小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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<   2011年 02月 ( 14 )   > この月の画像一覧

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3月13日時点で、まだこれを手にしておりません(!!)来週中には日本から届くと思うのですが。コメントがうまく返せないのですが、すごくよいレビューをみどりさんが書いてくれています。ご参考のこと。

http://newsfromsw19.seesaa.net/article/188131636.html?1298832015 


先週ぐらいから書店に出た、「機密告発サイト ウィキリークスの真実! 」(別冊宝島) の中に、ガーディアンととアサンジの関係を書いています〔パート2の中の1つ)。

 目次はこんな感じです。

 まえがき 世界を震撼させる機密告発サイトの全容!

Part.1 “元天才ハッカー”の素顔
 ジュリアン・アサンジ 単独ロングインタビュー 国家機密をなぜ暴き続けるのか?   NHK取材班
 謎のハッキングを受けながら……ジュリアン・アサンジ取材後記
 【天才ハッカー物語】ジュリアン・アサンジの秘められた過去

Part.2 ウィキリークスとは何か?
 英紙『ガーディアン』副編集長が明かす「メガリーク」の舞台裏、アサンジの素顔
 ウィキリークス物語【謎に包まれたシステム、メガリークの歴史】
 資金不足&アサンジ逮捕で、噂の新しい「メガリーク」はどうなる?

Column ウィキリークスは「善」か「悪」か?
 猪子寿之
 堀江貴文
 上杉 隆
 …ほか

Part.3 米国外交公電「流出」事件の真相
 25万点を一挙に入手! アメリカ外交公電「流出」の衝撃
 機密文書の提供者は、弱冠22歳のアメリカ陸軍上等兵
 謝罪外交に追い込まれた、クリントン国務長官の苦悩
 …ほか

Part.4 保存版カタログ「流出情報BEST 100」
 公開されたアメリカ外交公電、2900点の内容を精査する!
 日本編
 アメリカ編
 ロシア・欧州編
 …ほか

Part.5 情報漏えい社会の近未来図
 小飼 弾インタビュー ウィキリークスは、情報ダダ漏れ社会のプロローグだ
 特別対談 小谷 賢×黒井文太郎 情報のプロが読み解く! ウィキリークス事件の正しい見方

 ***

 アサンジの長文インタビューや、流出情報ベスト100を大いに楽しみしていますーー何せまだ手元に入っていないので、どんな感じなのか、???なのですがー。

 
by polimediauk | 2011-02-26 23:58 | ウィキリークス
(この中に、ソニーのプレイステーションの話が出てきますが、最初、「パワーステーション」と間違って表記されていました。また、任天堂WiiをWII表記しておりました。訂正しておりますが、間違った情報を出してしまったことを、お詫びします。)

 以下は「週刊東洋経済」のテレビ特集号(14日発売)に掲載された分に補足したものであるが、今回、NHKのオンデマンド放送を調べてみて、何故無料で提供されていないのかの根拠が、「放送法第9条第2項第2号」にあることを知った。〔先の段落に情報追加) 

 これによって、NHKオンデマンドサービスは受信料を財源としないことが定められている。そこで、いろいろ工夫をこらしながら、様々なお試しコースを設けて、なんとか利用者を増やそうとしている。

 何故、放送法のこの項目がそうなっているのか(受信料外の業務とされたのか)の背景が、よく分からなかった。これはつまり、「放送と通信の融合」が法律的に実現しなかったことと関係があるようだと推測したのだが、もしご存知の方は教えていただきたい。私が調べたところでは、新たな法律ができることになっていたが、「民主党への政権交代で」、結局法律は成立しなかった、なのでそのままになっている、ということなのかどうか。(総務省の担当部署にメールを送ったが、お返事はなし)。

 そして、何か放送業界〔民放?)からの圧力があったのかどうかー?(ネットでどんどん番組が配信されてもらっては困る、放送と通信は別々であってほしいーとか?)こうした事情に明るい方からのご一報をお待ちしています。

(追加)
放送法
第2章日本放送協会
第2節:業務―第9条2-2をご参照
http://www.houko.com/00/01/S25/132.HTM

放送法第9条第2項第2号の業務の基準

http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/netriyou/index2.html

総務省の基準ーー受信料を使ってやる業務と、受信料以外を使ってやる業務を規定している。
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/netriyou/pdf/netkijyun2.pdf
この文書の「第2」の受信料以外の財源で行う業務として、見逃し番組サービスの提供など。


***
 
ネット対応優等生BBC -「世界制覇」へ挑む! 

 NHKの多メディア展開戦略の一つとして2008年12月から開始された、放送済み番組を有料で視聴できるサービス「NHKオンデマンド」。昨年12月末、PC会員(ブロードバンドにつながったPCでサービスを利用する人)数は57万人に達し、第3四半期(2010年10月―12月)の売上げ総額は過去最高の1億4176万円に達した。3期連続の上昇である(NHK「業務報告」)。

 しかし、いまだ「爆発的成功」とはいえないようだ。NHKオンデマンドの今年度の売上げ収入は昨年12月末時点で総額3億8500万円。今年度末までの達成目標額は11億円となっており、約3割にしか達していない。3月末までの目標達成は、逆立ちしても無理そうだ。

 一方、英国では公共放送BBCの番組再視聴サービス「BBCiPlayer(アイプレイヤー)」が大人気だ。

 アイプレイヤーへの番組視聴リクエスト数は、昨年12月で1億4500万回に上り、これまでで最高となった。前年同月比では27%増だ。民放局や有料衛星テレビのスカイが提供する同様のサービスの利用率と比較すると、BBCアイプレイヤーの人気はダントツだ。

 英国の放送局によるネットを使っての番組配信は2006年頃から本格的に市場に登場し、BBCは後発組。しかし、その後の巻き返しが目覚しい。実験配信の期間を経て、2007年12月、子供から大人まで幅広いファンを持つSF連続ドラマ「ドクター・フー」を再視聴できることを売りものに本格スタート。その後何度かの技術変更を経て、番組(テレビ及びラジオ)の放送から7日間の見逃し番組の視聴、30日間のダウンロードといった基本サービスに加え、連続番組のスタッキング(7日間を過ぎても、シリーズが終わるまで初回放送分から視聴できる)、フェイスブックやツイッターでお勧め番組の情報を友人たちと共有できる仕組みなど、サービス内容を拡充させている。バージン・メディアやBTなどのブロードバンド・プロバイダーと契約すれば、テレビの前に座って、リモコンを使って番組を楽しめる。ソニーのプレイステーション、任天堂のWiiなどのゲーム機、携帯電話からも視聴可能だ。

 アイプレイヤーの最大の功績は、英国の視聴者の行動を変えたこと。オンデマンド・サービスは他局もやっていたが、視聴率シェアが最も高いBBCが2007年末に本格市場参入したことで、サービスが一気に普及した。民放の「プラス・ワン」のチャンネル(あるチャンネルの放送内容を、そっくりそのまま一時間遅らせて放送する)も人気で、放送局側が決めた時間にテレビの前に座るのではなく、「自分の都合がよい時間に、見たい番組を取り出してみる」のが英国で普及している。

―簡単でタダ

 NHKオンデマンドと比較したときのBBCアイプレイヤーの最大の利点は、ズバリ、無料であることだろう。PC上から、アイプレイヤーの独自デスク・マネージャーを立ち上げて選ぶか、テレビの前に座って、リモコンを操れば好きな番組が難なく視聴できてしまう。アイプレイヤーは、とにかく楽なサービスなのだ。どれほど見ても全く懐が痛まない。貧乏人から金持ちまで英国に住んでさえいれば誰でもが視聴できる。

 残念ながらNHKは、国内法の制限から見逃しサービスの提供に受信料を使ってはいけないことになっている。「無料で放送された番組に何故再度お金を払うのか」という視聴者側の割り切れなさがいつまでも付きまとう。

 放送と通信の融合が刻々と進展する英放送業界で、今年最大の注目が無料ネット・テレビのプラットホーム・サービス「YouView(ユービュー)」の開始だ。BBCのほかには民放3局、通信業界からはBT,Talk Talk、 Arqivaが参加する。視聴者はブロードバンド・インターネットに接続された「セットトップボックス」をテレビの上に備え付けて番組を視聴する。高品位画像設定や番組の途中での巻き戻しや録画ができ、有料・無料のオンデマンド番組の視聴ができる上に、インターネットのコンテンツにアクセスできる。複数の配信サービスの一元化で、利用者にとっては、オンデマンドの利便性がぐっと向上することになる。インターネットにつながったテレビは現在英国で200万台ほどで、年内には700万台に増加すると言われている。

―運営予算削減の逆風

 BBCの目下の悩みは予算面での不透明感だ。緊縮財政を進める英政府は、昨年秋、2014年から4年間のBBCの受信料収入を「値上げなし」とする方針を決定した(BBCの受信料収入の値上げ幅は時の政府と交渉の末に決まる。)BBC試算によれば、値上げの凍結は、実質、年率16%の予算削減に当たるという。また、外務省が運営資金を出していたBBCの商業部門、BBCワールドワイドに対し、政府は資金の拠出を14年から停止と決め、BBCが自力で運営することになった。

 BBCオンラインの予算も13年度末までに大幅削減され、今後2年で360の職が消える。アイプレイヤーがどれほど国内で人気となっても、所詮は無料サービス。何とか収入を上げられないかと経営陣は頭をひねる。

 BBCは現在、アイプレイヤーで提供される番組を他のオンデマンド・サービスに組み込んだ形で提供する「シンジケーション」サービスを、原則許可していない(例外がバージン・メディア)が、アイプレイヤーから他局のオンデマンド・サービスに飛べるようにする「アウト・リンキング」の技術を開発中だ。これが実現すれば、トラフィック増大を切望する民放には朗報で、BBCに一定の収入が入る可能性もある。

 BBCが将来の大きな収入源の一つとして期待するのが、現在国内でのみ利用可能なアイプレイヤーの海外展開だ。商業部門BBCワールドワイドの手によって、有料購読サービスとして提供するのである。すでに、約1千本の個別の番組がアイチューンズなどを通して販売されており、2008-2009年で1000万ポンドの売上げとなっている。

 そこで年内に、まず米国で有料サービスを開始予定で、当初はiPadでの視聴のみとなるようだ。「お金を払ってもBBCの番組を見たい」という声は世界中で強い。ネットを利用して番組を視聴する時代となりつつある今、BBCは英国内のみならず世界のオンデマンド市場でトッププレイヤーになる可能性を秘めている。〔終)

 

 
 
 
by polimediauk | 2011-02-21 18:28 | 放送業界
 BBCのクイズ番組「QI」(被爆者を題材にしたエピソード)はずいぶんとネット上で話題になりました。

 他の英国ジョークのトピックとあわせて、「英国ニュース・ダイジェスト」最新号に書いてみました。以下はそれに補足したものです。サイトには、話の中に出てくる、スティーブン・フライとリッキー・ジャベイスの比較の表があります。

http://www.news-digest.co.uk/news/content/view/7541/263/

 また、gooニュースで加藤祐子さんも書かれていますのでご参考のほど。

BBC番組がいかに二重被爆者を取り上げたか 彼らは何と言っていたのか
http://news.goo.ne.jp/article/newsengw/world/newsengw-20110125-01.html?pageIndex=1


英国のジョークは危なすぎる? 
-矢面に立つコメディアンたち


 今年1月、BBCのクイズ番組「QI」の被爆者に関わるジョークが、在英日本人の抗議の対象となる事件が起きた。在英日本大使館が邦人らの抗議をBBCに伝え、BBCは謝罪した。一方、英国の人気コメディアン、リッキー・ジャヴェイスの皮肉たっぷりのジョークが、米国でひんしゅくを買った。英国のジョークは他国では受け入れられないのだろうか?2つの事件の経緯と顛末を追った。

 まずはBBCのお笑いクイズ番組「 QI」(Quite interesting)の例だ。昨年末、この番組の中で、司会役のスティーブン・フライが、広島と長崎で二重に被爆し昨年93歳で死去した男性を「世界一運が悪い男」として紹介した。

 「93歳まで長生きしたなら、それほど不幸ではない」「原爆が落ちた次の日に列車が走っているなんて、英国では考えられない」などとゲストがコメントをすると、会場内で笑い声があがった。スタジオにはきのこ雲や男性の顔写真が掲げられた。日本への原爆落下や被爆者の男性を笑ったというよりも、英国の鉄道制度のふがいなさをジョークの種として笑っていた(下記の抜粋紹介を参照)が、不快感を感じた在英邦人らが大使館に連絡を取り、今年1月7日、「被爆者をこういう形で取り上げるのは無神経」と担当公使名でQIに書簡を送った。

 21日以降、日本の大手報道機関複数が「日本の2重被爆者を嘲笑」(時事通信)などと報道し、BBCがユーチューブ上に掲載していた約3分間の動画は約9万7000回再生された。BBCと番組制作会社は連名で「不快な思いをさせ申し訳ない」と謝罪声明を発表し、BBCはユーチューブ上の動画を削除した。2月、フライは別の番組収録のため来日することになっていたが、これを取りやめる事態にまで発展した。

―ジェベイスのジョークに米映画界で怒り
 
 1月末のもう一つの事件とは、米ゴールデン・グローブ賞の授賞式で司会をした英コメディアン、リッキー・ジャベイスの発言である。「今宵はパーティー、そして深酒だ。おっと、チャーリー・シーンにとっては、朝食だな」と切り出し、授賞式に集まった米映画関係者を驚かせた。シーンといえば、アルコール依存症で入院したこともある米国の人気俳優である。また、麻薬不法所持で刑務所へ入所経験を持つロバード・ダウニー・ジュニアの過去をジョークの種にした。

 ダウニー・ジュニアは舞台上で「すごく意地悪で、悪意のあるトーンがあるけど、これを除けば、授賞式は最高の雰囲気だよね」と皮肉をこめてやり返したが、ジャベイスのジョークは「やりすぎ」というのが大部分の出席者の感想だった。

 後にトーク番組に出たジャベイスは「悪いことをしたとは、全然思っていない」と述べた。ハリウッドでは「自分はよそ者」で、スターを「酷評すること」こそ、自分の役割だという。自分なりの信念があってのきつい「おちょくり」だったというが、来年、ゴールデングローブの授賞式の司会役が回ってくるかは定かではない。

―英国のジョークはきつすぎる?
 
 英国のジョークは他国の人にはきつすぎるのだろうか?この評価は、おそらく人によって異なるだろう。また、その国に住む人でないとジョークは理解できないとするのもおかしい。

 しかし、どんなジョークも、文化、歴史、価値観など、その社会を構成する複数の要因を共有することで、おかしみが生まれてくる。もしこうした要因を共有しない人が英国流ジョークに触れたとき、笑いよりも怒り、悲しみ、不快感を感じる場合があることは想像できる。ジャベイスの授賞式でのジョークを痛快に思った人は英国内でさえ多くないかもしれないー私自身、どきりとした。しかし、彼の代表作で、人を食ったジョークが満載のドラマ「The Office」の主人公〔ジャベイスが演じた〕がそのまま舞台に出たのだと思えば、例え共感はせずとも、理解はできよう。

 BBCのQIが被爆者のトピックを取り上げた件は、被爆者自身を笑っていたのではない点やすべてを風刺の対象とする英国ジョークの原則から言って、英国内の視聴者には受け入れられるはずであった。しかし、原爆落下や被爆者体験をジョークの対象にされたくないという思いが強い多くの日本国民からすれば、とうてい我慢がならない手法であった。

 笑い一つをとっても、自分自身の立ち位置や、価値観、歴史観が色濃く表れる。笑いで自分を知るーそんな勉強の場をBBCのQIやジャベイスのキツイジョークは与えてくれたのかもしれない。

―BBC「QI」の被爆者を題材にした動画の内容(抜粋)

スティーブン・フライ:世界で一番不幸な男の何が幸福なんだと思う?(略)えーと、この人は見方によって、最も幸運だとも言えるんだ。(略)彼の名前はツトム・ヤマグチ。2010年に93歳で亡くなっている。ずいぶん長生きだったから、それほど不運だったとも言えないね。(略)
アンディー・デービス:爆弾がその人の上に落ちて、跳ねとんだとか。(会場笑い)フライ:この人は原爆が爆発したとき商用で広島にいて、ひどい火傷を負ったんだ(略)。次の日、彼は汽車に乗って、ということは驚いたことに、原爆が落ちた翌日なのに鉄道は動いていたわけだよ。なので彼は長崎へ汽車に乗って、そこでまた原爆が落ちたんだ。(会場内、笑い。回答者の一人がすごいな・・と言いたそうな顔で首を横に振っている。背景には、2つのキノコ雲の写真とその間に山口さんの大きな写真)
フライ:彼は称えられ、ある種の英雄のように扱われて、でも2度被爆した人としてようやく正式に認定されたのは90年代になってからだった。(略)
ロブ・ブライドン:要はあれだね、杯は半分空だというか半分入っているというかで。でもどちらにしても、放射能を浴びているわけだ。だから、飲んじゃダメだよ。(会場笑い)(略)
フライ:でも僕が何に驚いたって、広島に原爆を落としたのに次の日には鉄道がもう動いていたっていうのが。だって、この国だったら・・・。(略)
ビル・ベイリー:枯れ葉が何枚か落ちただけで、もう終わりだ。(注:英国では列車遅延の理由として、落ち葉や「雪の種類がダメ」と説明して国民に馬鹿にされるので、これに引っ掛けたジョークが続く。)(略)
ベイリー:爆弾の種類がダメなんですよ、爆弾の種類がダメなんです。(みんな大笑い)。
フライ:(駅のアナウンスを真似して)明らかに、爆弾の種類が合っていましたから、大丈夫ですよみなさん。心配しないで。爆弾の種類は合っていますから。
(翻訳:加藤裕子さんのコラム、gooニュース、1月25日付)

―関連キーワード

Jerry Springer:The Opera:
 「ジェリー・スプリンガー・ザ・オペラ」という名前のミュージカル。ジェリー・スプリンガーが司会をする、米国の視聴者参加型トークショーを元にしている。この番組は、不倫、離婚、同性愛嫌悪、人種差別、売春などのリアルな問題に悩む登場者がスタジオにやってきて悩み事を話し、会場の聴衆から問題解決の糸口をもらう形を取る。登場者同士が喧嘩をするほど盛り上がるのはたびたびで、「最悪の低俗番組」と呼ばれたことも。ミュージカルはオムツ姿のイエス・キリストが登場したり、4文字言葉が満載など、「キリスト教を冒涜する」要素が多々入っている。2005年、BBCが舞台版の放映を予定に組むと、放送差し止めを求める5万件以上の苦情が殺到した。BBCは苦情にもかかわらず、放送を決行。キリスト教団体がBBCのディレクター・ジェネラルを神への冒とく行為を行ったとして訴えたが、2007年、敗訴した。
by polimediauk | 2011-02-20 19:45 | 英国事情
 ウィキリークスに関して、「国益と公益とのバランス」がよく問題になった。この点に注目した原稿を「新聞協会報」(2月15日付)に出している。以下はこれに若干補足した分である。

***

ウィキリークスと英・米メディア
―大手紙がメガリーク参画、 「公益」理由に機密情報公開
 

 内部告発サイト「ウィキリークス」が、昨年来注目を集めている。数十万点に上る米軍の機密情報や外交公電を、世界の複数の報道機関と協力し、あらかじめ決められた日に一斉に、かつ大々的に暴露したいわゆる「メガリーク」報道で、一躍その名を世界中にとどろかせた。こうした共同作業が一段落した今、「共闘」の中心となった英国と米国でのジャーナリズム議論を紹介したい。

―ジャーナリズムか?

 ウィキリークスは、情報漏えい者から届いた機密情報(一次情報)を、10人程度の専従スタッフと800人ほどのボランティアたち(ジャーナリスト、弁護士、IT技術者など)が協力して信憑性などを検証し、サイトに掲載する。サイトの自己定義は「メディア組織」で、創設者のジュリアン・アサンジ氏は自分を「ジャーナリスト」と呼ぶ。サイトの目的は「真実を提供すること」で、伝統的報道機関の目的と合致する。

 しかし、サイト上で一次情報を出すのみでは報道組織とはいえないとする考えが、当初から根強くあった。アサンジ氏が元ハッカーであることから、現在の同氏を「国家転覆を試みる」意図を持つハッカーとみなし、「ジャーナリストではない」、そして「ウィキリークスはジャーナリズム組織ではない」と述べたのは米「MITテクノロジー・レビュー」誌の編集長ジェイソン・ポインティン氏であった。

 一方、いち早くウィキリークスを新たなメディア組織として定義づけたのはニューヨーク大のジェイ・ローゼン教授だ。ネット上に存在し、特定の本拠地や国を持たないウィキリークスを「世界で最初の無国籍のニュース組織」と呼んだ。

 ウィキリークスと共同作業を行った英ガーディアン紙のイアン・カッツ編集長は、1月末、「ウィキリークスはジャーナリズムだ」と筆者に語った。これまで、ジャーナリズム機関は「情報を取得し、検証し、分析し、文脈を与えて記事の形にして読み手に公開する」という一連の作業の全過程に従事した。ウィキリークスは全過程には参画しない。ガーディアン自体ももはや全過程には参画しない。リーク情報のみに限らず、ネット上で大量の一次情報やさまざまな論評が出るようになった現在、「全過程に参画しないからといって、ジャーナリズムではないとはいえない。それぞれが『ジャーナリズム』と呼ばれる時代になった」という。

―国益との兼ね合いは

 国家機密を暴いたメガリークをめぐるジャーナリズム議論の中で、頻繁に話題に上ったのが国益。例えば国家の安全保障と、国民に広く情報を公開することの意義、つまり公益との兼ね合いをどう取るかであった。

 米政府がウィキリークスを批判したのも、まさにこの点であった。「(リークは)米国の安全保障に危害を及ぼす危険性がある」(ギブス米大統領補佐官、アフガン戦闘記録の公開後、2010年7月26日)、「情報を漏えいさせた者や流出情報をネットに公表したものは無責任極まりない」(ゲーツ米国防長官、同27日)、「米国や同盟国の兵士、民間人の命を危険にさらす」(クリントン米国務長官、同年10月22日、イラク戦争文書公開後)、「米国の外交政策や国際社会への攻撃だ」(同長官、11月29日、外交公電報道後)など。

 これに対し、ウィキリークス側は「戦争の全体像を示す」(7月26日)、「戦争犯罪を示す説得力のある証拠を提供している」(10月23日)、「(情報公開は)世界をよりよくする」(12月3日)、「ウィキリークスにより人命や安全保障が脅かされている主張はでたらめだ」(12月8日)と反論している。

 2月上旬時点で、一連のメガリークによって大きな安全保障上の危害がもたらされた形跡はないが、既に危害が出ていても表面化していない場合がありえる。メガリークの影響の全貌が判明するのは何十年も先という声もある。

 メガリーク報道に参画した米ニューヨーク・タイムズ紙は、アフガン戦闘記録公開の前に、「国益と公益をはかりにかけ」今回は情報公開が公益にかなうと判断して情報を出したと説明した(7月25日付)。11月末の外交公電公開前には、大統領官邸にどの公電を報道するかを知らせ、「国家の利害に損害を与える箇所があれば指摘してほしい」と協力を呼びかけた。官邸の異議申し立てを「時には受け入れて」報道した(11月28日「読者へのお知らせ」)。

 一方のガーディアン紙は同様の説明の中で「国益」という言葉は使っておらず(米国の機密情報であったことが一義的理由と推測される)、「公益」を公開の理由として挙げている。

 先のガーディアンのカッツ副編集長は「情報を隠すよりも、掲載して間違いを犯す」方を選ぶという。原則として「編集部が知っていることは読者も知るべきだ」というのが同紙の基本方針である、と。

 ウィキリークスからメガリークの生情報を提供された組織の一つ、ロンドンの調査報道センター(CIJ)のギャビン・マクフェイデン所長は、「政府が『国益』を理由に情報を公開しないと主張するとき、何かを隠そうとしている場合が多い」と述べる。「民主主義社会では、国民は全ての公的事柄に関して知る権利がある」「政治家は国民が選んだ人たちだ。もし情報の公開で政治家が困惑する思いをしたら、それまでだ」と話す。「例外は情報の公開によって人命が失われるなど、ごくまれな場合のみだ」。

 また、報道機関の主要な役目が国民のために真実を明らかにすることだとすれば、「国益を考慮するのは政府の役目であって報道機関の役目ではない」と続ける。

―ネットの落とし子

 為政者や大企業が外に出したがらない情報を明るみに出す「無国籍ニュース組織」ウィキリークスは、どの国の法律にも縛られない、ネットの落とし子として存在する。その評価の決定にはまだ時間がかかるであろうが、ともすれば国内の法規やしがらみに縛られて権力に対する監視を十分に行使できなくなっている既存の大手報道機関への一種のカンフル剤ともいえるかもしれない。(終)

***

補足:公益について若干付け加えると、英国の論壇の中では、メディア側がこの「公益」という言葉を過度に使いすぎている、または自分たちの行動を正当化しすぎているのではないか、という批判がある。例えば、犯罪の容疑者として捕まった人物(容疑者)の過去の経歴を報道したり、犯人視した報道をすれば、法廷侮辱罪に抵触することになる。陪審員裁判に影響を与える(と思われる)ので、司法審理に介入した=侮辱罪、と。それでも、新聞は部数を売りたいので、例えば容疑者の家族や恋人の話などを大きく出したりする。これに限らず、何でも、「公益のため」という理由で、様々な報道をする。

 こうした傾向は大いに批判されるべきだろうけれど、また一方では、政治家や政府が自分たちにとって都合の悪い事実を明るみに出したくないために、報道差止め令を裁判所に申請したり、金持ちの個人であれば名誉毀損として裁判所に訴えることがある。

 どこまで何を報道するかは、2つの勢力のせめぎあいで決まる。つまり、「機密情報だ」など、いろいろな理由を挙げて情報を出させまいとする政府や大企業側と、ニュース価値があると思ったものを何でも出そうとするメディア側との戦いの結果である。

 こうして、どこまでを「公益」として正当化できるかは人(=どこに自分を置くか)によって変わって来るが、公益を理由として報道するとき、そのココロは、「国民が主権を持つ民主主義社会の中で、この社会が機能するために、社会の構成員である国民が知っておくべきと思われる事柄」を報道するべき、と考えるからであろう。

 ・・・とした場合、「公的事象に関わる(ほぼ)すべての事柄」=「公益として報道の価値がある」ーという解釈(マクフェイデンさんのような)が成り立つ。

 公的情報はいったい誰のものかー?答えは国民であるに違いない。もし国民にある情報を出さないのであれば、十分な理由付けが必要となろう。

 ―というようなことを、今の私は考えている。
by polimediauk | 2011-02-15 19:56 | ウィキリークス
c0016826_7341221.jpg 今週号の「週刊東洋経済」が「テレビ新世紀 」と題された特集を出している

http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/toyo/detail/BI/a189c076b454a84240c28de59f4f550b/#mokuji

 その中に、BBCアイプレイヤーの話を書いている。
  
 目次はこんな感じ:

 「家電の王様」「お茶の間の主役」と称されてきたテレビ。ところが、地デジ完全移行という一大イベントを前に、その地位は揺らいでいる。ハード、コンテンツの双方から、地殻変動の全貌を見ていこう。

PART 1
P.46  テレビ業界はこう変わる
止まらない“負の連鎖”、崩れるテレビ局の流通独占
テレビ業界「10の疑問」を徹底解明
テレビ局社員はどのくらい給料が高い?/ NHKの受信料10%還元、本当にできる?/スカパーやジェイコムの今後は?/ローカル局は生き残れる?/下請けの経営は大丈夫?/テレビ各社のネット配信はなぜ閑古鳥?/BSの増加でリモコンはどうなる?/視聴率モデルは変わるの?/テレビ広告はどうなるの?/バラエティの海外進出は成功できる?
INTERVIEW│氏家齊一郎/日本テレビ放送網会長
「コンテンツ制作力こそがテレビ局の強み。ネットを恐れる必要はない」
ネット対応優等生、BBC「世界制覇」へ挑む 小林恭子/ジャーナリスト
時代変化を直視できないメディア経営者の“大罪” 河内 孝/

***

 数日後に、原稿に補足したものをこのブログに出す予定です。
by polimediauk | 2011-02-15 07:33 | ネット業界
 c0016826_362359.jpg今、発売中の「週刊エコノミスト」最新号が「ウィキリークスと内部告発社会の本格化」という特集を組み、その中に、経済リークに関する記事を出しています(いけだよしこさん、リサーチ協力)。
http://mainichi.jp/enta/book/economist/

 特集のラインナップはこういう感じ。
―政府情報だけではない 社会装置化する「内部告発」 ■塚越健司
―ウィキリークスに狙われたグローバル企業 ■小林 恭子
―会社対応の趨勢は「もみ消す」から「公表」へ ■山本 智之

 塚越さんの記事の一部は、サイトでも読めるようになっている。
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/summary/news/20110210org00m020011000c.html

―ウィキリークスの是非の判断は?

 「白か黒か」とすっぱりと割り切れるものではないだろうが、昨年末ぐらいの段階で、ウィキリークスを持ち上げる人がいる一方で、ウィキリークスは「やっぱりいかがなものか」「秘密をドンドン暴露するなんて・・・」「むやみに機密を外に出すやつ=悪役」的な見方もまた、日本では多かった感じがする。

 そこで私が、ビジネスマンが読むであろう「エコノミスト」に経済リークの原稿を書いたとき、リークの具体例を出すだけでは、「得体の知れない悪いやつ」的な見方が消えないような気もした。

 私の記事は、今年早々に公開予定とされた大手米銀バンクオブアメリカ(バンカメ)に関する経済リークの話で終わるのだが、若干、それに付け加えるとー。

 ***

 最後に、その活動に対して評価が分かれるウィキリークスだが、判断材料として機密暴露の目的を見てみたい。

 2010年11月、米フォーブス誌による取材で、ウィキリークスの代表ジュリアン・アサンジ氏は大手米銀(バンカメと想定されている)のリークを行う、と話していた(その内容は日経新聞が全文を和訳してくれているーアドレスは最後に)。
 
 問題の米銀には「言語道断な法令違反や倫理にもとる行為」があったという。アサンジ氏は、類似の案件として、巨額の不正経理・不正取引が明るみに出て、2001年12月、破綻に追い込まれた米エネルギー会社エンロンを挙げた。

 「自分の情報を漏えいして欲しいと思えるような人間はいない」「内部告発されるのはつらいことだ」とアサンジ氏は発言し、内部告発により組織の不正が明るみに出ることで、「業界全体の利益、とりわけ優良企業の有利になる」と述べた。活動目的として社会的正義の実現を考えているー願っているようには進まないこともあるだろうが。

 為政者や組織の不正行為を報道によって明るみに出すのがジャーナリズムの目的の一つとすれば、この目的を共有し、リークによる一次情報をネット・サイトから世界中に発信するウィキリークスは、ジャーナリズム・ファミリーの一員となるだろう。

 アサンジ氏の素行(スウェーデンでの性犯罪容疑など)やウィキリークスの内情を語る暴露本(元の腹心による本や、ウィキリークスと共同作業を行ったガーディアン記者らによるものなど)がどんどん出て、理想だけではない部分が分かってきたが、それでも、一つ仕組みとしてのウィキリークスの意義はあろうと思う。

参考:日経新聞に掲載された、米フォーブスによるアサンジ氏へのインタビュー記事
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819499E2EAE2E0938DE2EAE3E0E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2
 
追記:編集部の方が送ってくれた「エコノミスト」が今日〔15日)届く。早い!!ウィキリークスに関する、塚越健司さんの記事を読む。以下、一部引用:「アサンジ代表は米『タイム』でのインタビューの中で、今後の組織について述べている。『不正を行っている組織には2つの選択肢しかありません。1つは組織を改革し、誇りを持って仕事を公開できるようにするというもの。もう1つは、内から鍵をかけて外部から遮断するというものです。』。もう一つの引用:「社会が内部告発化しているという認識が不可欠である。そしてまた、企業は頭を切り替え、不正が生じにくい透明性の高い組織体制を構築するよりほかはない」。
 
 また、編集部の山本智之さんが、日本の状況を詳しく書いている。

by polimediauk | 2011-02-14 03:06 | ネット業界
 ロンドンの記者クラブ、フロントラインクラブで、「ネットは21世紀の戦場になったか?」という題目で専門家が意見を交換し合うイベントが、9日、開催された。

 そこでメモッた内容が以下である。このイベントの動画は、近日、フロントラインクラブのサイトで公開される予定である(今現在は、まだアップされていない)。
http://frontlineclub.com/events/2011/02/will-the-internet-be-the-battleground-of-the-21st-century.html

 この件にご関心のある方は、パネリストの紹介の中にあるレポートをダウンロードしてみていただきたい。

***

 パネリストとして参加したのは:

 ケンブリッジ大学ウオルフソン・カレッジでサイバー・セキュリティーを研究するレックス・ヒューズ博士。
 ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(LSE)の経営学部情報システム・インテグリティー・グループの客員教授ピーター・ソマー。OECDが出した、「組織的なサイバーセキュリティー・リスクの減少」報告書の著者の一人。http://www.oecd.org/dataoecd/3/42/46894657.pdf
 ウェブセンス社の上級セキュリティー調査マネージャーのカール・レオナード
 チャタムハウス(王立国際問題研究所)の国際セキュリティープログラムのマネージャー、クレア・ヨーク。「サイバー戦争」報告書の著者の一人。http://www.chathamhouse.org.uk/publications/papers/view/-/id/967/
 司会はワイヤードUKの編集長の一人ベン・ハマースリー。

***

 レックス・ヒューズ(ケンブリッジ大学):今、ワシントンから戻ったばかりだが、「サイバーセキュリティー」とは何かの定義が、人によって違うことを実感した。また、何を「成功」と見なすのか?例えば政府が情報を取られてしまうことを防いだ場合、これで成功といえるのだろうか。そして、メディアや非政府団体はどうするべきかなど。英首相は10億ポンドをサイバー・セキュリティーのために使うと宣言したが、これもどこからどこまでを意味するか。

 インターネットはオープンであるべき、でも、セキュリティーも重要だ、と。2つの相反する概念がある。

クレア・ヨーク(チャタムハウス):私たちは技術面というよりも、政策に注目するアプローチを取る。サイバー戦によって国家の構造がどうなるか、社会への影響は?金融犯罪の様相にも注視している。

ピーター・ソマー(LSE):サイバー戦の主体は何かの定義が難しい。「サイバー戦」といっても、リアルの戦争のように、実際に人が死ぬわけではなく、大概は所有物がなくなる、損害を受ける、という結果になる。

 問題は、テーマがでかいので、意味のある議論ができにくい点だ。「サイバー」というと、新しい言葉になるが、中身は前からあったことだ。例えば、詐欺。これは前からあったが、ネットを使って行われるようになった。

 サイバー戦というと、ウィキリークスがらみで、サイバー攻撃をする「アノニマス」(匿名)グループが話題に上った。しかし、これは実際は「戦争」ではないだろう。昔から、例えば環境運動団体のグリーンピースなどがやってきたことと同じだ。一つの目的を達成するために、関心を引くために、いろいろな行動を起こす。自分たちの力をネット上で示しているだけだ。

カール・レオナード(ウェブセンス):私は、顧客(企業)のセキュリティーを守る仕事をしている。実際の攻撃の被害を見て、攻撃者は誰なのか、国家なのかあるいは他の人なのかを探し出し、それではこれにどう対処するのかを考える。

 インターネットが普及したので、いろいろなことが簡単にできるようになった。様々なソフトウェアも簡単にできる。「スタクスネット」もそうだ。

(注:朝日新聞によると:産業制御システムを乗っ取るウイルスで、ウラン濃縮などに使われる遠心分離器を誤作動させるのに最適な設計になっている。スタクスネットの感染はイランに集中している。)http://www.asahi.com/international/update/1120/TKY201011200104.html
http://www.asahi.com/international/update/0116/TKY201101160282.html)

ビル・ハマースリー(ワイヤード):本当に「簡単」か?イランで開発されているといわれる核兵器の作動を止めることを狙い撃ちするこのソフトがー?

レオナード:まあ、簡単にはできないだろうが、それでも、一旦こうしたソフトが開発されると、似たようなソフトが出てくるものだ。前例ができると、必ず真似をする人が出てくる。

ソマー:しかし、スタクスネットのような形で攻撃できる人は世界でも希少だ。世界でも限られた国だけだろう。小規模のサイバーテロリストにはできない。

レオナード:頻度から言えば少ないが、前例を作ってしまうのが問題だ。

ヒューズ:サイバー攻撃といえば、レクリエーションとしてやっている人もたくさんいるのかもしれない。誰が攻撃をしているのかに関する分析がもっと必要だ。政府や当局がサイバー攻撃が増えているなどというとき、その攻撃者は誰なのか、「攻撃」の意味は何かなど、ジャーナリストは質問するべきだ。

ヨーク:攻撃者は国家、組織・企業、個人か。多様だ。

レオナード:政府や公的組織は国民に関する大量の情報を持っている。ある人から見れば、金脈を抱えているのと同じだ。「攻撃」とは、このデータを狙う行為だ。データを操作しようとしたり、誰かに成りすましたり。攻撃は常にある。金融機関などは非常に恐れている。

 民間企業では、ネットでサーフィングをしていて、悪いソフト(マルウェア)に感染してしまうことを恐れている。たくさんの従業員を抱えている場合、ある人のワークステーションの裏口から中に入ってくるかもしれない。1つのワークステーションが汚染してしまえば、ほかにも広がる。

 2010年はある意味でこれまでにない年になった。今までもサイバー攻撃はあったが、気づく人は少なかった。今は、攻撃があるとみんなが気づくようになった。攻撃者とは、国家、犯罪組織、テロリスト、それから若者たち。

ソマー:昔、偽名で「ハッカーのハンドブック」という本を書いた。(http://en.wikipedia.org/wiki/The_Hacker%27s_Handbook ダウンロードはhttp://www.textfiles.com/etext/MODERN/hhbk) もともと、「ハッカー」とは、パーソナルコンピューターを作るための動きだった。今は犯罪人のイメージがあるけれども。「ハッカー会議」というのが毎年開かれていた。

ハマースリー:攻撃を防ぐにはどうするか?

レオナード:まず、自分は大丈夫だと思わないこと。他人には起きるが、自分は関係ない、と思わないことだ。

会場からの質問:ここまでの議論で、エストニアの話が出てこないのが大いに不満だ。(注:コンピュータージャパンの記事によると、エストニアでは2007年4月、「政府や銀行のサイトが大規模なDDoS(分散サービス拒否)攻撃に見舞われた。当初、この攻撃とロシアとの関係が取りざたされたことから両国の間で緊張が高まったが、この事件の背後にいる人物は不明のようだ。」あれほど大きな事件だったのに。

 2008年、グルジアでもサイバー攻撃があった。(注:AFPによると、ロシア軍がグルジアを攻撃中に、ロシア国内のコンピューターからグルジア政府のウェブサイトに集中的にサイバー攻撃が行われていた。このサイバー攻撃がロシア政府が指揮したものか、あるいは組織犯罪やハッカーによるものかは不明。)サイバー攻撃の脅威はリアルだ。

ソマー:確かにそういうことが起きたが、エストニアの場合、ネットに依存した体制を作ったことが、あのような結果になったという点も忘れないようにしたい。ここ英国は、それほど脆弱な体制にはなっていない。

ハマースリー:政府の持つ情報が攻撃対象になる件で言えば、英国の政府職員がユーチューブを見ようとしたら画面に赤い手が出てきて、見れなかったと聞いた。感染を恐れているのか。

レオナード:攻撃されないと考えるのは馬鹿げている。フェースブックや(ビジネスが中心の)リンクエドなど、安全に使うにはどうするか?ポリシーを持つべき。

ハマースリー:会社は従業員のネット利用を監視しているのだろうか?

レオナード:監視しているところも、しないところもある。

質問:ジャーナリストはどうしたらいいか。

ヒューズ:英国だったら国家に情報を取られるとか、心配しなくてもよいと思う。

ソマー:どんなリスクがあるか、査定するべき。そのリスクを回避する技術上の手段はないのかどうか、と。

レオナード:すべての人がセキュリティ意識を持つべきだ。ウィルスソフトを入れないでネットを使うとかしてはいけない。リスクは自分だけでなく、他人をも巻き込む。リスクに巻き込まれない手段を講じることだ。

(2月9日、ロンドンのフロントラインクラブでの議論をメモった分の書き取りです。正確な情報は後にアップロードされる、クラブのサイトからご覧ください。)

**参考ニュース記事:

ロシア国内からグルジアへのサイバー攻撃を確認、米企業
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/it/2506265/3215193
米国政府、大規模サイバー攻撃を受けたエストニアに専門家チームを派遣
http://www.computerworld.jp/news/sec/69289.html
英国政府、欧州サイバー・セキュリティ計画に参加表明
http://www.computerworld.jp/topics/vs/190636.html
中国からのサイバー攻撃に米国はどう立ち向かうべきか
http://www.computerworld.jp/topics/vs/174350.html


 
by polimediauk | 2011-02-10 22:26 | ネット業界
 月刊「文藝春秋」の3月号に、芥川賞発表というドデカイニュースのほかに、「秘めたる恋」という特集が入っています。

 その中の1つ、ダイアナ元皇太子とドディ・アルファイド(1997年8月、事故でともに死去)のエピソードを書いています。もしどこかで手に取られましたら、見てくださると幸いです。

http://www.bunshun.co.jp/mag/bungeishunju/

 これを機に調べてみると、実際に二人が熱い仲になったのは、ほんの1ヶ月ほど。短い恋だったようですが、最後は熱く燃えて、幸せの絶頂で亡くなったのでしょうか。ダイアナさんはまだ30代半ば、ドディ氏も42歳。人生、これからの年でしたー。ダイアナさんの息子、ウィリアム王子は結婚相手のケイト・ミドルトンさんに母の指輪を婚約発表の際にあげたそうですね。

 このところ、紙の雑誌に書いた後、「電子版にもなります」といわれることが多くなりました。今年は、いよいよ、電子出版元年か?という感じです。

 文藝春秋でも、海外在住者に向けた電子版の配信が10日から開始されたということです。

 以下、プレス・リリースのコピー(抜粋)です。

海外在住者に向けた、月刊「文藝春秋」電子版の配信が、いよいよ3月号(2月10日発売)よりスタートします。これは約113万人といわれている海外在留邦人を対象に、日本国内の発売日と同時に「文藝春秋」をお届けしたいという願いから始まりました。内容も紙版の「文藝春秋」本誌とほとんど同一のものを配信する予定です。

本号は芥川賞受賞作掲載号で、朝吹真理子、西村賢太両氏の話題の受賞作品がデジタル版で配信されることになります。

この電子版はパソコン、iPhone、iPadで読むことができます。

「文藝春秋」電子版(海外向け)の内容

【発売開始時期】 2月10日(2011年3月号)より。

【販売エリア】日本を除く全世界。
※海外在住の方のみが購入できます。日本国内からは購入できません。

【販売価格】 日本円で1,000円相当。
ただし、各国の通貨による支払いのため、為替等の都合により、実際の価格は若干の上下があります。また、zinioでは年間定期購読(10000円)もあります。

【対応端末】パソコン、iPhone、 iPad。

【販売サイト】「MAGASTORE」「Zinio」「App Store」の3つの販売サイトで購入できます。

by polimediauk | 2011-02-10 20:21 | 英国事情
c0016826_2022562.gif 放送批評懇談会が発行する月刊雑誌「GALAC』3月号の「海外メディア最新事情」の中で、英国の新聞界のお助け人、アレクサンドル・レベジェフ氏について、英メディア界の人のコメントを入れて、エッセイ風に書いてみました。書店などで軽い気持ちで読んでくださると幸いです(・・しかし、表紙の人は非常にきれいですね、驚きですー檀れいさんという方だが、昔の松原智恵子を少しほうふつとさせるー知っている人は今は少ないかもしれないけど)。

 この雑誌を読むと、日本のテレビ・ラジオ界でたくさん意欲的な試みがあることが分かる。普段、ネットで日本に関する情報に触れる私からすると、驚きのことが一杯だ。業界は、結構、熱い感じがするー。

http://www.houkon.jp/galac/index.html

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 フェースブック関連で、日本で、実名を使って登録しなかった人のアカウントが消されたことを知った。

 
「春の垢BAN祭りが始まったよ! 」
http://togetter.com/li/98417

 この件の是非はいろいろあることが分かるが、「実名で書いたことが外に漏れるのが怖いな」ということを書かれている方のコメントが印象に残った。
by polimediauk | 2011-02-09 20:21 | 放送業界
 このところ、ウィキリークスやエジプト情勢に関する論考などを紹介してきたが、ビジネスとしての英メディア界の概要はどうか?「NSK経営リポート2011年冬号」(1月末発行、日本新聞協会)に書いた原稿に補足したものが以下である。


英メディア界で事業化実験相次ぐ
ー新高級紙創刊、サイト有料化、無料ネット放送プラットフォーム

 2008年のいわゆる「リーマン・ショック」以降、広告収入の激減で低迷期に入った英メディア界だが、ここ1年で状況が変わってきた。テレビ界では広告収入が大きな伸びを示し、大手紙の買収や新高級紙の創刊など、新聞業界にも活気が出てきた。本稿では、最近の動きを紹介する。

―20分で読み切る高級紙「i」

 昨年10月26日、高級紙インディペンデントの簡易版「i(アイ)」が創刊の運びとなった。新聞離れが続く中、紙媒体の創刊は一つの発想の転換だ。これを実行できたのはその半年前の3月、ロシアの富豪で旧ソ連国家安全保安委員会(KGB)の元スパイ、アレクサンドル・レベジェフ氏がインディペンデントとその日曜版を買収し、新たな投資が可能になったからである。レベジェフ氏はその前年の2月、部数低迷で苦労していたロンドンの夕刊紙「ロンドン・イブニング・スタンダード」の株約75%を1ポンド(約130円)で買収し、事実上の経営者となった。同氏はスタンダードを無料にし、発行部数を3倍にした。

 アイの創刊にはインディペンデント(本紙)による市場調査の結果が反映されている。これによると、読者の多くが、現在の高級紙は「情報量が多すぎる」「高すぎる」「忙しくて読んでいる時間がない」と思っていることが分かった。「ニュースを読みたいが、今のままだと読みたくない」のである。

 アイの創刊直後、アイは本紙よりもかなり薄めだった(80数ページに対してアイが50数ページ)が、1月上旬までに両紙ともに50ページ弱構成となった。しかし、本紙が1部1ポンドのところ、アイは20ペンスと格安だ。

 アイは本紙のコンテンツを簡便にした形を取る。ニュース、論説、ラテ面、ビジネス、スポーツといった面建てや広告も同じだが、ニュースの優先順位を含めデザインが異なる。各記事は本紙よりも短めだ。例えば本紙の1月5日付1面は連立政権に関する記事を置いたが、アイでは6面に入れた。アイの見開き2-3面は「マトリックス」と呼ばれ、後に続く紙面の内容を瞬時に一覧できる。アイは全体的に色味が多いが、逆に本紙は、アイ創刊を機に、モノクロを主とし以前より色味を抑えている。アイを全ページ読みきるのに要する時間は、約20分。忙しい人が電車の中で読み終えるのにちょうどよい新聞だ。

 業界推測によると、アイの平均発行部数は、現在約7万部。本紙の約三分の一だ。「読みやすいが、内容は高級紙」というジャンルはこれまでになく、アイならではの視点が出るようになれば、部数は大きく伸びるという見方がある一方で、本紙の部数減につながるのではという懸念もある。(補足:最新の情報では、アイは推定約17万部が売れているという説もある。また一方では6万部という説も。本家インディペンデントが17-18万部なので、これに近い数字であるとすれば、「安い」「短時間で読める」が効いているのだろうか。-個人的には、内容はいいが、レイアウトが子供っぽい感じがする。どうだろう? 参考:http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/25/independent-i-ad-sales))

 スタンダードもインディペンデントも、英国外からの「新しい血」=資金を元に新たな試み(無料化、新媒体創刊)を実施した。「お金がなければ、実験もできない」――そんなことを実感させてくれる2つの買収劇だった。

―タイムズのサイト全面有料化

 昨年7月から、タイムズとその日曜版がサイト閲読の全面有料化を実行に移した。全面有料化は英国紙のサイトとしては初めて。1日のみの閲読(アーカイブも含む)では1ポンド、1週間では2ポンドで、既に両紙の(7日分の)購読者となっている場合、サイト閲読は無料だ。

 1か月以上の購読者であれば、単にサイトを閲読できるだけではなく、会員制クラブ「タイムズ・プラス」のサービスを利用できる。このサービスは、サイト上で著名コラムニストなどとのチャットや情報交換に参加でき、映画や美術展などタイムズが推奨する催事を低価格で鑑賞できるというものだ。また、iPadやKindleなどの携帯電子機器での閲読も、1か月以上の購読者の場合、無料で可能となる。1日のみの有料購読をした場合、iPadには1.79ポンドを払う。

 その「成果」だが、両紙を発行するニューズ・インターナショナル社は11月、月に5万人の有料デジタル購読者がいると発表した。これにはiPadやKindleなどを使っての有料購読も入り、業界内で注視される、従来の同紙サイト来訪者が有料購読を選択した数字が出ていない状態だ。

 ネット調査のエクスペリアン・ヒットワイズ社によると、同紙サイトの有料購読者数は「月に5万4000人」。この中で、2万8000人がネット購読のみで、残りが紙媒体の有料購読者、と推定した。従来の紙の購読者とウェブ版閲読を契機に紙の購読を始めた人の比率などは、今のところ正式には出ていない。

 発行社が正確な数字を出していないこともあって、現時点での全面有料化の成否は判別しがたいが、サイト来訪者の数が大きく減少したことは否定できない。ちなみに、有料化以前、同紙サイトには約2000万人が訪れていた(英ABC調べ)。有料化導入後、同紙はABCのアクセス数調査には参加していない。

 親会社ニューズ社のルパート・マードック最高経営責任者は、iPadを代表とするタブレット型電子機器専用の新聞「デイリー」を、今年、米国向け大衆紙として発行すると発表したが、英新聞界の目下の「有料化」議論も、iPad上でどうするか?に収れんしつつある。(補足:デイリーは2月2日、創刊。それほど評価が高くない感じがするが、まだ模索中なのかもしれない。参考:http://www.guardian.co.uk/media/gallery/2011/feb/04/murdoch-the-daily-in-pictures?INTCMP=SRCH
http://www.guardian.co.uk/media/2011/feb/04/murdoch-the-daily-aol?INTCMP=SRCH)

 机上に置いたPCを開いてニュースサイトを読む体験と比較すると、タブレット型機器では利用者の滞在時間と閲読ページ数に大きな差がある。iPad用アプリの開発を手がけるタイガースパイク社のニック・ニューマン氏は、タブレットの利用者は「まるでネット・ゲームに熱中するかのように、平均で30-40分、サイト上の情報を読みふける」(英ニュースサイト「ペイドコンテンツ」2010年11月23日付)。同氏によれば、iPad上で読めるニュースサイトの画面の大部分は「まるでPDF文書そのまま」だ。利用者との相互のやり取りを含めた「使い心地」に対する「執念」が、創刊予定のデーリーと他紙サイトとの差になるのではないか、という。

―「YouView」開始へ

 放送業界で最も注目される動きは、無料ネット・テレビのプラットフォーム・サービス「YouView(ユービュー)」の年内開始である。現在、BBCのほかには民放ITV,チャンネル4、チャンネル5、通信業界からはBT,TalkTalk、 Arqivaが参加している。視聴者はブロードバンド・インターネットに接続された「セットトップボックス」をテレビの上に備え付けて番組を視聴する。高品位画像設定や番組の途中での巻き戻しや録画もできる。有料・無料のオンデマンド番組の視聴ができる上に、インターネットのコンテンツにアクセスできる。

 BBCはまた、番組の無料再視聴サービス「アイ・プレーヤー」の海外展開を決定した。まずは米国で有料サービスの一つとして今年から開始する。当初はiPadでの視聴のみ。――ここでもiPad、である。

 英メディア界は、PCの前に座る利用者をもはや以前ほどには重要視していないようだ。家族や友人と一緒にあるいは一人で、じっくりとかつ楽しみながら、読んだり、見たり、遊んだりできるプラットホームとして、大画面のテレビ受信機とタブレット型携帯機器に向けたサービスの拡充化に力を入れている。(「NSK経営リポート」2011年冬号―新聞経営 World Wide-1に掲載分に補足。)
by polimediauk | 2011-02-08 20:37 | 新聞業界