小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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c0016826_2149069.jpg 「週刊東洋経済」の月曜日(31日)発売号に、ロンドンを中心とした英国の若年労働市場について書きました。もし良かったら、ページをめくってくださると幸いです。

 欧州各国では、若年層だけに限ると、失業率がグンと急上昇します。悩みは深い感じがします。

 
by polimediauk | 2011-10-29 21:49 | 英国事情
 以下のエントリーに、間違った表記があることが分かりました。このブログだけでなく、ヤフートピックスなど他媒体に掲載された後、気づかれた方からご指摘をいただきました。 

 爆発的ヒットにならない「NHKオンデマンド」とダントツ人気の英BBCアイプレイヤーhttp://ukmedia.exblog.jp/15953138/


 この中に、ソニーのプレイステーションの話が出てきますが、最初、「パワーステーション」と間違って表記されていました。また、任天堂WiiをWII表記しておりました。訂正しておりますが、間違った情報を出してしまったことを、お詫びします。
by polimediauk | 2011-10-29 07:33 | 放送業界
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 英国では、毎年10月頃から、赤い花の飾りを上着の襟の部分につける人が増えてゆく。

 これは、11月に開催される、戦死者を追悼する日「リメンバランス・サンデー」(「追悼の日曜日」)に向けた動きで、赤いひなげしの花をイメージした飾りは、追悼の意と新たな人生の開始を表わしている。

 英国の歴史に根付く行事が行われる「リメンバランス・サンデー」に注目した記事を、英国の邦字紙「ニュース・ダイジェスト」の最新号「ニュース解説」面に書いている。26日以降、ウェブサイトにも出る予定だ。http://www.news-digest.co.uk/news/index.php

 実戦部隊を世界各地に派遣させている英国では、戦争は過ぎ去った昔の話ではない。大戦中とは違って国民皆兵制度はないが、志願兵の中で戦死者、負傷者が恒常的に出ている。もちろん、逆に「敵」を戦死あるいは負傷させてもいる。

 そんな国、英国では、戦死者を追悼する儀式が国民的に重要になってくる。

 以下は「ダイジェスト」掲載原稿に若干付け加えたものである。

***

ーひなげしと戦死者追悼の関係 Q&A

 Q:赤いひなげし(scarlet corn poppy)が欧州では戦死者追悼の象徴になった背景とは?

 A:ひなげしは欧州原産のケシ科の一年草で、過酷な自然環境の中でも成長して花を咲かせる。19世紀、対ナポレオン戦争で荒廃した欧州各国の戦場では、戦死者の遺体の周囲に赤いひなげしが生え、荒れた土地がひなばしの野原に変貌した。

 1914年、第1次大戦が勃発し、フランス北部やフランダース地方(旧フランドル伯領を中心とする、オランダ南部、ベルギー西部、フランス北部にかけての地域)が再度、戦場になった。戦闘が終わると、戦場を埋めるように育ってきたのが赤いひなげしだった。こうして欧州では戦争とひなげしの花との関連が意識されるようになった。

 Q:戦死者追悼儀式の象徴となった直接のきっかけは?

 A:1915年、カナダ人の医師で詩人でもあったジョン・マックレーが、同国人兵士の死を機に書いた「イン・フランダース・フィールズ」が、英雑誌「パンチ」に掲載された。戦場に咲くひなげしの花を冒頭に入れた詩は、欧州諸国で人気を得て、ひなげしは戦闘で命を落とした兵士たちの大きな犠牲の象徴となった。また、現在では、平和の象徴として、白いひなげしの花をイメージした飾りをつける人もいる。

 Q:「ひなげし募金」(「ポピー・アピール」)とは?

 A:英国在郷軍人会が1921年に始めた募金活動の名称で、集められたお金は英軍関係者への支援に使われている。2010年の募金総額は3600万ポンド(約43億円)。(資料:BBC、英国在郷軍人会のサイト)

―英国での戦死者追悼式の予定表

11月11日:リメンバランス・デー

*午前11時、英国内(及び英連邦諸国などを含む、世界の複数国)で、第1次大戦の戦死者を追悼するための、2分間の黙とうが行われる。

11月の第2週の日曜日あるいは11日に近い日曜日(今年は13日):リメンバランス・サンデー

*ロンドン中央部:午前中、ホワイトホールにある、戦死者の慰霊碑前で追悼儀式が行われる。英王室のメンバー、首相、各政党党首、外相、英連邦や軍の代表者などが出席。11時、黙とう。その後、エリザベス女王から始まって、王室メンバー、首相などが花輪を慰霊碑前に置く。この模様はテレビで生中継される。

*英国内各地:各地の慰霊碑の周辺で同様の儀式が行われる。地元の教会前に有志が集合し、慰霊碑まで追悼行進の後、黙とうと花輪の配置などの流れとなる。誰でも参加できる。

―「リメンバランス・サンデー」とは?

 11月13日日曜日、今年も「リメンバランス・サンデー」(意味は「記念日の日曜日」など)がやってくる。「リメンバランス」には、「追悼」の意味もある。追悼の対象となるのは、第1次世界大戦(最後につけた「関連キーワード」参照)の戦死者だ。

 1918年11月11日午前11時、大戦で敗戦国側となったドイツが勝利者となった連合国軍側との休戦協定を結んだ。翌年から、毎年、11月の第2週の日曜日か11日に近い日曜日のいずれかに、追悼式典が開催されてきた。1919年、最初の式典が行われた時には、この日を単に「休戦日」(「アーミスティス・デー」)と呼んでいた。
 
 第1次大戦は近代兵器を使った初めての世界戦争で、戦死者は数百万規模に上った。大きな犠牲を払った多くの戦死者たちを決して忘れず、この大戦が「最後の世界大戦」になることを願って、国王ジョージ5世が、2分間の黙とうを含む式典を開催する「リメンバランス・サンデー」の設定を主導した。
 
 「サンデー」は元々は第1次大戦の戦死者の追悼日であったが、今では、第2次大戦や最近のアフガニスタンやイラクでの戦死者など、英国が関与した様々な戦争で命を落とした兵士を追悼する日になっている。
 
 ちなみに、英国では11月11日は祝日ではなく、国全体で黙とうを行う時間は設定されているものの、追悼式典自体は「リメンバランス・サンデー」に行われる。
 
 しかし、英連邦諸国を含む他国では、11日に追悼式典が行われることが多い。この日は「リメンバランス・デー」、「アーミスティス・デー」、あるいは戦死者を象徴するのが赤いひなげし(「ポピー」)の花であるために、「ポピー・デー」などと呼ばれている。米国の場合は、11月11日を祝日とし、1950年代からは「ベテランズ・デー」(「退職・あるいは復員軍人の日」)と呼んで、軍隊勤務者に敬意を払う日としている。

―ひなげしの花をつけるかどうか

 秋が深まる頃になると、「リメンバランス・サンデー」を控えた英国では、紙でできた赤いひなげしの花の飾りを洋服の襟部分などにピンでつけた人を多く見かけるようになる。
 
 この飾りの販売は英国在郷軍人会による募金活動の1つだ。飾りを購入すると、利益が英軍関係者への支援に回る。戦死者への追悼の意を表しながら、英兵士にいくばくかのサポートを提供できるとあって、多くの人が飾りを買い求める。この飾りをつけて町中を歩けば、追悼の意を表したという印を公にしていることになる。

 飾りの花は当初は絹製だったが、1970年代後半、紙のデザインに変更された(ただし、絹のデザインのものも販売されている)。在郷軍人会は、今年、飾りの販売で集めた募金額を4000万ポンドまで増大させることを目標としている。

 飾りの着用は、この時期、愛国心の表明ともなるが、これに反発を感じる人は少なくない。「ほかの人と同じような行動を取りたくない」という英国人気質から反発する人がいる一方で、「愛国心の表明を強制されたくない」という人もいる。
 
 また、戦死者への追悼の意の表明行為を真剣に考える人の中には、テレビのキャスターなどが判を押したようにひなげしの飾りをつけて画面に登場する様子を不快に思ったり、侮辱と受け止める人もいる。戦死した父親を持つ、ある退職者は「本当に、戦死者に思いをはせて飾りをつけているのだろうか」、「飾りをつけることが政治的に正しいから、つけているだけではないか」とメディアの取材に述べる。この退職者は、毎年、地元で開催される戦死者追悼儀式に参加しているという。
 
 「リメンバランス・サンデー」は、英国に住む人にとって過去を振り返る機会であるとともに、世界各地の紛争に兵士を送る、戦争の「現役国」であるという現実を承知しながらも、これ以上の死者を出さないようにと願わざるを得ない時でもある。在英日本人にとっては、式典を体験することで、様々なことを学ぶ機会になりそうだ。

―関連キーワード

World War I: 第1次世界大戦(1914-1918年)。オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナンド大公夫妻の射殺による「サラエボ事件」がきっかけで勃発。ドイツ、オーストリア、オスマン帝国、ブルガリアの同盟国側と英国、フランス、ロシアの連合国側が欧州を主戦場として戦闘開始。日本、イタリア、米国も連合国側に参戦した。スイス国境から英海峡まで延びる塹壕戦にそって、数百万規模の若者が動因された。一説には戦闘員の死者は900万人、非戦闘員が1000万人、負傷者は2200万人と推定されている。敗退した側のドイツと連合軍との間の休戦協定は1918年11月11日午前11時に調印された。

***

 最後まで読まれた方、ありがとうございます。ちなみに、「英国ニュースダイジェスト」の編集日記がなかなか、面白く、心が和みます。これを書いている方は、実は編集長・・・・。

衝動買いしちゃった 2011年10月6日
http://www.news-digest.co.uk/news/content/view/8565/142/
by polimediauk | 2011-10-26 21:02 | 英国事情
(「新聞通信調査会報」(10月号)に掲載された記事の転載です。)

 前回の「上」は主に盗聴事件の発端とその経緯を記したので、「下」はニューズ社への影響を見てみた。後半部分が、10月21日の株主総会での顛末を理解するための一助になれば幸いである。

***

 経営に更なる透明性の求めも 英紙廃刊とマードック帝国のほころび(下)

 英日曜大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」(NOW)の記者が数千人に上る著名人、政治家、タレントらの携帯電話の伝言メッセージを盗聴したとされる事件がきっかけとなり、同紙は今年7月10日号を最後に168年の歴史の幕を下ろした。その経緯を本誌9月号の拙稿(「マードック帝国のほころび 上)で振り返った。

 本稿では廃刊後の主な動きと、同紙の発行元の英ニューズ・インターナショナル(NI)社を傘下に持つ米メディア大手ニューズ・コーポレーション(ニューズ社)の今後を概観してみる。

―衛星放送の完全子会社化断念へ

 盗聴事件の発端は2005年。翌年、盗聴行為に携わったNOW紙の王室報道記者クライブ・グッドマンと私立探偵グレン・マルケーが逮捕された。両者が携帯電話への不正アクセスで有罪となってそれぞれ数カ月の実刑判決を受けたのは07年である。この間、NI社側の説明は一貫して「関与していたのはグッドマンのみ」であった。問題が再燃したのは09年夏である。左派系高級紙ガーディアンが、「警察筋」からの情報を基に、数千人規模が盗聴されていた可能性があること、盗聴行為は組織ぐるみであったと報道した。再捜査への声が上がったが、ロンドン警視庁は「新たな証拠がない」ことを理由に、再捜査しなかった。

 今年7月になって、誘拐・殺害された少女の携帯電話がNOW紙の記者らによって盗聴されていたことが発覚し、盗聴事件が国民にとって切実な問題として意識されるようになった。さらに、イラクやアフガニスタンに派遣された英兵らや、殺害された小学生児童の家族の携帯電話にもNOW紙の盗聴行為が及んでいたことが明るみに出て、NOW紙の評判は地に落ちた。

 「火消し」としてニューズ社は7月7日、NOW紙の廃刊を急きょ決定した。それでも非難の声が収まらず同月13日、同社が1年前から狙っていた英衛星放送BスカイBの完全子会社化(現在は39%の株を所有)を断念するという苦渋の選択を行った。この日、下院ではニューズ社の最高経営責任者(CEO)兼会長のルパート・マードックに対し、完全子会社化を断念することを求める審議が予定されていた。ニューズ社はこうした状況下では交渉がスムーズに進まないと判断し、下院での審議が始まる前に完全子会社化を断念すると発表した。

 反マードック機運はそれでも収まらず、15日にはNI社のCEOで、03年から07年までNOW紙の編集長でもあったレベッカ・ブルックスが辞任した。同日、ニューズ社傘下のダウ・ジョーンズ社のCEOで、ブルックスの前にNI社CEOとして「盗聴行為はグッドマン記者のみ」と繰り返し述べてきたレス・ヒントンが、現職を辞任した。ブルックスとヒントンはマードックの側近中の側近と言われる存在であった。

―多額便宜供与の警視総監も辞任

 ロンドン警視庁は今年からNOW紙での盗聴事件の再捜査を本格的に開始した。平行して進めているのが、NOW紙が警察関係者から情報を買っていたかどうかという賄賂疑惑の捜査である。メディアと警察との関係が問われる中、雪崩のように警察機構のトップが次々と辞任する事態が発生した。

 7月14日、NOW紙の元副編集長ニール・ウォリスが盗聴事件への関連容疑で逮捕された(後に保釈)。これを機に英各紙が探り出したところによれば、ウォリスは09年に警視庁のメディア・コンサルタントとして採用された。同年夏、ガーディアン紙の報道によって盗聴事件の再捜査を求める声が上がりだした。

 警視庁によるウォリスの採用自体は違法ではないとしても、捜査の手が入った会社の元編集幹部を雇うのは、一種の「癒着」ではないか? そんな疑問を多くの人が持った。しかも、ウォリスは1カ月にわずか2日働くだけでよく、1日1000ポンド(約13万円)という高額を得ていた。また、ウォリスをコンサルタント職に薦めたのは、盗聴事件の再捜査をしないことを決めたジョン・イェーツ警視監であった。

 ポール・スティーブンソン警視総監も説明に困る事件に巻き込まれた。サンデー・タイムズによれば、警視総監は今年初め英南部のスパで数週間静養した。その時の費用総額1万2000ポンドは無料だったという。理由はスパの運営者が「友人であったから」と警視総監は説明したが、このスパの広報を担当していたのはウォリスであった。警視総監は不正行為はなかったと弁明したが、実に都合の悪い事実の暴露となった。

―新聞スト破りで生まれた警察との絆

 7月17日、スティーブンソン警視総監は「続行中の捜査を妨げたくない」などの理由で辞任するに至った。翌日にはイェーツ警視監も辞任した。

 事件を捜査する警察と、事件報道を行うメディア側とは「切っても切れない仲だ」と元警視庁幹部ブライアン・パドックは複数のテレビ局の番組内で述べている。「警察に関して好意的な報道を行うメディアは少ない」が、その数少ない好意的なメディアの一つが「マードック・プレス」(マードック傘下のNOW紙、サン、タイムズ、サンデー・タイムズ)だったという。

 パドックによれば、マードックとロンドン警視庁の間に深い絆ができたのは、1986年の「ワッピング革命」の時だった。新聞経営者の多くが労組員によるストに悩んでいた頃、マードックは傘下の新聞の編集室を一晩でロンドン東部ワッピングに移動させた。非労組員を中心に新聞を制作したマードックに対し、労組員たちは新オフィスの回りに大規模ピケを張って対抗した。数千人にも上るピケ参加者による配送トラックやオフィスへの攻撃を防御したのが、警視庁が派遣した警察隊だった。

 マードックは7月19日、二男でニューズ社の副最高執行責任者ジェームズとともに、下院の文化・メディア・スポーツ委員会に出席し、盗聴問題に関する委員らからの質問に答えた。マードックは盗聴行為の犠牲者に謝罪し、「違法行為は絶対に許されない」と述べた。しかし、たった1人の記者ではなく、数人が盗聴行為に関わっていたなどの詳細を知ったのは「最近だった」と認めた。「自分がCEOのニューズ社では5万3000人が働く。NOW紙が生み出す利益は1%」として、盗聴事件について関知していなかったことを正当化する発言をした。ジェームズも、「複数が関与していた」点について知ったのは、つい最近であったと述べた。

 今秋からはレベソン控訴院裁判官が委員長となって、NOW紙での盗聴行為の実態を探る調査と英メディア全体での倫理に関する調査が開始された。NOW紙は新聞としては消えたが、英国ではしばらくの間、話題に上りそうだ。

―CATV、映画が稼ぎ頭の2兆円企業

 盗聴事件はニューズ社の経営に、どのような影響をもたらすだろうか?

 同社の最新の年次報告書(11年6月期決算)によると、総収入は約334億㌦(2兆5700億円)に上り、ニューズ社は世界でもトップクラスの複合メディア企業である。内訳は最大が出版・新聞発行(ハーパーコリンズなどによる書籍出版、英ニューズ・インターナショナル社によるタイムズなど、各国での新聞発行)で、総収入の27%にあたる約88億ドルを稼いでいる。これに続くのが①ケーブル放送(フォックス・ニューズ、フォックス・ビジネス・ネットワーク、ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルなど、24%)の約80億ドル、②映画娯楽(20世紀センチュリー・フォックスなど、21%)の約68億ドル、③米国でのテレビ放送(フォックス・ブロードキャスティング・カンパニーなど、14%)の約47億ドル、④衛星テレビ放送(スカイ・イタリア、BスカイBなど、11%)の約37億ドル、⑤その他(マイスペースなどのデジタル・メディア、3%)は約11億ドルである。前年度まで表記されていた新聞のみの出版収入は約60億ドルであった。

 今年度の稼ぎ頭は出版・新聞発行となったものの、収入の伸び率に注目すると、出版・新聞発行収入が前年比3%の伸びであるのに対し、①のケーブル放送が14%増、③が13%増となり、放送ビジネスがリードしていることが分かる。

 紙の新聞の部数はほとんどの先進国で下落傾向にあることから、収益拡大の中心は今後も放送業、そして伸びるデジタル・メディアになるといわれている。いったんはBスカイBの完全子会社化をあきらめたマードックだが、「事が沈静化したら再度、完全子会社化に動く」)(エンダース・アナリシス社)という見方が大勢を占める。

 ニューズ社のリーチは米欧のみならず、中国、インドにも広がる。20世紀フォックス制作で大当たりとなった「タイタニック」や昨年の「ブラック・スワン」など、世界各国で上映されるヒット作品は巨額の収入を稼ぐ。米国製アニメ「シンプソンズ」も大人気で、マードックがかつて登場人物の1人として登場して喝采を浴びた。新聞は英国のほかに米国では老舗経済紙ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・ポスト、オーストラリアでは自らが創刊した全国紙オーストラリアンのほかに150以上の新聞を発行する。

―マードック家支配に批判の投資家動向に注目

 マードック帝国が崩壊するかどうかは、今後の盗聴事件の捜査の行方に加え、ニューズ社の株主がどう判断するかによるだろう。

 01年に米大手エネルギー会社エンロンで巨額の不正経理・不正取引が明るみに出て、あっという間に破綻に追い込まれた。このような形での破綻・崩壊はニューズ社については、現状ではほぼないであろう。しかし、経営に更なる透明性、公正さを求められる可能性は大きい。というのも、マードック一家が経営陣のトップに君臨し、大株主となっている現状への批判を声にする投資家もいるからだ。例えば、一家はニューズ社の全株の12%を所有しているが、同社の株は議決権があるものとないものの2種類に分かれており、一家の所有分は議決権株の40%に当たるため、他の株主がマードックの意向を無視して議決ができない状態となっているのだ。

 英米の捜査当局や英国の調査委員会が同社に不都合な事実を明るみに出した場合、他の株主や投資家らが経営陣の刷新を求める声が強くなる可能性がある。

 この場合①現CEOのマードックは高齢(80歳)であることなどを理由に第1線から退いてもらい、副会長チェイス・ケアリー(57)が引き継ぐ②父の後を継ぐとみられていたが、盗聴事件の実情を十分に把握せず、あるいは実情を知りながら虚偽の報告をした可能性もある二男のジェームズを降格させる③さらに英国での新聞発行業から撤退することで近い将来、クリーンになったニューズ社がBスカイBの完全子会社化を実現する―などの選択肢があろう。

 英国のテレビ、ラジオ、新聞は7月上旬から1カ月にわたり連日、マードックの危機を大々的に報道した。秋から始まった調査委員会が結論を出すのは数年先ともいわれている。BBCのメディア記者トーリン・ダグラスは「一般市民が今後どれほど、この事件に関心を持つだろうか」と疑問を投げ掛ける(BBCブログ、9月7日)。

―「親密過ぎる関係」に決別の英議員

 確かに、国民の関心事は8月上旬に発生したロンドンの暴動の後始末や経済の先行きに移っているのかもしれない。しかし私は7月13日、マードックにBスカイBの完全子会社化を断念するよう促すための審議が行われた下院で議員らが次々と立ち上がり、過去40数年間で初めてマードック・メディアを表立って批判した光景が忘れられない。これをガーディアンのコラムニスト、ジョナサン・フリードランドは「革命」と表現した。「もうマードックと親密過ぎる関係であってはいけない」―そんな危機感が議員の間にあったのだと思う。

 長い伝統を持つ新聞をほんの2、3日の決断で、あっという間に廃刊してしまうのは実に大胆な、そしてある種、残酷な動きであった。一つのブランドとなった新聞は、生き物とも言えるからだ。プライバシー侵害記事で埋められたNOW紙を嫌う人は多いが(その理由に私も同意するけれども)、日曜紙市場でトップの新聞の廃刊は、これを読んでいた数百万人の読者を斬って捨てたのと同様にも感じられた。200余人の制作スタッフにとっては生活の糧が一気に断たれた。

 廃刊による痛み(あるいは衝撃、あるいは嫌いな人にとっては大喜びなどの強い感情)はまだ英国民の中では消えていない。マードックと癒着したことへの痛みとして認識され、サッチャー政権(1979~90年)以来続いてきた1人のメディア王による市場の寡占化傾向に見直しがなされるのであれば、廃刊は結果的には良いことだったのかもしれない。(敬称略)(「新聞通信調査会報」10月号掲載分より)
by polimediauk | 2011-10-26 16:50 | 新聞業界
 英大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」(7月廃刊)を中心とした、電話盗聴疑惑は、いまどうなったのか?また、同紙を発行するニューズ・インターナショナル社を傘下に置く米ニューズ・コーポレーションの経営への影響や、その会長兼CEOルパート・マードックの去就はどうなるのか?

 そんなことを、日本にいる複数のメディア関係者の人から聞かれた。
 
 「この問題はまだ終わってない」、「英メディア界で大きな位置を占める、マードックの将来を決めるのは、米ニューズ社の株主たちだろう」と答えてきた。
 
 株主たちの意向が明確になったのが、今月21日。この日開催されたニューズ社の株主総会で、マードックと2人の息子を含む取締役全員が議案どおり選任されたが、息子たちの取締役再選では、無視できない数の株主からの異議が唱えられたのだ。

 ウオールストリートジャーナル記事
 http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_330873
 
 決して、順風満帆ではないことが分かる。

 この事件に関してはこれまでにも何度か書いてきたが、事件の概要と、ニューズ社の将来に目をやった原稿を「新聞通信調査会報」の9月号(上)と10月(下)に書いている。(上)は主に事件のあらましで、(下)はマードック帝国への影響である。事件発生から少々時間が経ったので、振り返る意味で、ここに載せてみようと思う。

***

組織ぐるみか、大規模盗聴
 英日曜紙廃刊とマードック帝国のほころび(上)

 
 数年前に発覚した、英日曜紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」(NOW)での電話盗聴事件が、英国でメディア界のみならず政界を揺るがせる事件に発展している。

 今年7月、殺害された少女の携帯電話を盗聴していたとする報道が出て、国民の大きな怒りを買った。発行元ニューズ・インターナショナル(NI)社を傘下に持つメディア大手ニューズ・コーポレーション(ニューズ社)は、168年の歴史を持つ同紙を廃刊とする決断を行った。新聞は廃刊になったが、盗聴行為が組織ぐるみであったのかなど、全容は解明されていない。
 
 ニューズ社の最高経営責任者(CEO)兼会長のルパート・マードックは、英メディア界のみならず、政界にも大きな影響力を持ってきたが、一連の盗聴疑惑で、「マードック帝国」のほころびが見えてきた。政界中枢部やロンドン警視庁との「癒着」も次第に明るみに出て、英国の支配層(エスタブリッシュメント)のマードックとの「親しすぎる関係」にメスが入る状態が続いている。 
 
 本稿では、電話盗聴事件の発端、経緯、その意味するところを2回に分けてつづってみたい。

―発端

 話は2005年秋にさかのぼる。王位継承権順位第2位のウィリアム王子のひざの怪我に関する記事が、日曜大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」に掲載された。記事には王子当人、あるいは王室関係者などごく限られた人物のみが知る内容が含まれていたため、不審に思った王室関係者がロンドン警視庁に捜査を依頼した。
 
 06年夏、同紙の王室報道担当記者クライブ・グッドマンと私立探偵グレン・マルケーが逮捕された。このとき、警視庁はマルケーの自宅から約1万1000点に上る書類などを押収した。大量の書類の中で、警察が調査したのはほんの一部、王室報道に関わると思われる情報のみであった。しかし、押収書類の中には約4000人ほどの人物の個人情報のリストがあり、ウィリアム王子や王室関係者以外に、電話を盗聴されていた可能性のある人物の名前がここに入っていた。
 
 後に、このリストの中にあった人物で、プロサッカー選手協会会長(当時、現在はCEO)ゴードン・テイラーが盗聴行為でNOW紙を訴えるのだが、テイラーの弁護士となったマーク・ルイスは警視庁から盗聴の証拠となる情報をもらったときに、担当者が「数千人規模の情報があるが、これだけあれば、十分だろう」と言われたと複数のテレビ番組で語っている。
 
 06年11月、グッドマンとマルケーは携帯電話への不正アクセスで有罪となり、翌年1月禁固刑(グッドマンは4ヶ月、マルケーは6ヶ月)が下った。このとき、「盗聴行為が行われていたことをまったく知らなかった」とアンディー・クールソン編集長は述べながらも、自分が編集長であったことの責任を取って、辞任した。
 
 このときから、今年の春頃まで、NI社経営陣や編集幹部らは、違法行為に手を染めていたのは「グッドマン記者一人のみ」と主張し続けた。
 
 NI社の法律事務所ハーボトル&ルイス社はNI社の依頼で編集幹部らの電子メールを調査した結果、編集幹部がグッドマンの盗聴行為を知っていた形跡はなかった、とNI社に報告した。ここまでが、電話盗聴事件の第1幕であった。

―「数千人規模」の盗聴疑惑

 左派高級紙「ガーディアン」の特約記者ニック・デービスが、NOW紙による盗聴の犠牲者は「数千人に上る」、不正行為は「組織ぐるみであった」とする報道を開始したのは2009年夏。第2幕が始まった。
 
 前年にはプロサッカー選手協会のテイラーが不正アクセスに対する賠償を求めてNI社を提訴していた。これは一般にはあまり知られてはいなかったものの、「グッドマン記者のみが盗聴行為に関与していた」とするNI社の説明が揺らぎだしていた。グッドマンは王室報道担当だったが、テイラーは王室とは無関係だった。デービスはまた、盗聴の犠牲者である複数の人物にNI社が巨額の賠償金を払っていたと報道し、お金で沈黙を買ったことを示唆した。
 
 下院の文化・メディア・スポーツ委員会がデービス、クールソン元編集長、NI社の法律顧問などを召喚し、盗聴行為に関して質疑を行うまでに発展した。
 
 このときまでに、盗聴事件は政治問題にもなっていた。というのも、2007年1月、クールソンがNOW紙を引責辞任したが、その数ヵ月後には野党保守党党首(当時。現首相)デービッド・キャメロンがクールソンを広報責任者として起用した。2010年5月、保守党と自由民主党による連立政権が発足すると、キャメロンはクールソンを官邸の報道局長にしていた。
 
 クールソンは大衆紙「サン」やNOWで経験を積んだ、根っからの大衆紙ジャーナリスト。2007年、NOW紙を引責辞任したときから、「編集長が部内の違法行為にまったく関知していなかったはずがない」という声がメディア界や政界に強く存在していたが、キャメロンはこうした声を無視し、政界の中枢部にクールソンを入れた。
 
 2009年、盗聴問題が再燃したので、クールソンの起用を決めたキャメロン首相の判断に大きな疑問符がついた。しかし、批判の声に対し、キャメロンはクールソンが編集長職を辞任したことで責任を既に取っていること、(人生の)「第2の機会を与えたい」として、クールソン支持の姿勢を崩さなかった。
 
 下院委員会に召喚されたクールソン、NI社の法律顧問、NOW紙の当時の編集幹部らは、「グッドマン1人の不正行為」とする立場を繰り返した。
 
 「ガーディアン」は粘り強く盗聴の被害者が多数いるとする報道を続けたが、孤軍奮闘の感があった。新聞業界の自主規制監督団体・英苦情報道委員会(PCC)は2009年までに2つの報告書を出し、「ガーディアン」の報道には「十分な実体がない」と結論付けた。ロンドン警視庁のポール・スティーブンソン警視総監(当時)は、警視監の一人ジョン・イエーツに対し、盗聴事件を再捜査する必要はないかを調査させた。イエーツは数時間で結論を出し、報道陣の前で「新しい証拠がないので、再捜査はしない」と言い切った。
 
 翌年2010年2月、文化・メディア・スポーツ委員会の報告書は、「知らない」「関知していない」を繰り返したNI社幹部らが「集団健忘症にかかっている」とし、「グッドマン一人が盗聴行為を行った」とは「考えられない」と結論付けた。
 
―「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」とは

 事態が急展開する「第3幕」に入る前に、英国の新聞市場とNOW紙について少々説明したい。
 
 日本同様、発行部数の下落がなかなか止まらない英国の新聞界だが、市場で支配的な位置にあるのは、大衆紙(タブロイド紙)である。英国の新聞は大雑把に言って、高級紙と大衆紙に分かれる。両者ともに原則朝刊紙だ。高級紙は、内容的には日本の朝刊全国紙に似ており、英国では中流(あるいはそれより上の)階級が読む。大衆紙は主に労働者階級を対象とし、感情がかきたてられるような記事(例えば欧州連合の官僚制度や移民人口に対する怒り、驚くような人生を体験した市民への共感、同情を引き起こすような記事)、有名人に関わるゴシップ記事、スポーツ記事が中心となる。1つ1つの記事が高級紙の記事よりは短く、より平易な文章で書かれている。
 
 高級紙と大衆紙の発行部数を比較すると、後者が圧倒的に多い。例えば、日刊大衆紙市場のトップ「サン」の部数は約280万部、日曜大衆紙市場のトップは、廃刊前の時点ではNOW紙で約260万部だった。一方の高級紙では、日刊紙の「デイリー・テレグラフ」が約60万部、「タイムズ」が約45万部、「ガーディアン」が約28万部。日曜高級紙では「サンデー・タイムズ」が100万部を超えるが、「サンデー・テレグラフ」は約47万部、「オブザーバー」が約29部である。英国は大衆紙の国と言ってよいだろう。
 
 NOW紙は1843年創刊。1950年代には約850万部まで部数を伸ばしたことがある。その後は熾烈な競争や新聞離れ傾向を反映して、次第に部数を落としていったが、政治家や有名人の個人生活を暴くスクープの数々でその名をはせた。
 
 例えば、1986年、元保守党議員で作家のジェフリー・アー チャーの不倫を暴露し、1995年には映画俳優ヒュー・グラントと一夜を伴にした娼婦の告白話を掲載している。児童性愛主義者退治を目的 とした「ネームド・アンド・シェイムド」 (名前を出すことで、恥をかかせた見出しをつけた、2000年)もよく知られている。8歳の少女が児童性愛主義者に殺害されたことをきっかけに、大量の性犯罪者の名前を紙面上で公開した。
 
 昨年はメイザー・マームード記者がクリケット競技のやらせ疑惑を報道し、新聞業界が選ぶ2011年最優秀記者賞を受賞している。
 
 NOW紙はマードックが英国で最初に買収した新聞でもある。1969年、まずNOW紙を、そしてサン紙を買収したマードックは、英国で新聞王国を築く基礎を作った。
 
 セックス、スポーツ、スキャンダル、スクープを主眼とする2つの新聞の発行者となったマー ドックに「ダーティー・ディガー(いやらしいオーストラリア人)」という不名誉なニック・ネームがついた。1981年、マードックは高級紙「タイムズ」と「サンデー・タイムズ」を買収した。
 
 1970年代から80年代前半まで、労使関係の悪化で新聞の発行が恒常的に遅れる状況が生じた。マードックは、1980年代半ば、ロンドン東部のワッピングに編集室と印刷工場を一晩で移動させ、非労組員を主に使って、新聞の制作を行った(「ワッピング革命」と呼ばれている)。1980年代後半には英国で衛星放送市場に参入し、1990年、英星放送BスカイBの大株主となった。現在、マードックのニューズ社はBスカイBの約39%の株を持つ。
 
 「サン」、NOW,「タイムズ」、「サンデー・タイムズ」は「マードック・プレス」とも呼ばれ、その総発行部数は英国の新聞市場の40%を占めるようになった。世論を支配する力を持つーそんな神話ができあがった。時の政権は、マードックと好関係を保つことに心を砕くようになった。
 
―「盗聴」とは?

 NOW紙での電話盗聴事件での「盗聴」とは、主として、情報を得たい相手の携帯電話の伝言メッセージを無断で聞くことを指す。
 
 元NOWの特集面編集者だったポール・マクマレンが複数のインタビューの中で語ったところによると、携帯電話を購入すると、留守電を聞くためのデフォルトの番号(あくまで仮定だが0000、1234など)が設定されている。このデフォルトの数値を変更する人は多くないという。そこで、記者がこの番号を押すことで、伝言メッセージを聞く、というわけである。
 
 本人が電話に出てしまうことを想定し、記者が2人組みで電話をする場合もあった。1人が最初に電話し、もし本人が出たら、「通信業者からの電話であるふりをする」(マクマレン)。安売りサービスがあるなどとでまかせを言いながら話す間に、もう1人の記者がその番号に電話すると、通話中になるので、伝言メッセージが聞けたという。
 
 また、「ブラギング」という手法も常套手段であった。「ブラグ」とは「巧みな話術で人をだます」などの意味がある。例えば、本人であるふりをして、社会保険やそのほかの個人の身元情報を当局などから取得するやり方である。
 
「おとり取材」も1つの手法である。これは大衆紙に限らず、高級紙やBBCなど公共放送でも使われる。例えば警官の1人として警察に勤務し、人種差別の実態を暴露したり、養護施設に勤務しながら、不十分なケアが行われていたことを明るみに出したりなど、通常の取材方法では真実を探りだせない場合に実行される。公益のためのおとり取材は、1つのジャーナリズムの手法として確立している。

ーミリーちゃん事件の衝撃

 2010年9月、米「ニューヨーク・タイムズ」がNOW紙での盗聴事件を詳しく報じた。一人の記者の単独行為ではなく、盗聴は常態化していたとする、元NOW記者ショーン・ホーアのコメントが入っていた。
 
 同月、「ガーディアン」が、PR会社代表マックス・クリフォードが盗聴行為の賠償金として約100万ポンドの支払いをニューズ会社から受けていた、と報道。中旬には、元副首相ジョン・プレスコットを含む数人が、ロンドン警視庁による盗聴事件の初期捜査が十分であったかどうかを吟味する司法審理を求める、法的手続きを開始した。

 NOW紙やNI社側は「たった1人の記者の不正行為」と主張し続けていたが、ロンドン警視庁が2006年、初期捜査時に探偵マルケー宅から押収した書類の中に、自分の個人情報も入っていたのではないか、自分も盗聴犠牲者の1人ではないかと、政治家、有名人、一部市民らが懸念し、警視庁に問い合わせをしたり、NI社を提訴する動きが出てきた。もはやNI社側の「組織ぐるみではない」という説明は不十分になっていた。
 
 今年1月、NOW紙のニュース・デスクの一人イアン・エドモンドソンが、NI社の内部調査の結果、停職措置となった。まもなくして、官邸報道局長クールソンが「疑惑報道が続く中、通常の業務に支障が出ている」ことを理由に、辞職した。
 
 電話盗聴事件が国民的に大きな話題に発展してゆくのは7月上旬である。現在まで続く、第3幕の始まりとなる。
 
 きっかけは、2002年に失踪・殺害されたミリー・ダウラーちゃん(失踪当時13歳)事件だ。今年6月末、ある男性に殺人罪で有罪の判決が判決が下った。
 
 7月4日、「ガーディアン」は、NOW紙の記者らがミリーちゃんの携帯電話の伝言メッセージを盗み聞きしていたと報道した。伝言の容量が一杯になり、新しい伝言が入らなくなるのを危惧した記者らは、録音されていたメッセージを随時、消していた。ミリーちゃんの家族や警察は、メッセージが消されていたので、ミリーちゃんが生きているものと思い、望みをかけていた。これが捜査の行方に影響していたとすれば、刑事犯罪にもなり得る。
 
 殺害された少女の携帯電話にまで盗聴行為を行っていたと知った国民は衝撃を受けた。捜査を妨害していた可能性が出て、政治家も警察も改めて盗聴事件に向き合わざるを得なくなった。

 「ガーディアン」は、その後も、潜在的な犠牲者となった市民の例を続々と報道しだした。特に大きな注目を集めたのは、NOW紙や同紙に雇われた私立探偵が英南部ソーハムで殺害された、小学生の女子2人の家族の携帯電話や、アフガンやイラクに派遣された英兵の携帯電話や電子メールに不正アクセスしていた疑念であった。米国の9・11同時テロ(2001年)や英国の7・7ロンドン・テロ(2005年)の犠牲者の携帯電話にもNOW紙が盗聴行為を行っていた可能性が出てきた。
 
 大きな衝撃と怒りが国内で広がり、NOW紙への広告を取りやめる企業が相次いだ。ニューズ社の株価も下がり、汚名がついたNOW紙を同社は廃刊することを決断した。ミリーちゃんの携帯電話盗聴報道が7月4日。その3日後、NI社のCEOレベッカ・ブルックスは、NOW紙編集部を訪れ、10日付で同紙が廃刊となるというニュースを直接伝えた。この発表があった7日以降、NOW紙スタッフが最終号に向けて作業を行ったのは8日、9日の2日のみ。電光石火の急展開であった。(つづく)
by polimediauk | 2011-10-25 22:29 | 新聞業界
 右横に写真もつけていますが、洋泉社から出たムック本「サイバー犯罪とデジタル鑑識の最前線!」に、2本、記事を書いています(エストニアとパイレートベイの話)。

 最近のSNSでのプライバシーとサイバー犯罪、情報流出、クラウドコンピューティング、スマートフォーンのセキュリティーなど、初心者の方から、幅広い読者の方にとって、丁度良いような本です。

 日本のニュースで、インターネットバンキングの詐欺の話とか、いろいろ出てきましたね。英国でもサイバー犯罪の話は大きなトピックです。

 少し前に、夜テレビを見ていたら、ある番組で、フェイスブックの利用をお勧めしていました。世界でxx億人が利用しており、実名を使うので、電話帳のように使える、個人情報をどこまで誰に出すかは自分が決められる、といった説明がありました。だから安心して使える、というメッセージを感じました。もしかしたら、後でセキュリティーの話が出ていた可能性もありますが、「個人情報をどこまで誰に出すかは使い手が決められる」といっても、フェイスブックの運営者側には全ての情報が入るので、少し危機感を持ちながら使うか、もし本当に心配するなら使わないほうがよいかもなあと思って、見ていましたー。

 この本は、基本的なことが入っているので、なかなかよい感じがします。とりあえず、どこか書店で手にされましたら、立ち読みしてくださると幸いです。

 
by polimediauk | 2011-10-22 22:59 | ネット業界
 しばらくブログの更新が滞っていましたが、少し前から、日本に一時帰国中です。

 東京近辺におりますが、東北(盛岡、秋田、青森、仙台)にも出かける機会がありました。家族の用事などでバタバタし、あっという間に日が過ぎております。

 私の田舎は十和田湖(秋田・青森にまたがる)に近いのですが、久しぶりに見た湖水の静けさと美しさにしばし、呆然としました。学校の遠足などで何度も行ったことがあるのですが、年を取って、戻ってきて、改めてこれほど美しい自然があったことを驚きの思いで学びました。車に乗ると、発荷峠めがけて、坂道を下ってゆくようなことになります。ぐるり、ぐるりと山を降りていって、最後の下り坂で、突然、湖水が下に見えてきます。土地の人も、「何度見ても、ぐっとくる」そうで、私もそうでした。

 今回はまる2年ぶりの帰国で、前もそうでしたが、やはり、浦島太郎状態です。日本のテレビや人の働き振り、電車の動き方、いろいろな価値観に触れて、「??」と思いながらも、自分がいかにいろいろなことを知らないかを思い知るばかり。たとえ生まれ育った国であっても、言葉は十分理解できても、日本はある意味では自分にとっては外国になってしまったのかなあと思ったり。

 今回の帰国の大きな目的の1つは、秋田にある父のお骨を東京に持って帰ることでした。秋田の家には、父が残したたくさんの本やスクラップブック、雑誌、レコードなどが、ほこりにまみれて残っていました。私の父は高校の国語の教師でしたが、趣味で戯曲を書いていたので、いろいろなものが置いてあります。ほこりを払い、雑巾で拭き、じゅうたんに残る虫の死骸を掃除機で吸い、日差しで本が傷まないよう、毛布や布で本やレコードをおおってから、東京に帰ってきました。何とかお金を貯めて、本を収容するケースを買って、じっくり分類したり、読んでみたい・・・新たな夢ができました。

 
by polimediauk | 2011-10-22 22:45 | 日本関連