小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk
プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る

<   2018年 09月 ( 4 )   > この月の画像一覧

 日本人が、宇宙旅行の初めての個人客になる!この驚きのニュースが発表されたのは、つい最近のことである。

 日本のファッション通販大手「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営する「スタートトゥデイ」社の前澤友作社長が、電気自動車大手の米テスラ創業者イーロン・マスク氏が手掛ける宇宙ベンチャー「スペースX」と月旅行の契約を結んだという。

 スペースXの月旅行にZOZOの前沢氏 2023年計画 日経新聞

 

 筆者は、この画期的なニュースを当初BBCの報道で知ったが、17日にスペースXの本社(米カリフォルニア州ホーソーン)で行われたマスク氏と前澤氏の記者会見の様子を、広瀬隆雄氏のブログ記事で興味深く読んだ。

 ZOZO前澤友作Space X本社における英語のスピーチはなぜ100点満点?

 なぜ「興味深い」と思ったのかというと、広瀬氏が前澤社長のスピーチをほめていたからだ。

 ブログの中に紹介されている動画から、26分過ぎに出てくる社長のスピーチを筆者も視聴してみた。そして、感心してしまった。日本にいるビジネスピープル(男女)が、英語圏でスピーチをする際の良い例と思ったからだ。

 どのように優れているのかについては広瀬氏が書いているけれども、筆者が見たところでは

 *主旨がはっきりしている

 *わかりやすい

 *聴衆に語り掛けている

 *最後に動画や文字によるまとめを見せて、メッセージが記憶に残るようにしている

 点が特に良いように思った。

 広瀬氏は米国在住が長く、投資業務を仕事としている。ありとあらゆるアクセントの英語を聞きながら仕事をしてきた経験がある広瀬氏のお墨付きであるから、筆者には大変参考になった。

日本語のアクセント、どう評価する?

 その一方で、別の興味深い評価があった。

 前澤氏が世界初の月旅行へ。記者発表を見ながら考えた、アメリカ人とのビジネスで知っておいた方がいいこと

 ヤフー個人ニュースでの「同志」となる安部かすみ氏が、前澤社長のスピーチ、特にアクセントについて少々厳しい見方を示しているようである。

 以下は、一部の抜粋である。 

 会見について、2つ残念だった点がある。1つは前澤氏の英語のアクセントだ。あれだけの長い記者発表を英語で行ったことは、とてもすばらしい。だが、宇宙という壮大なトピックについての世界に向けた記者会見において、アメリカ人や英語ネイティブにとって「なじみのない英語、聞き取りにくい英語」だった。

 日本では、外国人がカタコトの日本語でスピーチをしようものなら、日本語習得がんばってと親近感がわくだろう。しかしアメリカでは事情が異なる。英語は話せて当たり前とされているため、一般的になじみのないカタコト英語をアメリカ人は「Bad English」として揶揄する傾向がある。本人にはもちろん直接言わないしメディアもそれについてわざわざ書かないが、「Bad Englishを話す人」と印象づけられるのはもったいない。

 ここで断っておくが、筆者は広瀬氏も安部氏も同様に尊敬している。それぞれ在米の方で、お二人の視点・分析には敬意を抱いている。

 今回、お二人は同じスピーチについて、やや異なる感想を持ったようだ。広瀬氏の方はプレゼンテーションの仕方も含めてスピーチを好意的に評価し、安部氏は負の面に注目して、「こうしたほうがいい」とアドバイスしている。

 広瀬氏、安部氏の両方の評価を紹介したが、筆者が改めてこのエントリーを書こうと思ったのには、理由がある。

 例えば、今現在、日本で多くのビジネスピープル(以前は「ビジネスマン」で良かったが、今は男女どちらの場合もあるのでこの言葉を使っている)を含む様々な方が英語を勉強しているに違いない。この中で「海外、特に英語圏で英語でスピーチをするとき、日本語アクセントはどう受け止められるのか?」と知りたく思ったり、なかなか日本語アクセントが抜けない人は「自分はまだまだ、ダメなんだ」と思ったりする人がいるかもしれない(相当数かもしれない)。

 そこで、筆者は英語の専門家ではないけれども、ロンドンに住んで仕事や生活圏で英語を使い、時々は英語でスピーチをしたこともある経験から、何かヒントになるようなことを記すことができれば、と思ったのである。

ロンドン在住者から見て、気づいたこと

 気づいたことを、幾つか挙げてみたい。

 *「英語圏」と言っても、どの国・都市かそして誰が聞き手かによって、アクセントの評価が異なる可能性がある(例えば、アメリカでは出身国のアクセントがある英語を話せば、「Bad Englishを話す人」としてくくられてしまう傾向が強いのだろうか?)。

 *人種、出身国、貧富や教育の差、そのほかの社会的背景などが異なる人々に囲まれて生活するロンドンにいる場合、人種や出身国に由来するアクセントは、話の中身の判断という面からはほとんど問題視されない。この点は、声を大にして言っておきたい。  

 *上の項目に関連するが、ロンドンの場合、誰しもがそれぞれのアクセントで話すのが普通。理論ではなく、現実がそうなっている

 *「標準英語」と言われる発音(例えば「Received Pronunciation」=容認発音)で話す人は、英国の人口全体のほんの数パーセントと言われている。

 ただし、英国では発音・アクセントに人々が鈍感なわけではない。「口を開けば、その人の社会的背景が分かる」と言われ、どんな言葉を使って何をどんな風に話すかについては、かなり敏感だ。例えば、少し前になるが、知性に欠けている英語を話す人として、ある著名サッカー選手がよく笑いものにされたものだ。

 大勢の人の前で話す、スピーチの場合はどうか?

 ここでは、前澤社長のように、「公式の場で」「一定の知識人や報道陣の前で話す」ことを前提にしてみよう。

 発音・アクセントに絞ってみると、筆者のこれまでの経験(聴衆の一人だったり、話す側だったり)で重要なことは:

 分かりやすいこと。意味が通じること。

 これが鉄則だ。特定のアクセントがある・なしは関係ない。誰にでもそれぞれのアクセントがあるからだ。繰り返しになるが、英国では標準英語を話す人は数%しかいないのだ。しかも、この標準アクセントも英国南部のエリート層が話す英語を基本にしたものであり、そのルーツは必ずしも「中立」ではない。

 最後に、筆者が前澤社長の日本語アクセントをどう評価するかを書いておきたい。あくまで私見であるが、実体験に根ざした見方として参考にしていただければと思う。

 筆者が思ったのは「確かに日本語アクセントがある英語だった」。しかし、「わかりやすい英語だった」。聞いている人に意味が通じただろうと思う。少なくとも英国・ロンドン的には「わかりやすかったか、意味が通じたか、メッセージが伝わったか」が評価点である。


 筆者の結論としては、「日本語アクセントがあったが、わかりやすい、綺麗な英語だった」。


 筆者が英国に移住したのは、16年前だ。現地の英語が分からなくて、右往左往したものだ。英語で公にスピーチをしなければならないとき、筆者は練習するために音声を録音する。あとで再生してみると、自分の英語のくせ・日本語アクセントが分かる。典型的な日本人の一人として、例えばthやfの発音、それにlとrの違いがうまくできない。一生懸命矯正しようと思うのだが、なかなかできない。


 なぜ矯正しようと思うのかというと、いわゆる「日本語アクセント」を消したいからというのではなくて、「thやfの発音、それにlとrの違いがうまくできない」ことによって、意味が通じないことがあるからだ――録音を聞くと、いくつかの言葉の発音が不明瞭なため、自分で話したことなのに、「は?」となるのである。これでは、いけない(!!)。

 スピーチをしていて、ある単語や文章の意味が通じなかったら、100%アウトなのである。

 そこで、今英語を勉強中の皆さんに伝えたかったのは、「日本語アクセントを消す」というよりも、英語の特徴となる幾つかの発音をしっかりできるようにして、相手にとって「わかりやすいかどうか」を目標にしていただきたいと思う。

 どれほど頑張っても「ネイティブのように」話すのは容易ではないし、英国に住んでいると、この「ネイティブ」とは誰なのか?と考え出すと、問題が限りなくぼやけてくる。つまり、どの社会層に属する誰のアクセントを目指すべきなのか?BBCのアナウンサーのような「標準英語」を話したら、気取った人と思われなくもない・・・。自分のこれまでの経験がにじみ出る英語しかないし、みんなそうやって話している。

 筆者もまだまだ勉強中だ。

 自分が主張したいことを相手に伝え、より楽しい議論につながるよう、頑張っていきましょう!

 


by polimediauk | 2018-09-27 16:46 | 日本関連

 2008年9月15日、米国で第4位の規模となる(当時、以下同)大手証券会社・投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が経営破綻した。多くの人にとって、同社の破綻とそれに続く世界的な株安、信用不安、不景気は世界金融危機を象徴する事件として記憶されている。いわゆる、「リーマン・ショック」である。

 筆者は、破綻が報道されたとき日本に一時帰国していた。テレビ画面でリーマン・ブラザーズのニューヨーク本社の建物から段ボール箱を抱えた社員が三々五々、出てきた光景を思い出す。

 同じ日、米証券第3位のメリル・リンチは第2位のバンク・オブ・アメリカに救済買収されることに同意し、翌日には財政難に陥った米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が米政府から巨額の公的融資を受けることになった。米金融界が急速に瓦解して行く様を目撃しているようだった。

 リーマン・ブラザーズの破綻劇は英国の政界・金融界と奇妙に結びついている。

 というのも、リーマン社の売却先候補として最後まで交渉を行っていたのが、英バークレイズ銀行だったからだ。何とか破綻させまいと、米英の財務関係者、バークレイズ、リーマンとの交渉が連日続いた。交渉は難航したが、最後にリーマンの息の根を止めたのはダーリング英財務相だった。

 バークレイズとしては、買収にはリスクが伴うため、英政府から何らかの保証を得たいところだった。しかし、ダーリングはこれに同意せず、ポールソン米財務長官にもそう伝えた。「英国の納税者が米国の銀行を救済するようであってはいけない」と思ったからだ(同氏の著書『バック・フロム・ザ・ブリンク』)。

 バークレイズは買収を断念。買い手を失ったリーマン・ブラザーズは破綻申請を行った。

 しかし、バークレイズはすべてをあきらめたわけではなかった。投資銀行部門を充実させることが長年の願いであったため、リーマンの北米投資銀行業務を買収したのである。

 ロンドンから見た、世界的な金融危機の様子を振り返ってみたい。

フランスの銀行の不振が赤信号を灯らせた

 危機発生の直接のきっかけは、信用力が低い個人や低所得者層を対象にした米国の住宅ローン「サブプライム・ローン」の焦げ付きだ。米国の金融機関ばかりか、英国の金融機関もこの種の貸し付けをどんどん提供していた。

 このローンは通常の融資よりも審査基準が甘く、かつ金利が高く設定された。当初は低金利でも途中から大幅に上がる仕組みとなっていた。住宅を担保とし、住宅価格の上昇を背景に2000年以降、急速にこの種のローンの販売が増えた。

 しかし、04年、米連邦準備制度理事会(FRB)が住宅バブルを抑えるために金融引き締め策を導入すると、06年頃から住宅価格が下落に向かった。これがサブプライム・ローンの焦げ付きを多発させるようになった。

 

 2007年8月9日、リーマン・ショックのほぼ1年前、ダーリング財務相はあるニュースを目にした。フランスのBNPパリバ銀行が傘下のファンド凍結を発表したという。ファンドが投資していたサブプライム関連の証券化商品の価値が急落したことが原因だ。

 住宅ローン専門の金融会社ノーザン・ロックのアダム・アップルビーCEOは、パリバ銀行の窮地に衝撃を受けた。「この日、世界が変わった」と発言している。ノーザン・ロックは積極的にサブプライム・ローンを提供しており、資金難に陥っていたのである。

 欧州中央銀行(ECB)は短期金融市場に948億ユーロを供給し、米FRBも240億ドルの資金供給を行うことになった。FRBは4日後、公定歩合の0・5%緊急引き下げを決定している。

ノーザン・ロックの取り付け騒ぎ

 8月14日、ノーザン・ロックの代表が英中央銀行(イングランド銀行、BOE)に対し、資金繰りが厳しくなったことを相談する。国内の銀行業務を監督する金融サービス庁(FSA)がノーザン・ロックの会計を検査し始めた。ノーザン・ロックは十数行の銀行に融資ビジネスの引継ぎを打診したが、応じる銀行が見つけられず、BOEに対し、緊急融資を依頼した。

 9月13日、金融市場の安定化のため、BOEが市中銀行に44億ポンドの資金を提供する。ノーザン・ロックが資金繰りに悩んでいるという噂が出て、同行の株価は過去4年で最低値に下落した。

 この日、BBCはBOEがノーザン・ロックに財政支援をするとスクープ報道した。これが引き金となって、翌日、140万人の顧客がノーザン・ロックから預金の引き出しに走った。一日で10億ポンドが引き落とされてしまった。19世紀以来、初の取り付け騒ぎである。

 ダーリング財務相がノーザン・ロックの預金全額を政府とBOEが保証すると宣言したのは、取り付け騒ぎから4日後だった。「遅い!」と国民から批判されたものの、銀行前に並ぶ預金者の数が次第に減少し、騒ぎはいったんは収束した。2008年2月、ノーザン・ロックは一時的に国営化された。

リーマン・ショックの後で

 2008年9月のリーマン・ショック以降、英銀行界は政府に助けられながら、何とか息をつないだ。

 10月8日、政府は大手銀行への資本注入を中心とする包括的な銀行救済案を発表した。これによって、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド銀行の83%、ロイズ銀行の43%を国が所有することになった。政府はその後、後者の株を売却し、ロイズ銀行は民営に戻った。ロイヤル銀の方の株は若干売却されたが、ほとんどの株はまだ政府が所有中だ。

 この後、欧州ではアイルランド、ギリシャ、ポルトガルが危機状態となり、欧州当局が救済策を提供する事態も発生した。

もう1つのスキャンダル、LIBOR

 リーマン・ブラザーズをもう少しで買収するところまで行ったバーククレイズ銀行に、ある不祥事が発覚する。

 2005年ごろからくすぶっていた疑惑で、短期金利の国際的指標となる「ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)」の不正操作を行ったという。

 12年6月、バークレイズ銀行は「銀行間貸出金利の操作未遂と不正報告」によって、英米の捜査当局から総額2億9000万ポンドの罰金の支払いを命じられてしまう。

 LIBORは住宅ローンなどの設定基準として使われる金利だが、不正行為は大手銀行への信頼をますます損なう結果となった。

▽金利不正操作で巨額罰金 バークレイズ銀行不祥事の背景とは

 関与していたのはバークレイズだけではなかった。JPモルガン証券、ゴールドマン・サックス、シティグループ・フィナンシャル・マーケッツのトレーダーも不正操作に関与していたが、大手銀行として注目度が高いバークレイズは国民や政治家の怒りを一気に買ってしまった。 

 ボブ・ダイヤモンドCEOは、財務相や中央銀行からプレッシャーをかけられ、辞任せざるを得なくなった。

 経営難や不正行為を発生させたのに巨額の報酬を受け取る銀行経営陣たちを、メディアや国民は「太った猫」と呼ぶようになった。

また起きる?

 今回のような、グローバルに広がった金融危機は再発するのだろうか?

 これまでに何度も金融危機は発生してきたので(もっとも著名なのは、1929年の米国市場の株価暴落による大不況)、いつかはまた起きると考えても良いだろう。

 金融街をテーマにした数冊のノンフィクションで知られる作家フィリップ・オーガー氏(最新作はバークレイズ銀行の歴史を描いた『少し生きた銀行(ザ・バンク・ザット・リブド・ア・リトル』)が筆者に語ったところによれば、「10年前と比べて、金融体制は安全になったと思う」。

 しかし、返済の見込みがない顧客を対象にしたサブプライム・ローンを多くの金融機関が大量に販売していたことが象徴するように、「顧客のケアよりも収益を上げることを重視する銀行のビジネスモデルは変わっていない」と指摘する。「利益を上げれば、巨大なボーナスをもらう仕組みもほとんど変わっていない」。

 オーガー氏の懸念は「10年前に発生した危機についての記憶が、人々から薄れてしまうことだ」という。

 (*オーガー氏との一問一答インタビューをWeb Ronzaに出しております。よかったら、ご覧ください。)

リーマン・ショック10年 英でインタビュー 1 作家・オーガー氏「銀行のビジネスモデルが変わらない限り、危機はまた起きる」

***

参考

「実録 世界金融危機」(日本経済新聞社編、日経ビジネス人文庫)

 ノーザン・ロック事件の教訓

リーマンブラザーズの破綻と英国経済への影響


by polimediauk | 2018-09-19 17:25 | 英国事情

(英国の邦字誌「英国ニュースダイジェスト」に掲載されている、筆者のコラム「英国メディアを読み解く」に補足しました。)

 今年夏、英国でもかなり暑い日が続きました。炎天下を避けてカフェに入り、友人とおしゃべりに興じながら冷たいジュースを飲んでいるうちに「あれ?」と思いました。ストローが「ふにゃり」と曲がっていることに気づいたのです。これまでのようなプラスティック製ではなく、紙製でした。「プラスティックから出るゴミを減らそう」という動きが、ここまできていることをしみじみと実感しました。

 元々、英国は家庭から出るゴミのリサイクル率が低い国ですが、近年は耐久性が高いことで知られるプラスティック(合成樹脂)製品のリサイクルを進める動きが活発になっています。スーパーマーケットでは、以前は無料だったレジ袋が今では有料になっていますが、これは「デーリー・メール」紙によるレジ袋有料化運動が大きな役割を果たしたと言われています。

プラスティック製品と海洋動物

 今、特に注目となっているのが、海に流れたプラスティック製品の海洋動物への影響です。

 ストローが鼻孔に突き刺さり、身動きができなくなった亀の姿を映したYouTubeの動画(2015年)は3100万回以上視聴されましたし、昨年秋にはBBCの自然ドキュメンタリー番組「ブルー・プラネット2」が放送され、この中でもプラスティック製のロープやビニール袋などに捕らわれ、泳げなくなっている海洋生物が映し出されました。

 番組の影響力は絶大で、これを機にBBCは、局内の使い捨てプラスティック製品を2020年までに撤廃すると決めています。

 今年1月には、メイ首相が2042年末までに不要なプラスティック廃棄物をゼロにする「25カ年計画」を発表しました。翌月、今度はエリザベス女王が、バッキンガム宮殿やウィンザー城などで使用していた使い捨てプラスティック製品を、リサイクル可能なものに差し替えると宣言しました。

 そして4月、メイ首相は改めてプラスティック製のストロー、飲み物をかき混ぜるマドラー、プラスティックを芯の原料とする綿棒の使用禁止の意向を明らかにしました。

 英国では、年間85億本ものプラスティック製ストローが捨てられているそうですが、スターバックスを始めとするコーヒー・チェーンが続々と、使い捨てプラスティック製ストローを使わないという方針を自主的に発表するようになりました。

 国内で1年に数十億単位で消費されている紙コップには、飲料の温度維持や、素材強化のためにプラスティックが使われています。これをリサイクルできる技術を持つ工場は英国内には希少のため、ほとんどが使い捨てとなっています。それを何とかしようと、自分のカップを持ってきた人にはディスカウントをするコーヒー・チェーンもあります。

 国連の調べによると、世界50カ国以上が、使い捨てプラスティック製品の撲滅を2022年までに達成する計画を持っているそうです。

 英国のテスコ、セインズベリーズなどのスーパーマーケットは、商品の包装などに使われているすべてのプラスティックを2025年までにリサイクル可能な物質にするよう決めました。

 ただ、プラスティック製ストローの完全廃止は、手に障害のある人にとっては不便という声もあります。

 また、紙製ストローが普及することで、原料となるパルプのために森林伐採が進むとすれば、環境保護の点から見るとどうなるのかという問題もありますね。

 もう一つ気になるのが、プラスティックごみの海外輸出です。

 7月末、プラスティック製包装のリサイクルの現状について、国家統計局が報告書を出しましたが、これによると、昨年時点で再処理されたプラスティック製包装の66%が海外に送られていました。このうちの25%が中国への輸出です。

 ところが昨年7月、中国はプラスティックを含む廃棄物の輸入を停止すると宣言。そこで英国は今年からマレーシア、トルコ、ポーランドなどにプラスティック廃棄物の処理をより多く頼むようになりました。

 英国のゴミを外国で処理してもらう……なんだか、これでいいのかなという気がしますね。

キーワード 包装リサイクル義務(The Packaging Recycling Obligations)

 1997年に政府が定めた、欧州連合(EU)の取り決めに沿った包装物リサイクルの義務(%)のことです。国家統計局の報告書によると、昨年、英国の7002社がこのスキームに参加して、リサイクル率64%を達成しているそうです。同年、国内の包装ゴミは1100万トンに上り、過去15年で海外への包装ゴミの輸出量は約6倍に増加しました。


by polimediauk | 2018-09-12 16:26 | 英国事情


 (新聞通信調査会が発行する「メディア展望」8月号の筆者原稿に補足しました。)

 英オックスフォード大学に設置されているロイター・ジャーナリズム研究所は、毎年、世界各国のデジタルニュースの利用状況を調査し、これを「デジタルニュース・レポート」として発表している。

 最新版(6月発表)は7回目のレポートになる。英世論調査会社YouGovが、37か国・地域の約7万4000人を対象に昨年1月末から2月初めにかけて調査した。

 対象地域はインターネットの普及率が高く、民主化が達成されている国が中心で、欧州の比率が圧倒的に高い。中国、中東及びアフリカ諸国は入っていない。調査の資金は米グーグル、英BBC,英国の通信・放送監督組織「オフコム」、各国の大学などが提供している。

 レポートは、「概要」(セクション1)、「さらなる分析と国際比較」(セクション2)、「国ごとの分析」(セクション3)に分かれている。

 今回、日本の項目の中で朝日新聞の信頼度が産経新聞よりも低くなり、これを指摘した複数の記事(「朝日新聞の信頼度、五大紙の中で最下位 産経新聞を下回った理由とは」木村正人氏、ヤフー個人ニュース、6月20日付、「朝日の『信頼度』が産経以下にーロイター研調査」島田範正氏、ブログ「島田範正のIT徒然」6月19日付など)を目にした。

 「概要」で指摘された特徴を紹介するとともに、日本の項目を少々詳しく見てみたい。

米でフェイスブックが人気下落

 今回の調査は、「様々な種類の情報源に対するオーディエンスの懸念」について深い知識を得ることを主眼とした。「フェイクニュース」の流布、プラットフォーム側(米テック大手)の規模拡大に対する不安感が世界的に広がっているためだ。

 

 特徴のいくつかを紹介すると、

 (1)ニュース源としてソーシャルメディアを利用する割合が米英仏で減少したが、これはフェイスブックへの依存率が下がったことによる。

 (2)代わりに利用率が増えたのがメッセージ・アプリだった。

 (3)ニュースの信頼度は平均44%で安定しているが、ソーシャルメディア上で見たニュースの信頼度は23%に下がる。

 (4)ネット・ニュースがフェイクか真実かを気にする人の比率は54%。ソーシャルメディアの利用率が高く、政治が分断化している国(ブラジル、米国、スペイン)で特に高い。

 (5)フェイクニュースを駆逐する責任はメディア(75%)やプラットフォーム(71%)に求める傾向が高い。

 (6)欧州とアジアではフェイクニュース対策に政府の関与を望む人が多いが、米国はその比率が低い。

 (7)初めて調査対象とした「ニュース・リテラシー」については、リテラシーの高い人はテレビよりも新聞をニュース源として選ぶ傾向がある。

 (8)放送局によるメディアの信頼度は新聞やデジタルのみのサイトよりも高い。

 (9)オンラインニュースを有料購読する人の比率はスカンジナビア諸国で高い。

 (10)米英、スペインでメディア媒体の会員になる制度やそのほかの寄付金制度が浸透してきたが、特定の政治信条に基づく場合が多く、特に若者層にその傾向が強い。

 (11)プライバシー情報に対する懸念から、アドブロックを使う人は27%に到達した。

 (12)テレビは継続して重要なニュース源となっているが、視聴者数は減少している。

 (13)ポッドキャストが人気。

 (14)「アマゾンエコー」や「グーグルホーム」の利用が拡大し、将来的に大きなニュース源の1つとなる見込みがある、など。

日本の市場分析

 第3部の中にある、日本についての分析を見てみる。この部分の書き手はロイター研究所の元フェローで、共同通信の澤康臣記者である。

 メディアの信頼度に関しての記述を訳してみると(カッコ内は筆者による補足)、

 「私たちの調査ではNHKと日経が最も信頼されている2つのニュース・ブランドであったが、非常に保守的な産経新聞を含む5大主要全国紙の中で、朝日新聞が最低であったことは特筆に値する」

 「過去数年にわたり、リベラル系高級紙(朝日新聞)は保守系与党・自由民主党の政治家や右派系メディアの両方から批判されてきた」

 「安倍晋三首相はある疑惑についての朝日新聞の反応に対し、フェイスブックにこう書いた。『哀れですね。朝日らしい惨めな言い訳。予想通りでした』」

 「別の件では、別の保守系議員足立康史氏(日本維新の会所属)が『朝日は万死に値する』とツイートし、右派系の(複数の)雑誌は『朝日は廃刊されるべきだ』などの見出しを付けた記事を掲載した」

 「さらなる分析によれば、朝日に対する信頼感が弱まったのは、こうした声高で党派心が露わな右派系の批判者が抱く(朝日に対する)強い不信感の結果ともいえる」

 「今回の調査が行われた後で、朝日は政府を揺るがせ、安倍首相の支持率を大幅に減少させたいくつもの暴露記事を掲載した。今年の調査にはその影響は反映されていない」。

 以上が引用部分である。

 信頼度のランキングを見てみよう。

信頼度のランキング(リポートより)
信頼度のランキング(リポートより)

 

 「その媒体を聞いたことがある」という人の中で、NHKニュースは信頼度が10点満点中6・23のスコアを得て首位に立った。

 これに続くのが日経(6・08)、地方紙(5・87)、日本テレビ(5.86)、TBS(5.78)、読売新聞(5・76)、テレビ朝日(5・7)、産経新聞(5・68)、フジテレビ(5・64)、毎日新聞(5.63)、朝日新聞(5・35)、ハフィントンポスト・ジャパン(5.26)、バズフィード・ジャパン(5.15)、週刊新潮(4.88)、週刊文春(4.63)。

ランキングの読み方は?

 このランキングをどう評価するべきか。

 2014年、朝日新聞は調査報道で間違いを犯し、当時の社長が引責辞任している。これを朝日の報道への信頼度が下落した理由と見ることは可能で、確かに「尾を引いている」(先の木村氏の記事)部分もありそうだが、筆者にはもう1つの面が見える。

 社長の引責辞任前後の保守系メディアや政治家による「朝日バッシング」が強烈だったことを思い出すと、澤氏の分析は信頼度を下落させるほどの勢いを持った日本の右派系ポピュリズムをちくりと批判している、と思うのである。リベラル系毎日新聞も、産経新聞の下になっていることに注目したい。

 「産経よりも下位だった」ことは、今回ネット言論でよく散見された「それ見たことか、朝日」ではないはずだ(先の2つの記事がそう言っているというわけではない)。少なくとも、右派系ポピュリズム・メディアの報道が(超)過激だったことも示すのである。

 次回の調査で、朝日新聞への信頼度がどう変わるかが注目だ。

 ほかに日本の特徴として、オンラインニュース部門ではヤフーニュースが圧倒的な位置を占めていること(これは以前のレポートでも指摘されてきたが、新聞社サイトがデジタル化に出遅れている間に、ヤフーニュースが急速に拡大したことが主因と思われる)、フェイスブックをニュース源として使う比率が他国と比較してかなり少ないこと(日本は9%で最下位)が挙げられている。

 澤氏は、その理由を実名参加を原則とするフェイスブックの方針に日本人がなじまないことが一因ではないかと指摘している。

 日本で最も人気があるソーシャルメディアはユーチューブ(51%)で、ニュース源として使っている人は19%。これにツイッター、ライン、フェイスブック、ニコニコ動画、インスタグラムが続く。

 日本ではオンラインニュースにお金を払う人は10%。全37カ国・地域中、26番目だ。アドブロックの利用率は17%で、36位。

ニュースを受動的に受け取る日本人

 また、日本ではオンラインニュースを基に何らかの行動を起こす割合(「参加度」とも言えよう)が極端に低い。

 例えば、ニュースをソーシャルメディアあるいは電子メールでシェアする割合は13%、ソーシャルメディアやウェブサイトのコメント欄を使ってニュースにコメントを残す割合は8%のみ。どちらも対象国・地域の中で最下位である。ブラジルではシェア率は61%、コメントを残す比率は38%で最高位。ニュースを大いに活用していることが分かる。

 日本では、何故ニュースを他国のように能動的に活用していないのだろうか?何か文化的な理由があるのだろうか?この点の分析が読みたい気がする。原因を探り当て、参加度を上げることが出来れば、オンラインニュースの購読者増加や滞在時間の長期化などに大きな力を発揮するかもしれない。


by polimediauk | 2018-09-06 16:25 | ネット業界