小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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  22日、拙著「フィナンシャル・タイムズの実力」が書店に出ることになりました。

  日本経済新聞の傘下に入った、英国の経済金融紙FT。いったいどんな新聞なのかを現在とこれまで、そして日英ジャーナリズムの違いなどについて書いてみました。店頭でページをめくってくださると幸いです。

 これを気に、東京都内と大阪でいくつか、イベントが開催されます。

 2月4日:「東京デジタル・キュレーションMeetup」 朝日新聞のデジタル・ウオッチャー、平さんと対談形式のイベントを開催します。ご関心がある方は、上記サイトからどうぞお申し込みください。デジタルメディア関連の方が集まる予定です。

 2月10日:都内の某所で日英のジャーナリズムについて、対談を開催予定です。詳細はまたお知らせします。

 2月27日:フォトジャーナリスト、小原さんと対談します。大阪心斎橋のスタンダードブックスさんにて。書店のウェブサイトからお申し込みください。

 みなさまとどこかでお会いできることを楽しみにしております。

 小林恭子


 
by polimediauk | 2016-01-22 12:45 | 英国事情
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(リービさん――左――と多和田さんの対談の様子)

 ネットには載っていないが、興味深い情報は紙の世界にもたくさんある。

 しばらく、「外国で生きる」ことをテーマに、いくつか拾ってみたい。

 月刊誌「世界」1月号に、米国人ながら日本語で書く作家リービ英雄さんと、ドイツに住み、日本語でもドイツ語でも書く多和田葉子さんの対談が載っていた。

 すでに作家として独自の地位を築いたリービさんだが、私が最も衝撃を受けたのは小説「星条旗の聞こえない部屋」だった。ある米国人の青年が60年代の新宿で自分の居場所を見つけてゆく話で、自叙伝風でもあった。

 なぜ衝撃を受けたのかというと、日本に住む白人系の外国人が日本社会を、日本人をどう見ているか、あるいは、日本人がどう見えているのかをリアルに描いていたことにはっとしたからだ。日本・日本人に対する白人・外国人の見方をこれほど明確に書いた小説はほかにはない「かも」しれない。小説の主人公からすると、日本人は徹底的に外国人である。読んでいてはっとし、ある意味では怖いような感じもあった。共感もあった。

 というのも、私は当時外国人の友人が何人かいて、時々、「外国人」というプリズムを通して日本社会が見えるように思えたことがあった。それまでに知らなかった、全く違う光景がそこには広がっていた。この光景は、普通は日本語では書けない。日本人であれば、その光景は(普通は)見えないからだ。

 リービさんは、日本人からすれば見えない日本を見事に日本語で表現したのだと思う。

 「異なる視点を持つ一人として、一定の違和感を持って、自分の周囲を見る」ことを、私はリービさんの本を読んで、再体験した。

 後でリービさんにインタビューする機会があったのだけれども、それをうまくリービさんには伝えられなかった。

 多和田さんにもインタビューする機会があったが、今では何を聞いたのか忘れてしまい、ただ、非常に聡明な方だったことを覚えている。

 「世界」の記事が興味深いと思ったのは、外国で生きることとは何か、異文化とはどう付き合うべきかについて、ヒントがあったからだ。

 「外国で生活をしている人」=広い意味の「移民」としてとらえた場合、リービさんは対談記事の中で、こんなことを述べている。

 「僕は移民であることは、じつはその国の人間になり切れないところに価値があるのではないかと考えます。どんなに生活がうまくいっていても、観点のずれが生じる」。

 リービさんは、「多和田さんがドイツにいらっしゃるのもその例でしょう」と続ける。

 「ドイツにいなければ、書けなかったかもしれない。もっと簡単に言えば、文学、特に世界文学は、いわゆる内部と外部の両方があるとすれば、外部にいながら内部のことを書く、その弁証法的な緊張感の中でつくりだされているものだと思います」。

 「弁証法的な緊張感」というとなんだか難しそうに聞こえるが、「中にはいるのだが、外の人であること、外の人の視線で中の人が住む社会を見ること」=これこそが、外国に住む人=移民の一つのだいご味ではないかと思う。

 その後、対談は難民・移民の話になって、多和田さんがこう続ける。

 「たとえばわたしはドイツで幸せに生活していますが、文化に対する違和感は消えません。違和感を幸せととらえる感覚の持ち主だから幸せなのかも知れませんが。それは日本人だからドイツ人に違和感を持つわけではなく、人間が共同体に対して持つ基本的違和感です。それが異文化だとはっきり見え、生まれた時から慣れてしまった文化だと深く考えなくても同化してるみたいに生きていけるという違いがあるだけではないでしょうか」。

 「そのことを意識的にテーマ化し続ける作家のわたしが、そうではない移民の若者の不満などに耳を傾けた時にいろいろ勉強になることがあるんです」。

 多和田さんは、「日本人だからドイツ人に違和感を持つわけではなく、人間が共同体に対して持つ基本的違和感」(がある)と述べた。

 「私自身はドイツの大学でも勉強する機会に恵まれ、ドイツ語でものを書いたりして、非常に同化しているみたいに見えますが、良い悪いではなくて、やっぱり違和感は持っています。だから非西洋からの移民の気持ちが理解できることがあるんです」。

 これ以下も、興味深い会話が続く。リービさんや多和田さんの文学を知っている方や外国に住むことの意味、異文化などに関心がある方は、「世界」1月号を手に取ってみていただきたい。
by polimediauk | 2016-01-08 17:35 | 書籍
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 皆様、あけましておめでとうございます。

 今年もどうぞよろしくお願いいたしします。

 今月末に、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)という本を出します。

 昨年夏、日経がフィナンシャル・タイムズ(FT)を買収するという報道が出ました。買収処理の完了日は11月末。FTは日経傘下に入りました。

 日経については日本では知っている人が多いですが、一体、FTとはどんな新聞なのか?

 実は、本家英国でも実際に中身を知っている人は少ないのです。その理由は?実際にはどんなジャーナリズムを実践しているのか?どんな歴史があって、なぜ「デジタル化に成功した新聞」と言われているのか、そして日経とはどこが違うのか?

 そんな点をまとめてみた本です。

 もしよろしかったら、書店に出た時に見ていただけると、幸いです。

 また、FT関連、メディア関連の情報のアップデートのために、フェイスブックでページを作りました。年末に社内で発表された新人事の様子を最初のエントリーにしてあります。もし本の書評が出たら、これも掲載していきたいと思っています。

 2月27日は、大阪心斎橋にある「スタンダードブックストア」さんで、フォトジャーナリストの小原一真さんとのトークが開催されます。小原さんは、太平洋戦争下の空襲で犠牲を負った子どもたちの戦後を追った、貴重な写真集「Silent Histories」を刊行されました。こちらの本は主として海外での販売向けで、日本では限られた書店しか置いていないそうですので、大阪近辺にお住まいの方は、ぜひこの機会をご利用ください。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 ***

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by polimediauk | 2016-01-07 17:10 | 新聞業界