小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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 先月始まったばかりの日本版に続き、米ハフィントン・ポストが今週、新たな海外版をスタートさせた。今度は、チュニジア、モロッコ、アルジェリアなどの北西アフリカ諸国=「マグレブ」地域=に向けた、フランス語版だ。

 ハフィントン・ポストン創業者アリアーナ・ハフィントン氏のブログによると、 マグレブ向けのサイトのオープンは、この地域が「社会的、政治的、経済的に大きな変革を遂げている時」にあたる。「世界の視線はマグレブとこの地域に住む人々に注がれている」。

 新サイトはマグレブの民主主義の成長に一定の役割を果たすことも目指しているようだ。

 サイトはフランス語だが、内容を英語、スペイン語、イタリア語、日本語、ドイツ語に翻訳することで、マグレブの声が世界に伝わってゆくようにしたいという。

 6人から8人の編集スタッフをチュニジア、モロッコ、アルジェリアにそれぞれ配置する。

 ハフィントン・ポストは本国の米国以外に、英国、カナダ、フランス、スペイン、イタリア、日本でサービスを開始している。今年秋にはドイツでもスタートする予定だ。
by polimediauk | 2013-06-26 18:58 | ネット業界
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            (「BIG DATA」の表紙)

 「Big Data」(ビッグデータ)と題する本を、少し前に、書いた人に話を聞くために読んだ。5月末、講談社が「ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える」として出版した本だ。

 「ビッグデータ」(巨大な量のデータ)という言葉を意識して聞いたのは、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚さんの有料メルマガで、「ビッグデータでプラットフォーム時代を生き延びる」という項目について書かれた文章(2012年1月、2月)を読んだ時だ。

 例えば、以下のような文章があった。

ビッグデータというのは、文字通り「巨大なデータ」。インターネットが普及するようになってから20年近くが経ち、ネット企業には膨大な量のデータが蓄積されるようになってきています。検索エンジンのデータベースや、ショッピングサイトの顧客の購買履歴。ソーシャルメディアで人々が発信した情報、ウェブメールなどでの人と人のやりとり。動画や記事。

  これらの膨大なデータが積み上がったまま放置されているのはもったいない、なにか有効活用できないだろうか?というのが、ビッグデータという考え方になって表れています。つまりビッグデータという概念は、単なる巨大なデータを指すだけでなく、それにどんな価値を見いだし、どのように有効活用するのかという方策も含まれているのです。(引用終)


  その後、さまざまなところで、「ビッグデータで儲ける」趣旨のビジネス記事を読み、「これだけでは、なんだか味気ないなあ」と思っていた。

  その一方で、もし私たちのネット上の足跡が大量の情報を形作るのであれば、その情報一つ一つがどこか一箇所にまとめられ、私たちが思いもよらなかったやり方で使われることには、懸念を持った。

  そこで、今年3月、英エコノミスト誌のデーターエディター、ケネス・クキエさんが、英オックスフォード大学オックスフォード・インターネット研究所のビクター・マイヤー・ショーンベルガー教授との共著で「ビッグデータ」という本を書いたことを知り、早速、一体ビッグデータをどう思うのかをクキエさんに直接聞いてみようと思った。

―読んでいるときに思ったこと

  読みはじめたときの私は、疑心暗鬼でいっぱいだった。ビッグデータの本を書くぐらいだから、著者たちはビッグデータの収集や活用に肯定的な意見を持っている人に違いない。

 逆に、私はビッグデータについて心配なことばかり。プライバシーはどうなるのか?勝手に(?)データを使われたら、たまらない。それに、ビッグデータの効用を信じるあまりに、「データがこう言うから」ということで、人間が判断をする余地がなくなってしまうのではないかー?

 第一、データをそれほど信じきるのなら、最終的には、データの分析で何でも済ませてしまい、最後は、人間をロボットに置き換えようなんてことにならないのだろうか?効率性を重視するなら、ロボットが良いという結論にならざるを得ないではないか?

 しかし、最後まで読むと、ビッグデータとは何で、何ができて、どんな危険性があるのかをリストアップした、非常に分かりやすい本であることが分かった。

 ページをめくると、まず、ビッグデータで何ができるかが何十ページにもわたり、列挙される。これがなかなか、「すごい」あるいは、「恐ろしい」。 生活がさらに便利になっている具体例が出てくる。

―何故ではなく「何が」

  ビッグデータの特質が語られる中で、驚くのは、データは「何故」を示さないという指摘だった。人間が物事を考えるときに「何故か」を普通に考えてしまうのとは対照的だ。つまり、人間はついつい、因果関係を考えてしまう。それが癖になっているのだ。

  ところが、データは因果関係を考えない。データが扱うのは、「何が」という部分のみだ、と本は説明する。

 例えば、ある道路を「毎時間、xxx台の車が走る」ということのみをデータは示す。「何故、xxx台の車が通るのか」を示さない。因果関係を見つけるのは、データを扱う人間なのだ。

 恐ろしいなと思ったのは、データによって、未来図が描けてしまうこと。例えば、犯罪の発生を予測することができる。便利?防犯に役立つ?確かに、そうだ。しかし、行過ぎることはないのだろうか?いまだ起きていない犯罪のために、誰かを拘束してしまうことはないのだろうか?(映画好きの方は、米映画「マイノリティー・リポート」を思い出していただきたい。)
 
 この本の醍醐味は、ビッグデータの危険性とマイナスの影響を防ぐための対処法を記してある点だ。この部分は本の最後のほうに出てくる。しかも、それほど長くはない。でも、とても大事な部分だし、ここを読むと読まないでは、ビッグデータとの付き合い方、考え方がずいぶんと変わってくるだろうと思う。

 著者が、「ビッグデータはこんなこともできる!」とほめあげたくて書いたのか、それともビッグデータの危険性の警告をしたくて書いたのか、気になった。

 そこで、クキエさんに会った時に、聞いてみた。すると、「僕はビッグデータの活用を人に勧めているわけではないよ」、「あばたもえくぼでほめるつもりはない」という答えが返ってきた。

 「自分はメッセンジャーだと思っている」、「世の中で何が起きているのかを読者に伝えるのが僕のジャーナリストとしての役目だ」―。

 ビッグデータを利用するときに気をつけること、そして何がなされるべきなのかーそれは本の最後のほうに書いてあるので、じっくり見ていただけたら幸いである。

 人間はデータに操られる必要はない。データを使うのはあくまでも人間ー私はこの本を読んで、そんなメッセージを受け取った。

***

 クキエさんのインタビュー記事も良かったら、ご参考に:

(5)データエディターとはどんな仕事?(上)

(6)データエディターとはどんな仕事?(下)
by polimediauk | 2013-06-16 01:37 | ネット業界
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(内部告発者スノードン氏の記事をトップにした、英ガーディアン紙の6月10日号)

 29歳の米国人エドワード・スノーデン氏が米政府による個人情報の収集の恐ろしさについて内部告発した事件を、英ガーディアンと米ワシントン・ポスト紙が先週から報じている。

 ここ数日で、日本語でも多数報じられるようになったが、「自分には関係のない話」、「どうせ米国(=他国)のこと」、「全体像がつかみにくい」と思われる方は、結構多いのではないだろうか。

 私自身は結構危機感を感じている。各国政府や企業がネット上で私たちの情報を監視・収集していることは知識として知ってはいたが、具体的な監視プロジェクトの名前や実情が暴露されてみると、いささかショックだった。

 この問題は、この文章を今読んでいるあなたや書いている私に直接関係のある話に思える。

 例えば、米国企業のネットサービスを使っていない日本人のネット利用者はかなり少ないだろう(実在しない?)と思う。また、米政府が外国の情報を監視・収集するとき、「日本は関係ない」とはいえないだろうと思う。現に、英国の通信傍受機関GCHQが、米政府が監視プログラムで取得した情報を使っているという疑念も出て、英政府の関与が問題となった。

 情報が錯綜しているので、現時点(11日)で、基本的な流れを整理してみるとー。

―ガーディアンがスクープ報道

 6月5日、ガーディアンは、米国家安全保障局(NSA)が大手通信会社ベライゾンなどの利用者数百万人から通話記録を収集していた、と報じた。

 手順としては、外国情報監視法(FISA)に基づいて設置された秘密裁判所が、通信企業に対し、電話記録などの提出を命じていた。

 米政府は後に、ベライゾンに対し数百万人分の電話の通信記録(通話時間、位置、電話番号)を申請していたと認めた。

 6日にはガーディアンと米ワシントン・ポスト紙が、NSAがグーグルやフェイスブック、そのほかのネット企業のシステムに直接アクセスし、検索履歴、電子メールの内容、チャット情報などを入手しており、このような情報取得手法は「プリズム計画」と名づけられていた、と報じた。いずれの企業も、「直接のアクセスはさせていない」、「プリズムは聞いたことがない」と表明した。

 8日、米国家情報長官がウェブサイトでこのプリズムについての情報を掲載した。これによると、プリズムはコンピューター内のプログラムで、先のFISA法に基づいて、裁判所から認可を受けた場合に、外国の情報を電子通信サービス提供者から収集する仕組みだという。米国の電子通信サービス提供者から無差別に情報を収集はしないという。

 しかし、米国外に住む人からすれば、こうした形の情報収集はその国のデータ保護法などに違反する可能性がある。また、何らかの拍子で米国人が対象になってしまう可能性もあるだろう。

 米政府の説明によれば、プリズムの「ターゲット」は米国外であり、テロを防ぐなどの目的がある。

 この「ターゲット」の詳細や米政府と電子通信サービス提供者間の取り決めは詳しく分かっていない。

 プリズムの仕組みはブッシュ大統領時代の2008年に設定され、オバマ政権になっても変更されないままとなっている。

 オバマ大統領は「米国民同士の会話に耳を傾けてはいない」として、米国民に安心感を与えようとした。「100%の安全が保障され、かつ、100%プライバシーが守られて、まったく不都合なことが起きないーということは、ありえない」。

 ウィリアム・ヘイグ英外務大臣は「法を遵守する市民は、心配することない」と述べている。

―データはどこに保存されているか?

 BBCのテクノロジー記者ゾー・クラインマン氏の記事によれば、ネットを利用したときに生み出されるデータ(電子メールやソーシャルメディアの足跡)は、利用者が住む国に保管されているわけではない。例えば、フェースブックの場合、利用者のデータが米国に送られ、保管されることに同意する設定になっているという。

 クラウド・コンピューティングを利用した場合、こうしたサービスの提供者の多くが米国企業であることから、情報の保管が米国になることが多いとアムステルダム大のリサーチャー、アクセル・アーンバック氏は述べる。

―誰が情報を管理したら、私たちは安心できるのか?

 ガーディアンやワシントン・ポストの報道を見ていると、「敵=米政府」と思えるかもしれない。

 しかし、データの監視・収集・保存は常に発生していることだ。ある国の政府が、こうした情報を、例えばテロを防ぐなどの理由で収集することには、一定の正当性があろうかと思う。

 ただ、「国民の多くが承知しない方法で」やった点について、今後、オバマ政権は十分に説明責任を果たす必要があるだろうし、外国の政府(例えば欧州連合)が米政権に説明を求めているというのも、理解できる。

 しかし、今回の事件で思い出さなければならない重要な点は、私たちがすでに知っていることだけれども、大きな企業が私たちのネットの足跡を追跡し、収集し、保管しているという事実だ。

 例えば、グーグルをどう考えるか?

 英エコノミスト誌が、グーグルは一国の政府よりもずっとたくさんの情報を知っている、という記事を掲載している。

 政府が市民の情報を把握することの是非を議論するのであれば、一体グーグルはどうなるのか、と問いかける。

 例えばグーグルは、私たちの電子メールの内容を知っている。ユーチューブで何を見たかも知っている。ウェブサイトで自分のネット上の行動や特徴に呼応する広告が出ていることを、みなさんはご経験があるだろうと思う。

 ある人がテロ行為に結びつくような行動をネット上で見せたとき、グーグルが政府に通報するのは悪いことなのだろうか、良いことなのだろうか?

 グーグルには見られても良いが、第3者に情報が渡っては困ると考えた場合、プライバシー設定などで「第3者に情報を渡さない」という選択肢を選ぶという(例えばだが)こともできるかもしれないが、グーグルに限らず、私たちは、新しいサービスを使った後で、「第3者に情報を渡してもいいですか」という質問に、思わず「はい」と答えてはいないだろうか?そうでないと、今後もそのサービスが使えなくなるかもしれないと考えて、あるいは、「面倒くさいから」。

 エコノミストは「スパイ活動を行っているのは、政府ではなくて、グーグルではないか」と書く。

 まったくそうなのだ。グーグルメールや検索などが無料で使えるから、「いいや」で済ませていいのだろうかー?

 といって、今これを読んでいる方を怖がらせるつもりはないし、自分で対処法があるわけでもない。

 インターネットを一切使わない、仮名を使い続ける、複数のコンピューターを使う、暗号機能をかけるーなどなどが対処法になるのかどうか、分からない。もっと違う方法があるのかもしれないし、またはもっと抜本的なことを変えるべきなのかもしれない。

 BBCの先の記事には、マイクロソフトなどのネット企業がどのような情報を収集しているかのリストが掲載されている。

 そういえば、先日、バンコクにいたときに、いつもどおりグーグルメールにアクセスしようとしたら、「いつもと違う場所にいる」ということで、新たにログインしなければならなくなり、いろいろとてこずった(パスワードを打ち間違え、混乱)。

 これは不正侵入を防ぐための手段であり、その点からはありがたいが、とにかく「あなたのことを良く知っていますよ」という声が聞こえた気がした。

***

アップデート情報が入るサイトのご参考
Through a PRISM darkly: Tracking the ongoing NSA surveillance story
by polimediauk | 2013-06-11 23:23 | ネット業界