小型タブロイド判にサイズを変えてからというのも、発行部数も売り上げも増加させてきたインディペンデント紙。格好いいポスターを思わせる、大胆かつ斬新な一面で、大人気となった。専門家の間でも、インディペンデント紙は、新たな「タブロイド判高級紙」というジャンルを作ったと評価が高い。2003年に引き続き、2004年も英マスコミ業界で毎年選出されるWhat the Papers are Saying賞の最優秀新聞となった。
しかし、タブロイド判のみになったインディペンデント紙を真っ向から批判しているが、ライバル紙の一つ左派系のガーディアン紙のアラン・ラスブリジャー編集長だ。
ガーディアンはタブロイド判の発行を否定しているが、2006年までにフランスのル・モンド紙などのような縦に細長い「ベルリナー型」を発行する、としている。
9月時点でインディペンデント紙の発行部数は前年比20%増加したのに比べると、ガーディアンの発行部数は下がり続けており、そんなガーディアン紙の編集長がインディペンデントの新紙面を批判することに、意味があるのだろうか?ただのやっかみでは?
ラスブリジャー編集長の言い分は、こうだ。
まず、自分は小型判化そのものは、否定しない。読者は手軽でもちやすい新聞を好むだろう。ガーディアンでは大判の中に組み込む形で、すでに特集面をタブロイド判で発行しているので、固定読者も小型判に十分になじんでいる。
しかし、「タブロイド紙」という言葉についてくる、低俗な新聞というイメージが嫌いだという。これをなんとしても、避けたい、のだ。
―編集長同士が対決
ライバル同士の大手高級紙だが、ごくたまに編集長同士が一同に集まり、議論をすることがある。
昨年11月の上旬と下旬、ラスブリジャー氏とインディデペントのサイモン・ケルナー編集長、タイムズのロバート・トムソン編集長がそんな機会を持った。
ラスブリジャー編集長は、デイリーメイルなどの通常のタブロイド紙、インディペンデント、タイムズなどの高級紙を小脇に抱えて会場にやってきた。
10月のロンドン市内の講演で、ラスブリジャー編集長が様々な新聞の1面を例にして、インディペンデントをこてんぱんに批判をしていたのを知っていた私は、この日もそれが起きるのだなと予想できたが、ケルナー編集長もトムソン編集長もまるきりそんなことは知らない様子で、それぞれの成功談を話すべく、集まっていた。
ケルナー編集長のインディペンデントの部数増加の話が終わり、ラスブリジャー編集長が新聞を片手に話し出した。ケルナー編集長は、集まった出版業界の面々の前で、ほっぺたを引っ張ったかれるような痛烈な批判がなされるであろうことを、露とも知らず、自分のスピーチを終えた後のちょっとした安心感で席に座っていた・・・。