の実話が出ない限り、世界を揺るがせたリークの完全な物語は完成しない、と編集長は言う。そして、新刊本は物語の第1章となるのだ、と。

 ガーディアンは、米バニティー・フェア(今年2月号)が書いたように、「うぬぼれさ」がある新聞(とライバル紙はいう)。自分がやっていることが世界中で一番重要なことだと宣伝する傾向もある。アサンジの話を中心にした本を出すことで、ガーディアンの名を世界中に広めたいと願っているだろうし、ブランド作りや新たな収入源の1つとして、ウィキリークスとはしばらくの間、仲良くしていくことだろう。

 また、米国の報道機関への弁護としては、米国の報道を「愛国主義寄り」と批判するのは、「対岸の火事」を見る格好となるガーディアンにとっては(私にとっても)簡単だ、という点を表記しておきたい。

 ・・・などなどを差し引いても、新刊本はかなり面白そうだし、編集長が紹介したフランケルのメールも、なかなか示唆に富むものだと思う。

 



 

 
by polimediauk | 2011-01-31 10:02 | ウィキリークス
 Translators United for Peace(平和をめざす翻訳者たち)というグループが、「エジプトの青年からのメッセージ」を伝えている。(TUP速報)

TUPウェブサイト上の以下のURIに掲載中。
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=906
原文: "A Letter to the World" by An Egyptian Youth URI: http://jan25egy.blogspot.com/2011/01/letter-to-world.html

 ツイッターでも流したが、今一度、その一部のご紹介。

 この手紙は今日、「私は皆様に、エジプトで本当はいったい何が起きているかを知らせたくて手紙を書いています」、と始まる。状況の説明の後、米国民への、欧州諸国の国民への、そして世界中の人々へのメッセージが続く。米国民へのメッセージが感動的だ。

引用:「親愛なるアメリカの仲間のみなさん、 あなたがたの政府は30年にわたり、ムバーラク大統領に最大の支援を提供してきました。武器と催涙ガスで国家安全保障体制を支えています。」

「米政府は、私たちの国に毎年 16億ドルに及ぶ資金を与えていて、それは腐敗したエジプト政府の中で主にさまざまな形の賄賂として使われています。あなたがたの「民主的な」祖国はイスラーム主義者を恐れるあまり、我々の政府を支援しています。」

「私たちのリーダーを選ぶことは私たち自身の権利であるという一点において、あなたがたの支援を望みます。私たちを支援し、上院議員や下院議員にエジプト政府を支援するのをやめるように言ってください。私たちを支援し、自由はパンよりも重要である と世界に伝えてください。」

 ご関心のある方はぜひTUP速報のサイトをご参照いただきたい。
by polimediauk | 2011-01-31 07:57 | 政治とメディア
 ウィキリークス報道が、ひとまず落ち着いた今日この頃(ガーディアンとの共闘作業は年末で一通り終わったようである)。

 米英、あるいは世界各国で物議をかもしたウィキリークスによる一連の「メガリーク」だが、どことなく、びくともしなかったような感のある日本である。

 そんな日本をあっと驚かせる大ニュースはメガリークの中にはなかったのだろうか?そしてまた、実際に、読売や朝日などの大手新聞がウィキリークスから生情報をもらう可能性はあるのか、ないのか。ウィキリークス側からの答えが今ないとしても、少なくとも、大手新聞側は一体どう考えているのだろう?

 そんな疑問に答える形で、ジャパンタイムズ(25日付)に出たのが、ジャーナリストのデービッド・マックニール氏による「ウィキリークのダムが決壊するのを待って」(Waiting for the WikiLeak dam to break)である。

http://search.japantimes.co.jp/print/fl20110125zg.html

 その中の情報の抜粋なのだが、まず読売新聞によると、2006年から2010年、東京の米国大使館と米国務省との間の外交公電は5,697あったそうである。米―アンカラ(トルコ)、米―バグダット(イラク)に次いで多い数だ。中身は、沖縄、北朝鮮や中国に関する機密書類などが含まれる。この内容が公開されたら、「重大な結果となる」と、防衛省の高官が読売に語ったそうである。

 大量の外交公電情報を得た報道機関の1つがガーディアン。その副編集長によれば、読者の国際問題に関する関心は思ったより高くなく、報道したのは公電情報の「ほんの一部」であった。また、情報源の保護やその他の理由から、公電全部をそっくりそのままサイト上に出す、ということをどの報道機関もしていないとのことであった。

 マックニール氏によると、ウィキリークスの弁護士(複数)が、日本にいる「著名な外国人のジャーナリスト」に、直接ウィキリークスから生情報をもらう件に関してコンタクトをとったそうである(このジャーナリストが誰なのかは、ぼやけた表現になっている)。また、同氏によると、朝日新聞とジャパンタイムズは少なくとも表向きにはコンタクトがなかったと言っている。

 「噂によれば」、読売にアプローチがあったそうだ。そこで「ライバル紙」〔朝日?〕のジャーナリストが、読売は自民党に近かったので、もし掲載することになれば、苦しい立場に追い込まれる、と推測をのべている。ーーここら辺は、推測や噂の話である。

 日本のメディアがウィキリークスと直接関与してこなかったのは、「無関心」が理由ではないか、と東海大学で教える山口勉氏がいう。山口氏は元読売記者(実は、筆者の昔の上司の一人―短い期間ではあったが)。「残念だが、日本のプレスは怠惰なのです」。

 また別の読売の退職者〔筆者注:おそらく記者であった人〕は、匿名とすることを条件に、別の見方を教えてくれたという。「大手新聞社の上級編集者たちは、ウィキリークスに近づかないよう言われていた」「(ウィキリークス創始者の)アサンジがやったことを認めていないからだ」。マックニール氏は、それでは、公電情報へのアクセスを提供された「ワシントンポストやウオールストリートジャーナル、そのほかの米国の報道機関の態度と変わらないではないか」と書く。

 一方、ウィキリークスから生情報をもらおうと奔走するジャーナリストも日本には複数いるようだ。「もし沖縄など、でかいトピックに関する公電が報道されたら、1面扱いの記事になる」とそのうちの一人が、マックニール氏に話す。

 一体どんな、日本関連の情報があるのか?マックニール氏は「世界」2月号の「メディア批評」の記事(神保太郎氏が書いたもの=この名前自体はペンネーム)に注目する。紹介されているエピソードを「世界」から抜粋するとー。

 「日本だってWLのおかげを蒙っていることを、忘れてはならない。09年9月17日付でミサイル防衛関係各国の米大使館に発信された米国務省公電は、海上配備型迎撃ミサイル「SM3」の将来におけるNATO,東欧・ロシアへの配備に関する計画が主題だったが、それは対象ミサイルの開発・製造に日本が全面的に協力しており、その力をフルに生かすには日本に戦略的な決断をしてもらう必要がある、とする記述部分も含んでいた」。
 
 「これが12月1日、WLで暴露されたおかげで、同年10月の北沢防衛相・ゲーツ米国防長官会談の中身はその件であることが分かり、そのころから防衛省で武器輸出三原則の見直し論が活発化したわけも、はっきりした。日本が製造に関わったミサイルを第3国に売るには、3原則を変えなければならない。米国はその決断を日本に迫ったのだ。しかし、早くそうした事情が判明したために、新防衛大綱に3原則の見直しを書き込むことに対する世論の反対が生じ、管内閣はこれを見送ることにした。際どいところだった」。


  さらにマックニール氏は神保氏の分析の紹介を続けるのだが、最後の部分(神保氏の)を紹介すると:

 「WLの衝撃が教えることは、現在の不正を暴くことが未来の責任をはたすことになるというジャーナリズムの基本だ」――「隠す側に立つのか、暴く側に立つのか、これは遠い国の話ではないし、国の内側の話でもない。」

 マックニール氏の最後の締めは、「さて、ダムが決壊するまで、後どれくらいかかるだろう?」である。
by polimediauk | 2011-01-26 20:53 | ウィキリークス
 BBCのQI問題で、問題視された動画クリップが削除となったことを知った。いささか衝撃を受けている。

BBC、批判受けネット映像削除 二重被爆者の放送問題
http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011012401000820.html

引用:【ロンドン共同】英BBCテレビのお笑いクイズ番組「QI」が広島と長崎で二重に被爆した故・山口彊さん(長崎市出身)を「世界一運が悪い男」などとジョーク交じりに紹介した問題で、BBCは23日夜、動画投稿サイト「ユーチューブ」にBBC自体が掲載していた当該の番組映像を削除した。

 BBC広報担当は24日、共同通信に対し「われわれは既に番組は不適切だったとする声明を出しており、削除を指示した」と述べた。BBCは22日には「週末のため、月曜(24日)朝にインターネット担当者が出勤してから対応を検討する」としていたが、日本国内での批判が収まらないことを受け、前倒しで対処したとみられる。

 BBCと番組制作会社は21日、連名で「(日本の皆さまに)不快な思いをさせ、申し訳ない」と謝罪する声明を発表したが、その後もユーチューブを通じて全世界で視聴できる状態を維持したため、被爆者らの間で不信感が募っていた。

 BBCがユーチューブに掲載していたのは、昨年12月17日に放送した「QI」の一部で、約3分間。この映像は約9万7千回再生されたが、そのほとんどが日本時間21日に今回の問題が報道された後だった。〔引用終わり)
 

 ここまで、あっという間に事態が進んだように思った。BBCが動画削除にまで行く、というのは、よっぽどのことである。抗議から削除・・・。このスピードの速さー大きな衝撃を感じたー。

 ****

 ウィキリークスのことを、また一度、まとめたものを、「英国ニュースダイジェスト」に書いた。今までの経緯を知っている方にはめずらしいことはないが、とりあえずのアップデート版として。

機密情報を世界中に発信する
内部告発サイト「ウィキリークス」とは?
http://www.news-digest.co.uk/news/content/view/7388/263/

 ***

 また、2月5日、数人で書いた、ウィキリークスの本が出ることになった。

 タイトルは新書で「日本人が知らないウィキリークス」 (洋泉社)


 目次はこんな感じ:
 
│第1章│ ウィキリークスとは何か──加速するリーク社会化〈塚越健司〉
1 リークサイト「ウィキリークス」とは
2 ウィキリークスの情報公開──賞賛と批判
3 2010年──変化するリーク方法
4 公電公開後の動き
5 加速するリーク社会化

│第2章│ ウィキリークス時代のジャーナリズム 〈小林恭子〉
  1 ジャーナリズムとリーク
2 国家機密のリーク報道
3 リーク報道をめぐる様々な評価
4 ウィキリークス時代のジャーナリズム

│第3章│ 「ウィキリークス以後」のメディアの10年に向けて 〈津田大介〉
 
│第4章│ウィキリークスを支えた技術と思想 〈八田真行〉
 
│第5章│米公電暴露の衝撃と外交 〈孫崎 享〉
 
│第6章│「正義はなされよ、世界は滅びよ」──ウィキリークスにとって「公益」とは何か 〈浜野喬士〉
 
│第7章│ 主権の溶解の時代に──ウィキリークスは革命か? 〈白井 聡〉
  1 「歴史は繰り返す」。だが、いかなる歴史が?
2 カリフォルニアン・イデオロギーの政治的帰結
3 主権の溶解


 私は自分のところしか読んでいないが、他の執筆者の方の分を読めるのをとても楽しみしている。

 もし良かったら、書店に並んだら、お手にとって見てくださると幸いです!!



 
 
by polimediauk | 2011-01-25 08:12 | ウィキリークス
 前回、BBCのQI問題について書いたが、「私なら笑って、無視する」という表題や内容に、疑問や怒り(場合によっては)を感じた方が結構、いらっしゃるかもしれない。

 ある意味ではシンプルなことを、いかにそれがシンプルで、他愛ないことであったかを説明するために、汗をかいてしまうーそんな状況に私たちはいると思う。

 どれほど、「このクリップに関しては、大きく抗議するほどのことではないよ」「私はそう思うよ」と言っても、「被爆・原爆をコメディー番組のトピックにしたこと自体がいやだ」という感情は消えないだろうし、「第一、君(=小林)の判断力はちょっとおかしいんじゃないか」と、思う人も結構いらっしゃると思う。

 そこで英語ブログ「アワ・マン・イン・アビコ」の話になる。日本に住む英国人男性が書いたものであるようだ〔最後にアドレスをつけている〕。

 このブログの優れたところは、これが「英国人が」書いた部分(英国人――英国国籍保持者――のみが、今回のクリップの意味が分かる、と自動的に考えるのは、これはこれで必ずしも正しくはないが、まあそれは脇において)というよりも、もちろん、「英国人=英国のユーモアやもろもろが分かる」という部分は重要なのだが、それ以上におもしろいのが、この書き手が、自分の妻(=日本人)の母親、つまり義理の親に,事態を説明する、という部分である。

 その母親は読売新聞やテレビを見てニュース情報を得ている。

 そんな彼女に、いかに分かりやすく、的をついた返事をするか、そして、ここが肝心だが、「家族の一員として正直に、誠実に答える」必要に迫られる。

 ・・・まあ、やや深読みかもしれないが、非常におもしろい状況ができたわけである。

 こうして、この男性はーーすこしフィクションが入っているのかもしれないけれどもーー義母に、説明しだすー。

 私も、もし自分の日本の家族に聞かれたら、どうするかなと考える。うそはつけない。正直にかつ、わかりやすくなければならない。私の答えは「アワ・マン・イン・アビコ」のようなことになるだろうーー家族は「ふーん・・・」(でもなんだかよく分からないなあという反応)になるかもしれないが。

 メモ魔さんが読みやすく翻訳してくれている。良かったら、ご参照願いたい。
【ブログ翻訳】「私は如何にして心配するのを止めてQIを愛するようになったか」(Our Man in Abiko)
http://nofrills.seesaa.net/article/182228183.html

***補足〔長い!)

 他の方のブログやツイッターでもうご存知かもしれないが、英国でQIは人気番組の1つだけれど、あえて見ない人もたくさんいる。見るに値しない(十分なギャグがない、司会者が嫌い、下品など)と思ってチャンネルを合わせない人がたくさんいると思う。なので、「誰もがこの番組を愛し、ジョークに笑っている」わけではない。〔また、今、問題にしていることとは直接関係ないかもしれないが、私個人が見ることはほとんどない。理由は、著名人・知識人の司会者と彼にお世辞を言わざるを得ない周りのコメディアン・出演者たちとのくっつき具合が見苦しいから。家人はよく見ているようなので、男性には受けるのかなと思う。あくまで個人的嗜好の問題かもしれないが。)

 それと、被爆・原爆をジョークのトピックとして使うこと自体に、不快感を感じる、悪趣味と感じる人も、過半数ではないかもしれないが、結構いると思う。調査したわけではないので数字は分からないけど。家人ーー戦後生まれ、初老、日本居住経験10年以上ーの例を出せば、「QIの原爆を扱ったクリップ」と聞いただけで、「見たくない」と言ったーーただ、後で、日本軍による戦中の捕虜の「残酷な記事」を新聞で見つけ、私に持ってきた。また、知人の英国人たちと話していて、原爆の話になると、「本当にひどいことでしたね」とよく分かっている人が結構いる。英国人全体の話ではもちろんないが、「少人数でも、分かっている人は分かっている」し、日本に対する敬意は漠然とだがあるように思うー国の話をするとすれば、だが。(きりがないので、とりあえず、終。)
 


 
by polimediauk | 2011-01-24 19:39 | 日本関連
 少し前に、ツイッターで、「QI」という番組の英国での評判を聞かれ、「?」と思っていたら、翌日、その意味がわかった。日本の新聞が一斉にこの番組について、書いていたのだ。

 ブログサイトBLOGOSでも、盛り上がっていた。皆さんも、もうすでにご覧になったことと思う。

BBCの二重被爆者嘲笑問題に対する反響について
http://news.livedoor.com/article/detail/5289579/
質の悪いエゲレスジョークとか笑い飛ばしてれば良いんだよ
http://news.livedoor.com/article/detail/5289342/
英BBCお笑い番組に激怒する日経社説
http://news.livedoor.com/article/detail/5288149/

 私はこの間、主にツイッターでいろいろ書いたり、考えたりしていたのだが、あっという間にこの番組の「問題」クリップの和訳が行われ、驚いてしまう。

BBC「QI」の出演者たちは実際に何を言っているのか? これが「被爆を嘲笑」?http://blog.goo.ne.jp/mithrandir9/e/5d8249376ac2592288a873dcbf11e412

 また、詳しい解説は、これまでに何度かご紹介させていただいている、メモ魔さんの

ポターズ・バー鉄道事故、the wrong kind of snow, そして「二重被爆者」――バラエティ・クイズ番組QIで何が語られ何が笑われていたか

http://nofrills.seesaa.net/article/182037095.html

 さらに、BBCとガーディアン記事もある
BBC apologises for Japanese atomic bomb jokes on QI quiz show
http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/23/bbc-apology-atomic-bomb-jokes

BBC apologises for Japanese atomic bomb jokes on QI
http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-12260577

 ・・・と、ここまで多くの方があらゆることを議論して下ったので、私としては特に付け加えることはないのだけれどもーーもし良かったら、@ginkokobayashiで過去ツイートをご覧くださいーー、せっかく、通常英国のメディアを常に見ていること、在英の日本人であること、また、小林恭子という一人の人間として、どう見るか?ということを書いておいてもいいかも、と思った〔書いてみたら、長くなったことをお許しください)。
 
 QIはコメディークイズ番組で、問題のクリップはほんの3分ほど。そこで私が思ったのは


①自分は、笑ってしまった。
②被爆者や原爆を「嘲笑」しているどころか(一部の日本のメディアではそういわれていた)、「日本ってすごいね(鉄道がきちんと動く)」「被爆者の山口さん、命は助かって、良かったね」というメッセージが伝わってくる、むしろ日本に関してポジティブなクリップだと思った
③ある番組に関して、不満・苦情がある時、大使館(政府、国家権力)を通じてやるのはどうかな、と。もちろん、個人として何をしようと自由だけど、今回の場合、そんなハナシじゃないでしょ、と。
④日本の評判とか、名誉とか、いろんなものが侮辱されたとか、傷ついたとかと、日本人(のある人)が思って、集団として、大使館とか政府を通じて相手国に抗議するとき、気をつけたいのは、全く逆効果になる可能性があることを留意すべきではないか、と思った。
⑤BBC=英国、怒っている私たち=日本国、だから「日本の大使館へ」というのは、やや短絡過ぎないか、とも。BBC=英国じゃない。
〔以下は、すごく重要だと思うので、色を変えます。)

⑥上の話とはまったくの無関係な問題として、「もし」、被爆・原爆問題を外国のコメディー番組で、「どんな形にせよ」(つまり誉める以外は、ということだけど)取り上げること、これ自体が「けしからん」と思っているとしたら、これは1つの考え方だけど、これを相手(=自分ではない人物、自分とは違う価値観を持つ人物)に認めてもらうには、相当の覚悟が要るよ、と。
⑦現実的には、⑥は不可能だと思う。世界中の「懸念」を考慮に入れて、全部カバーして番組が作れるわけがない。
⑧もし被爆・原爆問題に関してのみ、ここで語るとすれば、被爆・原爆に関して、「特にひどい行為であった」と考える国は、世界中全部ではない、ということーこれが現実。
⑨⑧の一つの理由は、相手側の「知識が少ない」「無知」だから、では必ずしもなく、相手側が、つまりここでは例えば英国側が、「原爆投下の犠牲者」としてこちらが発言をしたり、相手に譲歩を求めたりすれば、「じゃあ、戦時中の日本軍による捕虜の取り扱いはどうなのか」と考える人も結構いるから。つまり、歴史や戦争の解釈はその国によってずいぶん違うのであるー当たり前のことを言って、すみませんがー。自分の痛み(=原爆のひどさ)が、他者にストレートに「分かってもらえない」(いくら知識を得てもらっても、感情的に認めないことも含め)場合も、世界ではある、ことを知ったほうがいいような気がしたーもう知っている人はたくさんいると思うが、あえてー。
 

 ・・・で、結局、どうしたらいいのか、今回の件は?

 先のガーディアンの記事でも紹介されていた、「アワ・マン・イン・アビコ」ブログが言うことと、私の結論は似てくる。(以下のブログは英語だが、そのうち誰かが訳してくれると思う。)
http://ourmaninabiko.blogspot.com/

 そして、上のコラムと「質の悪いエゲレスジョークとか笑い飛ばしてれば良いんだよ」と同じ考え。

 つまり、「ガハハ」と笑って(笑いたければー)、あるいは「フン、バーカ!」と思って、さっさと前に進むことである。

 このジョークで気をもんで、抗議していたら、体がいくつあっても、たまらないーそれが英国である。(といって、「英国ジョークを分かりなさい」とあなたに強要しているのではありません。)

 まじで、英国のもろもろのことを自分の目と頭を使って判断して、今回は「気にしなくてもいいレベル」と私が判断している、ということなのです。(あくまでも私の見方です。)

 最後に:このジョークの意味合いは、文章だけ読んでもぴんと来ないかもしれない。また、意味が細かく分かっても、それでもぴんと来なかったり、不愉快に思う人もいるかもしれない。でも、もしあなたが「被爆・原爆をコメディー番組のトピックに選んだこと」自体を問題視ししているのでなければ、ほんとーに、ほんとーに、このクリップはたいしたことではないのことなので、意味がぴんと来なくても、無視して、次に進むことが幸せへの近道だと思う。
by polimediauk | 2011-01-24 09:06 | 日本関連
 マードック傘下の英大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」と電話盗聴疑惑に関して、これまで3回に渡って書いてきた。

その③
http://ukmedia.exblog.jp/15767512/

http://ukmedia.exblog.jp/15741981/

http://ukmedia.exblog.jp/15732494/

 21日、この新聞の元編集長で、英官邸の報道局長だったアンディ・コールソン氏が、辞任を発表した。

 同氏がニューズ・オブ・ザ・ワールド紙の編集長時代、王室報道担当記者が王室職員の携帯電話の留守電メッセージを盗聴し、2007年、有罪・禁固刑となった事件があった。実際の盗聴を行った探偵も有罪・禁固刑になった。

 こうした取材行為を「全く関知していなかった」と述べるコールソン氏であったが、責任を取るために編集長を辞任している。その数ヵ月後には、当時野党だった保守党の広報責任者となった。この5月、保守党と自由民主党による連立政権が発足すると、同氏は報道局長(広報統括者、ディレクター・オブ・コミュニケーションズ)となった。

 しかし、ガーディアン紙や米ニューヨーク・タイムズによるその後の取材で、実はほかの記者も盗聴行為を行っていた疑いが出てきた。また、ほかにも、多くの著名人や政治家などの携帯電話の留守電メッセージも盗聴されていた可能性が出てきた。自分の電話が盗聴されたのではないかと疑念を持った著名人たちが、次々とニューズ・オブ・ザ・ワールド紙の発行元ニューズ・インターナショナルを訴える動きが出てきて、今年になって、かつてコールソン氏の腹心として働いた、ニュース・デスクのある男性が、停職状態になっている。この男性は、探偵から盗聴記録をもらった人物の一人と言われている。

 報道を担当する自分に注目が集まりすぎるようになり、コールソン氏はとうとう、辞任にいたった。

 ガーディアンの政治記者、マイケル・ホワイト氏は、コールソン氏が辞めたからといって、英政界が大衆紙に勤務していた人物を広報担当者として雇用するという流れは、変わらないだろうと書く(1月21日付、ウェブサイト)。

 発行部数から言えば、英国の新聞市場で圧倒的な割合を占めるのは、タイムズやガーディアンなどの高級紙ではなく、ゴシップ記事が満載の大衆紙。選挙に勝ちたいと思えば、「大衆紙の見出しがどんな風になるか」を頭に入れて、広報を統括する人物が必要となるからだ。大衆紙と仲良くしておくことは、政治家にとっては重要なのだ。

 かつてニューズ・オブ・ザワールド紙でコールソン氏の元で働いていた、ポール・マクマラン氏は、民放チャンネル4の番組に出演し、コールソン氏が「盗聴に関わったのは、禁固刑となった記者一人のみ」とする主張をし続けていることに失望感を見せた。マクマラン氏は、ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙で留守電メッセージの盗聴に自分が関わり、「他の多くの記者もやっていた」と公言してきた。

 「ジャーナリストは、常に『もう一歩先の』手段を使って取材する必要に迫られる」「権力者の不正を正す報道をするとき、あえて盗聴という行為をしなければならないこともある」。

 コールソン氏には、「部下の記者たちがこうした取材方法に手を染めていたことをしっかりと認め、ジャーナリズムの一環として必要であったと、堂々と言って欲しかった」。

 同氏が「何も知らなかった」というのは、「馬鹿げている」とマクマラン氏は述べた。

―「真実を言っているのかどうか」が問題

 チャンネル4は、同日、この事件を追ってきたガーディアンの編集長アラン・ラスブリジャー氏をスタジオに呼んだ。「なぜ、大衆紙の盗聴疑惑をここまで追求する必要があるのか」と司会が聞いた。

 ラスブリジャー氏は、コールソン氏はまず、「官邸の中枢にいた」「官邸の中枢にいる人物が嘘を言っているのかどうかを知るのは、公益だ」。

 また、「果たしてロンドン警視庁はこの件を十分に捜査したのだろうかー私はそうは思わない」。

 そして、発行元のニューズ社は英国でも非常に大きなメディア組織であり、官邸の中心にいた人物、警視庁、巨大なメディア組織が「嘘を言っているのか、真実を言っているのかを問うことは重要だと思う」と述べた。

 ガーディアンのこうした見方は、新聞業界内で必ずしも共有されているわけではない。コールソン氏がニューズ・オブ・ザ・ワールドを辞任した時点で、「みそぎが済んだ」と考える人が結構いるのだ。私自身も、そんな声を業界関係者の口から、何度も聞いた。

 盗聴疑惑を解明するため、ニューズ・インターナショナル社を訴える著名人が少しずつだが増えており〔ガーディアンの計算では5人〕、ことがこれ以上大きくなることを防ぐための「火消し」として、コールソン氏は辞任となったのかもしれない。

 このままコールソン氏が消えるとは思えないので、どこかの新聞でまた編集長となるのか、あるいは事態沈静後、また官邸に戻る可能性もゼロとはいえない。

 というのも、ブレア元首相の報道局長だったアラステア・キャンベル氏も、「メディア操作」の悪評がたって、一時官邸から離れたが、後、実質的には官邸チームの一員となってブレア氏に協力した。

 まだまだ先は分からない。先のホワイト氏が言うように、「大衆紙の読者の心がわかる」人物は、政治家にとって、非常に貴重な人材なのだ。

参考:
民放チャンネル4(英国のみで視聴可かもしれません)
http://www.channel4.com/news/catch-up/
マイケル・ホワイトの記事
http://www.guardian.co.uk/media/blog/2011/jan/21/michael-white-andy-coulson-resignation?intcmp=239
by polimediauk | 2011-01-22 07:43 | 政治とメディア
 ベラルーシ生まれで米国に住むブロガー、ユーゲニー・モロゾフという人が、ネット革命に懐疑的な本(The Net Delusion: The Dark Side of Internet Freedom)を出したという。
http://www.amazon.com/Net-Delusion-Dark-Internet-Freedom/dp/1586488740/
http://www.evgenymorozov.com/about.html

 この本をまだ読んでいないが、チュニジアの革命でフェースブックやツイッターなど、SNSが大きな役割を果たしたといえるのかどうか、つまり、「SNSで革命が起きた」といえるのかを、17日夜のBBCテレビ「ニューズナイト」が議論したときに、モロゾフ氏がゲストコメンテーターの一人として出ていた。

 自分は「ネットの普及=良いこと」という論調でこれまでいろいろ書いてきたので、はっとすることがいろいろあった番組クリップであった。

 以下はその中の抜粋である。

 まず、ワイヤードUKのデービッド・ローワンが、「ツイッターやフェースブックで暴動が起きたりはしないが、ある地域で、政府や企業に説明責任を果たさせる一つの方法になる」「また、傍流にいる人々に発言の場を与えるのがSNSであり、インターネット」という。

 「チュニス革命=SNSの勝利」とする一部の報道に水を差す発言をしたのが、オックスフォード・インターネット・インスティテュートのビクター・メイヤー=ションバーガー(Viktor Mayer-Shonberger)教授だ。「革命が起きるには様々な要素が複雑に絡み合う。ツイッターやフェースブックは1つのツールだったかもしれないが、どんな役目を果たしたのかはまだはっきりしていない」

 「イランの場合は、SNSを使って、野党勢力がすでに抗議をしたがっているような人々を対象に、デモをするようにと呼びかけていた。だから、ツイッターはすでにある意志を持っている人に、行動を起こす動機を与えるにはいいが、大きな運動を開始できるわけではない」。

 マイヤー=ションバーガー教授は、インターネットで革命が起きたという「ユートピア幻想を信じたがる気持ちが、社会の中にある」と指摘する。

 しかし、インターネットを使うのは市民ばかりでなく、政府側も使う。とすると、SNSなどを使うことで、当局にマークされ、拘束される事態もある。
 
 ネット革命に懐疑的な本を書いたユーゲニー・モロゾフ(Evgeny Morozov)と、ネットコラムニストのローリー・ペニー(Laurie Penny)がコメンテーターとして出演した。以下は司会者と二人のコメンテーターの会話である。
 
 -「ネットのユートピア幻想」とは何か?
 モロゾフ:1990年代から、インターネットでイランや中国などの抑圧的政府が崩壊するのではないかという見方があった。この見方はまだある。

―しかし、SNSがなかったら、イランやチュニジアでの市民の抗議デモは起きなかったのではないか?
 モロゾフ:国によって事情が異なるが、イランの場合は、いずれにしても、デモが起きていたと思う。デモの後に何が起きたかに注目するべきだ。 イランでは政府はSNSを使って、デモに参加した人を捕まえた。

―SNSがなかったら、チュニスで起きたような規模のデモは起きなかったのではないか?
 ペニー:ここ一年半ぐらいの間、世界中でSNSは重要な役目を果たしてきたと思う。しかし、興味深いのは、大きな技術革新が起きているので、その結果はまだ分からない。常に新しいことが起きているし、24時間サイクルのメディアがあるので、今起きていることをすぐにみんなが知りたがる。結果はどうなる、これからどうなるか、と。実際には、誰も分からない。だから、この段階で、(政府がインターネットを使ってデモに参加した市民を拘束しているからといって)インターネットが抑圧的だ、いや抑圧的ではないとは結論は出せない。事態はもっと複雑だろうと思う。

―しかし、事態を発酵させたのはネットではないか。古いメディア、例えばテレビは何もできなかった。ツイッターなどの情報を出すだけだ。
ペニー:それは違う。テレビは人々に力を与えるようなメディアではないからだ。今、このテレビ番組を見ている人は、私たちに声をかけることができない。「まてよ、私はこう思うんだよ」、とこちらに話しかけることができない。
 インターネットだったら、共同作業ができる。そこで、一人ひとりが、自分たちが関わっていると思える。「会話」に貢献できるし、抗議デモに参加しようと思える。

 モロゾフ:SNSの会話がテレビで放映されたりしたのだから、SNSとテレビの媒体がともに働きかけた部分も考慮しないと。SNSが何かを変えたのかどうかを判断するとき、デモだけを見てもだめだと思う。デモの結果、何が起きたかまで見ないと。

―政府がネットを使って世論を操作するようになった。中国政府が異分子を捕まえるために使うかもしれない。リスクがあるが。
ペニー:どの媒体にせよ、良いことのためだけに使えるなんて(ことはない)。インターネットほど大きな媒体が、ユニバーサルな良いことであるはずがない。インターネットはいつも変わっている。使う人はどんどん学んでいる。

―テレビと違って、ネット上の発言はネット空間に残るから、政府が捕まえて、人を投獄しやすい。こうしたリスクをどう思う?
ペニー:もちろんそんなリスクがある。そして、若い人の多くがネット上の機密保持に関してやや無防備となる傾向もある。しかし、だからといって、ネットを使ってデモを組織化するのが悪いこととは思わない。ツイッターに出した情報が、例えば非営利のウェブサイトにつながって、これを見て1万人がフォローするようになって、一体何が起きているのかと情報を交換するー。これは(SNS以前の世界と比較すれば)非常に重要な変化だと思う。
 
by polimediauk | 2011-01-19 08:10 | ネット業界
 (これまでの話)英国の大衆紙ニューズ・オブ・ザ・ワールド(NOW)をめぐる電話盗聴事件では、2007年、同紙の記者と私立探偵が有罪となっている。NOW側は「他には誰も関与していなかった」としているが、英高級紙ガーディアンが、「組織ぐるみだった」とする報道を粘り強く続けている。2009年7月、「新たな証拠をつかんだ」とするガーディアンの報道がきっかけで、下院委員会が関係者を公聴会に召還して事情を聞いた。呼ばれた元NOW紙編集長や経営幹部らは、「記憶にない」などと証言し、下院委員会は2010年2月の報告書で、同紙や発行元のニューズ・インターナショナル社幹部が「集団健忘症にかかっている」と結論付けた。真相は藪の中で、曖昧さが残る事態となった。

―ニューヨークタイムズが元記者らの証言を報道

 しかし、である。そんな曖昧な決着を突く報道が2010年9月、現れた。

 米ニューヨーク・タイムズがNOWでの盗聴行為は組織ぐるみであったとする長文の記事を掲載したのだ。記事の強みの一つは、元NOW紙編集長で現在は首相官邸の広報を統括する、アンディー・クールソン氏の直接の関与を指摘する具体的な人物の声入っていた点だった。

 元NOW記者のショーン・ホーア氏は、ニューヨーク・タイムズに対し、英大衆紙業界では盗聴行為が常態化しており、NOWでもクールソン氏はホーア氏に直接、盗聴をしてでも情報を取るように奨励していた、というのである。「新たな証拠が出てこない限り、再捜査はしない」としてきた警視庁は、この報道をきっかけに、ホーア氏を含めた関係者に再び聞き込みを開始した。

 声をあげたのはホーア氏ばかりではない。同年10月4日放映の民放テレビ、チャンネル4のドキュメンタリー番組「ディスパッチ」の中で、元NOWの特集記事編集長ポール・マクマラン氏は、「NOW内で誰でもが盗聴をやっていたわけではないが、必要があれば、やる記者はたくさんいた」と話した。

 その2日後、ロンドン市立大学で開催された盗聴事件に関する討論会で、NOWの組織ぐるみの盗聴疑惑を報道した、ガーディアンのニック・デービス記者は、違法の取材行為に手を染めているのは「NOW紙ばかりではない」と述べ、こう続けた。「新聞の発行部数や利益が減少する中で、どうにかして個人情報を取得し、売上げが伸びるような記事を書くための圧力が記者に大きくのしかかっている」

―私立探偵を使っての非合法な情報入手の実態

 違法な取材行為といえば、英国の大衆紙が常套とするものに「ダークアーツ」がある。その1つが「ブラギング」(blagging)。「ブラグ」(blag)とは「巧みな話術で人をだます」という意味があるが、ブラギングは他人に成りすましてその人の個人情報(例えば健康保険の番号、年金、銀行口座情報など)を取得することである。

 しかし、私立探偵を使うなど非合法に個人情報を入手するやり方は大衆紙のみの専売特許ではないことを、すでに06年、 データ保護法や情報公開法の実施度を監視する特殊法人「情報公開長官事務局」が明らかにしている。これによると、大衆紙に加えて、タイムズ、高級日曜高級紙オブザーバーなどを含む31の新聞や雑誌が私立探偵を使って非合法に個人情報を取得。02年の抜き打ち調査をまとめたものだが、ある私立探偵事務所に対し、3年間で約1万3千回の情報の利用申請があったという。このほぼ全てが違法行為によるもの、と事務局は推測している。

―副警視総監も盗聴対象に NOWと警察の妙な関係

 ニューヨーク・タイムズは、ロンドン警視庁がなぜ、グッドマンら以外に盗聴関与者の捜査をしなかったのかについても、報じている。

 先の下院委員会のジョン・ウィッティンデール委員長は、「グッドマンとマルケー以外について案件を調べようという意志が警視庁にはまったくなかったと話し、当時の警視庁捜査員数人も「NOWとの関係を維持するために、広範囲の捜査をしなかった」と証言している。これに対し警視庁は「最も信頼できる証拠」を探すための捜査であったこと、「テロ捜査など他の緊急の案件があったこと」を、捜査範囲を広げなかった理由として説明している。

 警視庁のブライアン・パディック元副警視監は、私立探偵マルケーの盗聴対象者のリストに名前が入っていた一人だ。マルケーから盗聴関連の資料を警視庁が押収した当時、現役だったが、在任中は自分が被害者の一人であったことを知らなかった。

 「私が解せないのは、同じ建物の中で働いていたのに、なぜ、同僚は私に知らせてくれなかったのか」。(チャンネル4「ディスパッチ」での発言)。また、サン、NOW、タイムズなど、マードック系の新聞と警視庁は、常に「良好な関係を築いてきた」ともいう。今回の事件でも、この関係を崩したくないという配慮が働いたのではないか、と同氏は見ている。

―メディア王との関係を壊したくない政治家たち

 また、警視庁から盗聴対象となっていたことを知らされ、当時労働党政権の副首相だったジョン・プレスコット下院議員は憤慨した。現在でも「実際に盗聴されたのかどうかを教えてもらっていない」と番組「ディスパッチ」で発言し、警視庁に対し、すべての盗聴対象者の情報の公開や盗聴事件の再審査を求めている。

 番組の中で、リポーターが「なぜ、今になって情報公開を求めるのか。副首相時代に問い質すべきではなかったか」と聞くと、「当時はできなかった。(なぜ?)多分、恐れていたのだと思う」と答えた。

 さらにリポーターが「もし(マードック・プレスの支持をなくしたら)選挙に負けると思ったからか?」とダメを押すと、「そうだ・・・」と認めた。

 選挙結果に新聞がどれほどの影響を及ぼすことができるのかに関しては、学者の中でも諸説ある。新聞が選挙結果を決めるのではなく、有権者のムードを新聞がつかむ・反映しているとする、という見方もある。それでも、大部数を持つ新聞が、自党にとっておおむね好意的な報道をしてくれるーこれはどの政党にとっても、何者にも代えがたいメリットであるに違いない。

 下院委員会の委員の一人、アダム・プライス議員は、「ディスパッチ」の取材に対し、09年の同委員会による公聴会で、ニューズ・インターナショナル社の最高経営責任者レベッカ・ブルックスが召喚されなかったのは、ニューズ社から「脅し」があったためとしている(ニューズ社側は否定)。「もし召喚したら、委員らの私生活が暴かれる危険性もあったーそんなメッセージが委員長を通じて伝わってきた」ため、「召喚を断念せざるを得なかった」(委員長は同番組内で、否定)。

 さらに、プライス議員は「考えてみれば恐ろしいー大衆紙サンやNOWは人の人生をめちゃくちゃにする破壊力を持つ。こんな状況は民主主義社会ではあってはならないことだ」とも。

 (補足:この番組の中では、もう一人の議員の話も紹介されていた。それは、労働党のトム・ワトソン議員。2006年ごろの話である。ワトソン議員は他の議員らとともに、ブレア首相の退陣を要求した。ブレア政権はニュース社の支持を受けており、ワトソン氏はニューズ社の「敵」になった。ワトソン氏が「ディスパッチ」に語ったところによれば、ブレア氏に反旗を翻せば、ワトソン氏の私生活をめちゃくちゃにし、二度と議員として活動できないようにするという、レベッカ・ブルックス氏からの脅しのメッセージが届いたという。この話も、ニューズ社側は否定しているー私はことの真偽を確かめていないが、ワトソン氏がカメラに顔を向けてはっきりとこれを語っていることから、誰かがーブルックス氏ではなくてもー脅しをかけたこと自体は本当ではないかと思う。2011年1月21日、一部変更。)

 再捜査を望む声を受けて、警視庁は2010年秋、盗聴行為に手を染めた複数の元NOW紙記者に事情聴取を行っており、11月上旬には、クールソン氏にも事情聴取を行った。

―巨大BSKYBも買収へ マードックの次なる戦略

 NOWと発行会社ニューズ・インターナショナル側は、「組織ぐるみの盗聴行為」「クールソン氏の関与」とする説を完全否定している。首相官邸も「関与なし」というクールソン氏の発言を信じるという姿勢を通している。

 マードック勢力は、NOWの盗聴事件のみならず、メディア界に新たな影を落とす。マニューズ社が英衛星放送BスカイBの全株を取得しようとしているからだ。

 現在、ニューズ社はBスカイBの39%の株をすでに取得しているが、残りの61%を取得する計画を立てている。10月、BBC経営陣と新聞数紙の編集長はビジネス大臣のビンス・ケーブル氏に連名で書簡を送り、もしマードック氏がスカイを買えばメディア業界の「多様性が失われる」として、これを停止させるよう訴えた。

 有料テレビ市場で巨人化しているスカイが、タイムズの購読料をスカイの契約料と組ませてパッケージとして販売した場合、新聞業界にとって新たなライバルの出現になりかねない。発行部数やリーチが拡大すれば、その影響力がいやおうなく増大することへの大きな危機感がメディア界にある。

 大臣は11月、情報通信庁オフコムに対し、ニューズ社のBスカイB買収により、ニュース報道において複数の視点が失われることになるかどうか調査を依頼した。調査の期限は年末で、その後、大臣は日本の公正取引委員会にあたる競争委員会に判断をあおぐことになる。すでに12月、欧州委員会が買収提案が実現しても、大きな反競争的問題は生じないとの見解を示している。(この後、ケーブル氏は、テレグラフ紙のおとり取材に引っかかり、「マードックと戦争をするつもり」と言ってしまった。そこで、この件に関しては関与しないことになった。現在、判定は文化・メディア・スポーツ大臣のジェレミー・ハント氏の手中にある。)

 オフコムは年末、調査結果をハント氏に渡している。まだその内容は明らかにされていない。

 クールソン氏の去就とスカイの全株取得の動きー。しばらくはマードック・ウオッチが続きそうである。(終)

 補足1:「悪」か?

 書いている途中から、私が、ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙を過度に悪者として書いていないかどうかが気になった。何せ英国では、マードック=悪者、マードック・プレス=悪者という見方が、知識人の一部ばかりか、広く市民の間でも強いのだ。事実に基づいている場合もあれば、信条として「悪い奴」ととらえる人もいる。

 ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙に対する見方は人によって異なるだろうと思う。

 しかし、英国内で巨大な発行部数を持つこと、おとり取材を含めた様々な方法で、著名人、政治家、あるいは組織に関する、普段は表に出てこない情報を暴露し報道することから、同紙は大きな権力の持ち主という見方もできるだろう。著名人あるいは政治家側が恐れている状況は、否定できないだろうと思う。

 また、英国のメディア界でマードック氏傘下の新聞や放送局が、数・規模の上で大きな位置を占めるのは事実。

 ただ、スカイがマードックの100%子会社となった後で、例えば米国の右派ニュース、フォックスニュースのようになるかどうかは、分からない。「そうならない」という声が結構強い。英国では衛星放送である場合にも、地上波の放送局に対する様々な規制―特にニュース報道に関してーあるからだ。

 補足2:規模

 「エンダース・アナリシス」社による英国主要メディア企業の規模の比較では、トップがBTリテール(総収入84億ポンド)で、これに続くのがBスカイB(54億ポンド)、バージン・メディア(38億ポンド)、BBC(36億ポンド)、デイリーメール&GT(21億ポンド)、民放最大手ITV(19億ポンド)、ニューズ・インターナショナル(マードックの新聞を発行、10億ポンド)、民放チャンネル4(8億ポンド)、トリニティー・ミラー(8億ポンド)、ジョンストン・プレス(4億ポンド)、民放ファイブ(3億ポンド)、テレグラフ・メディア・グループ(3億ポンド)、ガーディアン・メディア・グループ(3億ポンド)(数字はほとんどが2009年)。

 そこで、もしBスカイBがマードックに100%子会社化されると、54億ポンド+10億ポンド=64億ポンドという巨大さになることが分かる。(補足を除き、本文は朝日の月刊誌「Journalism(ジャーナリズム)」2010年12月号に書いたものの転載である)。

 尚、「ジャーナリズム」の情報は以下。また、電子版購読も可である。
―朝日新聞社ジャーナリスト学校
http://www.asahi.com/shimbun/jschool/
―富士山マガジンサービス
http://www.fujisan.co.jp/journalism/
by polimediauk | 2011-01-15 03:59 | プロフィール+ブログ開始理由
 英国のニュースを詳しくウオッチングする「メモ魔」さんが、前回のこのブログのエントリー「フロントライン・クラブで議論」について、解説と分析を書かれている。

 このトピックに関心のある方(と記者クラブ制度にも関心のある方)は、ぜひご覧になっていただきたい。
 
ウィキリークスと今のジャーナリズム(フロントライン・クラブでのディスカッション)
http://nofrills.seesaa.net/article/180415003.html

 若干、解説への補足のようなことをしてみたい。

 *メモ魔さんによるフロントライン・クラブの解説は、以下のような感じだ。そう、たしかに「社交クラブ」なのである。この点を書くのをすっかり忘れていた。頭に上らなかったのであるが、たしかに、いわゆる日本流の(大手マスコミが加入する)「記者クラブ」ではない。

(引用)「フ ロントライン・クラブ」は、現在ジュリアン・アサンジに住居を提供しているヴォーン・スミス氏が運営する、ジャーナリストのためのクラブ(この「クラブ」 は、英国の伝統的な、「会員制の社交場」という意味。かっちりした「組織」ではない)。ロンドンのパディントン駅の近くにあるこのクラブは、ウィキリーク スが何か大きなこと(アフガン戦争ログ公開など)をするたびに、ジュリアン・アサンジの記者会見の場として利用されてきた。普段は、会員のための講演会・ 討論会やドキュメンタリーの上映などを行なっている。また季刊でBroadsheetという機関紙も出している(今出ている号の表紙が長崎原爆だ)。http://frontlineclub.com/(引用終わり)

*タイムズのコラムニスト、アーロノヴィッチについて

 メモ魔さんの解説:

 (引用)――私はこの人の「自身の考えの言語化の結果のテクスト」(≒書いてることとその中身)が好きではないのだが、このディスカッションでは「ヒール」の役 (WLとアサンジを「ヨイショ」しない役)でかなり効果的な仕事をしていたようだ。(@federicacoccoとかは "troll" って言ってたけどw)実際、テクストより喋りのほうがしっくりくるロジックを持った人かも(元々テレビの人)。(引用終わり)

 私自身、彼の書いたものを読んだときは、あまり好きではなかったのだけれど、実際、喋りがうまいー。いろいろ見聞きして、「知っている人」の感じがした。何が起きているかの真実らしきものへの嗅覚がすごい。まさにジャーナリスト。話し言葉でものごとを要約するのがうまい。放送ジャーナリズム育ちの人だなという感じがする。

*「海底ケーブル」の話―ここも、興味のある方は探求してみていただきたい。

*本の話とガーディアンのモスクワ支局のルーク・ハーディングの話--私もハーディング氏には注目している。本は、講談社が日本語翻訳権を買ったとのこと(ガーディアンブックスとランダムハウスに電話して聞きました)。いつ翻訳が出るのかは分からない。このガーディアンのウィキリークス本について、私はガーディアンのデービッド・リー記者に問い合わせをしていて、返事がないなあと思ったら、10日の週明けにリリースが出て、驚いた。

*アナリストとキューレーションのこと

 私のメモにアー ロノビッチ(コラムニスト)が、「分析屋(アナリスト)の位置が大きく変わった。例えば、経済の問題なら、特定のシンクタンクに意見を聞く。今は情報が大量に 出ている。これを分析する人が必要になった。何が重要で何が重要でないのか。アナリストに聞かないと分からないのだ」という部分があったのだけれど、それに関して、メモ魔さんは、こう書く。

 (引用)「これは本当にそうだと思う。ウィキリークス云々より長いスパンの話で、「IT革命」で一般人が触れる情報の量が激増して、で結局何が何なのかわからない状態が生じていて、その中で個人は結局、「自分にわかる話」にしか接さないというか、幅が狭くなってると思う」
 「卑近なところでは、必要なニュースはネットで読むので、新聞を取らなくなった=別に積極的に知ろうとしていなくても何となく目に入ってくる情報、というもの に接さなくなった(例えば、私はラグビーには興味がないのだが、新聞をめくっていれば何か大きな大会があれば、「東芝の誰某」とかいった感じで語られるス ター選手の名前くらいは自然と目に入るので、「知ってる名前」にはなる。ネットで興味のあることしか見ていないと、そういう形で知る情報というのがなくな る)。その結果、これは個人の体感だが、情報に対する嗅覚がすごく鈍くなったように思う」
「そういう状態で、「自分の興味」云々とは関係な く、絶対的に何が重要で何が重要でないのか、ということについて、旧来の「新聞」の役割――知っておくべき情報を、重み付けして整理して並べてくれるとい う役割――を果たす存在はやっぱり必要だよなあ、とすごく思っている。最近よく言われるけど「優れたキュレーター」の存在。「編集者」じゃなくて「キュ レーター」。(引用終わり)


 この「キューレーター」「キューレーション」っていうのは、近く出る、佐々木俊尚さんの新刊のタイトルの一部にもなっているようだ。

 ウィキリークスの話で、事態の流れがあまりにも速いので、なんかもう、本が出る前に、すでにキューレーションが現実化しつつある。

 それと、今回のウィキリークスで私たちが体験しているのは、もしかしたら、新しい現象(だと思うのだけど)、つまり、「ツイッターを主な媒体として、どんどんと情報が加速・倍速で出されていって、お互いに情報を補足したり、新しい情報を教えあったり、反論しあったり、同意したり・・・ものすごいスピードで、国境を越えて情報が集積され、共有されてゆく」-。

 そういうことを、私たちは、今、刻々とやっている。

 ネタはもちろん、ウィキリークスでなくてもいいのだけれどーすでに日本では、小沢さんや検察の話など、ほかにもいろいろ、どんどん進んでいるのだろうしーー私にとっては、今回初めて、本格的にこういう情報集積の流れを実体験している。

 これは「ジャーナリズム」だろうか?こういった情報の集積がー?私は、これはジャーナリズム以外の何ものでもない感じがする。


***補足①
ご関心のある方は、吉田秀さんのブログもご覧ください。
「気まぐれ翻訳帖・メディアと政府の癒着」
http://cocologshu.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-b975.html

***補足②
アーロノビッチの話で思い出したのですが、多分、動画で見れると思いますけど、質問のコーナーで、若い人が、「ウィキリークスの外交公電などは、もうみんな知っていることばかりで、新しいことはほとんどないとあなたは言いますが、私は知りませんでしたよ」と、議論をふっかけるようなことを聞いたのです。それに対して、アーロノビッチは、「情報があふれている」「僕が書いても、君が読んでないだけじゃないか」ーのようなことを言っておりました。これまた、一つのヒントがありました。「ものすごく、情報量が多いので、全部見切れないー全部見れる人はない」-まさにネット時代だなあと思った次第です。

by polimediauk | 2011-01-14 07:46 | ウィキリークス