小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk
プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る

<   2012年 12月 ( 5 )   > この月の画像一覧

c0016826_5584378.jpg

(写真は、クリスマス・クラッカー)

 中世(5世紀―15世紀)の英国では、クリスマス・シーズンといえばご馳走を食べ、陽気に騒ぐ時期であった。1年の中でも寒く暗い日々が続く冬のハイライトであった。

 BBCの宗教特集のサイトによれば、当時は特定の宗教の祭事ではなかったようだが、人々の生活に絶大な影響力を持っていたキリスト教の教会がキリスト教の祭事としての意味合いをつけていった。例えば、収穫を祝う歌をキリスト教の聖歌としたり、ヒイラギはキリストが十字架にかけられる前に王冠として使われたものとして定着させたという。

 エリザベス1世の時代(在位1558年―1603年)、新約聖書を信仰の中心にするべきと考えた清教徒たちは、厳格な道徳観に基づいた生活を提唱。次第にクリスマスを祝う行事を問題視するようになり、1644年、イングランド地方ではさまざまな祝事が事実上禁止された。

 クリスマスを祝う行為が国民的行事として大きく花開くのがビクトリア朝(1837年ー1901年)だ。

 ブームに一役買ったのが、チャールズ・ディケンズの小説「クリスマス・キャロル」(1843年)。これをヒントに、裕福な「中流階級」(資産家、産業資本家、商人層など)は家族が集う、特別な時期としてクリスマスを盛大に祝うようになった。

 しかし、最も影響力があったのはビクトリア女王と王室だったといわれている。

 クリスマス・ツリーの伝統はドイツからやってきた。ビクトリア女王の夫で、ドイツ生まれのアルバート公が英国に導入したのが1834年。この時のツリーはノルウェーの女王が贈呈したもので、ロンドンのトラファルガー広場に飾られていた。

 1848年、新聞「イラストレーテッド・ロンドン・ニュース」が、さまざまな飾りがついたクリスマス・ツリーを囲む王室の姿を描いたスケッチを掲載した。まもなく、英国の多くの家庭が、ろうそくやお菓子、フルーツ、手製の飾りや小さなプレゼントがついたツリーを室内に置くようになった。

 1843年に起業家ヘンリー・コールが友人・知人に送ったことで始まったのが、クリスマス・カードを送る習慣だ。クリスマス・カードの制作は高額で、子供たちは自作のカードを作るようになった。カラー印刷の技術が発展したことでカードの価格が下がり、低額の郵便切手も新たに発行されると、クリスマス・カードの送受がブームとなった。1880年だけでも1150万枚が発行された。

 これをクリスマスの商業化の第一歩と見る人もいる。

 製菓業を営むトム・スミスは、視察先のパリで、砂糖をまぶしたアーモンドがねじった紙に包まれて販売されていることを目撃し、「クリスマス・クラッカー」の販売を思いついた。

 筒状にした紙を何度かねじった形をしているのがクリスマス・クラッカー。スミスは中にお菓子を入れた。数人と一緒にクラッカーの筒を互いに持ち、引っ張り合うと、「パーン」という音がして紙が破ける。出てくるのはお菓子である。

 次第に中身はお菓子からおもちゃ、ジョークが書かれた紙などに変わってゆく。1843年から販売されたクリスマス・クラッカーは現在の英国のクリスマスには欠かせないアイテムだ。

 例えば、現在では、クリスマス・クラッカーはクリスマス・ディナーの食卓に置いてあり、隣に座っている人などと一緒に引っ張るようになっている。中にはおもちゃやジョークの紙と一緒に、紙でできた王冠型の帽子が入っており、これをかぶってディナーを食するようになっている。

 家の内外を飾るのもビクトリア朝時代から盛んになったという。

 クリスマス・プレゼントも必須になった。フルーツ、ナッツ、お菓子など、当初はツリーに飾っていたが、中身が大きく重くなるにつれて、ツリーの下に置かれるようになった。

 クリスマス・ディナーのメインとなるロースト・ターキー(七面鳥)やクリスマス・キャロルを歌うことなどもビクトリア朝時代に盛んになった。

―クリスマス・プディング

 最後に、クリスマス時に食べる、甘いものについて書いておきたい。

 七面鳥のローストがメインとしてあって、締めとして、「クリスマス・プディング」があるのが定番だ。

 このクリスマス・プディングは、簡潔に言えば、ドライフルーツ、ナッツ、香辛料、ラム酒、ミンスミトートと呼ばれる牛脂などが入った、ダークな色のケーキだ。

 フルーツケーキの場合は焼いて出来上がるが、クリスマス・プディングは蒸して作る。家庭で作る場合もあるが、できあいのものをスーパーなどで買う人が圧倒的だ。

 何をかけて食べるのかは、作った人や家庭によって随分と変わるが、クリーム・ソース、カスタード・ソース、ブランデー・バター、ラム・バター、ブランデー・クリームなど。濃厚で、とても甘いデザートになる。

 日本でイメージする、クリスマス・ケーキ、つまり、中身がスポンジ・ケーキで、これに生クリームやイチゴなどが乗っているものは、クリスマス時のケーキとしてはみかけない。

 英国で「クリスマス・ケーキ」と名がつくものは、ダークな色のフルーツケーキをマジパンなどで包み、これに白いアイシングを重くかぶせたものだ。

 ほかには、木の形をしたケーキ「ビュッシュ・ド・ノエル」(もともと、フランス)、スコットランド地方のフルーツケーキでアーモンドが上に乗っている「ダンディー・ケーキ」、ドイツの菓子パン風ケーキ「シュトレン」、イタリアの菓子パン「パネットローネ」も人気が高い。

―家族と一緒に

 ビクトリア朝時代からの伝統で、今でも根強く残るのが、クリスマスは家族が中心に回ること。ディナーの準備、テーブルを囲んでの食事、家の内外の飾り付けをしたり、ゲームを楽しんだり、プレゼントを交換し合うーこれがすべて、家族がキーワードとなる。

 英国の現在のクリスマスはキリスト教徒のみばかりではなく、さまざまな宗教の信者あるいは無宗教の人が参加する、季節のイベントだ。

 多くの人が聖歌のコンサートに出かけ、クリスマスツリーを飾り、オフィスではクリスマスパーティーを楽しむ。

 24日の夜には、教会で行われる「真夜中のミサ」に出かけたり、クリスマス当日には、家族、親戚、友人らとクリスマス・ディナー(昼または午後の早い時間にとる場合が多い)を楽しみ、プレゼントを交換し合う。

 ディナーの後は散歩に出かけたり、ゲームを楽しんだりする。エリザベス女王の「クリスマス・メッセージ」の放送を視聴することも欠かせない。

 その後はゆったりとテレビを見たり、さらに食べ、飲み、話すうちに、夜が更けてゆくー。

参考サイト:
ビクトリア朝のクリスマス
http://www.bbc.co.uk/victorianchristmas/history.shtmlChristmas
by polimediauk | 2012-12-25 05:47 | 英国事情
 故・人気司会者ジミー・サビルの制犯罪疑惑に端を発し、BBCが揺らいだ。疑惑に関連した調査報道番組での誤報をきっかけに、経営陣トップが辞任。誤報以前には、疑惑を調査していた番組が放送中止となった一件があった。後者の件について、調査報告書が今週、発表される予定だ。

 疑惑報道の発端からこれまでについて、週刊「新聞協会報」12月4日発行号に寄稿した。その後の新情報も含めて、以下に掲載したい。(記事中では敬称略。)

***

英BBC危機の実態と教訓
―疑惑と誤報で崩れる名声  取材の初歩、おろそかに


 英国放送協会(BBC)が、批判の矢面に立つ日々が続いている。きっかけは10月上旬に広く知られるところになった、BBCの元人気司会者ジミー・サビル(故人)による、未成年者に対する性的暴行疑惑だ。

 昨年末、この疑惑について調査を行っていたBBCのテレビ番組「ニューズナイト」が、急きょ、予定番組の放映を中止したことが分かった。BBCが同氏の素行を隠ぺいした疑いが出た。

 追い討ちをかけるように、同番組は今年11月初旬、別の性的暴行疑惑について誤報を出した。BBCへの国民の信頼は下落し、経営陣トップが引責辞任する事態となった。

 事態の拡大を時系列で追いながら、BBCの危機の実態と教訓を考える。

―解明への初動遅れる

 昨年末から年頭にかけて、BBCは慈善活動家としても知られたサビル氏の功績をたたえる複数の番組を放映した。同時期、調査報道で知られる「ニューズナイト」はサビル氏が児童を性的に虐待していたとする番組の制作を進めていた。放送予定になっていたものの、11月末、直前で中止となった。

 今年年頭から、「ニューズナイト」の番組放映中止が一部新聞で報道されていたが、10月上旬、民放最大手ITVがサビルの虐待疑惑を番組化して放映したことで、BBCでの同様の番組の放映中止が大きくクローズアップされた。

 10月2日、「ニューズナイト」の編集長ピーター・リッポンはBBCのウェブサイトに設置されたブログで、BBCによる「事態隠ぺいはない」、「編集上の理由で」放映を中止したと説明した。

 翌3日、ITVは犠牲者らのインタビューが入った、サビルの番組を放送。「自分も虐待にあった」と警察に連絡をする人が出てきて、本格的な捜査が始まった。

 12日、ジョージ・エントウイッスルBBC会長(当時)は記者会見を開き、「ニューズナイト」の番組放映中止問題とサビルの性犯罪疑惑解明のための調査を実施すると発表した。ITVの番組放映から9日後で、活発な24時間報道体制が機能する英国では、遅い決断と見なされた。

―「知らない」で通し、辞任へ

 23日、会長は、下院の文化・メディア・スポーツ委員会の公聴会に召喚され、サビル問題について質疑を受けた。同氏は今年9月中旬、会長職に就任したばかり。前職はBBCビジョン(テレビ部門)の統括者で、問題となったサビルの追悼番組を含むテレビ番組すべてを監督下に置いていた。

公聴会で、エントウイッスルは昨年時点でサビルの性犯罪疑惑に関する番組についてほとんど知らなかったと述べた。疑惑発生後にも番組の関係者と直接話をしていなかった。その理由はBBCの組織が「階層的になっている」ため、つまり、現場に会長の自分が直接連絡をする仕組みになっていないためだという。「知らない」「分からない」の連発の答弁であった。

 前日22日にはBBCの調査報道番組「パノラマ」(テレビ)が、サビル報道の放送中止の経緯を関係者への取材を通して明らかにした。浮かび上がったのは経営陣による現場掌握の不完全さや「ニューズナイト」の編集責任者と制作スタッフとの意思疎通の悪さであった。

 11月上旬、ニューズナイトの制作スタッフは、新たな性的暴行疑惑に関する番組を準備。共同制作者となった非営利組織「調査報道局」の編集長イアン・オバートンは、2日午前中、「大物政治家で児童性愛主義者についての番組が今晩、『ニューズナイト』で放映される」とツイートした。午後1時過ぎ、元「ニューズナイト」の記者で現在は民放チャンネル4のマイケル・クリック記者が「『大物政治家』は主張を否定。BBCを名誉毀損で訴えるという」とツイートし、事実誤認の可能性を指摘した。これと前後して、「政治家」とは保守党政治家アリステア・マカルパインである旨のツイッターが多数流れた。

 2日夜の番組で「ニューズナイト」は、1980年代、ウェールズ地方で発生した性的暴行疑惑を犠牲者のインタビュー付きで放映し、加害者の一人が当時の大物政治家である疑いを報じた。番組は加害者の名前を明らかにしなかったが、放送後に「政治家」とは保守党政治家アリステア・マカルパインンであることがツイッターで多数流れた。

 8日、ガーディアン紙が電子版で(紙版では9日付1面)、BBCが嫌疑をかけた人物はマカルパインではないとする記事を出した。翌9日、犠牲者自身が暴行を行った人物はマカルパインではないことを認め、同氏に謝罪。「ニューズナイト」も番組内で謝罪した。「ニューズナイト」は、マカルパインの写真を犠牲者に見せて本人確認をすることを怠り、同氏に返答をする機会を事前に与えていなかったことが後に分かった。

 10日、BBCラジオの朝の時事番組「トゥデー」に出演した会長は、司会者ジョン・ハンフリーズからサビルや誤報事件について取材を受けた。辞任の可能性については、「十分にやることはやった」と答えた会長だったが、誤報を出した番組を当日は見ておらず、事実誤認を指摘した一連のツイートの存在を認識していなかった。ガーディアンの1面に掲載された関連記事も読んでいなかった。「すべての番組や言論を確認できない」と説明したものの、「番組を見ず、ツイートに気づかず、新聞も読まない」と司会者に評された後、メディア組織のトップとしての地位は大きく揺らいだ。その夜、会長は辞任を発表した。

 12日、「ニューズナイト」による誤報の経緯を調査していたBBCスコットランドの責任者は、「番組内容に誰が最終的に責任を持つかがあいまになっていた」ことを混迷の原因として挙げた。

 BBCはマカルパインに対し、誤報による名誉毀損で賠償金18万5000ポンド(約240万円)を払う羽目になった。マカルパインは、疑惑を報じたITVの番組とも賠償金12万5000ポンドを受け取ることで合意した(11月8日、ITVの朝の情報番組内で、生出演中だったキャメロン首相に、司会者の一人が「ネット上で児童性愛主義者として名前が挙がった人のリスト」を手渡し、コメントを求めた。リストには保守党政治家などの名前が並んでいた)。

 さらに、ツイッターで名前を特定した人のうち、影響力が強いと思われる人も訴えるという。12月中旬、マカルパインは、下院議長夫人で、活発なツイッター利用者であるセーラ・バーコウに対し、名誉毀損の損害賠償として5万ポンドの支払いを求めていることを明らかにした。

 一連の事態の教訓は少なくとも2つある。「メディア組織の幹部は瞬時の判断を求められる」、そして「取材の初歩をどんな状況下でもおろそかにするべきではない」。後者は番組および組織の名声を一瞬にして崩壊させるばかりか、トップの首を飛ばす可能性があるのだ。

***

 12月12日、ロンドン警視庁が発表したところによると、ジミー・サビルによる性犯罪疑惑事件で、同氏に性的虐待を受けたと申告した人の数は450人に上った。また、同氏の関係者による虐待の申告までを含めると、589人になるという。

 申告者のうち、82%が女性で、80%が児童・未成年者だった。

 サビル氏関連の性犯罪捜査は10週間前に開始され、30人の捜査員が関与。これまでの捜査費用は200万ポンドに上っている。

 性犯罪の疑惑件数はこれまでで199件となり、31件がレイプ疑惑だ。

 サビル氏事件に関連して、性犯罪疑惑で逮捕された著名人は、PRコンサルタントのマックス・クリフォード、コメディアンのフレディー・スター、DJのデイブ・リー・トラビス、タレントのゲーリー・グリッターなどがいる。
by polimediauk | 2012-12-16 21:38 | 放送業界
c0016826_22222078.jpg
 
(一日の平均的な「画面」利用 コムストア調べ)

 「テレビはつまらない」-そんな会話を日本語のネット空間で時々、目にする。

 しかし、近年、テレビというメディアが見直されてきたような気がする。決して古色蒼然とした存在ではない。

 夏のロンドン五輪がその一例だ。ウェブサイトと24の追加チャンネルを駆使して、英BBCは、数千時間にものぼる全競技を生放送して見せた。テレビ画面を追いながら、白熱する競技の進展やその結果についてソーシャルメディアで情報を交換し合うのは、スリリングな体験だった。

 デジタル・メディアの1つとなったテレビの将来を探る会議が、今月上旬、ロンドンで開催された(「デジタル・テレビ・サミット2012」、主催はメディアの調査会社インフォーマ・テレコムズ・メディア社)。英国や欧州各国の状況を、紹介したい。

―ソーシャルテレビに注目

 テレビとソーシャルメディアを組み合わせる「ソーシャルテレビ」が、今、注目を浴びている。

 テレビ番組を視聴しながら、友人や知人同士でフェイスブックやツイッターなどで情報交換をする、番組側の呼びかけに応じて情報を送る、指定されたハッシュタグを使いながら意見を述べるなど、双方向性がある視聴が楽しめる。

 こうした視聴方法は、テレビを「第1の画面」とすると、いわば「第2の画面=セカンド・スクリーン」、つまりは携帯機器(携帯電話、タブレットなど)が広く普及したことで注目されだした。

 第1の画面と第2の画面をどうつなげば、どんな視聴が可能になるのか、あるいはどんなビジネスチャンスがあるのか?試行錯誤が続いている。

ーツイッターを見てから、番組を視聴

 会議のスピーカーの一人、ツイッター英国のダン・ビデル氏によれば、英国の利用者は1000万人を超える。つぶやきの40%は、夜のゴールデンタイムに発信されているという。ツイッターでの評判を見てから、どの番組を見るかを決めるという人が76%もいる。

 具体例としては、有名人数人がジャングルなどの過酷な状況で生活する様子をドキュメンタリーとして描く「私は有名人、ここから出してくれ」という番組(英国の民放ITV放送のシリーズ物、最新は11月11日から12月1日まで放送)の場合、生放送中に番組のハッシュタグを作り、利用者にツイートしてもらったところ、番組終了までに44万を超えるツイートがあった。

 数人を一つの部屋に入れ、カメラがその様子を監視する「ビッグブラザー」米国版でも、誰が部屋から退出するべきかをツイートしてもらったところ、6万5000以上のツイートが出た。

 「ツイートと番組の相乗効果で、ツイッターおよび番組の認知度が上がった」(ビデル氏)。これを基にして、例えば、ツイッター社では広告のリーチを広げることができたという。

 英放送局が新たな広告収入源として力を入れているのが、番組のオンデマンド・サービス(再視聴サービス。デジタルテレビあるいはネット上で利用可)だ。

 このサービスを、いち早く2006年から提供しているのが、英民放チャンネル4だ。英国のテレビ局大手は公共放送BBC,民放ITV(最大手)、民放チャンネルファイブなどがあり、チャンネル4は「異なる視点」をキャッチフレーズに番組を制作している。

 チャンネル4のオンデマンドサービスは「4oD」(フォー・オー・ディー)という名称がつけられている。登録しなくても利用できるものの、チャンネル4は利用者に登録を勧めている。目下、600万人が登録中だ。登録者のなかで44%がオンラインでの視聴だった(チャンネル4担当者セーラ・ミルトン氏)。

 サービスについてのメールを週に一度発信しており、このメール内にあるアドレスをクリックすることで番組をネット視聴した人の数は月に30万人に上る。今年1年で、ネット視聴用にストリーム放送した番組コンテンツは5億を超えたという。

 特筆すべきは、4oDの若者層へのリーチ率だ。ミルトン氏によれば、このサービスを通じて、チャンネル4が英国内の16-24歳の30%に届くようになっているというのである。

 チャンネル4は動画の中に入れる広告の出し方(例えば視聴者のプロフィールによって出す広告を変えるなど)について、実験中だ。

ー英国のネット利用は19%が携帯機器から

 世界のインターネットの利用を見ると、米コムストアの「グローバル・インターネット・オーディエンス」(15歳以上の利用者、昨年10月から今年10月。以下もコムストア資料)では、ダントツがアジア太平洋地域の6億2900万人(前年比6%増)、これに続くのが欧州の4億500万人(8%増)、北米2億1400万人(1%増)、中東・アフリカ1億3500万人(8%増)、ラテンアメリカ1億3000万人(3%増)。

 欧州のネット利用者の中で、携帯機器(タブレット、携帯電話など)を使ってネットを閲覧している人の割合が最も高いのが英国(18・7%)。これにドイツ(7・5%)、イタリア(7・1%)、フランス(5・7%)、スペイン(4・7%)が続く。

 日本同様、英国でもテレビはほとんどの人が視聴する媒体だ。スマートフォン、PCなど、何らかの形でインターネットを利用する人の大部分がソーシャルメディアを利用している。

 ソーシャルメディアのリーチが95%にまで上昇するのが、15歳から24歳の若者層。スマートフォンを使ってのソーシャルメディア利用では51%対49%の割合で女性がやや多い。これがタブレットになると、54%対46%で男性がより多くなる。

 英国のタブレット利用者の年齢別内訳は55歳以上が22.8%、これに25-34歳(21・4%)、35-44歳(18.7%)、45-54歳(15・4%)、18-24歳(14・3%)、13-17歳(7・4%)。高齢者の比率が意外と高い。

 1日の携帯機器の利用状況を見ると、朝はスマートフォンの利用率が高く、昼は仕事で使っている人が多いためか、PCの利用率が高まる。午後8時以降は、自宅でタブレットを使う人が増えてくる。

 機器が何であれ、「画面」を見ている時間はどんどん増えている。コムストアの調べでは、テレビの視聴が1日に4時間強、これにタブレットやスマートフォン、PCを入れると、8時間30分にも到達するという。

 画面を制するものがビジネス上の勝者となるのだろう。

 コムストアのグレッグ・デイリー氏は、「デジタル人口の85%がソーシャルネットワークを使っている」、「オンライン上の行動の5分に1分はソーシャル関連」と述べる。

 「ながら視聴で携帯機器を操る人々も取り込むことができる、ソーシャルテレビには、大きな可能性があると思う」。
by polimediauk | 2012-12-12 22:22 | 放送業界
c0016826_22404411.jpg

豪メディアで心境を語る2人のDJ (豪ABCのウェブサイトより)


 英キャサリン妃がつわりで入院していたロンドンの病院に、オーストラリア・シドニーのラジオ局のDJらがいたずら電話をかけ、その数日後に、電話を取り次いだ看護師が亡くなった事件の続報である。

 なぜ看護師が亡くなったのかは、正式に発表されているわけではないが、警察がその死に「不審な点は見られなかった」ということなので、他殺ではないということだろう。もし事故死でもないとしたら、「自殺」という説が今のところ有力だ。電話取次ぎを苦にしたのかどうかは、分からない。

 4日、ラジオ局「2DAY FM」の2人のDJメル・グレイグとマイケル・クリスチャンは、それぞれ英エリザベス女王、チャールズ皇太子であるふりをして、キング・エドワード7世病院に電話をかけ、キャサリン妃の容態を聞きだした。看護師は最初に電話を取り、これを同妃の病棟にいる別の看護師に転送した。自分自身がキャサリン妃の容態をDJらに語ったのではなく、単に電話を取り次いだだけだ。しかし、容態を外に漏らす過程に、はからずも加担してしまった格好となった。

 7日、最初に電話を取った看護師ジャシンサ・サルダナさん(46歳)が、ロンドンの病院近くで亡くなった。


 9日と10日のオーストラリアでの報道や英BBCの報道によると、「2DAY FM」の親会社サザン・クロス・オーステレオ(SCA)は、いたずら電話の会話を放送した番組「HOT 30」を中止することにしたという。

 これ以前に、電話をかけた2人はラジオ局への出演を無期限で停止されている。

 SCA側は、いたずら電話の放送は「法律違反ではなかった」としながらも、「放送方針、過程を抜本的に見直す」(SCA社の声明文)としている。

 放送前に、ラジオ局の制作チームがキング・エドワード7世病院に「数回」連絡を取ったそうだが、病院側の返答はなかったという。

―涙ながらに語るDJたち

 2人のDJは10日、オーストラリアの複数の放送メディアに登場し、「ひどいショックを受けた」、「悲しくて仕方ない」などと述べた。

http://www.abc.net.au/news/2012-12-10/tearful-apology-from-devastated-presenters/4419798

 豪テレビ「チャンネル・ナイン」に出演したクリスチャンは、「電話をかけようと思ったとき、30秒ほどで電話を切られてしまうだろうなと思っていた。本当に無邪気なものだった」。

 グレイグは、「これまでにも何百人もの人たちが(同じことを)やっているんだろうなと考えたわ。(王室のメンバーのふりをして電話をかけるなんて)とても馬鹿げたアイデアだし、私たちの発音はめちゃくちゃだから、ケイト(キャサリン妃)と話せるところまでいくなんて、ちっとも思っていなかった。ましてや、病院の人と話せるなんて。すぐに電話を切られるだろうと思っていた」。

 2人が看護師の死を聞いたのは、8日の朝だった。

 「これまでの人生で最悪の電話だった」(グレイグ)

 「ひどいショックだった、胸が張り裂けそうだった」、亡くなった看護師の「家族や友人たちに心からお悔やみを述べたい」(クリスチャン)。

 また、「いたずら電話は毎日のように、どこの国のラジオ局でも行われている」、「誰もこんなことが起きるとは予測できなかったと思う」(クリスチャン)。

 豪チャンネル・セブンの「トゥデー・トゥナイト」に出演したグレイグは、「電話がかかってきたときのことをよく覚えている」、「最初に頭に浮かんだのは、『子供を持つ母親なのだろうか?』だった」。(実際に、亡くなったサルダナさんには2人の子供がいる。)

 グレイグはまた、同番組の中で、今回のいたずら電話の企画を思いついたのは自分だったと認めた。

 収録の後、放送までの間にラジオ局で異論を挟んだ人はいなかったという。「議論はなく、いつも通りの作業だった」。制作チームがいて、DJたちは「録音をした後は、ほかの担当者に渡すだけ」(グレイグ、チャンネル・ナインの番組で)。

 2人は「2DAY FM」への出演の道を閉ざされ、担当していた「HOT30」も中止になった。

 グレイグは、自分もクリスチャンも「自分のキャリアの行方については、今考えていない。もっと大きくて、逼迫した問題がある。それは看護師の家族がこのつらいときを乗り切られるようにすることだ」と述べた。

 オーストラリアの公共放送ABCのコラムニスト、ジョナサン・ホームズは、2人のDJは今回の悲劇について責められるべきではないと書いた。責められるべきは、親会社の規制体制だ。

http://www.abc.net.au/news/2012-12-10/holmes-an-unforeseeable-but-not-unaccountable-tragedy/4418942

 ホームズは、最初にこの放送のことを知ったとき、「害のない、かなり笑える」内容だ、と思ったそうだ。英メディアはプライバシーの侵害として書いているが、すでにキャサリン妃がつわりで苦しんでいることは正式発表されていたし、それ以上の情報はなかった。

 どこが「笑える」ジョークだったのか?

 ホームズによれば、まずその「悪意のなさ」だ。「あれほど誰にも嘘と分かる電話を病院側がまじめに受け取ったこと」。電話を取った看護師は、「女王が電話したと信じたがためにびっくりしてしまい、通常の判断能力がどこかに行ってしまった」、DJたちが言及した、女王がかわいがる犬のジョークも「畏怖のベールを突き抜けることができなかった」。

 ホームズは、亡くなった看護師が電話取次ぎを苦にして自殺したかどうかはまだ証明されていないとした上で、実際にキャサリン妃の容態を電話で伝えたのは、この看護師ではなく、別の看護師であったと指摘する。「驚くような治安侵害」とする英メディアの報道は行き過ぎではないか、と。

 しかし、これを機にいたずら電話の対応に関する法律、規制を見直すのは一理ある、という。

 英放送監督機関オフコムの規則によれば、「いたずら電話は」、「娯楽を与えるという目的に欠かせないものであり、重大なプライバシー侵害にならないもの」であれば許されるが(若干、言葉を省略)、「関係者の同意が必要」としている。今回は、キャサリン妃側の同意を取っていないケースだ。

 オーストラリアの商業ラジオ規定によれば、「識別できる人物」の声を録音し、その人物の許可なく放送する場合、「放送前に、当人が許可を与える」時にのみ放送できる、とあるそうだ。

 ホームズは「2DAY FM」が放送前に病院側に数回電話をかけたというが、「もし電話していたら、放送は不可になっていただろう」という。病院側が放送を了承するはずがないからだ。

 SCAが「どんな法律も破っていない」と主張するのは、ホームズが推測するところでは、看護師たちが「識別できる人物」にはならないという考えたからだ。番組内では看護師たちの名前は出なかった。そして、シドニーでの放送においては、識別できる人物とは見なされなかった。

 しかし、英国メディアで報道後、英国の病院関係者にとっては、人物が特定されてしまった。

 プライバシー保護については、先のオーストラリアの放送規定によれば、放送業者は「公益がある」という場合にのみ、個人のプライバシーを侵害するような情報を放送できる、とある。

 今回のケースはこれに相当するというには難しいだろう、とホームズは言う。というのも、この規制は報道番組を対象にしており、純粋な娯楽番組「HOT 30」は、実は対象外となるからだ。

 しかし、シドニーを州都とするニューサウス・ウェールズ州では、電話を含め、私的な空間での会話を録音し、これを無断で放送することは違法だ(監視装置法)。オーストラリアからすると外国である英国での電話の会話を録音し、オーストラリアで放送するのは合法なのかどうか、ホームズは疑問を投げかける。

 ホームズは、今回の放送は、オーストラリアの放送業者の規定を無視した可能性があると指摘している。

―「自殺の理由は複雑」

 一方、困難を抱えて自殺を考えている人の相談を受ける、英慈善団体「サマリタンズ」のキャサリン・ジョンストンによると、「自殺は複雑なものだ」(BBCウェブサイト)。

 「自殺を引き起こす要因は明白のように見えるかもしれないが、自殺はたった一つの要素や出来事では決して発生しない。複数の原因がある」。

 「人は、もう自分では処理できない状態にまで陥ることがある」、「一人でいる場合は状況が悪化する。心にひっかかっていることについて、誰かに話すことができないからだ」という。

 サマリタンズは24時間、年中無休で電話や電子メールで相談を受け付けている。

ーーーー

そのほかの関連動画 (日本で全部見れない可能性もあります。ご了承ください。)

'Shattered' DJs discuss prank call tragedy
http://www.abc.net.au/news/2012-12-10/under-fire-djs-discuss-prank-call-tragedy/4419488

Duchess hoax: Australian presenters 'gutted and heartbroken'
http://www.bbc.co.uk/news/uk-20663570
by polimediauk | 2012-12-10 22:43 | 放送業界
c0016826_19234130.jpg
 
(2人のDJの写真、シドニー・モーニング・ヘラルド紙のウェブサイトから)

 キャサリン妃がつわりで入院していたロンドンの病院の女性看護師が、7日、亡くなった。これが今、大きなニュースになっている。

 というのも、この女性(ジャシンサ・サルダナさん、46歳)は、4日、オーストラリアのラジオ局「2Day FM」のDJらによるいたずら電話を最初に受けた人物。キャサリン妃のいる病棟に取り次いだことで、同妃の容態にかかわる情報が外に漏れてしまったのだ。

 7日朝、通報を受けて警官がロンドンのウェイマス・ストリートの住所に行ったところ、サルダナさんが意識不明状態となっており、その場で息を引き取った。詳しい死因などは公表されていないが、ロンドン警視庁は「不審な点は認められなかった」としており、一部では、いたずら電話を取り次いだことを苦にした自殺説も出ている。

 8日朝時点で、サルダナさんがなぜ亡くなったのかは、不明だ。ただ、いたずら電話の一件で相当の恥ずかしさ、ショック、罪悪感などに悩まされていたと見るのは、自然だろう。ただし、繰り返すが、これが直接の引き金だったかどうかは、まだ分からない。病院側はサルダナさんに懲罰的な処分を下しておらず、英王室側も病院に苦情を出していないという。

 死因が不明でも、ラジオ局の親会社「サザン・クロス・オーステレオ」(SCA)側は動き出さざるを得ない。情報がネット上で急速に展開してゆくからだ。

 サルダナさんの死が報道されると、SCAのフェイスブックのページにはラジオ局やDJ2人への批判が殺到。キャサリン妃が住む英国のツイッター界ではDJ2人を追放するべきという声が相次いだ。2人のツイッターアカウントは、現在までに閉鎖されている。

 SCAは声明文を発表した。サルダナさんの訃報に「大きな悲しみ」を表明し、「ショック状態にある」DJ2人が、今後、「追って通知があるまでは」、局の番組には登場しないことを明らかにした。

―DJたちを守るべきという人も

 まず、事件の概要を振り返ると、いたずら電話事件が発生したのは4日午前5時半ごろ。エリザベス女王を装った「2Day FM」のDJメル・グレイグが「私の孫娘のケイトと話せるかしら」とエドワード7世病院に電話をかけた。この病院は王室が頻繁に利用している。

 同じ番組のDJマイケル・クリスチャンがチャールズ皇太子に成りすまし、グレイグとともに、病院側からキャサリン妃の容態を聞くことに成功した。

 当初、「2Day FM」側は、一連の電話の会話をウェブサイトで紹介するなど、「冗談がうまくいった」というスタンスであった。

 一部始終はこのアドレスに記録が残っている。 http://www.cbc.ca/news/world/story/2012/12/07/wrd-london-nurse-death-prank-transcript.html

 しかし、サルダナさんの死、それも自殺である可能性が報じられると、事情が変わってきた。

 オーストラリアの公共放送ABCのウェブサイトなどによると、「2Day FM」の親会社SCAは、8日の時点で、ラジオ局への広告をすべて停止する決定を行っている。停止措置は、少なくとも10日まで続く。マーケティング評論家アダム・フェレルによると、スポンサーからの非難を未然にかわすための措置だという。既に、一部のスポンサー、例えばオーストラリア最大の通信会社テルストラやスーパーのコールズが広告停止を宣言している。

 SCAの広報によると、同社のフェイスブックから、「2Day FM」の表示も消す、という。「『2Day FM』によるいたずら電話の事件が悲劇的な結果に終わったことで、オーストラリア国民が怒り、衝撃を受けていることを理解している」(広報)。

 8日、記者会見を開いたSCAの最高経営責任者(CEO)リース・ホレランは、「予想できなかった悲劇で、非常に悲しい思いをしている」と述べた。「今朝、DJ2人と話したが、2人とも大きな衝撃を受けている」、「2人は機械ではない、人間だ。私たち全員が(看護師の死に)影響を受けている」。

 記者団に放送は法律を違反していたのではないかと聞かれ、ホレランCEOは「いかなる法律も破っていないと自信を持っている」と答えた。「ラジオの1手法として、いたずら電話は何十年も前から行われているー世界中で使われている」。

 オーストラリアのメディア通信監督局(ACMA)は声明文を発表し、今回のいたずら電話の一件を調査すると述べた。

 ABCによると、「2Day FM」は過去に、ACMAから放送内容について警告を受けたことがあるという。その一例は、14歳の少女にレイプされた体験を番組内で告白させ、地元コミュニティに怒りを引き起こした件だ。

 いたずら電話を行ったDJ2人に対する批判が、看護師サルダナさんの死後、殺到しているが、2人を弁護するオーストラリアの知識人も少なくない。

 うつ病や精神障害に苦しむ人を支援する豪非営利団体「ビヨンド・ブルー」の代表ジェフ・ケネット氏は、オーストラリア国民に対し、2人のDJを支えるよう呼びかける。「2人は人に危害を与えようと思ったわけではない」、「現在、2人には大きなプレッシャーがかかっている」。

 看護師の死は「大きな悲劇だが、大げさに考えすぎないことだ」。

 「いつかは2人は表に出てくる。そのとき、メディアは2人に余裕を与えるべきだ」、「このひどい2-3週間をしのぐためのプロとしての支援を与えるようにするべきだ」。

 豪テレビ局チャンネル9の司会者トレーシー・グリムショーは、DJ2人がソーシャルメディア上で怒りの対象となったことに触れ、「若いDJをいじめることで、看護師の悲劇的な死をさらに悪化させないで欲しい」。

 英国のメディア報道を非難する声もある。

 トラウマの分析を専門とする心理学者ポール・スティーブンソンは、単なるいたずらが英国のメディアによって扇情化されたと指摘する。「どうやってこの看護師が亡くなったのかまだ分からない」、「個人的悩みを抱えていたのかもしれない」。

 ある意味では、DJたちが「犠牲者」なのだ、という。「こんな結果を呼び起こすとは思っていなかったのに、責任を負わされている」。

 シドニー・モーニング・ヘラルド紙のジル・スターク記者は「取材相手が自殺するとき」と題する記事を書いている(8日付)。

 スタークの懸念はDJたちの健康状態だ。自分自身が、何年か前に、取材をした相手が自殺した経験があるのだ。その人物は人を癒す力があるふりをしながら、何人もの女性を性的餌食としていた。これを暴露した記事を書いたのがスターク記者。

 自分が記事を書いたから、その男性が自殺したとは必ずしも言えないが、もし記事が出ていなかったら、「まだ生きていたのではないか」と思うそうだ。「罪悪感はいまだに消えていない」。

 ジャーナリストやラジオのDJが誰かを取材するとき、相手にどんな背景があるのかをすべて知ることはできない。取材対象を守ることは取材をお願いする側の義務としても、「時として、どれほど善意でも、入念な事前チェックを行っていても、悲劇的な結末となることはある」と結んでいる。
by polimediauk | 2012-12-08 19:23 | 放送業界